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36:不良令嬢、悪徳商人を撃退する(サイファス視点)
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「クレア、一体どうしたんだい!?」
慌てて駆け寄るサイファスに向け、クレアが一言。
「交渉が決裂した」
……と口にした。
玄関前にいたのは、女性向けの品を売る商人だ。
クレアの輿入れに伴い、最近辺境伯家に出入りし始めた者である。
唖然とする一同に向け、クレアは更に話を続ける。
「ルナレイヴの相場は確認済みだ。辺境だから、ものによっては王都より高いが、これは酷すぎる。お前の装飾品に使われている材質なら、ここまで値が張ることはない。なのに、価格は王都で出回っている一級品より高いじゃないか……法外な値で俺にものを売りつけようとはいい度胸だ」
そう言って、クレアは真っ赤な髪飾りを指さした。
どうやらこの商人、偶然入口付近にいたクレアに直接営業をかけたようだ。
若い令嬢だから、ものを見る目がないとでも思ったのだろうか。
サイファス自身、女性向けの品に関する知識は薄い。それを見破るクレアはただ者ではないと思った。
商人は、オロオロしながら言い訳する。
「そ、そんな根拠のないことを。この品は王都の王族も身につけるという……」
「嘘だな。少なくとも俺が婚約者に送っていたのは、もっと質のいい髪飾りだ」
クレアの発言を聞いたサイファスは、耳を疑った。
(私以外にクレアに婚約者が!? それに、女性向けの髪飾りを男にプレゼント!?)
混乱し始めるサイファスを余所に、クレアは更に商人に詰め寄る。
「おい、アデリオ。この界隈の装飾品の相場を見せてやれ」
彼女の奥にはアデリオも立っていた。彼は何かが書かれた紙を二枚開いて見せる。
「ルナレイヴ一帯の店で出している価格の一覧と、王都で出されている価格の一覧。女向けの装飾品の相場だ。もう一つは、オーダーメイドの相場だが、原材料と平均的な人件費や運搬費に基づき価格を算出してある。手間が掛かる品ならもう少し値は上がるだろうが……さっき提示されたほどじゃない」
「こ、こんなものを……」
「最近暇だからと、アデリオが作ってきたんだ。さっそく役に立ったな。多少の値上げなら目を瞑るつもりだったが、ここまでカモにされては黙っていられねえ」
言いたいことを言い終わると、クレアはじっとサイファスを見つめてきた。
「…………」
可愛いとドキドキしている場合ではない。
彼女は辺境伯家の主たる自分に決断を迫っているのだ。
サイファスは、一歩前へ出て商人に告げた。
「君には、クレアを迎え入れる際に世話になったね。今後ともいい取引がしたいな」
にっこりと威圧しておく。
セバスチャンとマルリエッタが商人を見送ると言うので、後は彼らに任せることにした。
恐怖で足腰の立たなくなった商人は、マルリエッタに抱えられて行った。
慌てて駆け寄るサイファスに向け、クレアが一言。
「交渉が決裂した」
……と口にした。
玄関前にいたのは、女性向けの品を売る商人だ。
クレアの輿入れに伴い、最近辺境伯家に出入りし始めた者である。
唖然とする一同に向け、クレアは更に話を続ける。
「ルナレイヴの相場は確認済みだ。辺境だから、ものによっては王都より高いが、これは酷すぎる。お前の装飾品に使われている材質なら、ここまで値が張ることはない。なのに、価格は王都で出回っている一級品より高いじゃないか……法外な値で俺にものを売りつけようとはいい度胸だ」
そう言って、クレアは真っ赤な髪飾りを指さした。
どうやらこの商人、偶然入口付近にいたクレアに直接営業をかけたようだ。
若い令嬢だから、ものを見る目がないとでも思ったのだろうか。
サイファス自身、女性向けの品に関する知識は薄い。それを見破るクレアはただ者ではないと思った。
商人は、オロオロしながら言い訳する。
「そ、そんな根拠のないことを。この品は王都の王族も身につけるという……」
「嘘だな。少なくとも俺が婚約者に送っていたのは、もっと質のいい髪飾りだ」
クレアの発言を聞いたサイファスは、耳を疑った。
(私以外にクレアに婚約者が!? それに、女性向けの髪飾りを男にプレゼント!?)
混乱し始めるサイファスを余所に、クレアは更に商人に詰め寄る。
「おい、アデリオ。この界隈の装飾品の相場を見せてやれ」
彼女の奥にはアデリオも立っていた。彼は何かが書かれた紙を二枚開いて見せる。
「ルナレイヴ一帯の店で出している価格の一覧と、王都で出されている価格の一覧。女向けの装飾品の相場だ。もう一つは、オーダーメイドの相場だが、原材料と平均的な人件費や運搬費に基づき価格を算出してある。手間が掛かる品ならもう少し値は上がるだろうが……さっき提示されたほどじゃない」
「こ、こんなものを……」
「最近暇だからと、アデリオが作ってきたんだ。さっそく役に立ったな。多少の値上げなら目を瞑るつもりだったが、ここまでカモにされては黙っていられねえ」
言いたいことを言い終わると、クレアはじっとサイファスを見つめてきた。
「…………」
可愛いとドキドキしている場合ではない。
彼女は辺境伯家の主たる自分に決断を迫っているのだ。
サイファスは、一歩前へ出て商人に告げた。
「君には、クレアを迎え入れる際に世話になったね。今後ともいい取引がしたいな」
にっこりと威圧しておく。
セバスチャンとマルリエッタが商人を見送ると言うので、後は彼らに任せることにした。
恐怖で足腰の立たなくなった商人は、マルリエッタに抱えられて行った。
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