名探偵になりたい高校生

なむむ

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三十五話 文化祭 十二

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文化祭、最終日。本日は土曜日。
休日なだけあって、今日はたくさんの人が来るだろう。そんな中で、あの犯行予告の手紙。何事もなければいいが…

今日はいつもより早めに登校した。
理由は一つ。体育館に行く為だ。昨日の放課後、体育館に異常が無いか調べてその時は何も無かったけど、俺達が帰った後に誰かが何かしたかもしれない。そう思った俺はもう一度体育館を調べようと思ったわけだ。
教室に着くと、既に誰かいた。我がクラスのトップバッターの嗚呼さんだ。
嗚呼さんの朝はいつも早い。この人何時に登校してんだろ。
「おはよう、間宮くん。今日は早いわね。さては私から一番を奪おうとした?」
「嗚呼さん程一番が似合う人はこの世にはいないからそんな事はしないよ。ちょっと用があってね。それじゃ」
俺は荷物を置いて体育館に。

体育館に着くと何人かのスタッフがいた。学校の関係者っぽくないからライブ関係の人だろう。
もう少し早く来ればよかったか。
この中に犯人がいたらどうしよう。

「そこのライトもう少し、右に寄せてください。後、照明の明かり、少し強いな、もう少し弱めで」

体育館の中央で、全体的に指示をしている人がいる。アイドル部顧問の霧島先生だ。
霧島先生は俺に気がつくと近付いて来た。
「こんな朝早くにどうした。今は関係者以外立ち入り禁止だぞ」
「昨日体育館に異常は無かったけど、念の為もう一度調べようかと思ったんですが」
「悪いが、今は最終調整中だ。お前だけ特別と言う訳にはいかない」
「そうですか…本堂さんは来てます?」
「本堂なら、音楽室に待機してる」
「わかりました。ありがとうございます」
俺は一礼をして音楽室に向かう事にした。
「間宮」
「なんでしょう」
「…いや、なんでもない。引き止めて悪かった」
調べたかったが、この様子じゃ無理に調べる事も出来ない。
俺は諦め音楽室に向かう事に。

音楽室に到着し、ノックをすると返事と共に扉が開く。
「おはよう、本堂さん」
「おはようー。どうしたの?」
俺が来ると思ってなかったのか本堂さんは少し驚いた表情をしていた。
「体育館をもう一度調べようとしたんだけど霧島先生の許可が降りなくてね」
「なるほどぉ。それで私に会いたくなったわけか」
体育館に行けないのが本堂さんに会いたくなる理由とイコールになってるのが謎だけどまあいいか。
「霧島先生だいぶピリついてたでしょ?」
「そうだね。そんな感じはした」
「でしょー。私も朝から怒られちゃったよ。姿勢が悪いって。いつ何処で誰が見てるかわからないんだぞって」
頭に手を当て『てへへ』と笑う本堂さん。
「それにしても初ライブ。緊張しちゃうなぁ」
「本堂さんでも緊張する事あるんだね」
「緊張しますぅ。…それにあの手紙の事もあるし、不安だよ」
初ライブであの手紙。不安にもなるよな。シンとする音楽室でなにを言えばいいのか言葉に詰まる。
「信じていいんだよね?」
「ああ、探偵部に任せなさい」
「探偵部って言うか。間宮くんを」
真っ直ぐこっちを見つめる本堂さん。
「任せなさい。本堂さんはドンと構えて、最高のパフォーマンスをみんなに見せてくれ」
「うん」
これは、絶対に妨害を阻止しないと…

本堂さんと別れ教室に戻った俺は灰村に話しかける。
「おはよう、灰村」
「おはよう。今日は早いね。本堂さんのところにでも行ってたの?」
「よくわかるな。ところで手紙の方の分析はどうだった?」
「そうね。この学校の生徒、先生ではない事がわかった。間違いなく外部の人間」
さすが灰村…
どうやって調べたんだろ。
灰村には感心してしまう。実はもう犯人とか知ってたりして。

時間になり、文化祭最終日が始まった。
俺はいつも通り午前中は店番だ。出来れば色々と動きたいんだが。
「間宮くん、君は今日も店番か?」
俺の前に立ち、話しかけて来たのは、クラスのシャツとその上からジャージを着ている堀田さんだった。
二日間、着物姿だった堀田さんが今日はクラスのシャツを着ているなんて珍しい。
「堀田さんが、着物姿じゃ無いなんて、今日は茶道部は無いの?」
「無いよ。うちは二日間のみだ。だから今日はクラスの方を手伝うよ。と言っても三日目じゃ、このクラスの縁日にはほとんどお客は来ないだろうね」
文化祭が始まって、三十分程経っているが、今の所お客はゼロ。もちろん学校にお客さんが来ていないというわけでは無い。廊下から賑わう声が聞こえているから、人はいるのだ。
廊下を見ている隙に堀田さんは、ヨーヨーすくいを勝手に始めていて、既に五つ程すくっていた。
「堀田さんは器用だね」
「そうでもないさ」
こちらを見る事もなく、ヨーヨーをすくっている堀田さん。
俺はそんな堀田さんを見て、ある事に気がついてしまった…

この人…割と胸…デカい…かも

「ん?どうした」
俺は咄嗟に視線を逸らした。
「い、いや。なんでもないです」
なんか、いけないことに気がついてしまった…いかん、いかん。忘れよう。

首をふり、頬をバシバシと叩き、気合を入れ直す。それを堀田さんは不思議そうな顔をして見ていたが気にしない。

「儲かりまっかー」
エセ関西弁を話す声が聞こえ、いつの間にかお客さんが来ていることに気がついた。
「ぼちぼちでんな…」
俺も同じエセ関西弁で返す。
俺は確認したくはないがお客さんの顔を見た。
「やっほー。兄さん。遊びに来てやったよー」
「帰れ」
「なんでよぉー!!せっかく可愛い妹が来てやったのにぃ!!」
「自分で可愛いとか言うな。てかお前、一人で来たの?」
「いや、違うよ。グレッシーと一緒」
誰だ、グレッシーって…
薫の近くにはそのグレッシーとやらはいないのだが。
「間宮くん、こちらは君の妹さんか?随分と元気のいい子だね」
「うるさいだけだよ…」
「初めまして、間宮まみや かおるです!!中学二年です!!」
「初めまして。私は堀田寧々だ。よろしく」
「所でお前何しに来た」
「ふふーん。よくぞ聞いてくれました。私がただ兄さんに会いに来たと思っているなら大間違いだ」
薫は手に持っているパンフレットの一部を指を差し、目を輝かせながら話し始めた。
「アームレスリング大会!!これ、出たかったんだよねぇ!!兄さんの部屋に忍び込んで三日目の項目を見た時行く事を決めたわけよ」
勝手に俺の部屋に入るな…
ちなみに、薫も俺と同様、父親から格闘技を学んでいる。そのせいで格闘関係が凄く好きになった。現在部活もレスリング部に所属して、この間の新人戦に優勝したようだ。
「それに、このアイドルのライブも観てみたいし。すっごく可愛いじゃんこの人」
本堂さんの写っている写真を指差し興奮している。
「それにぃ~。肝心な事も調査しなければいけないのよ」
肝心な調査?
こいつ何か調べに来たのか?
「兄さんの彼女を探しにね!!」
「はっ?」
こいつ今何言った?
「だからぁ~、兄さんの、か・の・じょ!!」
「いねぇよ彼女なんて!!」
「嘘だぁ~。誰かと電話してるじゃん。あの声のトーンは間違いなく女!!どうだい、探偵オタクの兄を持つ妹である私の推理は。例えばそこの堀田先輩。あなた、兄さんルート入ってません?」
堀田さんの方を見て、ニヤつく薫。
「兄さんルート?なんだそれは」
首を傾げる堀田さん。薫がなにを言っているのか理解できないんだろう。
薫の言うルートとは恐らく、ゲームの事だ。薫は恋愛シュミレーションゲームが好きで良くやっている。その際に、主人公が一人のキャラを攻略する為にその子だけを追う事を誰々のルートに入ったと言うらしい。
つまり薫は誰かが俺の事を好きになり、俺を攻略しようとしている人を探しているようだ。
そもそも俺を好きだなんて人は一人もいないのだが…
「堀田さん、こいつの事は無視していい。気にしないでくれ」
「彼女の事をルートと呼んでいるのか?それなら安心してくれ。私は間宮くんの彼女ではないし、恋愛感情もない。ただの友人だよ」
「う~ん。怪しいなぁ。私の推理は外れないんだけどなぁ…でも繋がりはありそうなんだよなぁ。兄さんルートに入っている人と」
「はっはっは。面白い妹さんだね」
こいつが余計な事を言う前にここから、追い出そう。
「薫。お前の計画はわかったから、それは勝手にやっててくれ。友達を待たせてるんだろ?さっさと行け」
俺は薫の背中を押し、廊下の方に持っていく。抵抗しているのか中々押せない。
「お前…太ったか?」
「はあああ!?乙女に何言ってんのぉ!!兄さんが軟弱なだけでしょうが!!」
薫は振り向き俺の手を掴み、押し返してくる。
「お前がいると俺が恥ずかしいんだよ。さっさと出ていけ」
「恥ずかしいって何よ!なんなら、ここで兄さんぶっ倒し、もっと辱めてやろうかぁ!!」
ヤバい、こいつ戦闘モードに入ろうとしてる。
両者互角の押し合い。こいつここまで力つけて来たのか…や、やるな。
「薫ちゃん」
「あーーーーーー!!杏ちゃんだぁ!!」
薫は俺から手を振り解き、灰村の方へと駆け寄っていく。
「杏ちゃん、杏ちゃん!!」
「よしよし」
灰村の胸に埋もれ、顔をスリスリをしている薫。それを羨ましそうに見つめるクラスの男子達。
「久しぶりだね」
「うん!!杏ちゃん元気だった?」
「ええ。元気だよ。薫ちゃんは元気そうだね。所で今日はどうしたの?」
「アームレスリング大会に出に来たの。後は兄さんルートに入ってる人を探しに。杏ちゃん知らない?」
灰村は俺を見る。余計な事言うなよ。
「私は知らないかな。間宮くんはこの学校じゃ、異物扱いだから、見つけるのは大変よ。頑張ってね」
「ええ~、杏ちゃんも知らないのかぁ」
灰村と薫が話している中、ガラガラと扉が開く。
「ねえ、三組ってテープ余って……」
。今度お買い物行こうよ!」
「ええ、いいわよ。におすすめの店見つけたから一緒に行こうね」
灰村と薫、その二人を見ながら扉の前で立ち尽くしている金田さんがいた。
「ま、間宮…あ、あの子、誰?」
「俺の妹」
「ふ、ふうううん。な、名前で、呼び合ってるんだぁ…この私でさえ、まだ呼んでないのに」
この人もめんどくさい人だな。
「薫ちゃん、誰か待たせてるんじゃないの?」
「あ、そうだ。グレッシーが待ってるんだ。それじゃ、もう行くねバイバーイ!!」
薫は笑顔で手を振り、教室から出ていった。
「君の家は毎日賑やかそうだね」
「あいつ一人で騒いでるだけかな…」






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