Xday

たく

文字の大きさ
2 / 32

予言

しおりを挟む
「なるほどね。」
薄暗闇の空間。天井は永遠に続く闇で、四方は黒いカーテンで囲われている。風もないのにカーテンは揺れ、どこからともなく声は響く。
「あらまぁ、こりゃ面倒ね…。」
「ふむ、ふむ…。」
年配の女性の声だ。まるで独り言のように、俺を無視して何かつぶやいている。
「誰だよ」
「あなたが呼んだんでしょ?」
「何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「占ってたの。頼んだじゃない。」
「占い…?誰を?」
噛み合わない会話にストレスを覚えながら、声の主を探した。
「あなたは20歳で結婚し、すぐに嫁を亡くす。」
「結婚?あと一年以内にできるわけないだろ?」
19年間生きて来たが、彼女ができたことすら無い。不規則に揺れるカーテンの奥には、誰の気配も感じなかった。女性の声は、直接脳内に響いているようだ。
「たとえ運命が見えようと、普段は断言したりしません。なぜなら運命は絶対だからです。」
「…?」
返事に困っていると、おかまいなしに彼女の占いは続いた。
「運命には強弱がある。しばし運命はレールに例えられるが、正確には道のようなものだ。」
「ちょ、待って、何を言ってるんだ。」
「なぜなら道には幅があるから。右に寄って歩くのか、左に寄って歩くのか。その幅が運命の強弱。狭いほど強く、広いほど弱い。要は本人に選択の余地がどれだけあるのかということ。」
カーテンは激しくはためきだし、俺の恐怖と不安を煽っていく。
「その道幅に心のゆとりを持ってもらう、例え狭い道だろうと、本人に切羽詰まった思いをさせない為に、断言はしない。言ったところで、運命という道は変わらないのだから。それは私からのほんの気遣いなんです。」
「でも、今あなたは断言した…。」
「…そして、あなたは開拓者。」
いっそう強い声が頭に響き、思わず顔をしかめた。周囲のカーテンは実体の無い風に吹き飛ばされ、天井の闇へ吸い込まれていった。
「かいたく、しゃ…?」
「そう…。さらには、今まで感じたことのない強力な運命。あなたに限っては、〝道〟ではなく〝レール〟の例えで正しいようですね。」
「はぁ?」 
周囲は完全な闇となり、空には1つまた1つと星が瞬きだした。
「あなたは数千年に1人の運命を変える力を持つ〝開拓者〟でありながら、稀に見ない強力な運命に縛られた〝確定者〟です。あなたが自分の力に気づかないままだと、最愛の人と共に奈落の底へ落ちる事になる。開眼しなさい、だから貴方には未来を断言しました。あなたにはその力がある。」
「…運命、開拓者、確定者…。んなアホな…誰が信じるかい!」
「今信じるも信じないも勝手だが、貴方はまた私に会いに来る、確信を持って…。」
それっきり声は聞こえなくなった。
満天の星空を流れる天の川を、ただただ見上げ続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

処理中です...