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予言
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「なるほどね。」
薄暗闇の空間。天井は永遠に続く闇で、四方は黒いカーテンで囲われている。風もないのにカーテンは揺れ、どこからともなく声は響く。
「あらまぁ、こりゃ面倒ね…。」
「ふむ、ふむ…。」
年配の女性の声だ。まるで独り言のように、俺を無視して何かつぶやいている。
「誰だよ」
「あなたが呼んだんでしょ?」
「何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「占ってたの。頼んだじゃない。」
「占い…?誰を?」
噛み合わない会話にストレスを覚えながら、声の主を探した。
「あなたは20歳で結婚し、すぐに嫁を亡くす。」
「結婚?あと一年以内にできるわけないだろ?」
19年間生きて来たが、彼女ができたことすら無い。不規則に揺れるカーテンの奥には、誰の気配も感じなかった。女性の声は、直接脳内に響いているようだ。
「たとえ運命が見えようと、普段は断言したりしません。なぜなら運命は絶対だからです。」
「…?」
返事に困っていると、おかまいなしに彼女の占いは続いた。
「運命には強弱がある。しばし運命はレールに例えられるが、正確には道のようなものだ。」
「ちょ、待って、何を言ってるんだ。」
「なぜなら道には幅があるから。右に寄って歩くのか、左に寄って歩くのか。その幅が運命の強弱。狭いほど強く、広いほど弱い。要は本人に選択の余地がどれだけあるのかということ。」
カーテンは激しくはためきだし、俺の恐怖と不安を煽っていく。
「その道幅に心のゆとりを持ってもらう、例え狭い道だろうと、本人に切羽詰まった思いをさせない為に、断言はしない。言ったところで、運命という道は変わらないのだから。それは私からのほんの気遣いなんです。」
「でも、今あなたは断言した…。」
「…そして、あなたは開拓者。」
いっそう強い声が頭に響き、思わず顔をしかめた。周囲のカーテンは実体の無い風に吹き飛ばされ、天井の闇へ吸い込まれていった。
「かいたく、しゃ…?」
「そう…。さらには、今まで感じたことのない強力な運命。あなたに限っては、〝道〟ではなく〝レール〟の例えで正しいようですね。」
「はぁ?」
周囲は完全な闇となり、空には1つまた1つと星が瞬きだした。
「あなたは数千年に1人の運命を変える力を持つ〝開拓者〟でありながら、稀に見ない強力な運命に縛られた〝確定者〟です。あなたが自分の力に気づかないままだと、最愛の人と共に奈落の底へ落ちる事になる。開眼しなさい、だから貴方には未来を断言しました。あなたにはその力がある。」
「…運命、開拓者、確定者…。んなアホな…誰が信じるかい!」
「今信じるも信じないも勝手だが、貴方はまた私に会いに来る、確信を持って…。」
それっきり声は聞こえなくなった。
満天の星空を流れる天の川を、ただただ見上げ続けた。
薄暗闇の空間。天井は永遠に続く闇で、四方は黒いカーテンで囲われている。風もないのにカーテンは揺れ、どこからともなく声は響く。
「あらまぁ、こりゃ面倒ね…。」
「ふむ、ふむ…。」
年配の女性の声だ。まるで独り言のように、俺を無視して何かつぶやいている。
「誰だよ」
「あなたが呼んだんでしょ?」
「何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「占ってたの。頼んだじゃない。」
「占い…?誰を?」
噛み合わない会話にストレスを覚えながら、声の主を探した。
「あなたは20歳で結婚し、すぐに嫁を亡くす。」
「結婚?あと一年以内にできるわけないだろ?」
19年間生きて来たが、彼女ができたことすら無い。不規則に揺れるカーテンの奥には、誰の気配も感じなかった。女性の声は、直接脳内に響いているようだ。
「たとえ運命が見えようと、普段は断言したりしません。なぜなら運命は絶対だからです。」
「…?」
返事に困っていると、おかまいなしに彼女の占いは続いた。
「運命には強弱がある。しばし運命はレールに例えられるが、正確には道のようなものだ。」
「ちょ、待って、何を言ってるんだ。」
「なぜなら道には幅があるから。右に寄って歩くのか、左に寄って歩くのか。その幅が運命の強弱。狭いほど強く、広いほど弱い。要は本人に選択の余地がどれだけあるのかということ。」
カーテンは激しくはためきだし、俺の恐怖と不安を煽っていく。
「その道幅に心のゆとりを持ってもらう、例え狭い道だろうと、本人に切羽詰まった思いをさせない為に、断言はしない。言ったところで、運命という道は変わらないのだから。それは私からのほんの気遣いなんです。」
「でも、今あなたは断言した…。」
「…そして、あなたは開拓者。」
いっそう強い声が頭に響き、思わず顔をしかめた。周囲のカーテンは実体の無い風に吹き飛ばされ、天井の闇へ吸い込まれていった。
「かいたく、しゃ…?」
「そう…。さらには、今まで感じたことのない強力な運命。あなたに限っては、〝道〟ではなく〝レール〟の例えで正しいようですね。」
「はぁ?」
周囲は完全な闇となり、空には1つまた1つと星が瞬きだした。
「あなたは数千年に1人の運命を変える力を持つ〝開拓者〟でありながら、稀に見ない強力な運命に縛られた〝確定者〟です。あなたが自分の力に気づかないままだと、最愛の人と共に奈落の底へ落ちる事になる。開眼しなさい、だから貴方には未来を断言しました。あなたにはその力がある。」
「…運命、開拓者、確定者…。んなアホな…誰が信じるかい!」
「今信じるも信じないも勝手だが、貴方はまた私に会いに来る、確信を持って…。」
それっきり声は聞こえなくなった。
満天の星空を流れる天の川を、ただただ見上げ続けた。
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