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第1章 記憶と兄妹
第2思 桜咲高校大失踪事件2
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後日学校
「ねぇ、あみちゃん。最近何か事件とかなかったかな?」
自分でも急に何の前振りもなくこんな話を切り出すのはおかしいと思う。
しかし、それでも今の彼女には余裕がないのだ。
「んん?事件?事件だって?それは報道新聞部部長のこの橋場杏実ちゃんに聞いているのかな?」
ズズイと顔を近付けてくる報道新聞部部長。
「う、うん。....何かあるの?」
「うーん。と言っても、最近のホットでエキサイトなニュースと言ったら一つしかないんだよねぇ....。」
「....どんな?」
「いやまあ、絶対知ってると思うけど、やっぱり『桜咲高校大失踪事件』だね。」
「失踪事件.....?」
「えー。かなちゃんホントに知らないの?今、テレビつけたらそれしかやってないくらいだよー?報道新聞部部長としては、他のネタが手に入らなくて困っちゃうよ。みーんな知ってるし。」
「いや、本当に知らなくて....どんなのか分かる?」
「そりゃあ、もちろん。部長ですから。...何でも、桜咲高校っていう高校の生徒120名と教員2名が突如何の前触れも無く姿を消すという怪奇現象が起こったのだよ。」
「なんの前触れも無く....?」
「そう。なんの前触れも無く。と、言っても、廊下についてた監視カメラが生徒達が消える直前、物凄い光が教室から出ている所を捕らえてるらしいんだけど....」
「それ、本当?120人も、一度にいなくなるなんて....」
「うーん。確かに嘘っぽい話だけど、事実その122名は居なくなってるからねー。あ、いや123名だっけかな?まあ、いいや。なんか都市伝説サイトとかでは政府がタイムマシンを開発してて、それに巻き込まれてなんたらかんたらって言われてるけど、どれも信憑性ゼロだからなー。記事にも何書いていいか分かんなくて困ってるんだけどね。」
高校....兄とは関係なさそう。
「そっか。...うん。わかったよ。ありがとう。」
「えーもう行っちゃうのー?あ、そうそう。もひとつあった。これは報道新聞部部長である私の考察なんだけど.......『異世界転生』ってのが熱いとおもうんだよ。どう?どう?」
「あー。うん。いいんじゃない?」
「えー。何その反応ー。ちゃんと根拠だってあるのにー。」
頬を膨らませる妄想逞しい報道新聞部部長の声を後ろに聞きながら奏は自分の席へと戻った。
▽
ピーンポーン
「あのー。こちら、哀檻さんのお宅でしょうかー。」
「あ、はい。そうです。どちら様でしょうか?」
ドアごしに返答を待つ。
「....良かったー。漸く見つかった。あのお宅の哀檻....えーと、誰君だったかな?まあ、いいや、哀檻君が働いてるバイト先の店長なんですが....」
「え、兄のですか!?」
「う、あ、うん。」
「それで、兄は今そちらに!?」
「........あー、ってことは家にはやっぱ帰ってないのね。哀檻君。.....えっと、取り敢えず上がってもいいかな?」
立って話すのも難だし...と続く言葉を遮り奏は、
「あ、それは駄目です。兄に知らない人が来たら絶対にドアを開けちゃ駄目って言われてるんで。」
「....ははは。流石哀檻君。しっかりしてるなぁ。じゃあまあ。このままで手短に...。えっとね。僕、言いづらい事は始めに言っちゃうタイプだから、先に本題から。.....哀檻君。どうやら今ニュースとかでやってる『桜咲高校大失踪事件』とやらに、巻き込まれたかもしれないんだよ.....」
「.............................え?」
聞き間違いだろう。そうでない筈がな、い。
「いや、あの日高校から出前の注文があってね、丁度手の開いてた哀檻君に行ってもらったんだけど、それから哀檻君戻ってこなくてね。高校にはバイクだけが残ってたらしいから恐らくは......」
言葉が段々と耳に入らなくなってくる。
巻き込まれた?
楽にぃが?
どうして....?
「~~~って訳だから。何日かしたら、警察も事情聴取とかで来ると思うから。じゃあ。」
バイト先の店長を名乗る男は一方的にそれだけ告げると、自分はもう関係ないとばかりに去って行った。
「あ、あうぁ.....ぁぁあ」
手元に残った最後の幸せを失った少女はその場に一人、崩れ落ちる。
「ねぇ、あみちゃん。最近何か事件とかなかったかな?」
自分でも急に何の前振りもなくこんな話を切り出すのはおかしいと思う。
しかし、それでも今の彼女には余裕がないのだ。
「んん?事件?事件だって?それは報道新聞部部長のこの橋場杏実ちゃんに聞いているのかな?」
ズズイと顔を近付けてくる報道新聞部部長。
「う、うん。....何かあるの?」
「うーん。と言っても、最近のホットでエキサイトなニュースと言ったら一つしかないんだよねぇ....。」
「....どんな?」
「いやまあ、絶対知ってると思うけど、やっぱり『桜咲高校大失踪事件』だね。」
「失踪事件.....?」
「えー。かなちゃんホントに知らないの?今、テレビつけたらそれしかやってないくらいだよー?報道新聞部部長としては、他のネタが手に入らなくて困っちゃうよ。みーんな知ってるし。」
「いや、本当に知らなくて....どんなのか分かる?」
「そりゃあ、もちろん。部長ですから。...何でも、桜咲高校っていう高校の生徒120名と教員2名が突如何の前触れも無く姿を消すという怪奇現象が起こったのだよ。」
「なんの前触れも無く....?」
「そう。なんの前触れも無く。と、言っても、廊下についてた監視カメラが生徒達が消える直前、物凄い光が教室から出ている所を捕らえてるらしいんだけど....」
「それ、本当?120人も、一度にいなくなるなんて....」
「うーん。確かに嘘っぽい話だけど、事実その122名は居なくなってるからねー。あ、いや123名だっけかな?まあ、いいや。なんか都市伝説サイトとかでは政府がタイムマシンを開発してて、それに巻き込まれてなんたらかんたらって言われてるけど、どれも信憑性ゼロだからなー。記事にも何書いていいか分かんなくて困ってるんだけどね。」
高校....兄とは関係なさそう。
「そっか。...うん。わかったよ。ありがとう。」
「えーもう行っちゃうのー?あ、そうそう。もひとつあった。これは報道新聞部部長である私の考察なんだけど.......『異世界転生』ってのが熱いとおもうんだよ。どう?どう?」
「あー。うん。いいんじゃない?」
「えー。何その反応ー。ちゃんと根拠だってあるのにー。」
頬を膨らませる妄想逞しい報道新聞部部長の声を後ろに聞きながら奏は自分の席へと戻った。
▽
ピーンポーン
「あのー。こちら、哀檻さんのお宅でしょうかー。」
「あ、はい。そうです。どちら様でしょうか?」
ドアごしに返答を待つ。
「....良かったー。漸く見つかった。あのお宅の哀檻....えーと、誰君だったかな?まあ、いいや、哀檻君が働いてるバイト先の店長なんですが....」
「え、兄のですか!?」
「う、あ、うん。」
「それで、兄は今そちらに!?」
「........あー、ってことは家にはやっぱ帰ってないのね。哀檻君。.....えっと、取り敢えず上がってもいいかな?」
立って話すのも難だし...と続く言葉を遮り奏は、
「あ、それは駄目です。兄に知らない人が来たら絶対にドアを開けちゃ駄目って言われてるんで。」
「....ははは。流石哀檻君。しっかりしてるなぁ。じゃあまあ。このままで手短に...。えっとね。僕、言いづらい事は始めに言っちゃうタイプだから、先に本題から。.....哀檻君。どうやら今ニュースとかでやってる『桜咲高校大失踪事件』とやらに、巻き込まれたかもしれないんだよ.....」
「.............................え?」
聞き間違いだろう。そうでない筈がな、い。
「いや、あの日高校から出前の注文があってね、丁度手の開いてた哀檻君に行ってもらったんだけど、それから哀檻君戻ってこなくてね。高校にはバイクだけが残ってたらしいから恐らくは......」
言葉が段々と耳に入らなくなってくる。
巻き込まれた?
楽にぃが?
どうして....?
「~~~って訳だから。何日かしたら、警察も事情聴取とかで来ると思うから。じゃあ。」
バイト先の店長を名乗る男は一方的にそれだけ告げると、自分はもう関係ないとばかりに去って行った。
「あ、あうぁ.....ぁぁあ」
手元に残った最後の幸せを失った少女はその場に一人、崩れ落ちる。
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