上 下
53 / 101
子供編・学園編(一年目一学期)まとめ

改・プロローグ(ハートのQ)

しおりを挟む
書籍化に伴って削除した部分を、少し変えて投稿し直しています。
最初だけカミーユ視点、後はアシルとかの視点になる予定。
書籍と被る部分は、端折っています。

詳しく内容を見たい方は、こちらをどうぞ。
(アルファポリス様の無料立ち読みサンプルページに飛びます)
https://cdn-file.alphapolis.co.jp/books/4613/3b039799d2050c6cf3d1658d947835bb/sample.pdf
********************************************

『いや、こんなの嘘よ! いやああああっ!』

 小さな四角い画面の中央で、一人の令嬢が泣き叫んでいる。
 ピンク色の髪にぱっちりしたラズベリー色の瞳の、ものすごい美少女だ。
 彼女は牢屋に繋がれて涙を流しているが、助けようとする者は誰もいない。

 それもそのはず。
 令嬢はそんな目に遭うだけのことを……
 いや、それ以上のことを、これまでに沢山やらかしていたのだ。
 悪事がつまびらかにされ、罰を受けている令嬢を見た私は、そっとほくそ笑んだ。

「やったね! カミーユ、ざまぁ!」



 私、相沢あいざわ愛美まなみは、隠れゲーマーの女子高生だ。
 最近のお気に入りのゲームは「キャルト・ア・ジュエ」——
 キャラクターをトランプのカードに模した、学園ものの恋愛アドベンチャーゲームである。
 俗に言う、「乙女ゲー」というやつだ。
 私は、今日も学校から自宅に直行し、「キャルト・ア・ジュエ」をプレイしていた。

 このゲームは、ファンタジーな異世界で、主人公ヒロインが、ハート、ダイヤ、クローバー、スペードという四つの勢力の攻略対象と疑似恋愛を楽しむというものだ。
 ゲームの中で、恋愛攻略対象はキング、ライバル令嬢はクイーン、友情攻略対象がジャックと呼ばれている。

「よっしゃ、ハートのKのハッピーエンドをクリアした!」

 私はゲーム片手にステップを踏み、回想モードでもう一度先程のエンディングを反芻する。

「はぁ、やっぱりハートのKのロイス様が一番格好良いな。それに、カミーユが破滅してくれて清々した」

 ちなみに、「カミーユ」というのは、ハートのKのルートで主人公の邪魔をしてくるライバル令嬢、ハートのQのことだ。
 カミーユは、自らの地位と美貌を鼻に掛け、主人公に嫌がらせの限りを尽くすとんでもない女だった。
 しかし、主人公がハートのKのベストエンドを迎えた場合、カミーユは今までの悪事がばれ、社会的に抹殺される。
 ハートのKの部下が、カミーユを思いっきり断罪してくれるのだ。
 はー、スッキリした!

「愛美、ちょっと葱買ってきて~」

 台所から、母が私の名を呼ぶ。

「はーい、ちょっと待って」

 私は、ゲームデータがセーブできていることを確認すると、机の引き出しから鏡を取り出した。

「うーん。前髪よし、睫毛よし、化粧よし! 服は……着替えよう」

 私は、他人の目を非常に気にする、年頃の女子高校生だ。
 下手な格好で外を出歩くなんてできない。
 自分がどう見られているかを常に気にしているし、勿論学校では乙女ゲーマーだという事実を隠して過ごしていた。
 流石に、学校で堂々と乙女ゲームをするのは……ちょっと恥ずかしいからね。
 悲しいが、まあまあイケている外面を持つ女子高生を演出するためには、必要な措置なのだ。

「愛美~! 財布は机の上だから、早く行って来て~!」

 着替え終わった私は、母に急かされて近くのスーパーに葱を買いに行く。
 途中で、部活帰りの男子高校生達とすれ違った。あれは、バスケ部だろうか。
 その中の一人が、私の方をじっと見つめている。

「……同じクラスの安井やすいまこと君、だっけ?」

 よく分からないので彼の目を見返してみると、あからさまに逸らされてしまった。
 ——私、何かした?
 いや、彼とは特に接点がないからきっと気の所為だろう。
 私は、そう結論づけて踵を返し、さっさと葱を買いにスーパーへ向かった。

 この数日後、私は誠君の所為で彼の彼女からトンデモナイ言い掛かりをつけられ、張り手を食らい、階段から転落するという憂き目に遭う。
 そうして気付いたら、あのゲームの憎きライバル令嬢——カミーユになっていたのだった。

「……これって、夢オチだよね?」

 幸いなことに、入れ替わった私の体の持ち主であるカミーユは、三歳児。
 今すぐに破滅を迎えることはない筈だ。
 カミーユが破滅するのは十六歳なので、あと十三年は好きなことをして生きようと思う。
 どうせ夢だし、十三年も経たないうちに目が覚めるだろう。

 とりあえず、カミーユ・ロードライト侯爵令嬢として生活することにした私は、職業魔法使いであるこちらの世界の父親に魔法を習うことにした。
 魔法なんて、ファンタジーの世界ならではの産物だ。ここでしか学べない。
 隠れゲーマーの血が騒いだ。
 偏った向上心から次々に魔法を覚える私は、こうして魔法使いへの第一歩を歩み始めたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?

gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。 みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。 黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。 十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。 家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。 奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。