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1:学期末の成績表について(ジュリアス視点)
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ヨーカー魔法学園の職員会議のあと、ジュリアスはいつになく荒んだ気持ちになっていた。
理由はBクラスの一学期の成績について、理不尽な結果を押しつけられそうになったからだ。
もちろん、阻止したが……
(この内容は、本校に報告させてもらおう)
職員会議では、一年生の生徒の成績を五段階で評価するはずだった。
しかし、参加してみれば、Bクラスの生徒は正当な審議もされず、「全員、評価一で」と言われてしまったのである。
他の教師によると、「毎年そうだから、前例通りでいいんだよ」……とのこと。
信じられない。彼らは、本当に教師なのか!?
生徒自身を評価せず、初期のクラスだけで決めてしまうとは。
「お言葉ですが、今のBクラスの実力は本校の生徒に匹敵します。テストやボードレースの結果をご覧になったでしょう?」
ボードレースでは全員健闘して見事優勝、テストだって同じ内容にもかかわらず、Aクラスより上だ。
アメリー、カマル、ガロなど、勉強好きの生徒は満点を取っている。
それで評価が一というのはあり得ない。
ジュリアスが粘ったことで分校長の意見も変わり、なんとか正当な評価を勝ち取った。
不満げな教師もいたが、知った話ではない。
憤慨したまま、ジュリアスは学生課の扉を開けた。
中では、トールがフクロウに餌をやっている。
トールは魔法薬学でBクラスを担当しているが、諸々をジュリアスに一任し、学生課で好き勝手していた。
要は、知り合いなのをいいことに、面倒な会議を全てジュリアスに丸投げしているのだ。
「お帰り~! どうだった、職員会議……って、ご機嫌斜めだねぇ?」
「予想通り、生徒の成績を見もせずに、教師たちはBクラスに評価一をつけようとしていましたよ」
「なにそれ~! うちのカマルにも一をつける気だったってこと? 職員室に毒薬ばらまいて来ようかな?」
「また国際指名手配されても知りませんよ?」
若い頃にいろいろな悪さをしたトールは、魔法大国のお尋ね者だった時期があるのだ。
ジュリアスには直接関係ないが、祖父母は彼と因縁があるらしい。
「で、で、カマルの成績は?」
「……彼は優秀ですね。成績はオール五」
「だよね~! エメランディア基準じゃ、余裕だよねえ!」
モンスターペアレントは面倒くさい。
「他の生徒も概ね好成績だし、Aクラス以上の成績を取っています」
「でもさぁ、エメランディアに置いておくの、勿体なくない? この国って、もともとの魔法教育のレベルが低いし……ジュリアスがいなくなったら、目を覆うような事態になると思うんだよね」
なるべく、エメランディアに残るつもりだが、ジュリアスは魔法大国から派遣された身だ。
やるべき仕事を終えれば、帰還するように言われるかもしれない。
「……本校や他の分校への編入制度があったので、希望者がいれば他校に送り込みます」
「ふぅん? 俺、魔法大国には出禁を食らっているからなあ。カマルが魔法大国に行っちゃうと、追いかけられないんだけど」
「知るか。あと、うちの祖母に横恋慕するの、いい加減止めてもらえませんかね」
「やなこった。君の祖父さえいなければな~……」
「うちの家庭崩壊を望まないでください」
学期末に配る成績表を整え、ジュリアスは自室へ戻る。
なんだか、とても疲れる一日だった……
理由はBクラスの一学期の成績について、理不尽な結果を押しつけられそうになったからだ。
もちろん、阻止したが……
(この内容は、本校に報告させてもらおう)
職員会議では、一年生の生徒の成績を五段階で評価するはずだった。
しかし、参加してみれば、Bクラスの生徒は正当な審議もされず、「全員、評価一で」と言われてしまったのである。
他の教師によると、「毎年そうだから、前例通りでいいんだよ」……とのこと。
信じられない。彼らは、本当に教師なのか!?
生徒自身を評価せず、初期のクラスだけで決めてしまうとは。
「お言葉ですが、今のBクラスの実力は本校の生徒に匹敵します。テストやボードレースの結果をご覧になったでしょう?」
ボードレースでは全員健闘して見事優勝、テストだって同じ内容にもかかわらず、Aクラスより上だ。
アメリー、カマル、ガロなど、勉強好きの生徒は満点を取っている。
それで評価が一というのはあり得ない。
ジュリアスが粘ったことで分校長の意見も変わり、なんとか正当な評価を勝ち取った。
不満げな教師もいたが、知った話ではない。
憤慨したまま、ジュリアスは学生課の扉を開けた。
中では、トールがフクロウに餌をやっている。
トールは魔法薬学でBクラスを担当しているが、諸々をジュリアスに一任し、学生課で好き勝手していた。
要は、知り合いなのをいいことに、面倒な会議を全てジュリアスに丸投げしているのだ。
「お帰り~! どうだった、職員会議……って、ご機嫌斜めだねぇ?」
「予想通り、生徒の成績を見もせずに、教師たちはBクラスに評価一をつけようとしていましたよ」
「なにそれ~! うちのカマルにも一をつける気だったってこと? 職員室に毒薬ばらまいて来ようかな?」
「また国際指名手配されても知りませんよ?」
若い頃にいろいろな悪さをしたトールは、魔法大国のお尋ね者だった時期があるのだ。
ジュリアスには直接関係ないが、祖父母は彼と因縁があるらしい。
「で、で、カマルの成績は?」
「……彼は優秀ですね。成績はオール五」
「だよね~! エメランディア基準じゃ、余裕だよねえ!」
モンスターペアレントは面倒くさい。
「他の生徒も概ね好成績だし、Aクラス以上の成績を取っています」
「でもさぁ、エメランディアに置いておくの、勿体なくない? この国って、もともとの魔法教育のレベルが低いし……ジュリアスがいなくなったら、目を覆うような事態になると思うんだよね」
なるべく、エメランディアに残るつもりだが、ジュリアスは魔法大国から派遣された身だ。
やるべき仕事を終えれば、帰還するように言われるかもしれない。
「……本校や他の分校への編入制度があったので、希望者がいれば他校に送り込みます」
「ふぅん? 俺、魔法大国には出禁を食らっているからなあ。カマルが魔法大国に行っちゃうと、追いかけられないんだけど」
「知るか。あと、うちの祖母に横恋慕するの、いい加減止めてもらえませんかね」
「やなこった。君の祖父さえいなければな~……」
「うちの家庭崩壊を望まないでください」
学期末に配る成績表を整え、ジュリアスは自室へ戻る。
なんだか、とても疲れる一日だった……
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