上 下
67 / 107
連載

103:歓迎されています

しおりを挟む
 そうして訪れたインターン当日。
 またもや大量の荷物を鞄に詰め込んだ私は、カマルと並んで学園の表門前に待機する。シュエも一緒だ。
 しばらくすると、転移の魔法玉でカディンが飛んできた。
 予め、インターン先へは返事を出しているので、迎えに来てくれたのだ。

「それじゃあ、魔法玉で転移するから僕に掴まってくれ」

 言われたとおり、シュエを抱き上げてカディンの服を掴むと、次の瞬間には知らない場所に転移していた。
 北の辺境へ行くのは初めてだ。

 ここは辺境の町の入り口のようで、向こう側にはオレンジ屋根の民家が固まる集落がある。
 周りは森に囲まれていて、気温は魔法都市よりも低めだ。
 集落の周りは木々の点在する崖になっており、外敵の侵入を防いでいるようだった。
 同じような町が何カ所かあるらしい。

「入り口に建っているのが騎士団の詰め所の一つ。学校は町の外で、森との境目に騎士団の本拠地がある」

 私とカマルは、この町の騎士団の詰め所に滞在するそうだ。
 ここは、シント魔法学校から一番近い町らしい。

「それで、私たちは何をすればいいの?」

 せっかくインターンに来たので、仕事はできるようになりたい。

「荷物を置いたら、騎士団の本拠地へ行こう」
 
 インターン用に用意された部屋は、なかなか綺麗だった。

(初期の黒撫子寮よりも過ごしやすそう)

 シュエも部屋の中を探検している。持ってきたベッドを置いてあげると、中に入って丸まった。

「少し、お留守番していてね」

 ご飯とお水を用意して、私はカマルと一緒にカディンのもとへ向かう。
 小さな町を出て坂を下っていくと、シント魔法学校と騎士団の本拠地が並んで建っていた。
 どちらも石造りの頑丈な造りで、二つの施設が一体化した感じだ。

(シント魔法学校の子のインターン先が、騎士団一択というのも頷けるね)

 普段から両者の交流も多く、騎士が実技の教師も兼ねているらしい。
 私とカマルは、騎士団の本拠地にある大部屋へ通された。
 足を踏み入れると同時に、パンパンと魔法道具のクラッカーがはじける。

「……!?」

 驚いて、思わず足を止めた。
 周りを見渡せば、奥の壁に「歓迎! インターン生ご一行様!」と書かれてある。
 手前には騎士団のメンバーと、シント魔法学校の生徒たちがずらりと並んでいた。
 雑多に並べられたテーブルの上には、豪快な料理がのっている。

 呆気にとられていると、騎士団の代表らしき人が前に出て来た。
 茶髪メッシュの派手なお兄さんだ。

「よーし! 全員揃ったな? それじゃあ、インターン生歓迎の宴を開く!! 明日からみっちりしごいてやるから覚悟しろ!!」

 お兄さんの声に応えるように、「うおぉぉぉ!!」と騎士たちの野太い声がたくさん上がる。

(……大変なところに来てしまった)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚六年目、愛されていません

杉本凪咲
恋愛
結婚して六年。 夢に見た幸せな暮らしはそこにはなかった。 夫は私を愛さないと宣言して、別の女性に想いがあることを告げた。

我儘姫の二度目の人生は愛されちゅう?!

くま
恋愛
民衆達の前で私は処刑台に立たされた。 『この税金泥棒が!』 『悪魔な女王め!』 『優秀だったアルファス皇子を殺したのもその女だ!!』 反乱軍に攻められたのは‥‥こうなったのは、いつからだろうか。 アルカイド帝国、次期国王になるのではないかと期待されていた腹違いの優しい兄が亡くなり、勉強も政治もろくに分からない私を支えてくれたのは、憧れだったユウリ•ディアデム様。 物腰が柔らかく、私をいつも支えてくれた彼と婚約し、女王となった私を‥‥ そう、私を殺したのは‥ 愛する婚約者だった。 『‥‥な、‥‥なんっ‥‥』 『ようやく、この国は私達のものになったよ』 私達?‥‥何を言ってるの? 彼の隣りにいたのは正教会で皆から、聖女と呼ばれ慕われている‥‥マリアだった。 マリアは私の方を見て涙を流がす。 『あぁ、可哀想に。最後に‥女王様に神のご加護をお祈り致します』 いや、何故貴女がいるの?何故‥‥ 『革命だあ!これからは聖女マリア様とユウリ様がこの国の王と王妃だ!』 そう歓声をあげる民衆達に私は唖然する。 『ふふ、可哀想な我儘お姫様のまま。あの時私を婚約者に選ばなかった皇子様がいけないのよ。私と婚約すれば教会は後押しをし、確実に王位継承権を得られたのに、むかつくわ』 そう小さな声で話す彼女は笑う。兄を殺したのも、邪魔な奴を排除したのも、私を孤立させたのも、全てこの為だと嘲笑い‥‥ 私は、処刑された。 「な、七代先まで呪ってやるぅー!!!え?あ?れ?首、あるわ‥‥」 目を覚ますと‥え!!?15歳!!?10年前に戻っている!? しかも‥‥まだ、お兄様が生きている‥‥。 勉強も何もかも嫌で他人任せだった。 政治とか面倒だと、民の声を聞いてもいなかった。 お兄様が亡くなるのは、確か2年後‥‥だったかしら? のどかな雰囲気だけれども、王宮内は既に腐敗しているのが今ならわかる。お兄様を無事王へと導く為に! 怠け者は少しお休みして、アイツらを見返してやる!!!そしてぎたんぎたんにしてやるわ!! ‥‥あー、でもどうすればよいのかしら? 面倒くさがりで勉強嫌い、民衆の事などまったく考えてない我儘お姫様が少しずつ、成長していくお話。 九月中には終わる予定のお話です。気の向くまま書いてるだけですので細かい設定など気になるかたはすいません!

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

ヒロインが迫ってくるのですが俺は悪役令嬢が好きなので迷惑です!

さらさ
恋愛
俺は妹が大好きだった小説の世界に転生したようだ。しかも、主人公の相手の王子とか・・・俺はそんな位置いらねー! 何故なら、俺は婚約破棄される悪役令嬢の子が本命だから! あ、でも、俺が婚約破棄するんじゃん! 俺は絶対にしないよ! だから、小説の中での主人公ちゃん、ごめんなさい。俺はあなたを好きになれません。 っていう王子様が主人公の甘々勘違い恋愛モノです。

シンデレラ。~あなたは、どの道を選びますか?~

月白ヤトヒコ
児童書・童話
シンデレラをゲームブック風にしてみました。 選択肢に拠って、ノーマルエンド、ハッピーエンド、バッドエンドに別れます。 また、選択肢と場面、エンディングに拠ってシンデレラの性格も変わります。 短い話なので、さほど複雑な選択肢ではないと思います。 読んでやってもいいと思った方はどうぞ~。

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されたやり直し令嬢は立派な魔女を目指します!

古森きり
ファンタジー
幼くして隣国に嫁いだ侯爵令嬢、ディーヴィア・ルージェー。 24時間片時も一人きりにならない隣国の王家文化に疲れ果て、その挙句に「王家の財産を私情で使い果たした」と濡れ衣を賭けられ処刑されてしまった。 しかし処刑の直後、ディーヴィアにやり直す機会を与えるという魔女の声。 目を開けると隣国に嫁ぐ五年前――7歳の頃の姿に若返っていた。 あんな生活二度と嫌! 私は立派な魔女になります! カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェに掲載しています。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

わたしはただの道具だったということですね。

ふまさ
恋愛
「──ごめん。ぼくと、別れてほしいんだ」  オーブリーは、頭を下げながらそう告げた。  街で一、二を争うほど大きな商会、ビアンコ商会の跡継ぎであるオーブリーの元に嫁いで二年。貴族令嬢だったナタリアにとって、いわゆる平民の暮らしに、最初は戸惑うこともあったが、それでも優しいオーブリーたちに支えられ、この生活が当たり前になろうとしていたときのことだった。  いわく、その理由は。  初恋のリリアンに再会し、元夫に背負わさせた借金を肩代わりすると申し出たら、告白された。ずっと好きだった彼女と付き合いたいから、離縁したいというものだった。  他の男にとられる前に早く別れてくれ。  急かすオーブリーが、ナタリアに告白したのもプロポーズしたのも自分だが、それは父の命令で、家のためだったと明かす。    とどめのように、オーブリーは小さな巾着袋をテーブルに置いた。 「少しだけど、お金が入ってる。ぼくは不倫したわけじゃないから、本来は慰謝料なんて払う必要はないけど……身勝手だという自覚はあるから」 「…………」  手のひらにすっぽりと収まりそうな、小さな巾着袋。リリアンの借金額からすると、天と地ほどの差があるのは明らか。 「…………はっ」  情けなくて、悔しくて。  ナタリアは、涙が出そうになった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。