名探偵になりたい高校生

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四十七話 一年二学期 十

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「おはよう、間宮くん」
「おはようございます」

いつも通りに名前も知らない先輩に挨拶された後、教室に向かう。

教室に着いて一息入れたいが、廊下の方から俺を呼ぶ声が聞こえた。

「間宮くん おはよう」

声の方を見ると、怪しげに微笑む夢沼先輩が俺にこっちに来いと手招きをしている。
このまま無視する訳にもいかず、俺は立ち上がり、先輩の元へ向かうと、先輩は周りに聴こえるかの様に喋り出す。

「間宮くん、あの時の私の言葉、考えてくれた?」
「は?」

あの時の言葉とは?
この先輩はなにを言っているのか。

「先輩、なんの事ですか?」
「またまたぁ、君の事狙ってるっていったじゃん。だから、君の気持ち聞きたいなって」

夢沼先輩のこの一言により、クラスにいる全員がざわつき俺と夢沼先輩を見始めた。
二年で一番可愛いとされてる夢沼先輩。
もちろん一年にも人気があり、モテモテの先輩が、パッとしない俺に好意を向けているとなれば男子と恋バナ大好き女子達が興味を示さないはずが無く、俺の次の言葉を楽しみにしている。

「あの、あれって冗談ですよね?」
「んー?冗談だと思うー?」

間違い無く、冗談だ。
この人は俺に好意など、一ミリもない。
なぜなら、今も俺を見ている様で見ていない。

「いきなり、こうやって迫られた事ないから、動揺してるね」
「それもあるけど…」
「ふふ。取り敢えず、今は帰ってあげる。また放課後ね」

夢沼先輩は手をヒラヒラさせ自分の教室に戻っていく。
あの人はなにがしたいのかわかんねぇな。

クラス中の視線を無視して、俺は自分の席に着く。
こうなると前の席の住人である堀田さんが話しかけてきそうだが、本人はスマホを触っている様で、話しかけてこない。
その代わりに、クラスの男子と女子が数人俺を取り囲んだ…

クラスメイトの尋問をなんとか乗り越えて、放課後になり、部室に向かう事にする。
「灰村…あれ?」
いつもは俺と一緒に部室に行くが、今日は灰村がいない。
あいつ、一人で行ったのかな?
教室内を見回すが、いる気配がない。
机も見るとバッグも無いし、先に行ったんだろう。

技術棟にある部室に向かう為の渡り廊下を歩き、角を曲がろうとした時に声が聞こえてくる。

「待ってたよー灰村ちゃん」
「…あの先輩は?」

灰村だ。灰村一人に、男が三人いる。
どう言う事だ?

「夢沼は来ねえよ。俺達が灰村ちゃんを呼んで欲しいから夢沼に頼んだ訳」
「あっそ。私、あんた達によう無いから。それじゃ」

灰村は歩き出すが、男達は道を譲る気は無く、ニヤニヤと笑っている。

どうする。助けるか?

「邪魔なんだけど」
「俺達の話も聞かずにどこか行こうとするからじゃん」
「…話ってなに?」
「灰村ちゃん、彼氏いないんでしょ?なら俺と付き合おうよ」
「どこの誰だかわかんない男と付き合うわけねぇだろ」
「じゃあ、俺は?」

灰村に告白するのは真ん中にいた人だけじゃ無いらしい。横にいた男も告白し始めた。となると、三人目のあいつも、そうなのか。

「うっざ。聞こえなかった?どこの誰だかわからないやつと付き合わないって言ったんだよ」
「あちゃー、俺もダメかぁー」

「じゃあ俺は?」
「しつこい」

「くく、灰村ちゃんって可愛くて、口が悪いなぁ」
「あんたら見たいな、性欲丸出しの奴が嫌いなんだよ」
「でもさ、強がってるだけでしょ?」
「なんなの…フラれたんだからさっさと消えてくれる?」
「俺達の事。怖い?」
「…うっざ」

灰村は男達が立ち塞がるがお構い無しに歩いて行き、肩をぶつけながら横を通っていく。
…が。
一人の男が振り向き、灰村の手を掴んだ。
「離してよ!!」
「俺達の話終わってないのに、行こうとするからじゃん」
「しつけーんだよ!!あんた達みたいな奴は嫌いなの!!離せ!!」
「怒った顔も可愛いんだね」
「ぐっ…」
「あれ?震えてる?」

俺は、近くにあった壁を思い切り蹴り飛ばした。
それなりに大きな音が鳴った様で、灰村達は俺の存在に気が付く。

「あんたら、二年?」
「あ?なにお前?」
「灰村が嫌がってんのわかんねぇのかよ」
「ああ、お前が間宮って一年か。今取り込んでんだ後にしろよ」
「話終わってんだろ。見事にフラれてたのにしつこいやつだね」

三人の男は見た感じ、ヤンキーだな。
喧嘩に自信がありそうだ。
今も生意気な口を聞いてる俺をブッ飛ばしたいと思っているだろう。
一人は目元がピクピクして血管が浮き上がっていて、今にも飛びかかってきそうな雰囲気をだし、両サイドの奴もそれに合わせて向かって来るだろう。
まぁ、三人の目的が灰村から俺に変わってんならそれでいい。
学校内で喧嘩ってやりたくは無いんだけどな。

「三対一で勝てると思うなよな」
「それは、俺の台詞って事で」

中央の男が走って近づいて来る。
自分の間合いとなったのだろう拳を振り上げ、俺に殴り掛かって来た。
俺は両手でしっかり殴り掛かって来た男の腕を掴み、そのまま背後に回り込み関節を決める。
残りの二人とも一斉に飛びかかって来るが、間接を決めている、男を持ち上げ、二人に投げ飛ばすと、投げ飛ばされた男が二人に当たり、三人とも廊下に倒れた。
俺は倒れる三人に対して思った事を伝える事にした。
「えっ…弱っ」

どうやら見た目だけ強そうだが、三人共かなり弱い。最初の奴のパンチのスピードも凄く遅い。ボクシング部の佐竹くんに比べたら圧倒的に弱い。
「先輩達、見た感じヤンキーっぽいけど、かなり下っ端?自分より強い相手と喧嘩した事ないでしょ?」
イキってるだけでとても弱い。
恐らく自分達より下と判断した時は強がるが格上の相手にはペコペコするタイプと見た。

「いてて。てめー、よくもやりやがったな」
「一人くらいはキャッチするかと思ったけど…鍛え方が足りないね」
「こ、こいつ。何者だよ?」
「灰村が別に嫌がってないなら俺も何もするつもりは無いけど、もし、また懲りずに灰村に近づいたら今度こそ、ぶっ飛ばすぞ」
俺はそれだけ言って、灰村に近づく。

「灰村。大丈夫?さ、部室に行こう」
「来んの遅い」
「ご、ごめん」
「嘘。ありがとう」

これで一件落着かなと思いたいが灰村をここに呼んだ人間がいる。
そう、それは。
「そろそろ出て来てもらえませんか?夢沼先輩」
俺の一言が響くと近くの教室がガラガラと扉の開く音がなり、夢沼先輩が出て来た。
「どう言うつもりですかね?」
「えっ?なにが?」
「灰村にこんな奴ら近づけて」
「その人達は灰村の事好きだって言うから場を設置しただけ」
「三人も同時に呼ぶ必要は?」
「灰村モテるねー」
…この先輩悪いなんてこれっぽっちも思ってないな。
「灰村ってさ、告って来る男、ことごとくフってるって聞いてさ。どんな風にフルのか興味あったのよ」
「なら一人でいいだろ」
「どうせ、フラれるんだから一人でも三人でも同じじゃ無い?」
夢沼先輩笑みを浮かべたまま話続ける。
「それに灰村って男に話があるから後で来て欲しいとか言われても、誰かに聞かれたく無いと思うくらいのチキン野郎なら告白してくんなって、拒絶するんでしょ。なら私達の学年は灰村に告白は厳しいじゃない。だから、私が探偵部の連絡先に連絡して、灰村を呼んだの」

本当にそれだけだろうか。この先輩は他にも何か企んでそうだな…

「後、ここ最近、先輩達が俺にやたらと挨拶してくるのはあんたの差し金?」
「さぁ?どうだろうね。てか、間宮くん、怒ってるね。君は怒ると年上だろうと関係なくタメ口になるもんね」
「怒りたくなる事してるからでしょ」
「ま、灰村。気を悪くしないでよ。これからは気をつけるよ」
先輩はそう言って、灰村の横を通り、小声で何かを言ってから帰って行った。

あの先輩は謎だ…何がしたい。
兎に角部室に行くか。
「灰村。行こうか…」
灰村に反応が無い。俯いていて、少し震えている様に見える。
「灰村?」
俺の声がようやく聞こえた様で、ハッたした表情で俺を見た。
「ご、ごめん…行きましょう」

部室に着くと、快斗とそしてミス研の金田さんが既に席に着いていて、俺達を発見すると近付いて来た。
「灰村さん、あんた、二年の夢沼先輩に何やったの?」
「なんで…」
「なんでって、二年の中で結構噂になってるらしいよ灰村vs夢沼が始まったって」
「遊園地での出来事を根に持ってるだけでしょ…」

夢沼先輩の灰村への態度はそう言う事だったのか。
本堂さんの事が記事に出来なかったって事なら俺にも恨みを持っててもいいと思うが…

「気を付けなよ。夢沼先輩がガチで潰しに来て、狙われた子は精神がやられて学校辞めるって噂だよ」
「そうみたいね…」

灰村はなにか心当たりがあるのか表情を曇らせる。

「まぁ、なにかあったら言いなよー。私達も力になるし」
「金田さんがそんな事言うなんて…」
「なに、間宮。私が誰も助けない人だと思ってたの?」
灰村に対する態度どんどん変わっていくなこの人とは思ってます…
「てかさ、夢沼先輩に言われたのよ。灰村に勝ちたいなら教えてあげるって」

なるほど、灰村を表上ライバル視しているから金田さんは駒に出来ると思ったわけか。本当は仲良くなりたいだけとは知らずに。

「でも、私は、断ったわ!!灰村さんには自分の実力で勝つってね!!」
「おっ!明ちゃん!!かっこいい」
一言も喋らなかった快斗が金田さんを持ち上げる。
でも、この金田さんの態度は今の灰村には凄く嬉しいかもしれないな。
「金田さん」
「ん、なに?」
「金田さんのその優しさ、俺は凄く嬉しいよ」
「えっ!?な、なによ!!間宮のクセに」
顔を赤くして、部室の隅の席に戻ってしまった。
思った事を素直に言っただけなんだが…

「さぁ、灰村さん!!勝負よ!!今日はチェスで!!」
持ち運べるサイズのチェスボードをバッグから取り出し、机の上に広げる。
灰村は何も言わずに金田さんの元に向かった。

その日。金田さんは初めて勝利し、叫んだ!!

部活も無事終わり、俺達は帰宅する。

家に着いて、部屋で寝転んでいると。スマホに着信があり、画面には
柳 香澄と表示されていた。
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