名探偵になりたい高校生

なむむ

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十四話 祭り後のファミレスにて

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「なんてタイミングが悪い…やり直せ」
間宮くんに想いを伝えたと言っていたがこういうオチになるとは。
私の目の前で俯きながら凹んでいる様子の友人を見ながら、ドリンクバーから持ってきた烏龍茶飲んだ。
私は祭りが終わり、間宮くんと跡野くんと別れた後、話を聞こうと香澄を連れファミレスにやってきた。
しかし、話を聞いてみると花火の音と被って聞こえていなかったらしく、香澄の想いは全く伝わってないときたもんだ。
情けないぞ香澄。
「や、やり直せって言われましても…」
「想いが伝わってないならお前、それはただの独り言だぞ」
「うう」
香澄なりに勇気を振り絞って言ったんだろうが、伝わってないんじゃな…
「お前達二人を見ていたが…」
「み、見てたんですか!?」
「ああ。全部じゃないけどな。偶々見かけたから見てたって感じだ。そのぬいぐるみ貰って嬉しそうにしてたな」
香澄の隣にポツンと置いてあるゴリラのぬいぐるみ。
見た目は私的には全然可愛く見えないが。香澄はゴリラが好きだからな…
なぜ好きか知らんけど。
「ちなみに写真も撮っておいたぞ」
スマホを見せ、香澄が間宮くんからぬいぐるみを貰った後の嬉しそうな顔した瞬間の写真だ。
写真をみた香澄はみるみるうちに顔が赤くなっている。
「は、恥ずかしい…」
「まぁ、これは思い出だから後で送るよ」
香澄は再び俯いてしまった。
私は烏龍茶がなくなっている事に気が付きおかわりをしにドリンクバーに向かうことにする。

ドリンクバーで烏龍茶を入れているときに視線を感じる。
男だ。
チラリと横目で確認すると同年代っぽい三人の男達が私と香澄を見ている。
「参ったな。こりゃ、ナンパされるかもしれん」
されないかもしれないが一応警戒しておくことに。
そんな事より今は香澄の話がさきだ。

席に戻ると香澄はゴリラのぬいぐるみを触っている。
ゴリラのぬいぐるみが気に入ったのか、それとも、間宮くんから貰ったものだからなのか。恐らく後者だろう。
「ま、結果は失敗に終わったが、まだチャンスはあるさ。次頑張れ」
「…はい」
素直だな。
「あの、寧々さんならどうしてました?」
「私か?」
「はい。教えてください」
私があの鈍チンに好意を寄せてたとしてか。
「灰村さんと付き合ってないと分かった時点で行動し、一学期のうちに告白してるな。フラれたらそれはそれだし、付き合ったら今日の祭りも二人で行ってるだろう」
「寧々さん行動早いんですね。私にはそんな勇気出なかったです」
「防衛にもなるしな」
「防衛?」
「私には好きな人がいる。そう噂が経てば告白してくる人も少ないだろう。片思い中の女子に迫ってもフラれるだけだと勝手に男子が諦めてくれるし」
「な、なるほど。寧々さんモテるんですね」
「可愛いからな。今の学校じゃ地味で通っているが。それも時間の問題らしいし」
「どういう意味ですか」
「跡野くんが教えてくれたよ。あいつは変な奴だが今日行動を共にして中々信頼できる人だと判断した」
跡野くんは気が付かなくていい所まで気がつく変態だ。そして私の事まで気がついた。それ故に私に教えてくれたのだろう。
「男子も女子もよくやる、誰が一番かっこいい。一番可愛いってやつだ」
「ああ、やってましたね」
香澄の所にも話は言っていたみたいだな、香澄は私は特には…とか言ってそうだけど。
「跡野くんはその、可愛い人を教えてくれたんですか?」
「ああ。トップ10をな。まだ一学期だし今後順位は入れ替わるだろうとか言っていたけど」
「そうなんですね」
「男子と女子では意見は違うが1、2、3位は大体一致している」
「どなたが一位なんですか?」
「アイドル部。本堂 恵子(ほんどう けいこ)だ。あの子は確かに可愛いと思う。アイドル部だしな」
香澄は知らないのか首を傾げている。
私も顔と名前を知っているだけで話したことは無いからどんな人間かは知らないけど。
「二位と三位はどなたなんですか?」
「二位がミス研の金田さん。三位が灰村さんだ。二位と三位はほぼ同率らしいが」
「それって男子全員に聞いたのですかね?探偵さん灰村さんにいれたのかな」
「多分全員かな。間宮くんが誰に入れたかは知らん。本人に聞け」
「聞けるわけないじゃないですか!!」
「なぜだ?軽い雑談程度で聞けばいいだろ。可愛いと好きは違うだろ」
「うう」
香澄はもう少し積極的になった方がいいな。
「そして、私だ。私は八位だとさ。中々上位だろ」
「寧々さん八位ですか。すごいですねあんなにたくさん女子がいる中で八位なんて」
「お前は四位だぞ」
「えっ?」
聞こえなかったのか。ならばもう一度教えてやるか。
「香澄。お前は四位だぞ」
「わ、わ、私がですか!!」
「そうだ。だから二学期からは男子も女子もそれぞれ行動を起こす奴が出てくるだろう。一学期はただの下見。当然お前にアプローチを掛けてくるやつも出てくるし告白もされるだろう」
「そ、そんな私なんか」
「そういうタイプが一番狙われるんだよ。いいか、香澄。もし好きでもない奴に告白されたら、やさしくするな」
「勇気をだして告白してくれた相手に優しくしてはいけないんですか?」
「そうだ。半端な優しさじゃ相手は諦めない。何度でも告白してくるぞ」
フラれたら傷つく。なんて言うが。傷をつけてあげた方がいい。傷が癒えて次に進める。進んでくれるはず。

ふと冷静になって時計をみると九時近くになっていた。そろそろ帰らないとな。
私達は立ち上がり帰ろうとした時、あの三人組が立ち上がったのに気が付いた。
あっ。あれ来るな。
案の定三人は私達に近付いてくる。
「ねえ、君達。これから何か予定あるの」
知らない人に話しかけられて香澄は俯いてしまった。ここは私がどうにかするか
「悪いが、私達はもう帰るんだ。どいてくれないか」
私達の席の前に立ち道を塞ぐ三人。更に帰さない様にと強引に座ってきた。
「いいじゃん。二人とも、もうちょっと遊ぼうよ」
「二人とも祭り帰り?可愛いね」
「君達と遊んでいるほど私達は暇じゃないんだ」
「ええ、そんな事言わないでさ。そっちの子、さっきからずっと俯いてどうしたの緊張してるの?」
クイっと香澄の顎に手を当て顔を見る男。
「や、やめてください」
「かわいい!」
「おい。その子に触るなよ。あんまりしつこいと店員呼ぶぞ」
私の言葉も聞かずにグイグイと迫ってくる男共。
「ちょっとくらいいいじゃん。遊ぼうよ」
「同じ事しか言えないのか」
いい加減しつこいな。仕方ない叫ぶか?
「おい、テメーら。女が嫌がってんじゃねーか。わかんねぇのかよ」
三人の男とは違う声がする。声の方を見ると体格のいい男が立っていた。
あれは…
「んだ。てめ…」
三人は自分達とは体格の違いを感じ取ったのかすぐさまその場から立ち去っていった。
「あの、ありがとうございます」
「おう、怪我ねえか。って柳か?」
「えっ?」
香澄は気がついて無い様子だな。普段は制服姿しか見てないし、そんなに絡む事もない人間だしな。
「俺だよ。佐竹だ」
「佐竹くん。ボクシング部の佐竹くんですか」
佐竹と名乗ったことでようやく誰か気が付いたようだ。
「たく、お前こんな時間にここにいたらナンパされるに決まってんだろうが。早く帰れよ。それにそっちの女」
そっちの女とは私のことだろう。
「あんたも怪我ねえか?」
「ああ、大丈夫だ。それにしても学校でのヤンキーっぷりとは違って外では意外と優しいのだな君は」
「ああ!?お前誰だ。同じ高校のやつか?」
「ふふ、堀田だよ。堀田 寧々だ」
「ほ、堀田!!お前堀田かよ。メガネ掛けてねーから気が付かなかったぜ」
佐竹くんは驚いていた。メガネありとなしでそんなに印象変わるのか。
「まあ、とにかく助かったよ。ありがとう」
私達は佐竹くんにお礼言ってそのまま帰宅した。

家に着き私は今日の写真を全員に送る。
「楽しい祭りだったな。ファミレスの一件がなければ満足した一日だった。
それにしても佐竹くんか。借りが出来てしまったな。今度あったらお茶でも淹れてやるか」



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