名探偵になりたい高校生

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四十四話 一年二学期 七

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 放課後。
 いつも通り部室に行き、退屈な時間を過ごす、俺達。
 ポストには特に依頼もなく、スマホをいじりながら時間を潰す。
 お隣のミス研も暇なようで、金田さんはこっちに来て灰村に勝負を挑んでいる。
 すっかり仲良しになったな…
「退屈だな…」
 俺は独り言のようにと呟いた。
「依頼がないって事は平和って事でしょ。いい事じゃん」
 パチッと将棋の駒を置きながら灰村は俺へと言ってくる。
「まぁ、そうなんだけどさ。でもなんかしたく無い?」
「別に…私はすでに金田さんの相手してるし」
 パチッと再び駒を動かす灰村。
「はい、王手」
「ちょ、ちょっと待って!!」
「待ては聞かない。私の勝ち」
「だああああ、また負けたああああ!!」
 金田さんは頭を掻きむしりながら悔しそうにしている。これで何連敗してんだろう。
「決めた」
 部室に来てからずっと雑誌を読み黙っていた快斗が突然声を出し、灰村の方を見た。
「灰村さん!!好きだ!!付き合って下さい!!」
 快斗の唐突の告白。
「無理。死ね」
 灰村の優しさのかけらも無い口撃。
「快斗ぉ。いい加減諦めなよ」
 金田さんも呆れながら快斗に言う。俺も金田さんの意見に賛成だ。快斗はイケメンだし、余計な事言わなければモテるだろうし、灰村一人にこだわる必要もないだろ。
「そこをなんとか!!お試しでもいいから!!」
 いつもは直ぐに引き下がるのに今日は粘ってきた。
「……そんなに私と付き合いたいの?」
「はい!!付き合いたいです!!」
 灰村は顎に手を当て、少し考えてる様子。どうしたんだろ?
「私が別れたいっていったら別れてくれる?」
「も、もちろん!!言わせないように努力する!!」
「そう…じゃあ…付き合ってあげる」
 快斗の気持ちが遂に届いた瞬間だ。
 おめでとう快斗。
「やったあああ!!」
「跡野くん」
「はい!?」
「私達。別れましょ」
「ちきしょう!!そんな事だと思ってたよー!!」
「私と数秒だけでも恋人になれたんだから満足したでしょ。二度と告白してくんなよ」
 快斗を一瞬だけ喜ばせておいて、一気に落とす…なんて性格が悪いんだ君は。
「快斗、灰村はそういう女だ。諦めて他の女子に行った方がいいよ」
「えー。灰村さん以上な女子なんていないって」
 そこまで言いますか。凄いな快斗は。
「今年中に彼女が欲しい」
「なんで?」
「そこは秘密で」
「あっそう。じゃあ灰村以外と付き合うしか無いんじゃ…」
「灰村さんがよかったんだけど」
「私に執着するのは勝手だけど、そこからストーカーになったら、私、君を社会的に抹殺するから」
「そんな事しないって!!俺は女子の嫌がる事はしない男だよ」
 胸を叩き、自信満々に立つ快斗。
 灰村に何回も告白して、灰村に迷惑をかけていると言う自覚はないのだろうか?
 灰村はため息を吐いた後、窓に視線を向け、会話を終わらせた。

 会話も終わった頃、扉がコンコンとなるとガラガラと開いた。
「どうも。ここが探偵部の部室ね」
 ドアの前に立っているのは新聞部で二年生の夢沼ゆめぬま華蓮かれん先輩だ。
「なにかようですか?」
 俺は廊下で立っている夢沼先輩を歓迎する事もなく、話かける。
「あはは。すっかり嫌われたようだね。文化祭で君に言った事覚えてる?」
 文化祭で夢沼先輩で言われた事…
「取材でしたっけ?」
「そ。灰村に跡野。後は間宮くんにね」
「なんで孝一にだけくん呼びなんですかー!!」
 引っ掛ったのはそこかい快斗よ。
「まぁ、興味が出て来たからかな。間宮くんに」
 興味…だと!?
 夢沼先輩は二年で一番の美人さんと灰村が言っていた。その先輩が俺に興味が出て来ただと。
「君、かなり強いんでしょ?この間の文化祭。君と同じ苗字の間宮って女の子が、アームレスリング大会で優勝したんだけど。妹さんかな?」
 薫の事か…確かにあいつ、優勝したって、言ってたな。
「まぁ、妹ですね。それがなにか?」
「その妹さんが私と同じ学年。腕力だけなら学校一の熊田を倒したんだけど、その時に妹さんが、兄さんを倒すのは私だ的な事言ってたらしいのよね。だから私は妹さんが倒したいって言ってた君はかなり強いと思ってるの」
 熊田…先輩?だれだ。
 俺は灰村に視線を送り、情報を求めた。
 灰村も俺の視線の意味を理解し、情報を話し始める。
熊田くまだ あつ。二年六組で部活は手芸部に所属している。そこの先輩の言う通り、学校一の腕力を持っているわね。六組は体育祭、二年の中で四位と決して順位は高く無いけど、綱引きでは圧倒的な強さを見せていたわね」
 へぇ、そんな人いたんだ。
 絡むことはなさそうだけど、覚えておこう。
「さすが、灰村ね。まぁ、その熊田を倒した君の妹。その妹が倒したい間宮孝一くんはもっと強いと言うわけ。だから興味出てきた。私、強い人って好きなのよね」
 …だからか。文化祭終わってからやけに力仕事の依頼が多かったのは。
 全部薫のせいか。
「ちょ、ちょっといいスか。えっ?なに、孝一ってそんなにつえーの?」
「快斗知らないんだっけ。間宮はねぇ、強いんだよ。なんか、お父さんがありとあらゆる武道やってて全てのチャンピオンだったんだってさ。てか、妹も強いとかあんたんち格闘一家なの?」
「俺は、そこまで格闘技に入れ込んでないよ。薫は夢中でやってるけど」
「へぇ、すげーんだな。さすがは俺の親友」
 親友らしい行動を一度も見せたこと無いのに、よく言うな。
 そう心に思うだけで決して口には出さない。
 それより、夢沼先輩は俺に興味を持ったって事を言う為だけに来たのか?

「先輩さ、そんな事言う為だけにここに来たわけ?」
 俺が聞くより先に灰村が質問した。
 なぜか、不機嫌になっている気がするが。
「ふふ。そう怒んないでよ。確かに用件は別にある。君達、探偵部に依頼があるのよね」
 夢沼先輩は不適な笑みを浮かべ、俺達に依頼を話し始めた。

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