名探偵になりたい高校生

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五十一話 クリスマス会 二

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玲那に連れられやって来たのは、大勢の人達が踊っている、ダンスホール。

「まさか、踊る気ですか?」
俺は横目で玲那を見ながら言う。

「孝ちゃんが、ダンス出来るくらい器用だったら、踊りたかったけどね」
「悪かったな、不器用で」
「中学の体育祭で、孝ちゃんと踊ったフォークダンス。忘れてないよ」

中学時代。体育祭でフォークダンスを踊った時、俺と玲那は派手に転んだ。
玲那は校内で、人気者。容姿端麗、成績優秀。
そんな玲那を転ばせた俺は、学校中の生徒から、大バッシングを受けた。
玲那に恥をかかせたと…
まぁ、玲那がその後、全員を宥めたから、大きな問題にもならなかったが…
学校では、玲那はニコニコとして、全然平気そうな態度をしていたが、学校を離れた途端に、グチグチ、ネチネチと俺に言って来た事を覚えている。
外面がいい。灰村が言った事はこう言う意味だ。

「まだ、言うか…あの時謝っただろ。大体あれ、お前の足が引っ掛かって転んだんだからお前にも責任がある」
「私は完璧に踊りました。孝ちゃんが段取りを飛ばしただけじゃない」
「そこをフォローするのも、完璧女子だろ」
「一緒に転ぶ方がいいと判断したの。私以外だったら、捻挫してたわよ」
「そうですか…てか、それを思い出させたくてここに来たのか?」
「違うよ」
玲那は首を振り、否定する。
俺にはそうとしか思えないんだが…

「孝ちゃんと離れ離れになってさ、全然話せて無いじゃない。話せる事は、中学までの思い出話くらい。一緒に思い出を作るのは今は無理よね。こうやって両校が会う時じゃ無いと。生徒会同士だったら、会う機会は多いだろうけど、孝ちゃんは絶対に入らないだろうし」
「確かにそうだな。お互い別々の道行ったし、休みの日に会う事もあまり無いし」
「休みの日に会うのと、学校で会うのじゃ全然違うよ。私は学校生活を共に過ごし、思い出を作りたかった…」
「一緒に何かをする事は出来ないが、こうやって学校イベントでは会えるわけだし、いいだろ」
「こっちに、転校する気は?」
「ない。探偵部あるし」
「それだけ?」
「他に理由ないけど」
「そっか」
玲那はそれ以上何も言わなかった。

しばらく、踊る人達を眺めていると、一人の男子生徒らしき人が、数人の女子を従えて、俺達に近付いて来た。

「能登生徒会長じゃないか」
玲那に話しかけてきた、男。
見た目はかなりのイケメンだな。

「こんばんは、瀬田先輩」
「隣の男は、見ない顔だね。知り合い?」
「ええ、彼は全力高校の生徒で、私の幼馴染の間宮孝一です」
瀬田と呼ばれた男は俺を軽く見る。
俺もそれに合わせて軽く会釈した。

「幼馴染か。てっきり、彼氏かと思ったよ」
「彼氏にしても良いのですが、少し足りないですね。右腕にするくらいがちょうど良いです」
「へぇ。生徒会長が右腕にしたいと言うなんてね。中々優秀だね」
「俺は玲那が思っているほど優秀では無いですよ」
「孝ちゃん、紹介がまだだったね。こちらは、瀬田せた 玲央れお先輩。二年生で、バスケ部のエース。瀬田先輩の活躍で今年のウチのバスケ部は、関東大会まで行けたのよ」

バスケ部か…快斗と試合した事あるのかな?

「関東大会までしか、行けなかったけどね。来年は全国行きたいかな」
「そうですね。応援しています」
「所で、君の所に、跡野って奴いたよね」
「快斗ですか。いますね。バスケで試合した事ありましたか?」
「試合はした事はない。あいつバスケ部だろ?」
「快斗は、夏休みで、バスケ部辞めて、探偵部に入りましたよ」
「はっ?探偵部?全力はそんなふざけた部活あるのか」

別にふざけてはいないんだが…
まぁ、知らない人からすればそう見えるのかもな。

「学校では便利屋とか思われているみたいですけど」
「そうか、それよりあいつはどこにいるかわかるか?」
「う~ん。たくさんの女子に話し掛けるって言ってたんで、女子が多そうな所に行けば会えると思いますよ」

女子の多そうな所と言えば…

「スイーツが食べられる場所にいるのでは無いのでしょうか?」

玲那が言う。
女子の多い所と聞き、瞬時に判断出来るこいつも凄いな。

「そいつはちょうどよかった。これから行く所だ」

瀬田先輩は嬉しそうな顔をして、歩いていく、それに続くように側近の女子達もついて行った。

「あの先輩モテるんだな」
「そうね。イケメンで、運動も出来る。男版私。みたいな人よ」
「そうですか…それはすごい事で」

玲那はモテる。小学、中学とたくさんの男達が玲那に告白し、散って行った。
学校一モテていたのは間違い無いだろう。
しかし、中学二年の二学期に灰村が転校して来て、玲那に夢中だった何人かは、灰村に夢中になった。
人気者としては間違いなく学校一であったが、モテていたのは灰村だ。
そう聞いたのは中学卒業の時だけど。

「そういえば、あいつも全開だったよな?」
「湯澤くんね。孝ちゃんに会うの楽しみにしてたから、向こうからやって来ると思うけど」

湯澤ゆざわ たくみ。中学の時に知り合い、俺がよく話していた男だ。

「会えなきゃ会えないでいいけど…」
「おいおい。そんな冷たい事言うなよ」

懐かしい声が後ろから聞こえてくる。
振り返ると、筋肉質のいい体に小麦色の肌。そして短髪のスポーツマンっぽい男がいる。

「久しぶりだな、なんちゃってスポーツマン」

湯澤は、見た目こそスポーツマンだが、中学時代はどの部活にも所属していない。恐らく高校でも入ってないだろう。

「かああ、会って一言目がそれかよ。ま、別にいいけど。元気そうだな」
「まあな。湯澤も変わらずだね」
「俺はいつまでも変わらん。灰村さんも元気か?」
「ああ、変わんないよ」
「そりゃ、よかった。…おっと能登嬢の前では、灰村の名前は禁句だったな」
「別にいいわよ」

嘘だな…灰村と名前が出ただけで、目元がピクリとしていたし。

「それにしても、こうやって三人が揃うなんて超久しぶりだな!!懐かしいぜ」
「これで紅羽さんがいれば、勢揃いね」

志田しだ 紅羽くれは
中学で知り合った女子生徒。
黒髪で、ナチュラルパーマの髪型が印象的な女子だ。
俺、湯澤、玲那、志田、それと灰村の五人で一緒に行動する事が多かった。
玲那は灰村が嫌いな為、敢えてこの場では四人が揃って勢揃いと言っている。
志田は玲那の理解者であるが、灰村とも普通に話す。
灰村と玲那のぶつかりが始まると誰もが諦めている中、唯一仲裁に入っている貴重な存在だった。

「あれ、志田も全開じゃなかった?」
「紅羽ちゃんは、散歩してるよ。偶には一人で息抜きしたいんだろ」
「あら?私がいつも紅羽さんを連れ回しているとでも言いたいのでしょうか?」
「言ってないだろ…怖いなぁ。能登嬢は」
「言葉が足りないのよ」

玲那と湯澤の関係も変わってなさそうだな…

「志田って散歩好きだっけ?」
「高校生になってからの趣味だそうだ。一人でぼーっと歩いていると頭がスッキリしていいんだと」
「せっかくだから、志田にも会いたいな」
「散歩しているんだから、こうやって回っているとその内会えるよ」
「それもそうか」

玲那と一緒に歩いていれば再会もあるか。

「あ、間宮くんだ」

俺は呼ぶ声に反応し、振り向く。

「あっと。お友達と一緒か。ごめんね。すぐにいなくなるから」

そう言って玲那達に軽く頭を下げたのは女バスの飯島さんだ。

「飯島さんが話しかけて来るなんて珍しいね」
「えっとさ、快斗くん知らない?」
「快斗?」

またしても快斗を探す人間に出会う。
また、バスケ部絡みかな?

「快斗はどこにいるかはわかんないけど、スイーツが食べられるエリアにいると思うよ。女子が多そうだし」

玲那が先ほど瀬田と言う人に教えた情報をそのまま飯島さんに伝える。

「スイーツエリア…どこだろ」
「スイーツがたくさんあるエリア、ここから東の扉を抜けた先に真っ直ぐ進めばありますよ」
「そうなんだ!ありがとう!!えっと…」
「私は全開高校、生徒会長。能登です」
「ああ!!最初に挨拶してた人ね。私は飯島茜。よろしくね。それじゃありがと。バイバイ」

俺達に手を振りながら東の扉を抜けて行く。

「中々、可愛い子だ。全力は可愛い子多いなぁ。アイドルもいるし。今日は来ねえの?」
「本堂さんは仕事だろ」

本堂さんがここにいたら、パニックになってしまうだろう。
今日、本堂さんに会えるかもと思っていた全開高生徒は多かったし。

「それより、そろそろ、次のエリアに行きましょう。湯澤くんも一緒に来る?」
「えっ。いいの?二人のデートを邪魔しちゃって」
「今日、孝ちゃんとデートするつもりないから」

そう言う事ならと、湯澤も一緒に行く事になった。
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