名探偵になりたい高校生

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二十四話 文化祭 二

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 文化祭二日目の金曜日。今日は昨日と少し違う。二日目の今日は、姉妹校である全開高校が店を出す日だ。全力と全開高校のお互いの二年生、もしくは部活で、初日に一番人気になった所が相手の学校にお邪魔し、店を開く事になっていて、今年ウチの学校は生徒会長の檜山先輩が率いる二年一組が行く事になり、空いた二年一組の教室に全開高校の代表が店を開く仕組みとなっている。
 檜山先輩のクラスが何をしていたかわからないが、投票結果、断トツで一位だったらしい。店の人気と言うよりか、檜山先輩を支持している人達が多く、その人達の票が決め手になっていると灰村が言っていた。
 檜山先輩…昨日少しだけ話たが、見た目は爽やかでイケメンで、性格も良さそうだ。あの人なら支持はされててもなんか納得言ってしまうと思うのが今の俺の感じだ。

「全開高校の店ってどんな感じだろうな」
 俺は独り言の様に呟いたが、それを聞いていたのか、堀田さんが答えてくれた。
「茶道部の先輩が言っていたが、毎年派手らしいぞ。気になるなら行ってみるといいさ」
「堀田さんは行かないの?」
「部活の方が忙しくてな。茶道部は人気なんだ」
 茶道部が人気なのか、それともメガネ無しの堀田さん見たさに人が集まるのか…
「ま、内容によっては行くかもな」
 内容か、全開高校の人達は何をするんだろうか?俺は本日のパンフレットに目を落とし、確認しようとした時、教室の扉が勢いよく開いた。
「どうも、全開高校の者よ!」
 全開高校の人間がいきなり入って来た。一年のクラスに何かようかと思いたいが、この声に聞き覚えがある。
 俺は声の主に気が付かれる前に教室を出ようとした。
「孝ちゃ~ん。どこいくの?私がせっかく会いに来てやったってのに」
 声の主はやはり玲那か…
 能登 のと 玲那れな。俺の幼馴染だ。家が隣で幼稚園から中学とクラスまでずっと一緒だった奴だ。
「よ、よう。玲那…久しぶりだな」
「そうね~。久しぶりになるのかしら。元気だった?」
 玲那はクラスの人達の視線も気にせず入ってくる。
 玲那に続き二人のガタイのいい男も入って来た。
「なんで、お前がいるんだ。今日は二年生だけだろ?」
「考ちゃん、私の事理解してるでしょ?私はとっくに全開高校の生徒会長。生徒会長は文化祭では応援の為必ずこっちに来る事になってるのよ」
 そうだったのか。知らなかった。
 それにしても玲那は相変わらずだな。
「体育祭。この学校まるで相手にならなかったよ。てっきり孝ちゃんが出てくると思って楽しみにしてたのに。まあ、このクラスじゃ精々五位が限界って所だけど」
 ざっと見ただけで三組の体育祭の順位を当ててきたか。そういった洞察力も相変わらずだな。
「悪いな。ウチのクラスは、仲良しなんだ。争い事には向いてなかったらしい」
 決して仲良しと言う感じでは無いが一応クラスをフォローしておく事にしよう。
 フォローになってるかわからんが。
「姉妹校だし、私が支配してあげようか?そうすればもっといい高校になるわよ?」
「お前は自分の高校で忙しいだろ。こっちの世話なんかしなくていいさ」
「私的には考ちゃんさえ支配出来ればそれで満足なんだけどな~」
「買い被り過ぎだっていつも言ってるだろ。俺はお前の右腕にはなれる程のポテンシャルはないよ」
「あっそ…まあいいわ。今日の私の学校の出し物遊びに来てね。楽しいから。それじゃ」
 そう言って玲那はウィンクをした後振り返り、教室を出て行こうとした。
「ああ~。最悪」
 玲那は天井を見上げた後、首だけを右に向け、その先にいる灰村をみた。
「いたんだぁ~。灰村ぁ」
「あら、どこかの女王様かと思ったら。能登さんじゃない」
 灰村と玲那…二人は仲が悪いのは俺の中学では有名だ。その二人が再会してしまった。空気が一気に重くなるのを感じる。
「あんたに、女王とか言われるとマジでムカつくんだよねぇ」
「もう一回言ってあげようか?女王様」
「呼ぶんじゃねえよ!くそ灰村!!」
「あらあら、元気がいいわね」
 こめかみをピクつかせる玲那と睨む灰村。
「灰村さぁ。さっさと学校辞めてくれない?あんたの顔見たくないの」
「あんたが、辞めればいんじゃない?そうすれば会うこともないでしょ。いつまでもあの時の事を引きずってる、敗北者さん」
 玲那の中で何かが切れたのか、灰村の方に駆け寄ろうとしたが玲那の側近の二人が押さえ付けている。
「女王!!いけません!」
「そうです!!我慢してください!!」
「うるさいわね!!離しなさい!私はあのクソアマをぶん殴んないと気が済まないの!!」
「あ~怖~い。女王様って暴力的なんだぁ」
 煽る灰村。
「あんたがいるから、あんたが存在したから孝ちゃんとの中学の思い出が一つ…!!」
「玲那っ!!」
 俺の声に玲那は体をビクつかせ、こっちを見てくる。
「な、なによ。孝ちゃん。灰村の味方する気?」
「玲那。余計な事言うな」
「……もういい。あんた達も離しなさい」
 玲那に言われ、手を離す側近。
「灰村。あんた…来年は体育祭、勝ち上がってこいよ」
「私一人じゃどうにもならないけど」
「第二体育祭。アンタを潰すわ。何がなんでも。大勢の前で恥かかせてやる。逃げんなよ」
 玲那は教室から出て行った。
 シンとするクラス。さて、どうするか。
「なんか。凄い事になっちゃったね」
 一番最初に口を開いたのは嗚呼さんだ。
 彼女の一番最初のスキルはこういった時も発動するのか。
 兎に角俺はクラスのみんなに謝る事にする。
「みんな、ごめん。あいつは昔からああなんだ。気にしないでくれ」
「そうね。私は中学の時しか知らないけど、能登さんは基本みんなの味方になるいい人よ。彼女が敵視してるのは私だけ」
 なぜ灰村と玲那が仲が悪いか。
 それは中学の時。玲那は中学の時も一年から生徒会長を務めていた。成績も常に一位で優秀。容姿も淡麗。誰もが憧れるカリスマ的存在だった。
 皆、玲那を慕い、玲那の元に集まっていく。玲那は誰の事も毛気嫌いせずに対応していった。灰村が転校して来た時、玲那は灰村にも当然接して行き、自分の支配下に置こうとした。
 しかし、灰村は違った。
 灰村は玲那の腹黒い内面をすぐに見抜き、相手にしなかった。それに腹を立てた玲那は灰村と衝突する様になり、顔を見ただけで、不機嫌になるのだ。
「君の知り合いは変わっているのだな」
 ボソッと堀田さんが俺に言ってきた。
「否定は出来ないかな…」
「所で、全開高校の出し物はスーパー縁日だとさ。彼女はウチのクラスの縁日を敵場視察も兼ねて来たのかも知れないね。縁日か…どれ、暇になったらいってみるとするかな~」
 堀田さんはそう言って教室から出て行った。
 兎に角二日目スタートだ。

 二日目の午前中は昨日と同様俺は店番だ。ヨーヨー釣りの前で店番をしているが、二日目となると流石にお客さんの入りがよくない。昨日と同じ時間に比べたらお客さんは殆ど来ていない。
 暇だ。
 退屈なのは皆同じようで、中にはクラスの商品を食べている人もいた。
 それにしても今日はクラスの人数が昨日より少ないな。
「なぁ、灰村。今日って店番少なくない?」
 同じく暇そうにしている灰村に声を掛けた。
「そうね。二日目は部活動での出し物に力を入れてるからじゃないかな」
「部活?」
「そ。三日間あるのよ?毎日同じ店しかないなら、お客さんなんて殆ど来ない。学校も生徒もそれをわかっているから三日間違う事をして、お客さんを退屈させないようにしているの。ちなみに初日の人気投票に部活が殆ど無いのは二日目に活動をするからってわけ。決して人気がないわけじゃない」
 灰村からそんな説明を受け、人の少ない理由に納得した。
 そして何事もなく、午前中は終わり、午後から俺は自由行動になる。
 さて、どこに行こうかな。

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