85 / 101
番外編2
デジレの恋5
しおりを挟む
母と男爵夫人は先にサロンを後にして、私とブリスだけが残された。
「チッ」
開口一番に、ブリスは盛大に舌打ちする。
……これはない。
「お初にお目にかかります、ブリス様」
本当は舞踏会で近くにいたのだけれど、直接彼と話すのは今日が初めてだ。
しかし、ブリスは初対面の挨拶すらしなかった。
「アシル・ジェイドの妹だというからどんなのかと思えば、大したことないな」
舌打ちに次ぐ苦言、ものすごく失礼だ。
「よく言われます。次兄があまりにも美形なもので」
でも、次兄以外はそうでもない。
彼の場合は、向こうの母親も結構美人だったのだと思う。
アシルがお父様に似ているのは甘い顔立ち(主に目)と瞳の色だけ。
私の場合は、父と母の容姿が不味い具合に混ざり合ってしまった残念な外見。
体つきだって貧相だ。
「お前に用はない。父が、身分ある子爵家との交流を持ちたいだけだ」
言われなくとも分かっている。
いっそ、清々しいくらいに正直だわ。
「心得ています。こちらも、男爵家のお金が目当てなだけです……母が。ですので、婚約後に貴方に愛人が出来ようと、私は貴方を責めたりはしません」
少しハッキリ言い過ぎたかしら。
でも、失礼なのは向こうも一緒だ。
「分かっているじゃないか。なら、これ以上話すこともない、俺は帰る。この後、女との約束があるんでな」
そう言うと、ブリスは立ち上がって……あろうことか、本当に帰ってしまった。
私を置き去りにして。
やっぱり……これはない。
※
仕方ない、仕方ないと思うのよ。
貴族の娘のお仕事は政略結婚だもの!
「でも、私だって、出来ることならば、お姉様やカミーユのような恋愛がしたかった」
あんな非常識な相手は嫌だ!
母のやりように、父は一切口を挟まない。
私には姉の様に決まった人がいる訳ではないのだけれど。
次兄も婚約者の家へ行くのに忙しいようだ。
長兄に至っては……私は彼になんの期待もしていない。
ふと、脳裏にエリクの顔が浮かんだ。
「ああ、エリク」
私なんかに告白してくれた優しい男性。
同じ男爵家の子息というのなら、エリクがよかった。
「いやいや、何言ってるの私!」
彼と私が結ばれたとしても、子爵家になんのメリットももたらさない。
むしろ借金が増えてマイナスだ。
(世の中って、ままならないものだわ)
「チッ」
開口一番に、ブリスは盛大に舌打ちする。
……これはない。
「お初にお目にかかります、ブリス様」
本当は舞踏会で近くにいたのだけれど、直接彼と話すのは今日が初めてだ。
しかし、ブリスは初対面の挨拶すらしなかった。
「アシル・ジェイドの妹だというからどんなのかと思えば、大したことないな」
舌打ちに次ぐ苦言、ものすごく失礼だ。
「よく言われます。次兄があまりにも美形なもので」
でも、次兄以外はそうでもない。
彼の場合は、向こうの母親も結構美人だったのだと思う。
アシルがお父様に似ているのは甘い顔立ち(主に目)と瞳の色だけ。
私の場合は、父と母の容姿が不味い具合に混ざり合ってしまった残念な外見。
体つきだって貧相だ。
「お前に用はない。父が、身分ある子爵家との交流を持ちたいだけだ」
言われなくとも分かっている。
いっそ、清々しいくらいに正直だわ。
「心得ています。こちらも、男爵家のお金が目当てなだけです……母が。ですので、婚約後に貴方に愛人が出来ようと、私は貴方を責めたりはしません」
少しハッキリ言い過ぎたかしら。
でも、失礼なのは向こうも一緒だ。
「分かっているじゃないか。なら、これ以上話すこともない、俺は帰る。この後、女との約束があるんでな」
そう言うと、ブリスは立ち上がって……あろうことか、本当に帰ってしまった。
私を置き去りにして。
やっぱり……これはない。
※
仕方ない、仕方ないと思うのよ。
貴族の娘のお仕事は政略結婚だもの!
「でも、私だって、出来ることならば、お姉様やカミーユのような恋愛がしたかった」
あんな非常識な相手は嫌だ!
母のやりように、父は一切口を挟まない。
私には姉の様に決まった人がいる訳ではないのだけれど。
次兄も婚約者の家へ行くのに忙しいようだ。
長兄に至っては……私は彼になんの期待もしていない。
ふと、脳裏にエリクの顔が浮かんだ。
「ああ、エリク」
私なんかに告白してくれた優しい男性。
同じ男爵家の子息というのなら、エリクがよかった。
「いやいや、何言ってるの私!」
彼と私が結ばれたとしても、子爵家になんのメリットももたらさない。
むしろ借金が増えてマイナスだ。
(世の中って、ままならないものだわ)
1
お気に入りに追加
3,250
あなたにおすすめの小説
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?
gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。
みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。
黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。
十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。
家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。
奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。