遠吠え

刃

あの日、重い病に命の火が消えそうだった僕に
「生きてほしい」とあなたは泣いた

僕は精一杯頑張り抜いて
どうにか命の火を守り抜いて
あなたの隣に帰ってきたけれど

あなたは今までと何かが変わっていた
どこかはわからないけれど
何が変わっていたんだ

そして
僕を心配するあなたと
僕の心に言葉の刃を刺すあなたとが

なんの前触れもなく繰り返しあらわれ
僕を戸惑わせた

あなたの言葉の刃は時に
「死ね」と貫いてくる

あの時のあなたの言葉と真逆な言葉に
私はまたしても戸惑う

その言葉の刃が刺さる度に

あの時、命の火を守り抜いて
本当に良かったのか

あの時、
命の火を消し去るべきではなかったかとさえ
思うようになってきた

今もその答えはわからない

ただ一つ
あの病を境にあなたは本当に変わった

あなたは
自分を守りたいために
僕を悪者だと人々の心に刷り込んだ
そうして
あなたが故意に
僕から周りの人々を遠ざけたせいで
僕はさらに孤独になっていった

今のあなたは僕の心に
「私だけを愛しなさい」という
強い強い要求と

「他の者を愛すな」という制限を
どんどん与えてくる

自由という酸素を求めるけれど
僕はうまく息ができない
苦しい
苦しい！！
このままでは死んでしまうよ

あの日「生きてほしい」と泣いた
あなたは・･・

もうどこにもいない