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138:式典と婚約発表について

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 冬期休暇中のある日、部屋で思わぬ内容を告げられた私は、声を裏返してしまう。

「婚約発表?」
「そうなんだ。トパゾセリアでは、王子の婚約が決まったら、大々的に発表されることになっている。国内国外問わず、人々に広く知らしめるのが目的だよ」

 話し相手は、日に日に格好良くなっていく、第六王子のカマルだ。
 サラサラと流れる金髪に赤と青のオッドアイ、スラリとした王子様らしいスタイル。
 朝から爽やかな彼は、冬期休暇中にも背が伸びた気がする。

「それで、具体的に何をやればいいの?」
「トパゾセリアの式典に、一緒に参加して欲しい。僕の事情に巻き込んでごめんね」

 耳慣れない言葉が聞こえ、無言で首を傾げた。式典とは……?
 仰々しい響きのそれは、大々的な国家行事か何かではないだろうか。
 そう思った私の顔は、徐々に血の気を失っていく。無理、無理無理無理!
 
「とんでもない! 大事な式典に私なんかが参加するなんて。迷惑をかけちゃうよ!」
「アメリーは、自分を卑下しないで」
「で、でも、国の一大行事だよね? 他国の元平民が行っても、誰もいい顔はしないだろうし、カマルに嫌な思いをさせてしまうかも!」

 慌てる私の両肩に宥めるように手を置き、カマルは小さく深呼吸してこちらを向く。
 
「前にも伝えたけれど、アメリーは僕の愛する婚約者で大切な恩人だ。おじさんもハリールも君の味方。あの二人が気に入った人物と言うだけで、国でも一目置かれることになるよ」

 本当にそうだろうか?
 カマルは好意的に話してくれるけれど、誰もが同じ考えだとは限らない。

「私、数ヶ月前まで平民だったし……礼儀作法とか、わからないよ? カマルたちに恥を掻かせちゃう」
「僕がフォローするし、指導者も付ける。うちの国は堅苦しくないほうだし、アメリーなら大丈夫!」
 
 いくら抵抗しようと、もう式典に参加することは決定しているみたいだ。
 今さら覆せない空気を感じる。
 
「式典は冬期休暇の終わり頃に開かれる予定だから、まだ時間がある……アメリー、そんな顔をしなくても大丈夫だよ。僕も精一杯協力するから」
「……うん、頑張る」
 
 私がカマルのためにできる数少ないことだから、やるからにはきちんと成し遂げたい。

 こうして、カマルの婚約者としての教育が始まった。
 覚える内容が沢山ありすぎて、式典の動きだけで頭がパンクしそうだ。魔法学園の勉強より難しい。
 それでもなんとか、私は指導についていった。
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