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107:慌てる幼なじみ

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「ふう、疲れた」

 いろいろ困ることはあったけれど、なんとか本日分の授業を終了する。
 無詠唱の魔法練習を一日でクリアできたのは、フィナを含めた三人だけ。
 課題をクリアできた子は次の段階へ進み、残りは明日も引き続き練習という方針になった。
 
(フィナは距離が近いし、シュクレは意地悪だけど……教えるのって楽しいかも)

 初めてなので、担任のジュリアスみたいに完璧な授業はできない。
 でも、やりがいのある仕事だ。

(魔法学校の先生って素敵だな。教員免許って、エメランディアでも在学中に取れるかな)
 
 カマルの兄であるアキルは、ヨーカー魔法学園本校に在学中だ。
 三年生だが、すでに教員免許を取っていた。
 
 本校には初等部と高等部があり、初等部は十三歳から、高等部は十六歳から入学できる。
 エメランディアには、初等部しかないけれど。
 そのあたりは、お国柄によって異なるようだ。

(よし、教員免許を目標にしてみよう)

 将来どうなるかはわからない。でも、取っておいて損はないはずだ。
 
(そうと決まれば、明日も頑張ろう!)

 私は気合いを入れて部屋に戻った。
 泊まっている騎士団の詰め所へ帰ると、カマルとシュエが玄関前で出迎えてくれる。
 先に無詠唱の訓練が終わったようだ。

「お疲れ様、アメリー」
「カマル、お疲れ様。早いね」
「うん。皆、優秀だったから。子供たちの方は大丈夫だった?」
「子供と言っても一つ下だし、三人は一日で初歩の魔法ができるようになったよ。残りの子は明日も練習」
「そっか。上手くやれているんだ」

 カマルはホッとした様子で微笑む。
 
「すごく距離の近い子とかもいて大変だけど、先生ってやりがいがある仕事だね」
「ちょっと待って。距離が近いってどういう意味?」

 そこが気になるの?
 ……と思いつつ、私はフィナの件をカマルに伝えた。

「そんなことがあったなんて、大丈夫だった? ……カディンの他にも伏兵がいたのか」

 最後の方は小声で聞こえない。

「アメリーは可愛いからね。変な男には気をつけて」
「う、うん……」

 頷くと、カマルは満足そうな微笑みを浮かべて私の腰に手を回す。

(あ、あれ? そういえば、カマルも距離が近いよね。いつものことだから慣れたけど)

 でも、彼が相手だと(ひーーーーっ!!)とならない。不思議だ。
 
「そうだ。僕の部屋で騎士団長が待っているんだけど」
「それ、待たせちゃ駄目なやつー……!」
 
 カマルを急かしながら、私は慌てて部屋へ向かった。
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