名探偵になりたい高校生

なむむ

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三十話 文化祭 八

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我が全力高校の姉妹校である全開高校に使用されている二年一組は、スーパー縁日となり、かなり賑わっていた。
ここに来るまでに廊下まで鳴り響いていた祭りっぽい音楽を大音量で流し、クラスの人達は法被はっぴを着ていて、クラスの中心には手作りの神輿をワッショイ、ワッショイと担いでいる。
神輿をよく見ると子供が乗っていて、どうやらアトラクションの一つとなっているようだ。
他にも出店が所狭しと並んでいる。
「こりゃ、ウチのクラスには人来ないな…」
クラスの団結力、店の数、熱量、全てが負けている。
これが全開高校の文化祭か。向こうの高校の文化祭に興味が出てきたよ。
「ねえ、突っ立ってないで、なにかやったら?」
俺の背後にいる灰村は、仏頂面して言ってくる。
「ああ…そうだな。なにかやるか」
せっかく来た事だしなにかやろう。
俺は一番近くにある輪投げをやる事にした。
「へい、らっしゃい!!」
威勢のいい声が飛んできた。
マジで祭りの人のテンションじゃん。
すごっ…
「遊んでいく?輪投げは全部で三回投げれて、一回百円だ」
値段も安い。
「更に、縦、横、斜め、どこか一つでも揃えば、景品もゲット出来るぜ!」
随分と粋な計らいだなー。
俺は財布から小銭を取り出し、お店の人に渡した。
「まいど。はいまずは一つだ」
輪を一つ渡され、投げる位置に着く。
しかし、なんで一気に渡してこないんだ?
まあいいか。気にせず投げよう。
まずは一投。
3マスかける3の上段右隅に見事に引っ掛かる。
「おめでとう!!みんな!お客さんが一投、決めたぞ!」
輪投げの店の人が声を上げると、クラスの人全員が俺の方に向き、おめでとう!と言ってくる。
当然何事かと他のお客さんも見てくる。
…これは、恥ずかしい。
さっさと終わらせよう。
二投目。
中心に引っ掛かる。
「おおおお!!すげー!リーーーーーーーーーーーーーーーーーーーチ!!」
うるせぇ…
「お兄さんやるね!ほい三投目だ!」
輪を渡され、位置に着く。なぜかクラスもシンとする。
恥ずかしい…見ないでくれ。

後一投か。下段左隅に輪が引っ掛かれば、景品ゲットか。

三投目を投げる。
ん?

運命の三投目。惜しくも上段左隅に引っ掛かる。

「あああ!惜しい!!残念!」
クラスの人全員が残念がる様子を見せる。
「惜しかったね。また、挑戦してくれよ。全力高校さん!」

他の店も挑戦した俺は、どれも後少しの所で、外れる始末。景品一つくらい取れると思ったんだけどな。

「所で、灰村は何かやらないのか?」
「あんなうるさくて恥ずかしい中、やりたくないわよ」
綿あめを頬張りながら、言う灰村。
お前綿あめ似合うな…
「それに…」
「それに?」
灰村は俺を見た後すぐに、あたりの店を見ながら話す。
「明らかに細工してるのに気が付かなかった?景品を取らせる気が全く無い」
細工?
そう言えば、輪投げの時に違和感は感じた。
「景品が取れそうになって、最後に渡された輪。あれ今思えば少し軽い気がしたな。でも、景品取ってる人も何人かいた気がするぞ」
「ええ、いたわね。全く取れないんじゃ、怪しまれるもの。でも、それは恐らくサクラ。私服姿の全開高校の生徒で間違いないわ。この高校の生徒は誰一人取れていない」
「はああ。お前よく観察してんなぁ」
「探偵名乗るならそれくらい日常的にやりなよ。ポンコツ」
ポンコツと言われてしまった…仕方ない。ここでの事には全く気が付かなかったし。
「だから玲那はあまり乗り気じゃなかったのか」
「そうね。インチキなど決してしない真面目な能登さんは、ここのクラスは気に入らないでしょうね」
廊下で腕を組み、不機嫌そうな顔で立っている玲那が視界に入る。
しかし、そうまでして景品を取られたく無いなら最初からそんな事しなければいいと思うが、そこは商売なんだろう。
「景品が取れるかもってんなら、お客も来るだろうし、ミスしても文化祭だしそこまで気にしないって感じか。景品を取らせる気がない向こうは売上が黒字になっていくか」
それにしても全く取らせないってのもな…
「景品一つでも取られたら赤字になったり?」
「そうね。私が見つけたのは、水族館と遊園地のペアの入場券がそれぞれ一枚。後は、図書券に、ギフト券」
「お金掛かってるな…」
そう聞くとどれか取りたくなる。
「水風船のヨーヨーすくいやるかな。あれなら堀田さんにコツ聞いたし、行けるかも」
「無理ね。いざ取れるかもの時にすぐ切れるやつ渡されるだけよ。それにあそこの店番してる人」
灰村は、少し高めの椅子に座って店番をしている坊主の男を指差した。
「さっきから、女子がヨーヨーすくいしている所上から見下ろして胸見てる…キモ。この教室、熱気で少し暑いし、ボタンを少し外した女子もいるのよね」
確かに少し暑い。女子の胸見たさに暑くしているのではと思えてきたが、このクラスの店番には女子もいるし。ただあの坊主が変態なだけだろう。
ウチの学校の女子の胸を見ておきながら景品を渡さないこの汚いやり方に少し腹が立つ。ギャフンと言わせてやりたい。
「なんかいい手はないかな。祭りの達人がやって来て、景品をこぞっと回収してしまう人とか」
思いつかん…
思案中扉が開くと新たなお客さんが入って来たようだ。
「はい、いらっしゃーい!!」
威勢のいい声が響く。
「ほーう。ここが、スーパー縁日か」
入り口に立っていたのは二人。一人は柳さん。もう一人は…お面を被った和服姿の人だった…

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