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十七話 一年二学期
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長くて楽しい夏休みはあっという間に終わり、二学期がスタートした。
俺は朝の眠気になんとか勝ち、遅刻をせずに自分のクラスである一年三組に入る事は出来たはずだが、クラスを間違えたのか、知らないクラスメイトがたくさんいる気がする。
「おはよう。間宮くん」
後ろから声がする。振り向くと、灰村が立っていた。灰村が立ってるって事はここは一年三組で間違いないだろう。
「おはよう。灰村。なあ、なんかクラスの人達いつもと雰囲気が違くない?」
「夏休み明けってこんなもんでしょ。一夏の体験を終えた男女はガラリと変わるものよ」
「そういうものなのか」
「そうでしょ。ここからが本番みたいなもんよ。二学期から本領発揮してこの学校での地位を上げていく。一学期に目立っていた人って大体二学期からフェードアウトしていくわ」
灰村はそう言うと自分の席に着いた。
二学期から本領発揮ねえ。
周りを見ると、積極的に女子に話し掛ける男子がちらほら見受けられる。
一学期はそれ程ガヤガヤしていなかったこのクラスも少しは変わってきているみたいだ。
始業式が始まり校長の長い話をいつも通り聴き流し、教室に戻ると担任である磯川先生が二学期の行事について説明し始めた。
「夏休みボケ中のお前達。よーく聞いとけよ。二学期は第二体育祭。まあこのクラスは出場しないからあまり関係ないが今年はうちの学校で行うから、応援でも気が向いたらしてやってくれ」
第一体育祭で優勝しなかった俺達は姉妹校である全開高校と行う第二体育祭には参加出来ない。よって応援のみの参加になる様だ。参加は個人の自由らしい。
「次に文化祭。三日間だ。クラスの出し物も早いうちから決めておくと楽だぞ。部活での出し物もする奴もいると思うからその辺はお前達に任せる。楽しい青春を謳歌してくれ。ちなみに人気のクラス、又は部活は二日目に全開高校にて店を出す」
文化祭か、探偵部でもなにか出来るかな。
「次にマラソン大会」
その言葉にクラス全体から『え~』とブーイングが起きる。マラソン大会が嫌いなのはみんな同じらしい。
「イベントだからな。我慢しろ。んで次がクリスマス会。これは全開高と合同で行うぞ。ここ迄に彼女、彼氏が欲しくても作れなかった奴は思い切って行動を起こせ。待ってても何も始まらん。自分から行動を起こして初めて物語が始まる」
二学期全てのイベントを言い終え、次に夏休みの宿題の提出が始まる。
宿題を提出し自分の席に戻ろうとした時、堀田さんと目が合った。
「やあ、間宮くん。夏祭り以来ぶりだね」
「久しぶりだね」
「そうだね。所で文化祭、私は茶道部でお茶会をやるんだ。ぜひ君も来てくれ。私がお茶を淹れてやろう」
「うん。楽しみにしてるよ」
堀田さんと短いやり取りを終え席に着く。
堀田さんは一学期と変わらず、いつものメガネを掛けていた。
二学期初日ともあって今日は半日で終わった。午後は部活の時間だ。さて、どうしよ。
「灰村。部室行くけど、お前も来るか?」
「ええ、行くわ」
俺と灰村は席を立ち、部室に向かう、その道中、ボクシング部の佐竹くんとすれ違ったが気にせずに行くとしよう。
探偵部の部室、前に来た時はミス研と一緒に夜の学校を調べた時だっけ。
夜の学校で思い出したけど、あの日にあった、本堂 恵子(ほんどう けいこ)さんは二学期になったら学校来るって言ってたけど、今日は来てたのかな。
「暇そうね探偵部」
ガラガラと扉を開くと同時にお馴染みのセリフを言ってこっちを見るミス研の金田さん。
「灰村。お客さん」
「君にかもしれないよ」
「勝負よ!灰村さん!!」
はい、灰村にお客さんでーす。
「ハア…今日は何で遊びたいのかしら」
灰村が相手をしてくれるとわかった瞬間、金田さんの表情がパアッと明るくなった。嬉しくてしょうがないんだろうな。
「きょ、今日は神経衰弱で勝負よ。私記憶力には自信があるから負けないわ」
はい、負け決定。記憶力で灰村に勝てる人はこの世にはいません。
「いいわよ。じゃあ一回全部表にして、カードの位置を確認しましょ。そのままひっくり返してスタート」
「ふふん。そうなったらもう私の勝ちね。先行は譲ってあげる」
神経衰弱が始まって数秒後、灰村の勝ちが決まった。
金田さんはもう一回、もう一回とおねだりしている。
そんな二人のやり取りをお茶飲みながら眺めていると廊下側の扉が開いた。
「おっ。いたいた」
扉の前に立っているのは跡野 快斗(あとの かいと)だ。学年一顔がいいが全くモテない悲しい男。
「あれぇ快斗じゃん。ここ探偵部だよ」
金田さんが快斗に言う。君は探偵部じゃ無いだろ。
「明ちゃん、相変わらず可愛いね」
「うん、知ってる。快斗何しに来たの?部活は?」
「部活ね…俺さ、バスケ部辞めたんだ」
「辞めた!あんた中学で全国行ったくらい上手いんでしょ」
「俺一人の力じゃないよ。チーム全体が強かっただけ」
「そっか、なんか勿体無いけど。んでここに来たのは何か依頼?」
さっきから金田さんが話を進めてるんだけど。
「いや、違う。なあ、孝一。俺を探偵部に入れてくれ」
「えっ。探偵部に?」
今、入れてくれっていってたよな。入部したいって事か?
「おお、俺は入部してくれるのなら嬉しいけど。よくバスケ部辞めれたね。レギュラーだったんだろ」
「まあ、引き留められはしたけど、俺がいると女子に迷惑が掛かるかも知れないって言ったら案外簡単に辞めれたぞ」
それにしても快斗が入部したいだなんて。
「ちなみになんで探偵部に?」
「楽しそうだから。色んな女子に出会えそうだから」
邪な理由な気がする。こいつを入れた事で探偵部の評価下がらないかな。
「一つ聞きたいんだけど」
灰村が快斗に話し掛ける。
「跡野くん。私の事好きよね。私目的で探偵部に入ろうとしてない?」
そう言えばそうだった。快斗は灰村の事が好きだった。本当の目的はそれか?
「嫌だなぁー、灰村さん。俺がそんな邪な目的で入るわけ無いじゃん」
「そう。じゃあテストさせてもらうわね。そのテストに合格しないと君の入部は認めない。私はまだ君に警戒してるもの」
「オッケー、オッケー。テストでもなんでもやってやるさ」
テストってなにやらせるつもりだろ。
灰村はバッグからなにやら手紙を取り出し快斗に渡した。
「その手紙には私達探偵部に依頼が描かれている。間宮くんにやって貰うつもりだったけど、跡野くんに解決してもらいたの」
依頼来てたのか…
灰村から手紙を受け取って確認する快斗。依頼主はどうやら二年生のようで一学期の盗撮の事件の事をバスケ部から聞き探偵部に興味を持ったらしく、依頼内容も探偵の仕事でよくある浮気調査だった。
自分の彼女が浮気をしているかも知れないから調べて欲しい。詳しくは視聴覚室にて話すとの事。
「私が今日行くと連絡入れておいたから今、視聴覚室で待ってると思うわよ」
「なんだー男の依頼かー」
「やらなくてもいいよ。探偵部には入れないけど」
「いや、やります。灰村さんの頼みならなんでもこなします!」
「私の頼みじゃ無いんだけど…」
俺達は視聴覚室に向かう。金田さんもついてこようとしたけど案の定遠山くんに捕まり部室に戻されていった。
視聴覚室に着くと窓際の椅子にポツンと座っている男子生徒を発見した。あれが依頼主だろう。灰村が近付き話し掛ける。
「探偵部です。ご依頼の方ですよね?」
「おー。本当に来た。よかったー」
男子生徒は半信半疑だったようで、俺達探偵部が本当に来た事に多少驚いているようだ。
「じゃ、さっそく依頼いい?」
「はい。彼女さんが浮気をしていないか調査してほしいって事ですよね。彼女さんの名前とクラス、所属している部活を教えてもらえますか」
「ああ、彼女の名前は尾田 凛(おだ りん)俺と同じ二年でクラスは四組だ。部活は和食部だ」
「あー。凛先輩の彼氏ってこの人だったんだー」
尾田先輩の事を快斗は知っているようで反応する。
「てかさ、この二人何?」
「二人も探偵部でそこのマヌケそうな男が部長の間宮 孝一くん。もう一人の顔がいいだけの男が新人予定の跡野 快斗くんです」
灰村の中で俺はマヌケそうなんだな…
「そして私が…」
「灰村 杏さん。だよね。結構有名だよ君。告白した男は自信を無くす奴が多いって」
「そうですか。先輩も告白してみますか?全てを否定してあげますよ」
「いや、遠慮しとく。俺一応彼女いるし」
灰村は告白してくる男を遠慮なくフるからな…
「さて、そろそろ本題に入ろうか」
依頼主が話を元に戻す。
依頼内容は手紙に書いてあった内容と同じで浮気調査。なんでも最近彼女の態度が冷たくなって来ているらしい。自分以外の男とよく話すようになっていてよく笑っているが自分と話している時はあまり笑わなくなったと言うことで他に好きな男もしくは浮気をしている可能性を疑っているらしい。
「なるほど、そういう事か。もし、浮気していたら先輩はどうするつもりですか?」
俺は依頼主である遠藤先輩に聞いて見る。
「そりゃ、理由を聞くさ。そんで話し合う。それでもダメなら別れるしかないだろ…」
浮気調査は大抵が黒。浮気をしていることが多いらしい。依頼してくる人も確証があって探偵に依頼をしてくることが多いのだ。探偵に依頼し、証拠を撮ってもらい裁判で勝ち、賠償金を貰う。そんな事が実際よく起きている。この先輩も何か掴んでいるから依頼してきたと思っている。
「では、これから私達、探偵部としての活動を行います。さあ、跡野くん。お願いね」
「おっけー。任せてよ」
親指を立て、余裕の構えをとる快斗だが、どうする気だ。
「快斗、どう調査するつもり?」
「ん、まずは家庭科室にいこうぜー、あ、ちなみに灰村さん」
「なに?」
「今日解決しないとダメ?」
「解決出来るなら今日が好ましいけど、浮気調査って一日で解決出来ないでしょ、普通は」
普通はか。灰村なら今この瞬間で、わかるのだろう。あいつの情報力はハンパないからな。
俺達は視聴覚室を後にし、家庭科室に向かう。
「なあ、孝一。浮気調査ってなにやるんだ?」
「普通はターゲットを尾行して、決定的な所を写真撮るかな」
「何日くらい?」
「依頼主の金額に合わせた日数じゃないか?」
「俺達金貰って無いけど」
「部活だし」
「よし、今日解決する」
「えっ」
快斗と話していると家庭科室の入り口前までいつの間にか到着していた。
「さて、ついた。和食部ってのはいるのか?」
家庭科室には全部で俺が廊下から室内を眺めていると横に立っていた快斗が扉を開けた。
ガラガラと勢いよく開いた後快斗は物怖じせずに話し掛けていく。
「こんちはー。探偵部でーす。凛先輩いますかー」
こ、こいつ、探偵部って言ったら警戒されるのがわからんのか?相手は浮気しているかも知れないんだぞ。
「ああ、君って跡野くんだよね。雪がよく話してる」
「雪先輩どんな事話してるんすか?カッコいい、付き合いたいとかですかね?」
「ううん。残念なイケメンだっていつも笑いながら話してる」
くすくすと笑う尾田先輩。和食部と言うだけあって服装も着物を着ている。尾田先輩は髪はお団子状に纏めていて、ほのぼのした印象だった。
「あれ?君ってバスケ部じゃ無かったっけ?」
「辞めました!今日から探偵部です。まだ仮ですけど」
「そうなんだ。で、探偵部の跡野くん。私に何かようかな?」
尾田先輩は少し表情をキッとし、警戒したような顔つきになった。だから探偵部って言うなってのに。
「いやー、雪先輩の友達の凛先輩に、バスケ部辞めて探偵部に入った事報告しようと思いまして」
「えー。そんな事ー」
「そーっス。所でいい匂いですね。何作ってるんですか?」
快斗は鍋の方に目をやる、確かに先程からいい匂いがしている。お腹空いてきたな。
「和食の王道。肉じゃがだよ。食べる?そっちの二人もどうぞ」
快斗に続き俺と灰村も家庭科室に入って行き、尾田先輩が作った肉じゃがを頂くことになった。
ジャガイモを一つ口に入れると、ホクホクで味が染み込んでいてとても美味い。
「旨!!凛先輩。料理めちゃくちゃ上手いっすね」
「そうかな。ありがと」
「凛先輩って彼氏いましたよね。彼氏にも作ってあげたりするんですか?」
ここで彼氏の名前を出したぞ。
会話の流れ的にスムーズだ。
「あー遠藤くんね。この間お弁当作ってあげたかなー」
「こんな上手いんじゃ、喜んでくれたでしょ」
「うーん。どうだったかなー。彼、和食あんまり好きじゃ無いみたいだし」
呼び名がくん呼びか。付き合いたてなのか?
「あっはっはー。ひどい先輩っすねー。和食好きじゃなかったら、好きになっちゃうくらい上手いのに」
「彼も、跡野くんくらいの人だったら作り甲斐あるんだけどね」
「おっ。じゃあ俺と付き合います?凛先輩みたいな美人さんなら喜んで付き合いますよー」
「うーん。気持ちは嬉しいけど、ごめんなさい。私彼がまだ好きだからさー」
「かあー。惚気いただいちゃったかなー。他の部員もいるのに堂々と言うのはかっこいいっすねー」
快斗は淡々と話している。尾田先輩は依頼主である遠藤先輩を好きだと言っている。これが本心なら浮気はしていないと思うけどどうだろ。
二人が会話をしている中、俺は暇だったので辺りを見渡すと、A3サイズのスケジュール表を発見した。
その中には月、水、和食部。火、木、洋食部。金、合同と書かれていた。今日は水曜日だからこの教室の使用権は和食部となっているのだろう。
洋食部なんてあるんだな…
「ねえ、君。間宮くんでしょ」
スケジュール表を見ている俺に尾田先輩が不意に話しかけてくる。
「雪が言ってたよ。探偵部の間宮って男子が事件を解決したって。凄いね君」
「いや、まあたまたまですよ」
「それでも凄いね。二年の女子の間で結構話題になってるよ。これから依頼とか増えたりしてね。それに結構かっこいいじゃん」
「そ、そうですかね」
かっこいいとか言われたの初めてだから照れてしまう。
「嬉しそうだね、間宮くん」
俺の横に立つ灰村が冷めた目をしながら言った。
「ちょっとぉ。凛先輩。俺の方がかっこいいでしょーよ」
「うーん、顔は確かに跡野くんの方がかっこいいと思うけど私は間宮くんの方がタイプだったりして」
嬉しいね。これは来るかモテ期が。
「こねーよ」
灰村がボソッと言う。君は俺の心が読めるのか?
「ちぇ、そういう事なら仕方ないっすね。それじゃ、そろそろ俺達帰りますね。お邪魔しました」
家庭科室を後にして、先を歩く快斗。
「さて、遠藤先輩の所いこーぜ」
「なにかわかったのか?」
「ああ。わかった」
マジ?俺何一つわかんないんだけど。
「さすが跡野くんね。女子の事は君に任せてよかったって少し思う。キモいけど」
「惚れた?」
「惚れない。二度と聞いてこないでくれる」
「あちゃー。後少しかぁ」
カスってもいないと思うんだけど。快斗の精神どうなってんだ。
視聴覚室に着き、イスに座って待っていた遠藤先輩が俺達が来ると立ち上がった。
「で、なにかわかった」
コホンと快斗が咳払いをし、話し始めた。
「結論から言いますね。凛先輩は浮気はしてませんよ」
「そうか、ならよかった」
浮気をしていないの一言で遠藤先輩は安堵の表情を浮かべ、ゆっくりとイスに座った。
「そうか、そうか。浮気してないか。ありがとよ探偵部」
「ただし」
「なんだよ」
「先輩は飽きられてきてますね。浮気はしてないけど時期に別れを告げられますよ」
「なんだと!!」
快斗の急な一言に先輩は驚き怒気混じりで快斗に叫んだ。
「なんで、お前にそれがわかんだよ。浮気してねぇなら、俺の事まだ好きだろう」
「そうですよ。だから時期になんです。そもそも先輩、凛先輩に告白させたんじゃなくてしたんですよね」
「あ、ああ。あいつが近づいてきたから多分行けると思って告ったらOKもらったんだよ」
「凛先輩の元彼も同じような感じだったって聞いた事あります。そして、別れる時も今の遠藤先輩と同じ感じだったんスよ。だから浮気はしてなくても時期にフラれると思います。それが俺の答えですかね」
「なんて事だ…俺はまだ好きなのに」
遠藤先輩は崩れ落ち悲しそうにしている。慰めになるかどうかわかんないけど一応俺からも一言。
「遠藤先輩って、洋食部に所属してますよね」
「ん、ああ。よくわかったな」
「家庭科室のスケジュール表に和食部と洋食部の部員の名前が書かれていたの見つけてその時先輩の名前を発見しました」
「それがどうしたんだよ」
「尾田先輩。先輩が和食があまり好きじゃ無い見たいって教えてくれました。もしかしたらそこで関係にヒビが入ったのかも知れないですよ。関係を修復できるかどうかはわかんないですけど。一応伝えておきます。それじゃ俺達はこれで」
俺達は部室に帰ると帰りを待っていたのか金田さんが出迎えてくれた。
「おかえりー」
「なんで、金田さんがいるのさ」
「ん。隣だから。ミス研のミーティングも終わって今日はやる事ないからさ。それよりどうだった?」
「快斗が無事に解決したよ」
快斗はピースしながら金田さんを見ている。
「へえ、やるじゃん快斗」
「まあね。俺に解決出来ない事は無いさ。なんだったら明ちゃんの下着の色当てようか?」
「いや、いい。そうゆう所なきゃあんたモテんのに」
「モテてますー。それにしても孝一。お前は無駄に優しいのかそれともお節介なのかどっちなんだ」
「どうゆう事?」
「遠藤先輩にあんな事いっても無駄だぜ。和食を食べて美味しいとか言っても凛先輩には届かないって」
「そうかなぁ」
「そうね。無駄ね」
灰村も快斗の意見に賛成のようだ。
自分の作った料理を美味しく食べてくれるようになったんなら少しは考え直してくれるかもしれないじゃん。そもそもそれが原因がわかんないけど…
「凛先輩は、ああなったらおしまい。次の男を既に選別してるよ。彼氏の前だから言わなかったけど凛先輩は男には大体ああやって、カッコいいとか、言ったり、ボディタッチしたりして男を勘違いさせるんだ。孝一も言われただろかっこいいとかって。お前も選別対象になってたのかもな」
そうなの。素直に嬉しかったのに。
「でも、快斗には対して何もしてなかったけど」
「俺ならいつでも落とせるって思ってんだろ」
「告られたら?」
「断る。凛先輩には悪いけどあの人めんどくさい。それにあの人は告って来ない。告らせたい派の人間だ。そして俺は告りたい派の人間。凛先輩を恋愛対象にしてない俺があの人に告白する事はない」
「快斗って告白された事は?」
「……ある」
嘘くせーけどこいつ顔いいからな。
「まあ、そう言う事だから孝一勘違いして告白しない様に」
「しないよ」
「そうか。ちなみに孝一ってどんな女子がタイプなんだ?」
「なぜ、そんな事を聞く」
「親友である俺が聞いたっていいじゃん」
「いつ、親友になったんだよ」
「うーん。今日からだな。今日から俺達は親友だ」
「まぁ、好きにしてくれ」
親友?と呼べる友が出来てしまったな。
「それで、それで。どの様な女子が好みで」
タイプの女子か…考えたことも無かったな。恋した事ねーし。
「そうだなー。ズケズケと遠慮も無しに物を言ってくる人かな。本音で会話出来そうだし」
「ゲホッ」
部室の奥のテーブルで金田さんとオセロを嫌々ながらしている灰村が咳き込んだようだ。
「灰村。大丈夫か」
「…ええ。大丈夫」
「うーん。孝一のタイプってそんな感じか…」
快斗は何かを考えている様だが。誰か紹介でもしてくれるのか。
「色々整理して、紹介出来る子がいたら紹介してやるよ。それよりー。灰村さん」
「なに?」
「俺事件解決したからさー。探偵部に入部許可してくれる?」
「そうね。君の女子に対する観察力は武器になるかもしれないわ。入部を許可します」
一応部長俺なんだけどな。
「やったー!これからよろしくな孝一。それと灰村さん!!」
俺に話す時と灰村に話す時の声のトーンが全然違うのが気になったが、探偵部に新たに仲間が入った事は嬉しいな。
「よし、今日はもう帰ろう」
本日の活動を終えそれぞれ帰宅して行った。
俺は朝の眠気になんとか勝ち、遅刻をせずに自分のクラスである一年三組に入る事は出来たはずだが、クラスを間違えたのか、知らないクラスメイトがたくさんいる気がする。
「おはよう。間宮くん」
後ろから声がする。振り向くと、灰村が立っていた。灰村が立ってるって事はここは一年三組で間違いないだろう。
「おはよう。灰村。なあ、なんかクラスの人達いつもと雰囲気が違くない?」
「夏休み明けってこんなもんでしょ。一夏の体験を終えた男女はガラリと変わるものよ」
「そういうものなのか」
「そうでしょ。ここからが本番みたいなもんよ。二学期から本領発揮してこの学校での地位を上げていく。一学期に目立っていた人って大体二学期からフェードアウトしていくわ」
灰村はそう言うと自分の席に着いた。
二学期から本領発揮ねえ。
周りを見ると、積極的に女子に話し掛ける男子がちらほら見受けられる。
一学期はそれ程ガヤガヤしていなかったこのクラスも少しは変わってきているみたいだ。
始業式が始まり校長の長い話をいつも通り聴き流し、教室に戻ると担任である磯川先生が二学期の行事について説明し始めた。
「夏休みボケ中のお前達。よーく聞いとけよ。二学期は第二体育祭。まあこのクラスは出場しないからあまり関係ないが今年はうちの学校で行うから、応援でも気が向いたらしてやってくれ」
第一体育祭で優勝しなかった俺達は姉妹校である全開高校と行う第二体育祭には参加出来ない。よって応援のみの参加になる様だ。参加は個人の自由らしい。
「次に文化祭。三日間だ。クラスの出し物も早いうちから決めておくと楽だぞ。部活での出し物もする奴もいると思うからその辺はお前達に任せる。楽しい青春を謳歌してくれ。ちなみに人気のクラス、又は部活は二日目に全開高校にて店を出す」
文化祭か、探偵部でもなにか出来るかな。
「次にマラソン大会」
その言葉にクラス全体から『え~』とブーイングが起きる。マラソン大会が嫌いなのはみんな同じらしい。
「イベントだからな。我慢しろ。んで次がクリスマス会。これは全開高と合同で行うぞ。ここ迄に彼女、彼氏が欲しくても作れなかった奴は思い切って行動を起こせ。待ってても何も始まらん。自分から行動を起こして初めて物語が始まる」
二学期全てのイベントを言い終え、次に夏休みの宿題の提出が始まる。
宿題を提出し自分の席に戻ろうとした時、堀田さんと目が合った。
「やあ、間宮くん。夏祭り以来ぶりだね」
「久しぶりだね」
「そうだね。所で文化祭、私は茶道部でお茶会をやるんだ。ぜひ君も来てくれ。私がお茶を淹れてやろう」
「うん。楽しみにしてるよ」
堀田さんと短いやり取りを終え席に着く。
堀田さんは一学期と変わらず、いつものメガネを掛けていた。
二学期初日ともあって今日は半日で終わった。午後は部活の時間だ。さて、どうしよ。
「灰村。部室行くけど、お前も来るか?」
「ええ、行くわ」
俺と灰村は席を立ち、部室に向かう、その道中、ボクシング部の佐竹くんとすれ違ったが気にせずに行くとしよう。
探偵部の部室、前に来た時はミス研と一緒に夜の学校を調べた時だっけ。
夜の学校で思い出したけど、あの日にあった、本堂 恵子(ほんどう けいこ)さんは二学期になったら学校来るって言ってたけど、今日は来てたのかな。
「暇そうね探偵部」
ガラガラと扉を開くと同時にお馴染みのセリフを言ってこっちを見るミス研の金田さん。
「灰村。お客さん」
「君にかもしれないよ」
「勝負よ!灰村さん!!」
はい、灰村にお客さんでーす。
「ハア…今日は何で遊びたいのかしら」
灰村が相手をしてくれるとわかった瞬間、金田さんの表情がパアッと明るくなった。嬉しくてしょうがないんだろうな。
「きょ、今日は神経衰弱で勝負よ。私記憶力には自信があるから負けないわ」
はい、負け決定。記憶力で灰村に勝てる人はこの世にはいません。
「いいわよ。じゃあ一回全部表にして、カードの位置を確認しましょ。そのままひっくり返してスタート」
「ふふん。そうなったらもう私の勝ちね。先行は譲ってあげる」
神経衰弱が始まって数秒後、灰村の勝ちが決まった。
金田さんはもう一回、もう一回とおねだりしている。
そんな二人のやり取りをお茶飲みながら眺めていると廊下側の扉が開いた。
「おっ。いたいた」
扉の前に立っているのは跡野 快斗(あとの かいと)だ。学年一顔がいいが全くモテない悲しい男。
「あれぇ快斗じゃん。ここ探偵部だよ」
金田さんが快斗に言う。君は探偵部じゃ無いだろ。
「明ちゃん、相変わらず可愛いね」
「うん、知ってる。快斗何しに来たの?部活は?」
「部活ね…俺さ、バスケ部辞めたんだ」
「辞めた!あんた中学で全国行ったくらい上手いんでしょ」
「俺一人の力じゃないよ。チーム全体が強かっただけ」
「そっか、なんか勿体無いけど。んでここに来たのは何か依頼?」
さっきから金田さんが話を進めてるんだけど。
「いや、違う。なあ、孝一。俺を探偵部に入れてくれ」
「えっ。探偵部に?」
今、入れてくれっていってたよな。入部したいって事か?
「おお、俺は入部してくれるのなら嬉しいけど。よくバスケ部辞めれたね。レギュラーだったんだろ」
「まあ、引き留められはしたけど、俺がいると女子に迷惑が掛かるかも知れないって言ったら案外簡単に辞めれたぞ」
それにしても快斗が入部したいだなんて。
「ちなみになんで探偵部に?」
「楽しそうだから。色んな女子に出会えそうだから」
邪な理由な気がする。こいつを入れた事で探偵部の評価下がらないかな。
「一つ聞きたいんだけど」
灰村が快斗に話し掛ける。
「跡野くん。私の事好きよね。私目的で探偵部に入ろうとしてない?」
そう言えばそうだった。快斗は灰村の事が好きだった。本当の目的はそれか?
「嫌だなぁー、灰村さん。俺がそんな邪な目的で入るわけ無いじゃん」
「そう。じゃあテストさせてもらうわね。そのテストに合格しないと君の入部は認めない。私はまだ君に警戒してるもの」
「オッケー、オッケー。テストでもなんでもやってやるさ」
テストってなにやらせるつもりだろ。
灰村はバッグからなにやら手紙を取り出し快斗に渡した。
「その手紙には私達探偵部に依頼が描かれている。間宮くんにやって貰うつもりだったけど、跡野くんに解決してもらいたの」
依頼来てたのか…
灰村から手紙を受け取って確認する快斗。依頼主はどうやら二年生のようで一学期の盗撮の事件の事をバスケ部から聞き探偵部に興味を持ったらしく、依頼内容も探偵の仕事でよくある浮気調査だった。
自分の彼女が浮気をしているかも知れないから調べて欲しい。詳しくは視聴覚室にて話すとの事。
「私が今日行くと連絡入れておいたから今、視聴覚室で待ってると思うわよ」
「なんだー男の依頼かー」
「やらなくてもいいよ。探偵部には入れないけど」
「いや、やります。灰村さんの頼みならなんでもこなします!」
「私の頼みじゃ無いんだけど…」
俺達は視聴覚室に向かう。金田さんもついてこようとしたけど案の定遠山くんに捕まり部室に戻されていった。
視聴覚室に着くと窓際の椅子にポツンと座っている男子生徒を発見した。あれが依頼主だろう。灰村が近付き話し掛ける。
「探偵部です。ご依頼の方ですよね?」
「おー。本当に来た。よかったー」
男子生徒は半信半疑だったようで、俺達探偵部が本当に来た事に多少驚いているようだ。
「じゃ、さっそく依頼いい?」
「はい。彼女さんが浮気をしていないか調査してほしいって事ですよね。彼女さんの名前とクラス、所属している部活を教えてもらえますか」
「ああ、彼女の名前は尾田 凛(おだ りん)俺と同じ二年でクラスは四組だ。部活は和食部だ」
「あー。凛先輩の彼氏ってこの人だったんだー」
尾田先輩の事を快斗は知っているようで反応する。
「てかさ、この二人何?」
「二人も探偵部でそこのマヌケそうな男が部長の間宮 孝一くん。もう一人の顔がいいだけの男が新人予定の跡野 快斗くんです」
灰村の中で俺はマヌケそうなんだな…
「そして私が…」
「灰村 杏さん。だよね。結構有名だよ君。告白した男は自信を無くす奴が多いって」
「そうですか。先輩も告白してみますか?全てを否定してあげますよ」
「いや、遠慮しとく。俺一応彼女いるし」
灰村は告白してくる男を遠慮なくフるからな…
「さて、そろそろ本題に入ろうか」
依頼主が話を元に戻す。
依頼内容は手紙に書いてあった内容と同じで浮気調査。なんでも最近彼女の態度が冷たくなって来ているらしい。自分以外の男とよく話すようになっていてよく笑っているが自分と話している時はあまり笑わなくなったと言うことで他に好きな男もしくは浮気をしている可能性を疑っているらしい。
「なるほど、そういう事か。もし、浮気していたら先輩はどうするつもりですか?」
俺は依頼主である遠藤先輩に聞いて見る。
「そりゃ、理由を聞くさ。そんで話し合う。それでもダメなら別れるしかないだろ…」
浮気調査は大抵が黒。浮気をしていることが多いらしい。依頼してくる人も確証があって探偵に依頼をしてくることが多いのだ。探偵に依頼し、証拠を撮ってもらい裁判で勝ち、賠償金を貰う。そんな事が実際よく起きている。この先輩も何か掴んでいるから依頼してきたと思っている。
「では、これから私達、探偵部としての活動を行います。さあ、跡野くん。お願いね」
「おっけー。任せてよ」
親指を立て、余裕の構えをとる快斗だが、どうする気だ。
「快斗、どう調査するつもり?」
「ん、まずは家庭科室にいこうぜー、あ、ちなみに灰村さん」
「なに?」
「今日解決しないとダメ?」
「解決出来るなら今日が好ましいけど、浮気調査って一日で解決出来ないでしょ、普通は」
普通はか。灰村なら今この瞬間で、わかるのだろう。あいつの情報力はハンパないからな。
俺達は視聴覚室を後にし、家庭科室に向かう。
「なあ、孝一。浮気調査ってなにやるんだ?」
「普通はターゲットを尾行して、決定的な所を写真撮るかな」
「何日くらい?」
「依頼主の金額に合わせた日数じゃないか?」
「俺達金貰って無いけど」
「部活だし」
「よし、今日解決する」
「えっ」
快斗と話していると家庭科室の入り口前までいつの間にか到着していた。
「さて、ついた。和食部ってのはいるのか?」
家庭科室には全部で俺が廊下から室内を眺めていると横に立っていた快斗が扉を開けた。
ガラガラと勢いよく開いた後快斗は物怖じせずに話し掛けていく。
「こんちはー。探偵部でーす。凛先輩いますかー」
こ、こいつ、探偵部って言ったら警戒されるのがわからんのか?相手は浮気しているかも知れないんだぞ。
「ああ、君って跡野くんだよね。雪がよく話してる」
「雪先輩どんな事話してるんすか?カッコいい、付き合いたいとかですかね?」
「ううん。残念なイケメンだっていつも笑いながら話してる」
くすくすと笑う尾田先輩。和食部と言うだけあって服装も着物を着ている。尾田先輩は髪はお団子状に纏めていて、ほのぼのした印象だった。
「あれ?君ってバスケ部じゃ無かったっけ?」
「辞めました!今日から探偵部です。まだ仮ですけど」
「そうなんだ。で、探偵部の跡野くん。私に何かようかな?」
尾田先輩は少し表情をキッとし、警戒したような顔つきになった。だから探偵部って言うなってのに。
「いやー、雪先輩の友達の凛先輩に、バスケ部辞めて探偵部に入った事報告しようと思いまして」
「えー。そんな事ー」
「そーっス。所でいい匂いですね。何作ってるんですか?」
快斗は鍋の方に目をやる、確かに先程からいい匂いがしている。お腹空いてきたな。
「和食の王道。肉じゃがだよ。食べる?そっちの二人もどうぞ」
快斗に続き俺と灰村も家庭科室に入って行き、尾田先輩が作った肉じゃがを頂くことになった。
ジャガイモを一つ口に入れると、ホクホクで味が染み込んでいてとても美味い。
「旨!!凛先輩。料理めちゃくちゃ上手いっすね」
「そうかな。ありがと」
「凛先輩って彼氏いましたよね。彼氏にも作ってあげたりするんですか?」
ここで彼氏の名前を出したぞ。
会話の流れ的にスムーズだ。
「あー遠藤くんね。この間お弁当作ってあげたかなー」
「こんな上手いんじゃ、喜んでくれたでしょ」
「うーん。どうだったかなー。彼、和食あんまり好きじゃ無いみたいだし」
呼び名がくん呼びか。付き合いたてなのか?
「あっはっはー。ひどい先輩っすねー。和食好きじゃなかったら、好きになっちゃうくらい上手いのに」
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「おっ。じゃあ俺と付き合います?凛先輩みたいな美人さんなら喜んで付き合いますよー」
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「かあー。惚気いただいちゃったかなー。他の部員もいるのに堂々と言うのはかっこいいっすねー」
快斗は淡々と話している。尾田先輩は依頼主である遠藤先輩を好きだと言っている。これが本心なら浮気はしていないと思うけどどうだろ。
二人が会話をしている中、俺は暇だったので辺りを見渡すと、A3サイズのスケジュール表を発見した。
その中には月、水、和食部。火、木、洋食部。金、合同と書かれていた。今日は水曜日だからこの教室の使用権は和食部となっているのだろう。
洋食部なんてあるんだな…
「ねえ、君。間宮くんでしょ」
スケジュール表を見ている俺に尾田先輩が不意に話しかけてくる。
「雪が言ってたよ。探偵部の間宮って男子が事件を解決したって。凄いね君」
「いや、まあたまたまですよ」
「それでも凄いね。二年の女子の間で結構話題になってるよ。これから依頼とか増えたりしてね。それに結構かっこいいじゃん」
「そ、そうですかね」
かっこいいとか言われたの初めてだから照れてしまう。
「嬉しそうだね、間宮くん」
俺の横に立つ灰村が冷めた目をしながら言った。
「ちょっとぉ。凛先輩。俺の方がかっこいいでしょーよ」
「うーん、顔は確かに跡野くんの方がかっこいいと思うけど私は間宮くんの方がタイプだったりして」
嬉しいね。これは来るかモテ期が。
「こねーよ」
灰村がボソッと言う。君は俺の心が読めるのか?
「ちぇ、そういう事なら仕方ないっすね。それじゃ、そろそろ俺達帰りますね。お邪魔しました」
家庭科室を後にして、先を歩く快斗。
「さて、遠藤先輩の所いこーぜ」
「なにかわかったのか?」
「ああ。わかった」
マジ?俺何一つわかんないんだけど。
「さすが跡野くんね。女子の事は君に任せてよかったって少し思う。キモいけど」
「惚れた?」
「惚れない。二度と聞いてこないでくれる」
「あちゃー。後少しかぁ」
カスってもいないと思うんだけど。快斗の精神どうなってんだ。
視聴覚室に着き、イスに座って待っていた遠藤先輩が俺達が来ると立ち上がった。
「で、なにかわかった」
コホンと快斗が咳払いをし、話し始めた。
「結論から言いますね。凛先輩は浮気はしてませんよ」
「そうか、ならよかった」
浮気をしていないの一言で遠藤先輩は安堵の表情を浮かべ、ゆっくりとイスに座った。
「そうか、そうか。浮気してないか。ありがとよ探偵部」
「ただし」
「なんだよ」
「先輩は飽きられてきてますね。浮気はしてないけど時期に別れを告げられますよ」
「なんだと!!」
快斗の急な一言に先輩は驚き怒気混じりで快斗に叫んだ。
「なんで、お前にそれがわかんだよ。浮気してねぇなら、俺の事まだ好きだろう」
「そうですよ。だから時期になんです。そもそも先輩、凛先輩に告白させたんじゃなくてしたんですよね」
「あ、ああ。あいつが近づいてきたから多分行けると思って告ったらOKもらったんだよ」
「凛先輩の元彼も同じような感じだったって聞いた事あります。そして、別れる時も今の遠藤先輩と同じ感じだったんスよ。だから浮気はしてなくても時期にフラれると思います。それが俺の答えですかね」
「なんて事だ…俺はまだ好きなのに」
遠藤先輩は崩れ落ち悲しそうにしている。慰めになるかどうかわかんないけど一応俺からも一言。
「遠藤先輩って、洋食部に所属してますよね」
「ん、ああ。よくわかったな」
「家庭科室のスケジュール表に和食部と洋食部の部員の名前が書かれていたの見つけてその時先輩の名前を発見しました」
「それがどうしたんだよ」
「尾田先輩。先輩が和食があまり好きじゃ無い見たいって教えてくれました。もしかしたらそこで関係にヒビが入ったのかも知れないですよ。関係を修復できるかどうかはわかんないですけど。一応伝えておきます。それじゃ俺達はこれで」
俺達は部室に帰ると帰りを待っていたのか金田さんが出迎えてくれた。
「おかえりー」
「なんで、金田さんがいるのさ」
「ん。隣だから。ミス研のミーティングも終わって今日はやる事ないからさ。それよりどうだった?」
「快斗が無事に解決したよ」
快斗はピースしながら金田さんを見ている。
「へえ、やるじゃん快斗」
「まあね。俺に解決出来ない事は無いさ。なんだったら明ちゃんの下着の色当てようか?」
「いや、いい。そうゆう所なきゃあんたモテんのに」
「モテてますー。それにしても孝一。お前は無駄に優しいのかそれともお節介なのかどっちなんだ」
「どうゆう事?」
「遠藤先輩にあんな事いっても無駄だぜ。和食を食べて美味しいとか言っても凛先輩には届かないって」
「そうかなぁ」
「そうね。無駄ね」
灰村も快斗の意見に賛成のようだ。
自分の作った料理を美味しく食べてくれるようになったんなら少しは考え直してくれるかもしれないじゃん。そもそもそれが原因がわかんないけど…
「凛先輩は、ああなったらおしまい。次の男を既に選別してるよ。彼氏の前だから言わなかったけど凛先輩は男には大体ああやって、カッコいいとか、言ったり、ボディタッチしたりして男を勘違いさせるんだ。孝一も言われただろかっこいいとかって。お前も選別対象になってたのかもな」
そうなの。素直に嬉しかったのに。
「でも、快斗には対して何もしてなかったけど」
「俺ならいつでも落とせるって思ってんだろ」
「告られたら?」
「断る。凛先輩には悪いけどあの人めんどくさい。それにあの人は告って来ない。告らせたい派の人間だ。そして俺は告りたい派の人間。凛先輩を恋愛対象にしてない俺があの人に告白する事はない」
「快斗って告白された事は?」
「……ある」
嘘くせーけどこいつ顔いいからな。
「まあ、そう言う事だから孝一勘違いして告白しない様に」
「しないよ」
「そうか。ちなみに孝一ってどんな女子がタイプなんだ?」
「なぜ、そんな事を聞く」
「親友である俺が聞いたっていいじゃん」
「いつ、親友になったんだよ」
「うーん。今日からだな。今日から俺達は親友だ」
「まぁ、好きにしてくれ」
親友?と呼べる友が出来てしまったな。
「それで、それで。どの様な女子が好みで」
タイプの女子か…考えたことも無かったな。恋した事ねーし。
「そうだなー。ズケズケと遠慮も無しに物を言ってくる人かな。本音で会話出来そうだし」
「ゲホッ」
部室の奥のテーブルで金田さんとオセロを嫌々ながらしている灰村が咳き込んだようだ。
「灰村。大丈夫か」
「…ええ。大丈夫」
「うーん。孝一のタイプってそんな感じか…」
快斗は何かを考えている様だが。誰か紹介でもしてくれるのか。
「色々整理して、紹介出来る子がいたら紹介してやるよ。それよりー。灰村さん」
「なに?」
「俺事件解決したからさー。探偵部に入部許可してくれる?」
「そうね。君の女子に対する観察力は武器になるかもしれないわ。入部を許可します」
一応部長俺なんだけどな。
「やったー!これからよろしくな孝一。それと灰村さん!!」
俺に話す時と灰村に話す時の声のトーンが全然違うのが気になったが、探偵部に新たに仲間が入った事は嬉しいな。
「よし、今日はもう帰ろう」
本日の活動を終えそれぞれ帰宅して行った。
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