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由利と三田
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「これ、例のリストな。ちゃんと埋めてきたから、必ずデータ送れよ」
仕事帰りのとあるカフェで待ち合わせ、向かいに座った男は、先日俺が渡したリストを差し出してきた。一頻り目を通して、虚偽らしい記載がないことを確認する。
「了解、データは後でPCの方に送っておくよ。これでまあ、克哉くんのデータコレクションは完成するし」
「これで終わってくれるなら何よりだ。もうS○Xの邪魔されんのはごめんだからな」
肩を竦めた由利は、そう言いながらも上機嫌だ。
「……随分機嫌良さそうじゃない。克哉くんと何かあった?」
「別に。……ああ、そういや三田に言われた通り、あいつ酔うとめっちゃ可愛かったわ。まあ、酔わなくても可愛いんだけどな」
俺相手に平気で惚気てくる、由利ってこんな男だったろうか。すっかり克哉くんにめろめろ状態だ。
大学時代から彼を可愛がっていた俺からすると少々面白くないが、そんな様子を見せればこの男が余計調子に乗って惚気てくるのが分かっているから、俺は一つため息を吐くに止めた。
「まあいいや。ところでさ、俺の部屋にこれ置いてたんだけど、欲しい?」
話を変えるように座席の横に置いておいた紙袋を持ち上げて、由利に示して見せる。
男はそれを怪訝そうに見つめた。
「何だよ、それ」
「見ればわかるよ」
それだけ言って由利の方に差し出す。
無言で紙袋を受け取った男は、それを膝の上に置いて中身をちらりと確認すると、目を丸くした。
「……もしかして、女装ん時のメイド服?」
「そう。かつらとか下着とか一式入ってるよ。俺が持ってても使わないしさ、由利なら欲しいかなと思って」
「いる」
即答かよ。俺を変態扱いするけれど、この男だって大概だ。
「でもいいのか? ただでもらっちゃって」
「俺、データ集めるのは趣味だけど、物は煩わしいから持たない主義なんだよね。これだけはいつか克哉くんとイメクラごっこをするために持ってたんだけどさ、しばらく使う予定なくなっちゃったし」
「使う予定なんてしばらくじゃなくて永遠に来ねえわ。……まあ、そういうことならありがたく頂くか」
機嫌良くそれを自分の物にした由利に、俺は言葉を足した。
「あ、そうそう、データならいくらあってもいいから。もしそれ着せて女装エッチするときはさ、ハメ撮り画像ちょうだい。もちろん克哉くんだけ写ってるやつね」
「はあ!? ふざけんな、そんなの撮ったら堂崎に怒られるに決まってんだろ。つうか、俺だって他人にあいつのエロいとこ見られんの嫌だわ」
「……由利って、克哉くんのことに関しては独占欲強いよねえ」
全く、お熱いことで。
「撮ってこなきゃ駄目だっていうなら、これ別に要んねえよ」
「俺が持ってても仕方ないって言ったじゃん。返せとは言わないよ。データがあったら嬉しいなって話。俺だって克哉くんの不興を買いたくないもん」
まあ、先日は生本番の音声も頂いてしまったし、わがままはこの辺にしておこう。
「……ところで、これでお前、堂崎に余計なちょっかい出すのやめるんだよな?」
「んん-? そうだなあ。とりあえず家に押しかけたりS○Xの時間を見計らって電話をするのはやめておくよ。でも、克哉くんと出かけたりはこれからもするから、よろしく」
「ああ? てめえはまだ横恋慕を……」
「だって克哉くんが一緒に出掛けたいって言うんだもん。由利とだと休日もエッチ三昧でどこにも出掛けないらしいじゃん? 俺は克哉くんの好みを知り尽くし、全くそつのないエスコートができる男だからねえ」
そう告げると、目の前の男はぐっと言葉を詰まらせた。
「俺に盗られたくなかったら、もっと克哉くんのことを考えてやりなよ? 社長さん」
「……うるせぇ、余計なお世話だ」
仕事帰りのとあるカフェで待ち合わせ、向かいに座った男は、先日俺が渡したリストを差し出してきた。一頻り目を通して、虚偽らしい記載がないことを確認する。
「了解、データは後でPCの方に送っておくよ。これでまあ、克哉くんのデータコレクションは完成するし」
「これで終わってくれるなら何よりだ。もうS○Xの邪魔されんのはごめんだからな」
肩を竦めた由利は、そう言いながらも上機嫌だ。
「……随分機嫌良さそうじゃない。克哉くんと何かあった?」
「別に。……ああ、そういや三田に言われた通り、あいつ酔うとめっちゃ可愛かったわ。まあ、酔わなくても可愛いんだけどな」
俺相手に平気で惚気てくる、由利ってこんな男だったろうか。すっかり克哉くんにめろめろ状態だ。
大学時代から彼を可愛がっていた俺からすると少々面白くないが、そんな様子を見せればこの男が余計調子に乗って惚気てくるのが分かっているから、俺は一つため息を吐くに止めた。
「まあいいや。ところでさ、俺の部屋にこれ置いてたんだけど、欲しい?」
話を変えるように座席の横に置いておいた紙袋を持ち上げて、由利に示して見せる。
男はそれを怪訝そうに見つめた。
「何だよ、それ」
「見ればわかるよ」
それだけ言って由利の方に差し出す。
無言で紙袋を受け取った男は、それを膝の上に置いて中身をちらりと確認すると、目を丸くした。
「……もしかして、女装ん時のメイド服?」
「そう。かつらとか下着とか一式入ってるよ。俺が持ってても使わないしさ、由利なら欲しいかなと思って」
「いる」
即答かよ。俺を変態扱いするけれど、この男だって大概だ。
「でもいいのか? ただでもらっちゃって」
「俺、データ集めるのは趣味だけど、物は煩わしいから持たない主義なんだよね。これだけはいつか克哉くんとイメクラごっこをするために持ってたんだけどさ、しばらく使う予定なくなっちゃったし」
「使う予定なんてしばらくじゃなくて永遠に来ねえわ。……まあ、そういうことならありがたく頂くか」
機嫌良くそれを自分の物にした由利に、俺は言葉を足した。
「あ、そうそう、データならいくらあってもいいから。もしそれ着せて女装エッチするときはさ、ハメ撮り画像ちょうだい。もちろん克哉くんだけ写ってるやつね」
「はあ!? ふざけんな、そんなの撮ったら堂崎に怒られるに決まってんだろ。つうか、俺だって他人にあいつのエロいとこ見られんの嫌だわ」
「……由利って、克哉くんのことに関しては独占欲強いよねえ」
全く、お熱いことで。
「撮ってこなきゃ駄目だっていうなら、これ別に要んねえよ」
「俺が持ってても仕方ないって言ったじゃん。返せとは言わないよ。データがあったら嬉しいなって話。俺だって克哉くんの不興を買いたくないもん」
まあ、先日は生本番の音声も頂いてしまったし、わがままはこの辺にしておこう。
「……ところで、これでお前、堂崎に余計なちょっかい出すのやめるんだよな?」
「んん-? そうだなあ。とりあえず家に押しかけたりS○Xの時間を見計らって電話をするのはやめておくよ。でも、克哉くんと出かけたりはこれからもするから、よろしく」
「ああ? てめえはまだ横恋慕を……」
「だって克哉くんが一緒に出掛けたいって言うんだもん。由利とだと休日もエッチ三昧でどこにも出掛けないらしいじゃん? 俺は克哉くんの好みを知り尽くし、全くそつのないエスコートができる男だからねえ」
そう告げると、目の前の男はぐっと言葉を詰まらせた。
「俺に盗られたくなかったら、もっと克哉くんのことを考えてやりなよ? 社長さん」
「……うるせぇ、余計なお世話だ」
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