名探偵になりたい高校生

なむむ

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三十九話 文化祭 十六

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 体育館のステージのライトがクロスして光ると真ん中に立つ本堂恵子さんが姿が見えた。
「みんなー!!今日は来てくれてありがとー!!楽しんでいってね~!!」
 本堂さんの言葉が終わると同時に激し目の曲が流れ始め、本堂さんは踊りながら歌い始めた。

 本堂さんの登場で会場は一気に盛り上がり、サイリウムを振りながら、曲を聴いている。
「すげー。本堂さんいつもと違うな。まるで別人だ…」

 俺は本堂さんをこのまま見続けていたいと思ったがそうはいかない。このライブ中に本堂さんを妨害するなにかが起きるはず。それを阻止しないと…
 もし妨害行為が起きてしまったらいくら本堂さんがいいパフォーマンスをしても不合格になってしまう。
 あの社長、嫌な人だなぁ…

「何がいつどのタイミングで起きるか全くわかんねぇ。どうするか」

 ぎゅうぎゅう詰めの中俺は歩いて行き、何かトラブルが起きていないか、探す。
 その間でも本堂さんの歌声が響く。

 ライブの映像って後で貰えるかな。なんて事を考えながら周囲を見渡していると突然声を掛けられた。
「君が間宮くんかな?」
 後ろを振り向くと、紺のスーツを着たメガネの男が立っている。
 この人は確か、社長の近くにいた人だ。
「社長に言われてね、君の所に来たんだ。何が起こるかわからないだろうから、ヒントをってね」
「ヒント…」
「そう、トラブルは三つ。光、人、音、だ」
「光に人に音ですか」
「それじゃ、頑張ってくれ。ああ、後…いや、これはいいか…」
 スーツの男はそれだけ言ってその場から離れていく。
 光に人に音か…このライブ、全部で三曲歌うって言ってたよな…一曲に付き、一つのトラブルか?
 言った順番でトラブルが起きる事を信じて行動してみるか。
 まずは光。
 となると照明。
 俺は会場である体育館の二階に特別に建てられた台に目を向ける。
 照明は全部で六つあり、今も照明を動かしながら本堂さんに向けて光を当てている。
 あの中のどれかがトラブルを起こすって事か。

 俺は台に近付き何かトラブルがないか確認をするが今の所何も起こっている気配がない。
 勘が外れたか?となると人か音になるのかな…

「な、なんだこれ!!」
「おい、どうした?」
「しょ、照明がロックでも掛かったみたいに重くなった…だ、ダメだ全然動かない!!」
「なに、やってんだ!!後一分後にはあの子がステージ端に移動するんだぞ!!お前のポジションじゃないと照明が当たらねえぞ!!」
「そ、そんな事言ったって…クソ重くて全然動かないんですよ」

 トラブル発生だ。あそこの照明が動かないらしい、急げ、俺!!
 俺は台に乗り、照明を担当している人に話し掛ける。
「あの、すみません。照明が動かないって聞こえたんですけど」
 俺に話しかけられて少し驚いた感じの表情を見せる照明の人。名前がわからないから照明Aと呼んでおこう…
「え、ああ。そうなんだ。全然動かなくて…もうすぐこいつを右端に向けなきゃいけないってのに…」
 他の人も自分の場所から動けないらしく手伝う事も出来ないらしい。ならば。
「手伝います」
「そ、そうかい。それは助かる」
 俺は照明を持ち、照明Aさんと共に照明を右端に向ける為動かす。
「重っ!!ロック掛かってんじゃないですか?」
「いや、それが掛かってないんだ。こんな事は初めてだよ。まるで誰かに操作されてるみたいだ」
 操作…あの社長は遠隔操作かなにかしてんのか?
 じ、時間が、ない。急げ!!
「うおおおおお!!」
 俺は思いっきり力を込め、照明を少しずつ動かす。
「ま、間に合え!!」
 パッと照明が付き、右端にいる本堂さんを照らす。本堂さんは歌いながらお客さんに向けて手を振っている姿を確認出来た。
「間にあったぁ~」
「ふう、ありがとう君。助かったよ。あれ?急に照明が軽くなった」
 照明がうまく当てられた事で、社長は遠隔操作をやめたようだ。
 しかし、トラブルは続いた。
 今度は左端に向ける照明が重くなったらしい。
 俺は急いで、そっちに向かい手伝う事に。
「手伝います」
「おお、助かる」
 俺は照明Bさんと一緒に照明を左端に向ける為押す。
「重い!!さっきより重い!!」
 ダメだ、少し動くだけで間に合う気がしない…
 せめて後一人いれば…
 そう思っているとちょうどいい人間を発見した。
「薫!!」
 我が妹、そして脳筋。今ここで一番必要なやつだ!!
「ん?誰だ。…って兄さん!!何してんの?」
「いいからこっち来い。早く!!」
 薫は渋々やってきて腰に手を当てながら俺を見ている。首にぶら下がっているメダルが見える。こいつアームレスリング大会優勝したのか。
「ちょっと、ちょっとぉ!!私は今ライブを楽しんでるんですけどぉ!!」
「そのライブを楽しむためにお前の力が必要だ。手伝え」
「どゆこと?」
「いいから、この照明を左端に向けるぞ。二人じゃ重くて動かねぇ。お前の力が必要だ」
「よくわかんないけど。兄さんを手伝えばいいのね」
 薫も照明を掴み、三人で一気に照明を左端に向ける。
 左端に向けると照明をパッと付け、本堂さんが照らされる。
「間に合った…」
「助かったよ。ありがとう君達」
 照明Bさんにお礼を言われた後俺と薫は台から降りる。
 ちなみに照明も元の重さに戻った様。
 本堂さんに聞いた段取りではこの後は真ん中に戻り歌うだけだったよな。
「ところで兄さんあそこで何やってたの?」
「近くにいたら、なにやらトラブってるのが聞こえたから手伝ってたんだよ」
「ふ~ん…まあいいや」
 薫はそれ以上何も聞かず友達の元へ戻りそれと入れ替わる感じで薫の友達が近づいてきた。
「あんたが、薫の兄貴?」
「そうだけど…君がグレッシー?」
「やっと、会えた。あたしの憧れの灰村先輩の彼氏に相応しいかテストさせてもらうよ!!勝負しな」
 この子はなにを勘違いしてるんだろうか?中学で俺と灰村が付き合ってるなんて噂は一度も無かったが…
「………ごめん、今それどころじゃ無いんだ。またね。後、俺は灰村と付き合ってないよ」
 薫とグレッシーと別れ、元の位置に戻る。一曲目でトラブルはもう無いと判断し、次の曲でのトラブルに向けて対策を考える。
 次は人か…
 思案中に一曲目が終わり、会場は大盛り上がりだ。
「可愛いーー!!」
「恵子ちゃーん!!」
 数々の声に笑顔で手を振る本堂さん。
 可愛いなぁ。
 この笑顔を最後まで護らなければ。


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