50 / 108
連載
85:裏山がはげ山になった日
しおりを挟む
あれからも、私は魔法の練習に精を出した。
学生課へ行く機会が多いので、ついでにトールに彼の毒薬本「毒魔法大全(普通編)」を教えてもらい、麻痺や催眠の魔法も覚える。
(私のヘドロと毒って……相性がいいみたい)
練習は裏山でしたのだけれど、毒を含んだヘドロが通り過ぎたあとは、雑草一本生えない大地が……!
これにより、裏山の一部は、はげ山になってしまった。
麻痺や催眠はともかく、毒は人に使わないようにしようと思う。
そのほか、ジュリアスに薦められた本を図書室に借りに行った。
ヨーカー魔法学園の図書室は広くて天井が高い、校舎の最上階にある施設だ。
壁一面に、ずらりと魔法の本が並んでいる。
透き通った円い天井には昼でも、エメランディア各地の星の位置が魔法で表示されていた。占いで使用するようだ。
中はとても静かで、隅に設置された書き物机で勉強している生徒もいる。
本は種類別、難易度別にわかりやすく配置されていた。
上の棚に手が届かないときは、足下の魔方陣が浮上する。その上に乗れば、高い位置の本も手に取ることができた。
「ええと、『誰でも簡単罠魔法(入門編)』、『ワンランク上のボード飛行』、『音と香りの幻影魔法』か」
魔法の勉強は好きだ。新しい内容を覚えるのが面白い。
目当ての本はすぐに見つかり、図書室で手続きして借りられた。
「よし、部屋で読もうっと!」
本を抱えて、校舎の廊下を戻る。
誰の使い魔なのか、たくさんの鳥が飛んでいた。
種類はわからないけれど、定番のフクロウやオウム系、カラスやワシ系もいる。
隅っこには、モフモフしたモルモットやウサギ系もいて癒やされた。
歩いていると、廊下の反対側から見覚えのある人がやって来る。
(赤薔薇寮長のアーサーさんだ。三年生の予選一位通過者だって新聞に載っていたな)
優秀だという赤薔薇寮の寮長は、実力者でないとなれないに違いない。
予選二位通過の黒撫子寮長は、ものすごく悔しがっていた。
すれ違うので、彼に挨拶する。
「こんにちは」
「やあ、奇遇だね。アメリー・メルヴィーン……いや、アメリー・リシェニ嬢と呼ぶべきかな?」
「どちらでも大丈夫ですよ。エメランディアでは、アメリー・メルヴィーンの方を使っています」
「そうなのか。それにしても、予選一位通過おめでとう。断トツの成績だったと、学園中の噂になっている」
「ペアで競う内容だったので、カマルの活躍もあります」
「カマル・マラキーアか……彼にはしてやられたね」
アーサーは苦笑いを浮かべている。
「あの、カマルが何か?」
「いや、こちらの話だよ。何か困ったことがあれば、いつでも君の助けになるからね。エメランディア国内の事情には、私の方が精通しているから」
「はぁ……ありがとうございます」
お礼を言って、私は校舎をあとにした。
※
そうして、いよいよ「他校対抗試合」の日が迫って来た。
一年生の会場は、ヨーカー魔法学園だ。
他校の生徒は、私が魔法学園へ来たとき使用していた客室の棟に泊まる。
彼らは開催日よりも早めに到着し、一日休んでから試合に臨むようだ。
移動不要のメンバーは、いつも通り過ごしている。
私はカマルと一緒にカフェ中だ。
カマルが、ものすごく一緒にカフェに行きたそうにしていたので、誘ってみたのだ。
カフェには、ランチやディナーメニューのほかに、お茶の時間用のデザートやドリンクが充実している。
私は、期間限定のレインボー閃光シフォンケーキを、カマルは芋栗南瓜爆弾チーズケーキを食べている。
「アメリー、僕のケーキが気になる?」
「秋の味覚だね。まん丸でおいしそう……」
「味見してみる?」
カマルが小さく笑いながら、口元にフォークを差し出してくる。
「いいの?」
「どうぞ」
「じゃあ、遠慮なく」
口を開ければ、カマルがケーキを手ずから食べさせてくれた。
「おいひい~。カマルも私のケーキ、いる?」
「えっ……うん……!」
私も彼と同じようにフォークにケーキをすくい、彼の口へ運んであげた。
「どうかな?」
「すごくおいしい」
よほど気に入ったのか、カマルがとても嬉しそうだ。
学生課へ行く機会が多いので、ついでにトールに彼の毒薬本「毒魔法大全(普通編)」を教えてもらい、麻痺や催眠の魔法も覚える。
(私のヘドロと毒って……相性がいいみたい)
練習は裏山でしたのだけれど、毒を含んだヘドロが通り過ぎたあとは、雑草一本生えない大地が……!
これにより、裏山の一部は、はげ山になってしまった。
麻痺や催眠はともかく、毒は人に使わないようにしようと思う。
そのほか、ジュリアスに薦められた本を図書室に借りに行った。
ヨーカー魔法学園の図書室は広くて天井が高い、校舎の最上階にある施設だ。
壁一面に、ずらりと魔法の本が並んでいる。
透き通った円い天井には昼でも、エメランディア各地の星の位置が魔法で表示されていた。占いで使用するようだ。
中はとても静かで、隅に設置された書き物机で勉強している生徒もいる。
本は種類別、難易度別にわかりやすく配置されていた。
上の棚に手が届かないときは、足下の魔方陣が浮上する。その上に乗れば、高い位置の本も手に取ることができた。
「ええと、『誰でも簡単罠魔法(入門編)』、『ワンランク上のボード飛行』、『音と香りの幻影魔法』か」
魔法の勉強は好きだ。新しい内容を覚えるのが面白い。
目当ての本はすぐに見つかり、図書室で手続きして借りられた。
「よし、部屋で読もうっと!」
本を抱えて、校舎の廊下を戻る。
誰の使い魔なのか、たくさんの鳥が飛んでいた。
種類はわからないけれど、定番のフクロウやオウム系、カラスやワシ系もいる。
隅っこには、モフモフしたモルモットやウサギ系もいて癒やされた。
歩いていると、廊下の反対側から見覚えのある人がやって来る。
(赤薔薇寮長のアーサーさんだ。三年生の予選一位通過者だって新聞に載っていたな)
優秀だという赤薔薇寮の寮長は、実力者でないとなれないに違いない。
予選二位通過の黒撫子寮長は、ものすごく悔しがっていた。
すれ違うので、彼に挨拶する。
「こんにちは」
「やあ、奇遇だね。アメリー・メルヴィーン……いや、アメリー・リシェニ嬢と呼ぶべきかな?」
「どちらでも大丈夫ですよ。エメランディアでは、アメリー・メルヴィーンの方を使っています」
「そうなのか。それにしても、予選一位通過おめでとう。断トツの成績だったと、学園中の噂になっている」
「ペアで競う内容だったので、カマルの活躍もあります」
「カマル・マラキーアか……彼にはしてやられたね」
アーサーは苦笑いを浮かべている。
「あの、カマルが何か?」
「いや、こちらの話だよ。何か困ったことがあれば、いつでも君の助けになるからね。エメランディア国内の事情には、私の方が精通しているから」
「はぁ……ありがとうございます」
お礼を言って、私は校舎をあとにした。
※
そうして、いよいよ「他校対抗試合」の日が迫って来た。
一年生の会場は、ヨーカー魔法学園だ。
他校の生徒は、私が魔法学園へ来たとき使用していた客室の棟に泊まる。
彼らは開催日よりも早めに到着し、一日休んでから試合に臨むようだ。
移動不要のメンバーは、いつも通り過ごしている。
私はカマルと一緒にカフェ中だ。
カマルが、ものすごく一緒にカフェに行きたそうにしていたので、誘ってみたのだ。
カフェには、ランチやディナーメニューのほかに、お茶の時間用のデザートやドリンクが充実している。
私は、期間限定のレインボー閃光シフォンケーキを、カマルは芋栗南瓜爆弾チーズケーキを食べている。
「アメリー、僕のケーキが気になる?」
「秋の味覚だね。まん丸でおいしそう……」
「味見してみる?」
カマルが小さく笑いながら、口元にフォークを差し出してくる。
「いいの?」
「どうぞ」
「じゃあ、遠慮なく」
口を開ければ、カマルがケーキを手ずから食べさせてくれた。
「おいひい~。カマルも私のケーキ、いる?」
「えっ……うん……!」
私も彼と同じようにフォークにケーキをすくい、彼の口へ運んであげた。
「どうかな?」
「すごくおいしい」
よほど気に入ったのか、カマルがとても嬉しそうだ。
1
お気に入りに追加
6,650
あなたにおすすめの小説
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される
雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。
スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。
※誤字報告、感想などありがとうございます!
書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました!
電子書籍も出ました。
文庫版が2024年7月5日に発売されました!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない
猪本夜
ファンタジー
2024/2/29……3巻刊行記念 番外編SS更新しました
2023/4/26……2巻刊行記念 番外編SS更新しました
※1巻 & 2巻 & 3巻 販売中です!
殺されたら、前世の記憶を持ったまま末っ子公爵令嬢の赤ちゃんに異世界転生したミリディアナ(愛称ミリィ)は、兄たちの末っ子妹への溺愛が止まらず、すくすく成長していく。
前世で殺された悪夢を見ているうちに、現世でも命が狙われていることに気づいてしまう。
ミリィを狙う相手はどこにいるのか。現世では死を回避できるのか。
兄が増えたり、誘拐されたり、両親に愛されたり、恋愛したり、ストーカーしたり、学園に通ったり、求婚されたり、兄の恋愛に絡んだりしつつ、多種多様な兄たちに甘えながら大人になっていくお話。
幼少期から惚れっぽく恋愛に積極的で人とはズレた恋愛観を持つミリィに兄たちは動揺し、知らぬうちに恋心の相手を兄たちに潰されているのも気づかず今日もミリィはのほほんと兄に甘えるのだ。
今では当たり前のものがない時代、前世の知識を駆使し兄に頼んでいろんなものを開発中。
甘えたいブラコン妹と甘やかしたいシスコン兄たちの日常。
基本はミリィ(主人公)視点、主人公以外の視点は記載しております。
【完結:211話は本編の最終話、続編は9話が最終話、番外編は3話が最終話です。最後までお読みいただき、ありがとうございました!】
※書籍化に伴い、現在本編と続編は全て取り下げとなっておりますので、ご了承くださいませ。
「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。
window
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。
「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」
ある日ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。