名探偵になりたい高校生

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七十話 二年一学期 四

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 昨日の部活紹介のおかけでこの学校にどのような部活があるか理解した一年生は今日の放課後から、お目当ての部活に行く事になる。
 去年の俺のように新規で部活を設立する人もいるかも知れないが…

 そして現在は放課後。
 一年生が廊下をあっちこっちと歩いているのか、忙しい音が響いている。

「来るかな…部員」
「さあ」
「来たらいいなぁ。灰村さん目当てに来た奴は追い返すけど」
「じゃあ、跡野くんは追い返してもいい?」
「俺は例外でお願いします」
「新入部員って運動部に取られる事多いよな」
「そうね。運動部ってモテるなんて考えてる奴は入るでしょうね」
「かああ。わかってねえな。そいつは。運動部でモテるのは顔が良い奴だけ。つまり俺な」
「いつもと違う表情した男子、または女子を見るとキュンとするらしいね。私はした事ないけど」
「灰村さんも俺のバスケ姿みたら惚れちゃってた?」
「惚れない。一生」
「まあ、快斗の姿は別にだけど、普段とのギャップが違うと興味は出るかもな。快斗は女バスのみんなを見てた時はそんなのなかった?」
「みんな可愛いからな。特には」

 こいつに聞いたのが間違いだったかな。

 新入部員を待つ退屈な時間を二人と話しながら、潰している。
 気が付くと部活の終了まで残り三十分となっていた。

「来ないな…やはり昨日のあれが不味かったかな?」
「そうね。あんなにガチガチの探偵なんてダサいもの」
「そうだぞ、孝一。灰村さんの言う通りだ」
「お前のあれも問題だろ」
「探偵部の凄いところ見せたのに?」
「どこが凄いところだ。お前が変態だって知られただけだろ」
「いやいや、そんな事ないって。ねえ灰村さん」
「女子生徒の下着の色を当てるキモい奴がいるってその場で警察に突き出せばよかったとは思ってるよ」
「ひどい!!」

 コンコン。

 昨日の戦犯を決めている際、廊下側の扉がノックされる。

 この時間にノック。
 顧問の磯川先生の可能性もあるが、新入部員、もしくは依頼のどちらかであって欲しいと心の中で祈りながら、ノックされている扉に手を掛け開けた。
 扉を開けると、そこに立っているは一人の女子生徒。
 明るめの色の髪をサイドテールにしていて、少しロリっぽい表情の可愛い女子。
 そして何より、この女子。
 かなり巨乳だ。
 俺が今の所知っている、巨乳の堀田さんを上回る程にでかい…
 あまり見るのは良くないが、どうしても視界に入ってしまう。
 いかんいかんと一瞬目を閉じた後、女子生徒に話し掛けようとした時に後ろから、声が聞こえてきた。

「げっ!!」
「みいーつっけた!!」

 目の前にいた女子はいつの間にか俺の横を通り過ぎ、畳みに座っている快斗へと近づいた。

「えへへ。せーんぱい。こんな所に隠れてたんですねぇ。見つけましたよ」

 快斗の腕をがっちりと掴み、巨大な胸を押し付けている。
 男の俺としては羨ましい…

「でえええい!!離れろって」

 あれ?快斗がいつもと違う…

「あああん!!なんでそんな事言うんですかぁ。それより、先輩、バスケ部はどうしたんですか?昨日も見学行ったのにいなかった。この探偵部と掛け持ちですかぁ?この学校何個でも部活は入れるみたいですからね」
「バスケ部は辞めたよ。今はこの探偵部一本だ」
「えっ!!ななななんでですか??はっ!!もしかして去年の練習中に膝を…」
「いやそうじゃなくて…」
「それで、それで、期待の新人だった先輩が怪我で部活に出れない頃、同じ学年のセンターポジションの男が活躍しているのを見て、嫌に…せ、先輩まさか、今年期待のガードの人を屋上に呼んでボコった後、先輩も入院して、そして、三年になったら、ヤンキー引き連れて、体育館に土足で上がって、ぶっ潰すとか言っちゃうけど、結局は、バスケがやりたいだけで、先生が体育館に来た時に、崩れ落ちて、『バスケがしたいです』とか言うつもりなんですね、そうなんですね」

 なんだろ…この子。名作バスケ漫画のワンシーンを言ってる気がするんだけど。

「そんな事するわけないだろ!!俺は中学の時に諦めたら試合終了だよなんて、この高校の顧問に言われてない」
「きゃああ!!そのツッコミ大好きぃ!!」
「あのさ、そろそろ、二人に自己紹介しなさい」

 俺と灰村が二人を眺めているのを察したのか、快斗は目の前の女子にそう言った。

「そうでした、そうでした。では改めて。誰だって聞きたそうなツラしてるから、自己紹介させてもらうけどよぉ、俺はスピード…じゃなくて、私は伊藤いとう香和里かわりです!!跡野先輩の彼女です!!」
「違う。香和里ちゃんは、俺の中学の後輩。違うからね、灰村さん」
「あらー。可愛い彼女じゃん。香和里ちゃん。お似合いよ」
「そうですよねぇ!!」

 快斗の彼女だという伊藤、本当かどうかはわからんけど、伊藤自身は間違いなく、快斗に好意を寄せている。

「そういえば去年、本堂さんが快斗は彼女いるんでしょって聞いてたけど、伊藤の事だったんだな」
「まて、孝一。香和里ちゃんとは、買い物などに付き合わされているだけで、恋人じゃない」
「またまたぁ。先輩照れなくてもいいじゃないですかぁ。…それとも先輩、彼女いるんですか…?」

 快斗に彼女かいるのか聞いてる伊藤はとても不安そうな表情をしている。この事から二人は付き合ってないのはなんとなく分かる。そもそも快斗なら彼女がいれば間違いなく言ってきそうだし…

「うっ…それは…」

 快斗はチラリと灰村をみる。
 その視線を追うように、伊藤も灰村をみた。

「あのー。先輩って跡野先輩と?」
「安心していいよ。付き合ってないから。しつこく告られてはいるけど、断ってるよ。こんなに可愛い彼女がいるのにひどい男よね」

 満面の笑顔で言う灰村の言葉を信じた伊藤は、ニマァと表情を明るくさせ、
 再び快斗の腕にしがみつく。

「先輩、彼女いないじゃ無いですかぁ。じゃあ、約束通り、付き合ってくれますよねぇ」
「去年彼女出来なかったら付き合うなんて言ってきたのは香和里ちゃんが勝手に決めた事だろうが!!それに俺は好きな人がいるって言ったでしょ!!目の前にいる灰村さんが好きなの、付き合いたいの」
「そんなぁー、ひどいですよぉ!!私、一年も我慢したんですよぉ」
「ささ、そういう訳だから帰りなさい」

 快斗はそう言って、伊藤を廊下の方へと連れて行くが、伊藤は抵抗を見せてくる。

「やだやだやだやだ!!」

 小さな子供が店内でおもちゃを買ってもらえず駄々をこねるように、伊藤もその場で寝転び、手足をバタバタさせている。
 その度に、でかい胸が激しく揺れている。

「さっきからどこ見てんの変態。キモ」
「男の性です…すみません」

「だいだい、香和里ちゃんはなにしにここへきたんだよ」
「先輩に会いにですけど」
「つまり、特に用はないって事でいいのかな?」
「いやだなぁ。私がただ単に会いに来ただけだと思ってるんですかぁ?」

 伊藤は、ヒョイと起き上がり、俺の方へ身体を向ける。

「ここってぇ、探偵部ですよね?」
「そうだね。伊藤は、なにか依頼でも?」
「はい。依頼です。それともう一つ」
「もう一つ?」
「私を探偵部に入部させて下さい」
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