名探偵になりたい高校生

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二十二話 一年二学期 五

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「ねえ、最近私と灰村さん。仲良くなったと思わない?」
 部室にいつもの様に現れ空いている席に座るや否や、いきなりそんな事を金田さんは言ってきた。
「初めて会った時に比べたらよくなってるとは思う」
 俺は思った事そのまま伝えた。
 出会った時は常に喧嘩腰だったもんな。
「やっぱりー!」
 金田さんは灰村を嫌っていると思っていたが実は仲良くなりたい。そう聞いたのは夏休みだ。あれから彼女なりに努力しているんだろうか?
「ああ、明ちゃんやっぱり灰村さんと仲良くなりたかったんだ」
 タイミングよく部室にやってきた快斗は話を聞いていたようでそのまま会話に加わった。
「げ、快斗。い、今のナシ!なんでも無いから」
 金田さんは快斗には聞かれたくなかったのか話をやめようとするが、快斗はやめる気はない様で、ぐいぐい聞いてきた。
「そんな事言わないでさ、明ちゃんが灰村さんに対する態度なんて俺からしてみればすぐにわかっちゃってたし。自分と同じくらい可愛い灰村さんに負けたくないからついつい、ああ言った態度取っちゃうんでしょ」
 さすが、快斗。金田さんが心に閉まってある灰村への思いをあっさり見抜いてしまう。男の変化にはまるで気が付かないくせに…
「あ、あんた。そう言う所が女子に引かれてるの自覚しなよ…」
「う~ん。喜んでくれる子もいるけどなぁ」
「ま、まあいいわ。じゃあ快斗、灰村さんは私の事どう思ってるのかわかる?」
 快斗は少し考えた後に答えを出す。
「う~ん。わかんねぇ。灰村さんってさ、なんか特殊で、女子の変化とかにすぐ気がつく俺でも灰村さんの事はまるで読めないんだよね。そこが灰村さんの素敵な所なんだけど。可愛くてミステリアス」
「なによそれ」
 残念そうに肩を落とす金田さん。
 俺は灰村が金田さんを嫌っているとは思ってないが、それは口に出すのはやめておこう。
「てか、間宮。今日灰村さんは?」
「灰村は今日は帰ったよ」
「へぇ、そお。なんかちょくちょくいない事あるよね」
「あいつもあいつで忙しんだよ。多分」
「なら、今日は私と灰村さんが更に仲良くなるにはどうすればいいか作戦を考えましょう。それが今日の探偵部の活動よ」
 探偵部でもない君がなぜ今日の指示を出すんだ…
 それにそろそろ、いつも通り遠山くんのお迎えが来る頃だろ。
「あー、ちなみに今日は部長は来ないから」
「え、ああそうなの」
「部長は文化祭の実行委員だから今の時期は忙しいのよ。ミス研も私しかいないし」
 いつもの二人、佐々木くんと佐藤くんは部室にも来ないらしい。
「明ちゃん、一人でもちゃんと部室に来るんだね。えらいなー」
「隣にアンタらいるし、いなかったら帰ってるわよ」
「なんなら明ちゃんミス研辞めて、探偵部に入る?」
「私が探偵部?はは。お断りよ。私はミス研なんだから。ミス研の紅一点の私がいなくなったらむさ苦しい男だけになっちゃうじゃん」
 金田さんのミス研でのポジションが気になってきた。
 唯一の女子だからかなり甘やかされているんだろうか。
「所で、ミス研は文化祭なにかやるの?」
「なぁんにも。部長に聞いたけど。謎解きとか作るのめんどうだからやらないんだって。自分は解く専門だとか言ってさ」
 なるほど、遠山くんの気持ちも少しはわかる。俺も事件は自分で解決したい派だ。しかし、なにか参考になると思って聞いてみたものの、何もやらないとは。
「探偵部もどうせ何もやらないんでしょ」
「その通りです…」
「ま、今年はクラスの出し物でお互い頑張りましょ」
 金田さんはパンと手を叩き文化祭の話を終えて、元の話に戻してきた。
「んで、さっきの話しだけど、私と灰村さんの事」
「誰かと仲良くなるのに作戦なんかいるのかな?」
「まあ、普通はいらないけどさ」
「金田さんが仲良くなりたいって正直に言えばいいんじゃ…」
 金田さんから頭を下げろと提案してみる。
 これが通ればすでに仲良くなっていると思うが…
「無理。そんなの私のプライドが許さない」
 ですよね…めんどくせーな。
「まあまあ、明ちゃん。慌てないでさ、前より仲良くなってるんでしょ?だったら急がなくても、その内仲良くなれんじゃない」
 快斗の意見はもっともだ。出会った当初に比べれば格段に仲良くなっている。
「遊園地でも仲良く競いあってたじゃん。大丈夫だって。それよりも俺の方が灰村さんとどうやったら付き合えるか考えて欲しいもんだよ」
「えっ。無理でしょ。完全に拒絶されてんじゃん。灰村さんに何回も告ってんのアンタだけだよ」
 確かに、快斗は灰村に何回も好きだと言っているみたいだ。そして毎回灰村にフラれている。
「遊園地で思い出した。ねえ。間宮。あんた中立だよね?」
「なにが?」
「灰村さんと、私、私服どっちが可愛かった?」
「灰村さん!!」
「快斗に聞いてない!!」
 快斗は灰村を必ず選ぶとわかっていたのだろうから俺に聞いて来たんだよな。
「本堂さん…てのはダメ?」
「もちろん。私と灰村さん」
 やはり本堂さんはダメか。
 そもそも二人の私服とか全然見てなかったから覚えてないんだけど…
「真面目にジャッジすると灰村さんも明ちゃんも恵子ちゃんもみんな可愛かったよ。それぞれが自分に似合う服を選んで着てたって感じするし。まあ恵子ちゃんは変装もあって抑えてただろうけど」
「そんなのわかってるわよ。本気じゃ無い本堂さんに勝っても嬉しくないし。私服だったら本堂さんに勝つ自信あるし。
 さあ、間宮どっち」
 金田さんはグイッと顔を近づけてくる、私を選ぶんだろ?と。そして、オセロの時と同じく瞳をウルウルさせ、お願い私と言ってと訴えてくる。
「…金田さんです…。」
「しゃああああ!!聞いたか灰村ああ!!」
 灰村いねぇよ…ちきしょうどっちでもいいって私服なんか。
 金田さんが勝利に喜んでいると、廊下側の扉をノックする音がし、扉が開くと本堂さんが入って来て、俺の隣に座って来た。
「やっほー、お邪魔しまーす。なんかすごい声聞こえてたけどなにかあったの?」
 ああ、それはね金田さんだよと言ってしまおうかと思ったが、金田さんから言ったら殺すと言わんばかりの殺気を感じたから、黙っておく事にしよう。
「外からじゃ無いかな。ここは静かなもんだよ。それより今日はどうしたの?」
「あ、う~んとさ…」
 あたりをキョロキョロする本堂さん。聞かれちゃまずい話しでもあるのか。
「ちょ、ちょっといい?私聞きたい事あったんだけど」
 金田さんが本堂さんに尋ねた。
「遊園地に本堂さんいたじゃない。なんで間宮といたの?」
「ああ。それね。私と間宮くん。お付き合いしてるから」
「はい?」
 俺と本堂さんを交互に見る金田さん。当然の反応ですね。
「俺と本堂さんはその、本当に付き合ってるわけじゃなくて」
「うん、間宮くんには私のわがままに協力してもらってただけなんだ」
 詳しくは省くがこれで満足してもらおう。
「えっ。じゃあの新聞、意外と冗談じゃなかったわけ。彼氏の影ありとか言うやつ」
「まあ、そうなっちゃうね。だから秘密にしてね」
 遊園地での新聞部との一悶着も解決し号外を避けれたって言うのに…
「まあ、本当に付き合って無いってんなら別にどうでもいいけどさ」
「うん。ありがと。それでさ、今日灰村さんはいないの?」
「灰村は用事があるから今日は来てないよ」
「そっかぁ…ちょっと話あったんだけどな」
 本堂さんは灰村に用があってここに来たのか。
「探偵部に依頼とかだったら、話は聞くよ」
「ううん。灰村さんにしか言えない話だったんだ。じゃあ、私帰るねこれからレッスンだし。バイバイ」
 本堂さんはそう言って部室から出て行ってしまった。
「灰村に話ってなんだろ?」
「快斗ぉ、本堂さんに変化は?」
 金田さんは快斗に聞く、確かに快斗なら気が付いているかもしれない。
「……ん。ああ。多分。恋バナ。女子にしか出来ない話かな。それより、もう帰ろうぜ。今日は特に何も無いんだろ。
 来週には文化祭だ。楽しもうぜぇ!!」
 快斗はカバンを持ち部室から出ていく。確かに来週の文化祭は楽しみだ。
 俺と金田さんも部室から出て、それぞれ帰る事にした。
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