名探偵になりたい高校生

なむむ

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四十三話 一年二学期 六

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文化祭も終わってから一ヶ月経ち、
季節はすっかり冬となってきた。
ピューと吹く冷たい風を身体で受け、
全身を震わしながら学校へ向かう。
「おはよう。間宮くん」
後ろから声が聞こえ振り返ると、
紺色のマフラーを首に巻き、いつも通り
目付きの悪い表情でこっちを見ているのは灰村だ。
「おはよう。灰村」
俺は灰村の横に並び、歩き始める。
「二学期も後少しで終わりだな」
「そうね。この間マラソン大会も終わったし、後は全開高と一緒にやるクリスマス会ね」
クリスマス会。
それは二学期の最後に行われる一大イベント。
恋人がいる人は甘い一時を過ごし、いない者はこの日、異性にもうアプローチをするのだとか。
クリスマス会と言われているが裏では、
恋活などと言われているらしい。
「めんどくさ…」
あまり乗り気のない灰村はボソッと呟く。
「本堂さんが来たら、一緒に行動してあげれば?ボディガードとして」
「来れないだろ。今忙しいみたいだし」
本堂ほんどう 恵子けいこ
この学校一の美女であり、先日の文化祭でのライブを大成功させ、芸能界入りをした彼女は文化祭終了後直ぐに決まった清涼飲料水のCMがテレビに流れると、あの可愛い子は誰だとSNSで広がり、一気に人気者へとなっていった。
「そんな彼女の彼氏になれたのに勿体無いわね」
文化祭が終わって後夜祭が始まる直前に俺は本堂さんに思いを告げられた。
別にフったつもりは無いが、本堂さん自身が俺とは付き合うつもりはないと言っていたし、本堂さんの気持ちを尊重し、俺も自分の気持ちを答えなかった。
付き合うつもりも無かったし。
まぁ惜しい事をしたと言えばそうなんだが…
あんな可愛い子に告白されるなんて今後の人生で二度と無いだろうな。
「…他に好きな人でもいるの?」
「灰村からそんな事聞かれるとは」
好きな人か……………。
う~ん……。
考えてみたけど今の所はそんな人はいないと思うけどな。
「いない…かな?」
「……へぇ。つまんね。いたら情報でも教えてあげようかと思ったのに」
「その時が来たらお願いしますよ」
「有料だけどね」
お金取るのかよ。
「そういうお前は?」
灰村が聞いて来たんだ。俺も聞いていいだろ。
「私?なに、興味あんの?」
「一応聞いておこうと思って」
灰村は少し考える。いるのだろうか?
こいつは意外とモテるからな。
「秘密。女とそう簡単に、恋バナ出来ると思うなよ」
「そうですか…」
灰村は少し笑いながら俺の顔を見て、
「それに。私の普段行動を観察し、私に誰か好きな人がいるか当ててみなよ。名探偵くん」
名探偵か…高校生と言えば高校生探偵。
俺の中のイメージは子供の頃から変わらない。
…灰村の好きな人か。それを当てるなんてこの高校生活が始まって以来一番難しい謎な気がするな。
そもそもいるかどうかもわからんが。それを含めて当ててみろって事か。
さて、学校も見えてきた。今日は何か依頼あるかな。
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