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番外編2

デジレの恋5

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 母と男爵夫人は先にサロンを後にして、私とブリスだけが残された。

「チッ」
 
 開口一番に、ブリスは盛大に舌打ちする。
 ……これはない。

「お初にお目にかかります、ブリス様」
 
 本当は舞踏会で近くにいたのだけれど、直接彼と話すのは今日が初めてだ。
 しかし、ブリスは初対面の挨拶すらしなかった。
 
「アシル・ジェイドの妹だというからどんなのかと思えば、大したことないな」
 
 舌打ちに次ぐ苦言、ものすごく失礼だ。

「よく言われます。次兄があまりにも美形なもので」
 
 でも、次兄以外はそうでもない。
 彼の場合は、向こうの母親も結構美人だったのだと思う。
 アシルがお父様に似ているのは甘い顔立ち(主に目)と瞳の色だけ。
 
 私の場合は、父と母の容姿が不味い具合に混ざり合ってしまった残念な外見。
 体つきだって貧相だ。

「お前に用はない。父が、身分ある子爵家との交流を持ちたいだけだ」
 
 言われなくとも分かっている。
 いっそ、清々しいくらいに正直だわ。

「心得ています。こちらも、男爵家のお金が目当てなだけです……母が。ですので、婚約後に貴方に愛人が出来ようと、私は貴方を責めたりはしません」
 
 少しハッキリ言い過ぎたかしら。
 でも、失礼なのは向こうも一緒だ。
 
「分かっているじゃないか。なら、これ以上話すこともない、俺は帰る。この後、女との約束があるんでな」
 
 そう言うと、ブリスは立ち上がって……あろうことか、本当に帰ってしまった。
 私を置き去りにして。

 やっぱり……これはない。

 ※

 仕方ない、仕方ないと思うのよ。
 貴族の娘のお仕事は政略結婚だもの!
 
「でも、私だって、出来ることならば、お姉様やカミーユのような恋愛がしたかった」
 
 あんな非常識な相手は嫌だ!

 母のやりように、父は一切口を挟まない。
 私には姉の様に決まった人がいる訳ではないのだけれど。
 次兄も婚約者の家へ行くのに忙しいようだ。
 長兄に至っては……私は彼になんの期待もしていない。

 ふと、脳裏にエリクの顔が浮かんだ。
 
「ああ、エリク」
 
 私なんかに告白してくれた優しい男性。
 同じ男爵家の子息というのなら、エリクがよかった。
 
「いやいや、何言ってるの私!」
 
 彼と私が結ばれたとしても、子爵家になんのメリットももたらさない。
 むしろ借金が増えてマイナスだ。
 
(世の中って、ままならないものだわ)
 
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