堂崎くんの由利さんデータ

豊 幸恵

文字の大きさ
58 / 85

堂崎データ

しおりを挟む
 翌日仕事から帰って来ると、キッチンにいる堂崎の隣にすでにあいつが居やがった。
 二人で仲良く料理をしている後ろ姿にイラッとくる。

「あ、お帰りなさい由利さん。先輩が手伝ってくれてるので、ご飯すぐできますよ。手洗って座ってて下さい」
「……堂崎、お前三田と一緒に来たのか?」
「そうです。先輩は合い鍵持ってないから、僕の会社まで車で迎えに来てくれて。おかげで買い物も楽でした」
「あ、由利、俺は合い鍵いらないよ。克哉くんのいないときは来ない約束だから」

 てめえなんかに誰が合い鍵渡すか! そもそも堂崎がいないときは来る気がないくせに!
「……三田はもうキッチン出ろ。二人でいると邪魔だろ」
「別に仲良く寄り添って作業してるから、俺邪魔してないけど」
「うるせえ! いいからてめえはこっち来い!」
 半ば強引にキッチンから引っ張り出してリビングに追いやる。

「ちょっと、もう、俺と一緒に居たいなら正直にそう言ったらいいだろ? ほんと、由利って素直じゃないなあ」
「ふざけんな。つかデカい声で堂崎に誤解させるような言い方するんじゃねえよ、くそが」
 キッと睨むが三田にはどこ吹く風だ。
「あーあ、せっかく克哉くんと一緒にキッチンに立つ旦那気分味わってたのに」

「てめえはあいつの料理に手出しするな。美味い食事が不味くなる」
「俺、料理はできる方だけど」
「味だけの問題じゃねえ。てめえの手を出したものなんて薬でも盛られてるんじゃないかと気になって純粋に食事を楽しめないっつーの」
 吐き捨てた俺の言葉に、男は肩を竦めた。

「別に由利には薬盛るつもりないのに」
「……俺には?」
 つまり堂崎には盛るつもりがあると言外に含めている。それに気付いた俺が眉間にしわを寄せると、三田はニヤと笑った。
「ここ、夜十時になったら克哉くんと一緒に出なきゃだろ? もし克哉くんが寝ちゃったら俺が連れて帰るから、安心して」

「てめ、堂崎に睡眠薬盛るつもりか!?」
「残念ながら今日は盛ってないよ?」
「全然残念じゃねえわ! 本当に油断も隙もねえ……寝込みを襲う気満々じゃねえか」
「失礼な。俺は寝てる相手に突っ込んだりしないよ、つまんないから。ただ、僕の克哉くんデータを増やしたいだけ」

「堂崎のデータ?」
 それは堂崎が作ってる俺データみたいなものか? と思ったけれど、こいつのはさらにエグかった。
「今数値データで欲しいのは腰回りから乳首のサイズとかち○このサイズとか、ア○ルの大きさとか? もちろん画像データもいっぱい欲しいから脱がせて写真撮りまくりたいな」

「……変態じゃねえか」
「知的探究心が旺盛なんだよ。昔一緒に飲みに行ったとき、ふにゃふにゃになっちゃってまあ可愛くて、データいっぱい取ったんだけどさ。居酒屋だったから裸に剥くわけにもいかなくて。ああいうデータをもっと取りたいんだ」
 一緒に飲みに行った? あんなに頑なに酒を飲まない堂崎が?
 そう不思議に思ったけれど。

「……もしかして、昔堂崎に酒飲むなって言った先輩って、てめえか」
 はたと思いついて訊ねると、三田はあっさり首肯した。
「だってあんな可愛い姿を他に晒したら、お持ち帰りされちゃうじゃないか。俺だって最初はワンコとして可愛がってただけだったけど、この時にやられたんだし。克哉くん記憶飛んじゃうからさ、飲むと暴れて酷かったからやめとけって嘘教えておいた」

 それに関しては良かったのか悪かったのか。……まあ、どちらかと言えば、他に余計な奴を引っかけないで済んだ分、良かったのかもしれない。
「……そんで三田は酔った堂崎の画像データを自分だけのものにしてたわけか」
「酔ったとこだけじゃないけどね。俺のパソコンの克哉くんデータフォルダ、すごいことになってるし。スマホにもたくさん。同好会で旅行行った時なんか、俺はほとんど寝ずにかなりの枚数の克哉くんの寝顔撮ってたしね」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

処理中です...