魔王軍に入隊した人間の叙事詩

片山康亮

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Ⅰ:士官学校篇

大蛇の暴走

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イーセル王国軍士官学校
屋内運動場
いよいよ今日から戦技についての授業が始まった。

「そういえばアルスの戦技、前から調べるって教官が言ってたけど、あれからどうなったんだ」

と問いかけたのは俺の親友でパーティーメンバーのフェザン。

「ああ、それならこのあいだ……」



数日前
「ヴィべーリオ、お前の戦技について少し分かったぞ」

倉庫で武器を磨いていると、教官に話しかけられた。

「ほんとですか」

「もちろんだ」

教官が言うには、俺の戦技、蛇神の語源はその昔、この戦技を使った人の二つ名らしい。また、技のことも教えてもらえた。技Ⅰの蛇突は、先ほどのこの戦技を使った人の得意技で、まず剣に魔力を纏わせて突き技の姿勢になる。そこから体のバネと柔軟性を利用して敵を貫く技である。次に、技Ⅱの継承について。この技は相手から戦技を分けてもらう技で、その分けてもらった技で自分の技を強化したり、さまざまな派生技を作ることができる。ただ、この技は相手から奪うわけではないため、相手の同意が必要だ。




「まあ俺が教官に教わったのはこれぐらいだ」

「あっ、もうすぐ始まるよ」

初めての戦技の授業では、的に向かって戦技を撃つことをした。

「技、『断頭台』」

技名を叫んだヒエナが宙へ飛び上がり、人形の的の首の所へ落下の衝撃を利用して刃を振り下ろす。

ガギャッ

的が壊れるときの音がすごいことになっていたんだが…。

「じゃあ、次俺行っていいかー?」

そう言ってフェザンが飛翔する。

「技Ⅰ、『シャイニングスコール』」

声とともに空を埋め尽くすように淡い碧色に光る弓矢が出現する。

「撃て」

そう言ってフェザンが手を振り下ろすと空に浮かぶ弓が一斉斉射する。

土煙が晴れるとそこには、大量の矢に射抜かれた的があった。

「ホイじゃ次、グラムくんだなー」

「わかった。行ってくる」


的の前に立ったグラムくんがメイスを構える。

「『クリムゾンエンペラー』」

グラムくんがメイスを地面に叩きつけると的の方に導火線のように亀裂が走り、真紅の火柱が的を包み込む…。

えっ、的が消滅したんだが。

「すごい、的が消えたぞ」

「イリュージョンってやつか」

「いや、あれは的が蒸発したんだよ」


とうとう俺の番がきた。教官が新しい的を用意する。

「技Ⅰ、『蛇突』」

構えた剣に白い炎が纏い、巨大な蛇を形成する。

そのまま突き出そうとしたが……

「ジャァァ」

なんだこの魔力は、制御できない。

剣から伸びた魔力の蛇が運動場を走り、通ったところの草を焼き払う。蛇が的に食らいつき、引き裂く。それでも止まらずに俺自身も宙に跳ね飛ばされる。

ついに蛇は生徒たちの列にも向かい……

「そうはさせない」

教官が叫び盾を構える。

「技、『火炎陣』」

教官の盾に魔法陣が現れ、炎の結界をはる。

盾と蛇がぶつかり轟音が鳴り響く。

眩い閃光に目を奪われる、そして…消えた。



「大丈夫か」

「ヴィべーリオくん、死ぬな!!」

「アルス、アルス!」

ここは……

目が覚めるとそこは学校の医務室だった。

「よかった、生きてた」

「みんな、どうしたの」

そうだ、あの時俺の技が暴走して……。

「何が起こったの」

「俺の技が暴走した。自分でも止められなかった。俺以外にも怪我した人はいる」

「いや、教官が戦技で守ってくれたから」

それならよかった。

「ヴィべーリオ。いったい何があったのだ」

医務室にいた教官にいままでのことを話した。すると、

「ありえない、あの的は正しく攻撃を当てれば自然に壊れるように魔法がかかっているのだが、あれは力まかせに破ったとしか思えない」

そうか、俺の戦技はそれほど危険なのか。


「教官、俺に戦技の制御法を教えてください」

「制御法?」

「はい、あの時、自分の魔力では抑えられられないと思いました。それで、もしかしたらみんなに危険が及ぶと思ったらすごく怖くなりました」

「確かに人間の魔力ではあのレベルの戦技を操るのは難しい。だが、普通ならあの衝撃で死んでいた。今のお前は生きている、それは素質があるということだ」

「教官……」

「いいだろう、お前があの技を使いこなせるようにしてやる」

























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