名探偵になりたい高校生

なむむ

文字の大きさ
上 下
62 / 90

六十二話 灰村杏中学二年 三

しおりを挟む
「灰村さん、これお願い」
 バイト先の図書館にいる、館長は笑顔でたくさんの本を載せた、台車を持ち、私に置き場に戻すように言って来る。

「はい、わかりました」
 台車を受け取り、本を元の場所へ戻していく。この手の仕事は私が担当となっている。
 私の消せない記憶のおかげで、本のタイトルを見るだけで、場所は分かる。
 本来なら、本に張ってある、テープを目印に、目的のエリアまで持って行き、そこから、本のタイトルを調べ、元の場所に持って行く。
 この図書館内で私は記憶力がいいと言うことで通っている為、この手の仕事は大体任せられる。
 バイトして、徐々に場所を覚えた。今では館内にある全ての本の場所がわかる。

 バイトの休憩時間、いつもなら勉強やら、読書をしている所だけど、今は館内にある、PCを操作し、先日起こった学校内での、盗難事件。
 事件と言っても、学校全体が把握している訳でもないけど。

 犯人はなぜ、給食費を盗み、一円も取らずに私の机の中に入れたのか。ただ単に、私への嫌がらせなのか、それとも別の狙いがあるのか…
 その事を調べる為に、PCの前に座っているわけだけど…
 さてさて、なにから調べようかな。
 まずは学校のPCをハッキングする。
 やっている事は完全に犯罪だけど、未成年って事で…
 未成年でもだめだけど。
 兎に角ハッキングに成功し、全校生徒の個人情報やら、テストの問題などが、管理されている場所に辿り着く。もちろんそんな物に興味は無い。
 目的は監視カメラの記録だ。

 あった。

 目的のデータを見つけ、給食費を盗まれたであろう日のデータを確認し、再生する。

 先生はこのデータを確認しているはず。その上で、みんなに聞いてきた。犯人が分かっているのなら、最初から、犯人を呼び出し聞いたはず。
 みんなに聞いた理由はこのデータを見た時に答えが出た。
 監視カメラの映像には、盗まれる瞬間は映っていない。
 他の日も確認したが、生徒が先生の机に近づいた様子は映っていない。
 先生も毎日デスクの中を確認してる様子も見られる。
 犯人はいつどうやって盗んだのか…

 他にも何か無いか、色々調べてみる。
 ちなみになぜ私にこのような事が出来るかと言うと、由美さんに教わったとしか言えない。

 さて、調べ事も終わった。バイトの休憩時間も終わり、閉館時間まで、働くとしよう。

 翌日になり、いつも通りに学校へ行く。

「ハイムーおはよう」

 元気の良い声を出し、挨拶をしてくる志田さん。彼女は元気が無いときとかあるのかな?

「…おはよう」

 適当に挨拶を済ませ、靴を下駄箱に仕舞い、上履きを取る。

「ん?」

 下駄箱に何か入ってる。
 下駄箱に入っていた、手紙のような物を取り出し、封を開ける。

【放課後、話したい。体育館裏で待ってます】

 なにこれ…?ラブレター…
 うっざ…きも…
 給食費の次はラブレターか…
 シカトしようかな。
 これ、間違いなく、告られるよな。

 差出人を確認する。
 これは、これは…ぜひ、お話したかった相手だ。ちょうどいい。

 いつも通りの授業を終え、放課後になる。
 約束の場所の体育館裏へ。

 体育館裏って…ベタね。
 意外と人目につくと思うけど。

「灰村さん。よかった、来てくれたー」
 手紙を出した本人、同じクラスの吉野くんだ。

「それで、話って」
「そのさ…」

 吉野くんは恥ずかしそうに、頭を掻きながら話してくる。
 告るならさっさとしてくれないかな

「恥ずかしいなら、告白なんてやめれば?」
「え…?」
「あら、違った?私の勘違いならそれでいいけど」
「い、いや、勘違いじゃない。俺、灰村さんの事好きでさ…」
「へえ…話したことも無いのに、随分と急だね。私は別に他の男子と話してないし、急ぐ必要は無いと思うけど」
「そ、それって!!脈ありって思って良いの」

 なにを勘違いしてんだ…そんな訳ないでしょ。

「いや、脈無し。私、吉野くん見たいな人嫌いなんだ」
「……そっか」
「話、終わり?」
「う、うん…そ、それじゃ」

 私に振られ、帰ろうとする吉野くん。だけど、帰さないよ。私はあんたに用がある。

「私さ、君に聞きたいことあるんだよね」
「なに?」
「私の机の中に、給食費入れたの、あんたでしょ」
「はっ?」

 明らかに動揺しているのがわかる。声が上擦ってるし。

「なんで入れたの?」
「いや、何言ってるかわかんないんだけど」
「職員室の防犯カメラあるの知ってる?あれに君が先生の机の中漁ってるのバッチリ映ってたよ」
「はっ!?そんなわけ!!あれは…」

 もちろんカメラには映っていなかった。でも、墓穴掘ったわね。

「あれは?なに?」
「い、いやその…」
「君がやったのはわかってる。調べもついてるし。黙っててやるから、さっさと白状しなよ」
「し、知らねぇよ!!灰村さん何言ってんだよ」
「あんたが、告ってきた事で一つの仮説が出来たんだけど、給食費を盗んだ犯人だとクラス中に疑われ、私が動揺したタイミングで、私を庇い、庇ってくれた優しい人。とか意識させようとしたんじゃない?」
「いや、だから…」

 なにか言いたげだけどこいつが犯人なのは知ってるから、無視しよう。

「でも、私があっさり犯人でも良いとか言って、計画が崩れた。だから焦って告ってきた。違う?」
「いや、俺純粋に灰村さんの事が…」
「あのさ、体育で走って揺れてる私の胸をガン見してくる奴が、純粋とか言ってんじゃねえよ。キモいんだよお前」
「こ、この…さっきから黙って聞いてら調子に乗りやがってよ!!」
「なに?事実でしょ。あんた、私が転校初日に、私の胸の事言ってたじゃない。マジうぜえから。あんた如きに私を落とせると思われた事が情けないよ」
「て、てめ…!!」

 拳を握り、手を震えさせている。
 おっと、これはまずいかな。

 ダッ!!

 吉野くんは私に向かって走ってくる。ムカついたら、女だろうが手をあげるタイプか…

「そこまでよ」

 声のする方をみると、能登さんと間宮くんが立っている。

 吉野くんはなぜ二人がここにと、不思議そうにしたが、すぐに私の方を向き直した。

「なんだよ、二人呼んでたのかよ。道理で強気なわけだ」

 ああ、こいつ。私が二人に声を掛けていたと思ってんな。
 違うと否定しても、多分信じないでしょうね。

「吉野くん。灰村さんは私達に何も伝えてない。私達は最初から、君に用があったのだから」
「な、なんだよ、用って…」
「吉野…さっき灰村さんが言ってたろ。給食費の事だ。職員室から給食費を盗み、灰村さんの机の中に入れたのはお前だ」
「だから、知らねえって…」
「吉野くん。無駄なあがきはよしなさい。私がなにも調べずここに来るわけ無いでしょ」
「く…」
「お前は先生のパソコンに細工した。盗んだあの日にお前が映っていた映像を削除し、一学期にあった職員会議中で誰もいない職員室の映像を貼り付け、そのファイルの日にちを盗んだ日にしただけ。映像には違和感があり、すぐに気が付いたよ。それから、なぜお前にたどり着いたかというと、学校出てすぐにある、コンビニのカメラにお前が学校に戻る映像が映ってた。流石に外のカメラまでは気が回らなかったのかな」
「学校に戻るだけで俺が犯人かよ」
「うん。あの日、部活も休み。全校生徒は午後四時二十分には全員学校から、出ている。誰も学校には戻っていない。お前以外は。コンビニのカメラにお前が映ってるって言っただろ」
「ぐっ…」
「学校に戻ったお前は、職員室に向かい、給食費を盗み、灰村さんの机の中に入れた。その後職員室に戻り、防犯カメラに映らない、体育教師の席にある、パソコンから、映像に細工して何事も無かった様にして帰った。パソコンに詳しいお前にしか出来ない芸当だ」
「………」

 吉野くんは、なにも言わず、膝から崩れ落ちた。犯行を認めた瞬間だ。
 その後吉野くんんから、謝罪されたが、別に迷惑とも思ってないから、何事も無かったかの様にした。ただ、吉野くんは私に話し掛けてくることは二度と無いだろう。
 吉野くんの犯行は、私達の三人だけでの秘密と言う事で、事件は幕を閉じる。

 学校での一悶着で、バイトには少し遅れたが、作業スピードを上げ、遅れを挽回した。

「お疲れ様でした」

 館長にあいさつして、帰宅する。

 スマホを確認すると、時刻は午後九時半を回っていた。

 辺りはすっかり暗くなり、街灯が光る道を一人、歩き出す。

 やがて、街灯の少ない暗い道になってくる。家の近くになると街灯も少なく、少し怖いかも。
 最近は工事もしている。新しい、店でも作ろうとしているのだろうか。昼間はうるさい工事現場だが、夜、この時間は静かだ。

 ふと耳を澄ますとダッダッダと、ランニングする人だろうか?後ろから聞こえてくる。

 音が近づいてくる。
 気にせず歩いていた。

 ガシッ!!

 背後から、抱きしめられる。

「はぁ!?」

 強く抱きつかれ身動きが出来ない中、首だけを回し、変質者の顔を見る………

「!!」
「杏ちゃん。捕まえた」

 私に抱きつき、ニヤニヤしている、気持ち悪い男……将だった…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...