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128:ヘドロ色の尋問
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あのあと、私たちは騎士団宿舎に戻り、怪しい男が目覚めるのを待った。
騎士団長や副団長の立ち会いの下、気がついた男を皆で問いただすと、彼はやはり王立研究所の職員だと判明する。
「王立研究所からの連絡はなかったんだけど……」
「いくら王立研究所の方であっても、勝手にこういうことをされては困ります。万が一、魔物による事故が起こった際には、うちの騎士団の責任になってしまうのですよ」
団長は困ったなあという感じで首を傾げており、副団長は不機嫌そうな表情を浮かべている。職員は疲れきった姿で大人しくしていた。
ヘドロに飲み込まれたあとの人は、皆こんな感じの顔になるのだ。
捕まった職員は、脅えた様子でじっと私を見ていた。
「まずは、こちらの質問に答えてもらうよ」
カマルが彼に問いただす。
「あなたは、あそこで何をしていたの?」
「土地の調査を……」
「嘘つき!!」
モゴモゴと話す彼に向かって、鋭い声が響いた。団長の後ろから飛び出したエミーリアだ。
「お前は、私たちの仲間をおびき寄せようとしていたんだ!」
「……精霊!?」
職員は驚きに目を見張った。
しかし、彼女に暴走されては、私たちが職員の話を聞けなくなってしまう。
「エミーリア、言いたいことはあるだろうけど、あとにして」
私が目を向けると、彼女は「ヒッ!」と脅えて団長の後ろへ隠れる。
……完全に怖がられているな。
「精霊をおびき寄せ、捕まえようとしていたんだね? なんのために? 証拠の結晶は僕らの手にある。言い逃れはできないよ?」
カマルに問われ、職員は言いよどんだ。素直には吐かないか……
こういうのは嫌だけれど、私はカマルの隣に並んで口を開いた。
「正直に話していただけないなら、またヘドロの中に入ってもらいます!」
「ひいっ! 嫌だ、それだけは!!」
ガタガタと露骨に脅えだす職員……
そんなに嫌なんだなあ、ヘドロの中って……
「私は雑用係の下っ端だから、詳しくは知らないんだ。精霊の捕獲を指示されて実行しただけだ。結晶化した精霊の破片もサンプルとして渡された」
「精霊を何に使うのかは知っている?」
カマルが、次々に質問していく。
「……実験に使うと言っていた」
「なんの実験?」
そこで一度職員が黙り込んでしまったので、私はヘドロをちらつかせる。
「アメリーがいてくれると心強いね」
「カマル……」
話をしていると、職員が私をまじまじと見た。
「アメリー……? まさか、君がアメリー・メルヴィーンか!?」
「そうですが?」
「ヘドロ色の新星……?」
「そんな通り名もありますね」
「なぜだ? あのとき、実験は失敗したはず」
戸惑う彼を前にして、私は「この人は、昔の実験の関係者では?」と確信した。
下っ端であれ、なんであれ、フィーユでの出来事に関わっている。
「その実験について、詳しく聞かせてください!! 私の今の状態は、一体なんなのですか!? 精霊をたくさん殺して、私に何をしたんですか!?」
私は前のめりになって声を上げた。
これで、ずっと気になっていた真相に、ようやくたどり着ける。
騎士団長や副団長の立ち会いの下、気がついた男を皆で問いただすと、彼はやはり王立研究所の職員だと判明する。
「王立研究所からの連絡はなかったんだけど……」
「いくら王立研究所の方であっても、勝手にこういうことをされては困ります。万が一、魔物による事故が起こった際には、うちの騎士団の責任になってしまうのですよ」
団長は困ったなあという感じで首を傾げており、副団長は不機嫌そうな表情を浮かべている。職員は疲れきった姿で大人しくしていた。
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「……精霊!?」
職員は驚きに目を見張った。
しかし、彼女に暴走されては、私たちが職員の話を聞けなくなってしまう。
「エミーリア、言いたいことはあるだろうけど、あとにして」
私が目を向けると、彼女は「ヒッ!」と脅えて団長の後ろへ隠れる。
……完全に怖がられているな。
「精霊をおびき寄せ、捕まえようとしていたんだね? なんのために? 証拠の結晶は僕らの手にある。言い逃れはできないよ?」
カマルに問われ、職員は言いよどんだ。素直には吐かないか……
こういうのは嫌だけれど、私はカマルの隣に並んで口を開いた。
「正直に話していただけないなら、またヘドロの中に入ってもらいます!」
「ひいっ! 嫌だ、それだけは!!」
ガタガタと露骨に脅えだす職員……
そんなに嫌なんだなあ、ヘドロの中って……
「私は雑用係の下っ端だから、詳しくは知らないんだ。精霊の捕獲を指示されて実行しただけだ。結晶化した精霊の破片もサンプルとして渡された」
「精霊を何に使うのかは知っている?」
カマルが、次々に質問していく。
「……実験に使うと言っていた」
「なんの実験?」
そこで一度職員が黙り込んでしまったので、私はヘドロをちらつかせる。
「アメリーがいてくれると心強いね」
「カマル……」
話をしていると、職員が私をまじまじと見た。
「アメリー……? まさか、君がアメリー・メルヴィーンか!?」
「そうですが?」
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下っ端であれ、なんであれ、フィーユでの出来事に関わっている。
「その実験について、詳しく聞かせてください!! 私の今の状態は、一体なんなのですか!? 精霊をたくさん殺して、私に何をしたんですか!?」
私は前のめりになって声を上げた。
これで、ずっと気になっていた真相に、ようやくたどり着ける。
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