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Ⅰ:士官学校篇
魔力操作訓練
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次の日から俺の戦技の制御法を教わり始めた。
訓練を担当するのは。昨日の授業で結界をはってい人で、ホブゴブリンのイグドー教官という三十代半ばごろの教官だ。
「じゃあ一発撃ってみようか、なるべく手加減して。ああ大丈夫だよ、俺はあの技を制御できると思うし、ここには一般の生徒はこないから」
「わかりました。技、『蛇突』」
白い炎の蛇が地を駆け、教官に襲いかかる。
「『火炎陣』」
教官の出した結界と蛇がぶつかり、相殺する。
「ふう、なかなか強力だね。ってあれ、俺の盾が消滅してるよ」
「そうなんですか、すいません」
「いや、大丈夫だよ。それより今のを見ると蛇に司令が伝わってないね、あれは魔力の塊だからきちんと司令を出せば上手くいくはずだよ」
そう言って教官がとりだしたのは
「魔力人形“カテナーテ”ちょっとこいつに魔力を込めてみな」
言われたように魔力を込めると指と人形の腕が魔力の鎖でつながった。
「こいつは魔力を使って制御し、操る人形だよ。しばらく貸すから練習するといい」
その日から俺は、魔力に司令を伝える訓練を始めた。
「~ッ~ッッがぁ」
難しい、何度も試したけど全く上手くいかない。
焦っちゃだめだ、まずは基本から。
人形の足とつながった指動かす。
よし、人形の足が動き出した。
そのまま歩かせようとするが、転倒する。起き上がらせるために人形の腕のところを動かして失敗する。
「教官、カテナーテのコツはなんですか」
「そうだね、これは魔力に司令を伝える訓練だから、こういうふうに動かしたいとイメージすることが大切だよ」
その後教官がお手本を見せると言って別のカテナーテを取り出した。
「カテナーテよ、タップダンスを踊れ」
「すごいです、人形が踊りだしました。…でもこれって」
「そう、これはコサックダンス。騙されなかったね」
騙されようのないことだと思う。
「じゃあヴィべーリオくん、さっそくブレイクダンスをさせようか」
「いきなり難易度上げすぎじゃないですか」
「大丈夫だよ、もう一度言うけど、ちゃんとイメージすれば上手くいくはずだよ」
ええと、ブレイクダンスだからまず頭を地面につける。次に頭で回っている様子をイメージして魔力を込める。
「ありゃ、回転不足だ。でも回ったってことは司令はできている証拠だから魔力量の調整を意識してもう一回行こう」
「わかりました」
さっきよりも魔力を多くして動かす。すると上手く回転しだした。
「よし、もっと回転上げて」
「はい」
さらに強く魔力を込める。
「もっともっと」
そう言われて全身の魔力をカテナーテに流し込む。
なんだこれ、制御できない。まるで、あの時のように……
暴走する戦技、引き裂かれる的、そして…他の生徒へ牙を向ける蛇。誰かの悲鳴が聞こえ、イグドー教官が盾を構えるのが見える。苦痛、俺が地面に叩きつけられる音、血のにおい。
「おーい、生きているかー」
教官の声で目が覚める。どうやら気を失っていたらしい。
「とりあえず回復魔法をかけておいたけど、気分はどう」
「教官、大丈夫です。今のはなんだったのですか」
「魔力が強ければ強いほど、制御が難しくなり、そっちに集中力がいくため、司令もしにくくなるんだ。今日はこれぐらいにしよう」
数日後
まず朝起きて朝食を食べたあと、制服に着替える。午前中はイーセル王国の歴史や部隊の動かし方などの座学、午後にはパーティーの連携技の訓練や素振りなどの実技科目の授業。その後はイグドー教官と魔力制御の練習と……
最近はより強い魔力に司令を伝える訓練が始まった。
「いいぞ、だいぶ司令が伝わってきたな」
安定した高速回転をしていたカテナーテを止めた俺に教官が言った。
「はい、教官のおかげで前よりも魔力の扱いになれてきました」
「そうか、よかったな。それじゃああの的に向かって技を撃って今のヴィべーリオくんの戦技を見せてくれ」
「わかりました。では、行きます。技、『蛇突』」
剣が白い炎を纏い、蛇の形を形成する。そして俺が刺突攻撃の構えをとると、蛇もまるで、飛びかかる直前のように身をかがめ、その牙をむき出す。
一瞬の間、そして…。
「ギシャァァ」
俺が剣を突きだすのと同時に蛇が動き、的の中央をえぐるように斬り裂いた。
「撃てた……」
「よくやった、ヴィべーリオくん、にしてもこれほどの技をこんな短期間で使えるようになるなんてすごいな」
「ありがとうございます。これも教官のおかげです」
これで俺も戦技が使える。みんなのように強力な技を撃てるんだ。
そんなとき、不意に放送がながれた。
「ピンポンパンポーン、イグドー教官、イグドー教官、至急、職員室におこしください」
「じゃ、俺は行ってくるから、お前はもう帰りなさい」
「わかりました。では、また」
さっきの放送、ピンポンパンポーンって口で言ってたよな……
職員室
俺、イグドー-バンディードが行くと、他の教官たちがいた。
「学長先生、いったいどうしたんですか。俺はまだなにも悪いことはしてませんよ」
俺は笑ったが、本気ではない。
「ふざけるのはやめたまえイグドー教官。君がこの学校の職員の中でもとくに高度な戦闘力を持っていることを知っている」
そう言って学長先生が一枚の紙を差し出す。
やはりか。
「最前線勤務の辞令だよ。アーロゴスト地底都市、我が軍のダンジョンの一つで、君の新しい職場だ。副ダンジョンマスターとしてな」
「わかりました、自分も軍人です。命令とあらばどこへでも行きます。ですが一つ聞かせて下さい、なぜ、敗北の責任をとって前線をしりぞいた俺にどうしていまさら」
「なにいっているのだね、君はただあの時に戦場にいただけじゃないかね。それに、あの先代霊王様のパーティーメンバーだった男を上層部がほっとくわけないじゃないか」
職員室から出た俺が中庭に行くと、そこは満天の星空で、数年ぶりに戦地へと向かう俺を憐れむように輝いていた。
俺は軍人だ。戦うのが仕事だ。もうこの学校に未練はない。もし心残りがあるとしたらヴィべーリオくんの存在だ、他の者を守るためにも、自分のためにも、本当にがんばっていた。いや、彼ならきっといい軍人になると思う。だが、あの戦技『蛇神』は明らかに……
思い当たったことを調べるため、イーセル学の教室へ向かって歩きはじめた。
訓練を担当するのは。昨日の授業で結界をはってい人で、ホブゴブリンのイグドー教官という三十代半ばごろの教官だ。
「じゃあ一発撃ってみようか、なるべく手加減して。ああ大丈夫だよ、俺はあの技を制御できると思うし、ここには一般の生徒はこないから」
「わかりました。技、『蛇突』」
白い炎の蛇が地を駆け、教官に襲いかかる。
「『火炎陣』」
教官の出した結界と蛇がぶつかり、相殺する。
「ふう、なかなか強力だね。ってあれ、俺の盾が消滅してるよ」
「そうなんですか、すいません」
「いや、大丈夫だよ。それより今のを見ると蛇に司令が伝わってないね、あれは魔力の塊だからきちんと司令を出せば上手くいくはずだよ」
そう言って教官がとりだしたのは
「魔力人形“カテナーテ”ちょっとこいつに魔力を込めてみな」
言われたように魔力を込めると指と人形の腕が魔力の鎖でつながった。
「こいつは魔力を使って制御し、操る人形だよ。しばらく貸すから練習するといい」
その日から俺は、魔力に司令を伝える訓練を始めた。
「~ッ~ッッがぁ」
難しい、何度も試したけど全く上手くいかない。
焦っちゃだめだ、まずは基本から。
人形の足とつながった指動かす。
よし、人形の足が動き出した。
そのまま歩かせようとするが、転倒する。起き上がらせるために人形の腕のところを動かして失敗する。
「教官、カテナーテのコツはなんですか」
「そうだね、これは魔力に司令を伝える訓練だから、こういうふうに動かしたいとイメージすることが大切だよ」
その後教官がお手本を見せると言って別のカテナーテを取り出した。
「カテナーテよ、タップダンスを踊れ」
「すごいです、人形が踊りだしました。…でもこれって」
「そう、これはコサックダンス。騙されなかったね」
騙されようのないことだと思う。
「じゃあヴィべーリオくん、さっそくブレイクダンスをさせようか」
「いきなり難易度上げすぎじゃないですか」
「大丈夫だよ、もう一度言うけど、ちゃんとイメージすれば上手くいくはずだよ」
ええと、ブレイクダンスだからまず頭を地面につける。次に頭で回っている様子をイメージして魔力を込める。
「ありゃ、回転不足だ。でも回ったってことは司令はできている証拠だから魔力量の調整を意識してもう一回行こう」
「わかりました」
さっきよりも魔力を多くして動かす。すると上手く回転しだした。
「よし、もっと回転上げて」
「はい」
さらに強く魔力を込める。
「もっともっと」
そう言われて全身の魔力をカテナーテに流し込む。
なんだこれ、制御できない。まるで、あの時のように……
暴走する戦技、引き裂かれる的、そして…他の生徒へ牙を向ける蛇。誰かの悲鳴が聞こえ、イグドー教官が盾を構えるのが見える。苦痛、俺が地面に叩きつけられる音、血のにおい。
「おーい、生きているかー」
教官の声で目が覚める。どうやら気を失っていたらしい。
「とりあえず回復魔法をかけておいたけど、気分はどう」
「教官、大丈夫です。今のはなんだったのですか」
「魔力が強ければ強いほど、制御が難しくなり、そっちに集中力がいくため、司令もしにくくなるんだ。今日はこれぐらいにしよう」
数日後
まず朝起きて朝食を食べたあと、制服に着替える。午前中はイーセル王国の歴史や部隊の動かし方などの座学、午後にはパーティーの連携技の訓練や素振りなどの実技科目の授業。その後はイグドー教官と魔力制御の練習と……
最近はより強い魔力に司令を伝える訓練が始まった。
「いいぞ、だいぶ司令が伝わってきたな」
安定した高速回転をしていたカテナーテを止めた俺に教官が言った。
「はい、教官のおかげで前よりも魔力の扱いになれてきました」
「そうか、よかったな。それじゃああの的に向かって技を撃って今のヴィべーリオくんの戦技を見せてくれ」
「わかりました。では、行きます。技、『蛇突』」
剣が白い炎を纏い、蛇の形を形成する。そして俺が刺突攻撃の構えをとると、蛇もまるで、飛びかかる直前のように身をかがめ、その牙をむき出す。
一瞬の間、そして…。
「ギシャァァ」
俺が剣を突きだすのと同時に蛇が動き、的の中央をえぐるように斬り裂いた。
「撃てた……」
「よくやった、ヴィべーリオくん、にしてもこれほどの技をこんな短期間で使えるようになるなんてすごいな」
「ありがとうございます。これも教官のおかげです」
これで俺も戦技が使える。みんなのように強力な技を撃てるんだ。
そんなとき、不意に放送がながれた。
「ピンポンパンポーン、イグドー教官、イグドー教官、至急、職員室におこしください」
「じゃ、俺は行ってくるから、お前はもう帰りなさい」
「わかりました。では、また」
さっきの放送、ピンポンパンポーンって口で言ってたよな……
職員室
俺、イグドー-バンディードが行くと、他の教官たちがいた。
「学長先生、いったいどうしたんですか。俺はまだなにも悪いことはしてませんよ」
俺は笑ったが、本気ではない。
「ふざけるのはやめたまえイグドー教官。君がこの学校の職員の中でもとくに高度な戦闘力を持っていることを知っている」
そう言って学長先生が一枚の紙を差し出す。
やはりか。
「最前線勤務の辞令だよ。アーロゴスト地底都市、我が軍のダンジョンの一つで、君の新しい職場だ。副ダンジョンマスターとしてな」
「わかりました、自分も軍人です。命令とあらばどこへでも行きます。ですが一つ聞かせて下さい、なぜ、敗北の責任をとって前線をしりぞいた俺にどうしていまさら」
「なにいっているのだね、君はただあの時に戦場にいただけじゃないかね。それに、あの先代霊王様のパーティーメンバーだった男を上層部がほっとくわけないじゃないか」
職員室から出た俺が中庭に行くと、そこは満天の星空で、数年ぶりに戦地へと向かう俺を憐れむように輝いていた。
俺は軍人だ。戦うのが仕事だ。もうこの学校に未練はない。もし心残りがあるとしたらヴィべーリオくんの存在だ、他の者を守るためにも、自分のためにも、本当にがんばっていた。いや、彼ならきっといい軍人になると思う。だが、あの戦技『蛇神』は明らかに……
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