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第1章 記憶と兄妹
第4思 ゴロツキエンカウント2
しおりを挟む「う、はっ!」
本日何度目かの覚醒。
素早く辺りを見回し哀檻は落胆する。
そこは、元いた教室ではなく、見覚えのない寂れた路地裏だった。
「何処だ..此処は....?スラム街か...?」
哀檻が現在地を確認しようと散策していると人の声が聞こえる。
「糞ったれが!何なんだいあいつぁ!?」
「うぅ。姉御ぉ。ワシらの財布ぅ。当分は遊んで暮らせるはずだったのにぃ。」
「オイラ、女とヤりたかったッス....」
「うるっさいよ!あんた達は見てただけじゃないか!あっしは右腕折られたっての!...くっそ。あのガキ、狂ってやがる!女の腕を躊躇なくへし折りやがってぇ!!」
「いや、姉御が女とか....ねぇ?」
「おっぱいは大っきいッスよ~?」
「いや、胸があっても、あ痛っ!」
「馬っ鹿にしてんじゃないよ!今度余計な事言ったらぶっ飛ばすかんね!」
「痛たた....もう蹴られたんですが...。」
会話の内容を聞き、あまり関わらない方が良さそうだと判断した哀檻は元来た道を引き返そうとする。が.....。
「そこのアンタ。ちょっと待ちな。」
気付かれた。
何で!ちゃんと隠れてた筈!
「アッシの前で隠れたり逃げたりするなんて、随分ナメてくれるじゃないか?」
「ん?姉御。"カモ"ッスか~?へっへー。姉御の目は凄いんすよ?姉御を見ている相手が次に起こす動きを予測する『洞察の相眼』なんすから!......って、あれ?じゃあ、なんで姉御、あんな子供に腕折られたんスか?」
「あ、あいつが異常だったんだよ!....腕がこっちに伸びてくる所までは、一瞬だけどあっしの眼で予測できたんだ。...ケド、見えた手の予測数が尋常じゃなかった。ありゃ、どんなに頑張っても避けられる筈が......てか何、見ず知らずの相手にアッシの情報漏らしてんだよ!」
バシッ
「あ痛!何でまたワシ!?」
「うっさいよ!........ところでそっちのアンタ。その足。金持ってんだろ?コッチも全財産入った財布取られて余裕がなくてね。金目の物全部置いてとっとと失せな。」
「あ、足?」
哀檻は自分の足元を見る。
ズボンの両膝の部分には大きな穴が。
恐らくスライムにやられた跡だろう。
何故か傷は塞がっていたが...。
あとは長年履き続けたボロい靴が見える。
「な、何もないですけど...?」
「靴!」
「靴?.....このボロい靴ですか?」
「確かに、ちとボロいけど、靴なんて履いてんだ。さぞ金持ってんだろ?」
どうやら、このスラム街では靴を履いてると金を持っている事になるらしい。
「な、なる程.....」
納得した訳ではないが、スラム街では靴も高級品になるのだろうと思い、哀檻は自分を納得させる。
「...で、金目のモン。早くだしな。」
「い、いや。金目のモンなんて.....見ての通り僕今手ぶらですし....」
「あ?...じゃあ、アンタの寝座につれてきな。」
「....あの、僕も今帰る所を探してまして....。」
哀檻は、正直に述べるが、
「はぁ!?馬鹿にすんのも、たいがいにしなっ!」
見ず知らずの弱そうな子供にボコられてストレスの溜まっていた女は話を聞かず腰に付けた鞭へと手を伸ばす。
側頭部に鞭が飛んでくる。
スライムの触手と比べるとどうしても遅く見えるが、それでも鞭の先端部分はとてつもない速度になる。
「ぐはっ!」
鞭を受けた哀檻は、疲労のせいもあり、そのまま意識を手放した。
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