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五十三話 クリスマス会 四
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俺達は、灰村を探す為、
次のエリアに行くことに。
それにしても、堀田さんが最後に
言った、あの言葉。
「君は本当に鈍いんだな...」
堀田さんの呆れるように俺を見た、
あの表情。
てっきり堀田さんは快斗の事が好き
だと思っていた。
だとすると、柳さんは、あの時、
あの夏祭り、誰の事を言っていたんだろ。
ええい、考えても仕方がない。
兎に角今は灰村を探しに行こう。
灰村が誰かと待ち合わせをしているとの事。
志田がそう言っていた。
もし、灰村が誰か告白をする為に、
待ち合わせをしているんだとしたら、俺達が今からしようとする事はあいつに迷惑が掛かるんじゃないのか?
志田が灰村と会ったのはゲームエリアを出て、階段を上り、すぐ、そばにある、クラシック音楽が流れている、静かなエリア。
最近の高校生がクラシックを聴いている人はあまりいないだろと思っていたが、意外にもこのエリアには結構人がいる。
さすがに、恋人達や、今まさに告白しようなど考えている人はいないようで、どちらかと言うと、パーティとかがあまり好きではない人達がいる感じだ。
学校側も、静かに過ごしたい人達への配慮も考えているようだ。
さて、灰村はまだいるかな?
「やっぱり、いないよね。私がハイムーと会ったの三十分くらい前だし」
さすがに三十分も灰村はここにはいないか、そもそも、ここで人と待ち合わせをしても静か過ぎる。
話し声など聞こえてしまうだろう。
告白かどうかわからんが、こんな所で秘密の話などしたら丸聞こえだ。
ここにはいない。他の所に行こう。
次に訪れたのは、映画エリア。
今年話題となった、映画が数本、順番で流れているようだ。
現在は、二本目で恋愛映画が上映している。
上映時間は前もってわかっていたからか、この時間は恋人達が多い。
灰村がいるとは思えない。
「ここにクソ村がいたら笑えるわね」
「すでに告白し終わって、恋人となって見に来てるかもよ」
「告白してすぐに、映画観に来るかなー。灰村さんってそういう人だっけ?」
「相手がそういう人なのかもよ?」
「マムー、ハイムーの好きなタイプってどんな人?」
「俺に聞かれても知らないよ」
「えっ?そうなの。知ってろよー」
灰村とそんな話をしないからな…
俺に聞くな。
「それじゃ、ここにはいないし、他に行きましょ」
玲那は映画に興味も示さず、歩いて行く。
「のっちゃんこの映画すでに見てるからね。生徒会で映画選んでたから、全ての映画は何度も観てるよ。マムーの高校の生徒会の人達も観てるはずだよ」
「へー。そうなんだ。生徒会ってのも大変だな」
「そ、特にイベント事の時なんかは特に大変だよ。体育祭に文化祭とかね」
生徒会は大変なんだな。柳さんも苦労してんだろう。
「今年度は私は途中からの生徒会長だけど、来年はもう一つ合同イベントを考えてるのよ」
「へえ。でも来年もお前が生徒会長になれるとは限らないだろ」
「なれない未来想像出来る?」
すげー自信…
玲那について行くと、どんどんと、人気の無い所に向かって行っている気がする。
シンとする中、俺達の足音が虚しく響く。
せっかくのクリスマスが急にホラー展開になった気がした。
「なんか、静かだな…灰村さん、こんな所くるか?」
玲那はなにも言わずに歩いている。灰村のいる場所に心当たりでもあるのか?
でも、正直な所、俺はこっちに灰村がいる気がしている。
あいつは誰もいない所に行きそうだ。なぜ、こうまでして、人目を避けるのか、玲那達はわからないだろう。灰村は別にイベント事が嫌いな訳では無い。男に見られるのが嫌なんだ。灰村は目つきが悪いが、見た目は良い。転校して来た時から、周りの人間は言っていた。湯澤も転校初日に速攻で声を掛けていたし。
女子としてはモテる事は誇らしい事だと思う。それは男としてもそうだ。モテることは一つの自信に繋がる。女子の中ではそれは嫉妬に変わる場合もあるらしいが…
しかし、灰村はそれが嫌だった。
男の視線が嫌いだった。もちろんそれは、昔からだった訳ではない。
理由はあるが、それは今、関係ないか…
玲那はその事を知らない、けれど、なんとなく灰村の事を理解しているんだろう。だから、灰村のいそうな所になんの迷いも無く、進んでいる。玲那も金田さんと同じで実は仲良くなりたいとかだったり。
「間違いなく、それは無いよ。考ちゃん。灰村とは一生馴れ合うことはないわね。私は灰村が嫌いなの」
人の心読めるんですか?
「なあ、なんでそんなに、灰村が嫌いなんだよ」
「うーん。そうね。その質問に答える前に、ほら…」
俺達は玲那の指差す方を見る。
灰村だ。
俺達はそっと、近くの壁に身を隠す。
「うわ、マジでいたよ。能登嬢さすがだな」
「のっちゃん、なんだかんだで、ハイムーの事わかってるよね…いたたた、ほっぺ抓んないでええ」
ギュウウと思い切り志田のほっぺを抓る玲那。照れている訳じゃ無い。二度と言うなと言う意味でやってるな。
それより、気になる灰村が待っている人だ。
ここからじゃ、灰村の背中しか、見えない。相手はもう来ているのか?
「考ちゃん、あの人って…」
玲那の視線を追っていくと、灰村の待ち人を発見する。
「ちゃんと来たね」
「可愛くて、憎たらしい後輩に呼び出されたら来ないわけには行かないよね」
「要件、わかるでしょ?」
「もちろん」
「じゃ、さっさと、けり付けよっか、くだらない嫉妬をする。夢沼先輩」
次のエリアに行くことに。
それにしても、堀田さんが最後に
言った、あの言葉。
「君は本当に鈍いんだな...」
堀田さんの呆れるように俺を見た、
あの表情。
てっきり堀田さんは快斗の事が好き
だと思っていた。
だとすると、柳さんは、あの時、
あの夏祭り、誰の事を言っていたんだろ。
ええい、考えても仕方がない。
兎に角今は灰村を探しに行こう。
灰村が誰かと待ち合わせをしているとの事。
志田がそう言っていた。
もし、灰村が誰か告白をする為に、
待ち合わせをしているんだとしたら、俺達が今からしようとする事はあいつに迷惑が掛かるんじゃないのか?
志田が灰村と会ったのはゲームエリアを出て、階段を上り、すぐ、そばにある、クラシック音楽が流れている、静かなエリア。
最近の高校生がクラシックを聴いている人はあまりいないだろと思っていたが、意外にもこのエリアには結構人がいる。
さすがに、恋人達や、今まさに告白しようなど考えている人はいないようで、どちらかと言うと、パーティとかがあまり好きではない人達がいる感じだ。
学校側も、静かに過ごしたい人達への配慮も考えているようだ。
さて、灰村はまだいるかな?
「やっぱり、いないよね。私がハイムーと会ったの三十分くらい前だし」
さすがに三十分も灰村はここにはいないか、そもそも、ここで人と待ち合わせをしても静か過ぎる。
話し声など聞こえてしまうだろう。
告白かどうかわからんが、こんな所で秘密の話などしたら丸聞こえだ。
ここにはいない。他の所に行こう。
次に訪れたのは、映画エリア。
今年話題となった、映画が数本、順番で流れているようだ。
現在は、二本目で恋愛映画が上映している。
上映時間は前もってわかっていたからか、この時間は恋人達が多い。
灰村がいるとは思えない。
「ここにクソ村がいたら笑えるわね」
「すでに告白し終わって、恋人となって見に来てるかもよ」
「告白してすぐに、映画観に来るかなー。灰村さんってそういう人だっけ?」
「相手がそういう人なのかもよ?」
「マムー、ハイムーの好きなタイプってどんな人?」
「俺に聞かれても知らないよ」
「えっ?そうなの。知ってろよー」
灰村とそんな話をしないからな…
俺に聞くな。
「それじゃ、ここにはいないし、他に行きましょ」
玲那は映画に興味も示さず、歩いて行く。
「のっちゃんこの映画すでに見てるからね。生徒会で映画選んでたから、全ての映画は何度も観てるよ。マムーの高校の生徒会の人達も観てるはずだよ」
「へー。そうなんだ。生徒会ってのも大変だな」
「そ、特にイベント事の時なんかは特に大変だよ。体育祭に文化祭とかね」
生徒会は大変なんだな。柳さんも苦労してんだろう。
「今年度は私は途中からの生徒会長だけど、来年はもう一つ合同イベントを考えてるのよ」
「へえ。でも来年もお前が生徒会長になれるとは限らないだろ」
「なれない未来想像出来る?」
すげー自信…
玲那について行くと、どんどんと、人気の無い所に向かって行っている気がする。
シンとする中、俺達の足音が虚しく響く。
せっかくのクリスマスが急にホラー展開になった気がした。
「なんか、静かだな…灰村さん、こんな所くるか?」
玲那はなにも言わずに歩いている。灰村のいる場所に心当たりでもあるのか?
でも、正直な所、俺はこっちに灰村がいる気がしている。
あいつは誰もいない所に行きそうだ。なぜ、こうまでして、人目を避けるのか、玲那達はわからないだろう。灰村は別にイベント事が嫌いな訳では無い。男に見られるのが嫌なんだ。灰村は目つきが悪いが、見た目は良い。転校して来た時から、周りの人間は言っていた。湯澤も転校初日に速攻で声を掛けていたし。
女子としてはモテる事は誇らしい事だと思う。それは男としてもそうだ。モテることは一つの自信に繋がる。女子の中ではそれは嫉妬に変わる場合もあるらしいが…
しかし、灰村はそれが嫌だった。
男の視線が嫌いだった。もちろんそれは、昔からだった訳ではない。
理由はあるが、それは今、関係ないか…
玲那はその事を知らない、けれど、なんとなく灰村の事を理解しているんだろう。だから、灰村のいそうな所になんの迷いも無く、進んでいる。玲那も金田さんと同じで実は仲良くなりたいとかだったり。
「間違いなく、それは無いよ。考ちゃん。灰村とは一生馴れ合うことはないわね。私は灰村が嫌いなの」
人の心読めるんですか?
「なあ、なんでそんなに、灰村が嫌いなんだよ」
「うーん。そうね。その質問に答える前に、ほら…」
俺達は玲那の指差す方を見る。
灰村だ。
俺達はそっと、近くの壁に身を隠す。
「うわ、マジでいたよ。能登嬢さすがだな」
「のっちゃん、なんだかんだで、ハイムーの事わかってるよね…いたたた、ほっぺ抓んないでええ」
ギュウウと思い切り志田のほっぺを抓る玲那。照れている訳じゃ無い。二度と言うなと言う意味でやってるな。
それより、気になる灰村が待っている人だ。
ここからじゃ、灰村の背中しか、見えない。相手はもう来ているのか?
「考ちゃん、あの人って…」
玲那の視線を追っていくと、灰村の待ち人を発見する。
「ちゃんと来たね」
「可愛くて、憎たらしい後輩に呼び出されたら来ないわけには行かないよね」
「要件、わかるでしょ?」
「もちろん」
「じゃ、さっさと、けり付けよっか、くだらない嫉妬をする。夢沼先輩」
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