名探偵になりたい高校生

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十話 一年一学期十

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 七月も後半になり楽しい夏休みまで後三日に迫った。期末テストも無事終わって赤点も無い俺は充実した夏休みを過ごそうと、自分の机で計画を考えていた。
「夏休みはバイトだな。高校生と言ったら夏はバイトをするものだ!」
 彼女もおらず特に予定も無い寂しい俺はバイトがあるから彼女つくってる暇ねぇわと自分に言い聞かす。
「やあ、おはよう。間宮くん」
 そんな寂しい俺に声を掛けてくる一人の女子の声。
 誰だと俺は声のする方を見た。
「・・えと・・」
「この間会話したのにその感じは酷いね。私だよ。【堀田 寧々】(ほった ねね)だよ」
 俺に声を掛けて来たのは茶道部の堀田さんだ。
「ごめん。部活の時と印象が違って一瞬わかんなかった」
「はっは。そうだろう。部活の時以外は私はメガネを掛けているからねぇ」
 無邪気に笑う堀田さん。部活の時は和服に身を包み、メガネも掛けていない。そりゃわからんよ。今もまだ本人だと思ってないくらいだ。
「部活の時はコンタクトにしてるんだね」
「いや、あれは裸眼だ。私は目はいいよ。視力2.0だし。このメガネは伊達さ」
「ああ、じゃあ普段掛けてるのはオシャレかなんか」
「君は鈍ちんだな。このメガネのどこにオシャレ要素がある」
『ホレ』とメガネを外し見せてくる堀田さん。メガネを受け取ると、確かにオシャレな感じはしない。なんと言うか普通の丸メガネで、地味な気もする。
「じゃあ、なんで今は掛けてるのさ」
「ふふ、それはだね。君、メガネ掛けている私と掛けていない私。どっちが可愛いと思う?」
 メガネを掛けては外しを繰り返す堀田さん。まぁどっちが可愛いかと言うと、メガネを掛けていない方だなと思ったから素直に伝えよう。
「メガネなし」
「そうだろ」
「じゃなんで掛けてんの?」
「モテてしまうだろ。メガネ外した私じゃ。男が群がってくるのは好きじゃ無いんだ」
「へぇ・・」
 そう言って再びメガネを掛け、素顔を隠す堀田さん。メガネを外した堀田さんは眠そうな顔で、それが可愛いと思う人もいるのだろう。
「所で話は変わるが、八月の一周目の土曜日、何か予定はあるかな?」
「八月の一周目の土曜日?」
 俺は予定は全く無いが、見栄をはりたいお年頃。スケジュールの確認するふりをする。
「その日は特に予定は無いよ」
「それはよかった。その日香澄と祭りに行くんだ。君も行こう」
 香澄とは、生徒会会計で一年五組【柳 香澄】(やなぎ かすみ)さんの事だ。
「俺がいきなり来たら柳さん嫌な顔しないかな」
「しないよ。香澄にはもうすでに君が来ることは話している」
 随分と手回しが早いな。
「女子二人に男子一人か・・」
「なら、君も誰か男友達を連れてくるといい。それじゃ決まりだ。日にちが近くなったら連絡する」
 そう言って堀田さんは自分の席に着いた。堀田さんは俺の席の前に座っていたんだな。
 それにしても男友達か・・もうすぐ一学期も終わるってのに、ちょくちょく話すくらいの奴はいるけど、休日に遊ぶほどの中の良い友達はいないな。うむ困った。
 そんな事で一日悩んでいる間にすっかり放課後になる。今日は清掃業者が来るとか来ないとか先生が言っていたが俺には関係ない。そう思った俺は部室の畳で寝転んでいた。
「まあ。別に女の子二人の中に男一人でいてもいいよな」
 今の段階で男友達を作る事を諦める事と結論を出した所で、俺はお茶でも飲もうと立ち上がると同時に扉が開く。
「おお、灰村か、お茶入れるけど、お前も飲むか?」
 茶髪にロングストレートで目つきの悪い女事、【灰村 杏】(はいむら あん)はいつもより更に目つきの悪く鋭い表情で俺の腕を掴み、部室から連れ出した。
「お、おい。どうした痛いぞ」
「事件よ、事件。さっさと現場に行くよ」
 事件だと?
 俺は灰村に腕を引っ張られながら現場に向かう。
 事件現場は体育館。放課後の体育館は現在、球技部が主に活動している。今日はバスケ部にバレー部。2階で卓球部にバドミントン部がそれぞれ練習をしていた。
 そんな中、男子バスケ部と女子バスケ部の両者が睨み合っていた。正確には女子バスケ部が一方的に男子バスケ部を睨んでいる状態で、その中で一人の女子部員が泣いているのが目に着いた。
「さっさと犯人出て来なさいよ!」
 女子部員が男バス部に叫んでいる。
「なあ、灰村。何があったんだ?」
「あそこで泣いてる女子いるでしょ。あの子、着替えている最中に覗かれたんだって」
 覗きねぇ。
「で犯人はわかっていないと」
「そ」
「犯人は男バスの中にいると?」
「そ、悲鳴を上げた時、男バスの練習着をきた男が走って逃げていくのが見えたんだって」
 兎に角俺と灰村は話を聞きにバスケ部の間に割り込んだ。
「どうも、探偵部です。覗きの件で詳しく話を聞かせてください」
 いつもは俺が行くが今回は灰村が先陣を切って話しかけてくれた。覗きと言う変態行為をする女子の敵が許せないのだろう。
 灰村は泣いている女子に話しかける。
「うん・・えっとね」
 女子部員が話そうとするのを遮る様に他の女子部員が話に入ってきた。
「てか、犯人あいつでしょ。跡野くん!今日まだ来てないみたいだし、今頃逃げてんじゃないの」
 一人の女子部員がそう叫ぶと他の部員もそうだそうだと言い出した。その跡野って人はそんな疑いをかけられるほど酷い奴なのだろうか?
「うーす、遅れましたぁ~」
 体育館の扉を開くと同時にそんな言葉を発する男、その言い方に全く悪びれている様子が無い。遅刻の常習犯なのだろうか。
 その男がやってくると、女子部員全員が男を囲った。
「来たわね!変態!覚悟しなさいよ」
「え、ちょちょっとなになに?」
 俺は囲まれた男を見る。あれがさっき言ってた跡野って奴なんだろう。
 てか、めちゃくちゃイケメンじゃん。なんであいつが疑われてんの?普通こう言う時って真っ先に除外されそうなもんじゃん。
「なあ、灰村。あいつが跡野って人だろ。イケメンじゃん。疑う相手間違えてない」
「ええ、彼の名前は【跡野 快斗】(あとの かいと)くん。一年二組で遅刻の常習犯。中学の頃からバスケをやっていて、中二の時一度だけ全国大会に出場経験があるわ。更に見た目だけなら、一年の中ではぶっちぎりでイケメンね。ただ」
「ただ?」
「まあ、見てればわかると思う」
 灰村がその先は言わなくても見てればわかると言うから取り敢えずこの状況を見る事にした。
「こんなに可愛い女子達が囲んでくれるなんてすっげー嬉しい!!」
 イケメンだし。女子に囲まれる事なんてよくありそうだけどな。
「女好きか?」
「彼がただの女好きなだけなら。とっくに彼女が出来てるわよ」
 他に理由があるのか・・
「あれ?先輩。シャンプー変えました?昨日と違う匂いがしますね。良い匂いですよ、あっ、もちろん昨日までのやつも良い匂いでしたけど。それと、京子ちゃん、今日の眉毛の感じいいね。可愛いよ。昨日より一ミリ上がったね。それからそれから・・・」
 なにあいつ。気持ちわる。
「え、あいつ。女子の変化に敏感過ぎない・・」
「そう。跡野くんは女子が好き過ぎるから、女子の変化には必ず気がつくし、なんだったら睡眠時間もわかってしまうくらい変態なの。その為に顔が良くても全くモテない」
 跡野の勢いに押されたのか、女子部員は一斉に下がる、そして引く。
 女子と跡野の隙間が出来、バスケ部でもない俺達の存在に気が付いた跡野は近づいて来た。
「あ~!!灰村さ~ん!」
 訂正。俺達では無く、灰村に近づいて来た。
「こんな所でなにやってんの灰村さん!まさか俺を見に?」
「ある意味そうだね。跡野君が犯人だったらの話だけど」
「犯人?そういえば女バスのレディ達もんな事言ってたな」
 状況が掴めていない跡野に灰村は説明し、今現在跡野が容疑者として浮上していると伝えた。
「ちょっとちょっと、俺がそんな事するわけないでしょ!」
 跡野はもちろん違うと反論する。そりゃそうだいきなり来て覗きの犯人にされたらたまったもんじゃない。
 しかし、女バスの部員はそう思っていないらしく、ずっと跡野を睨んでいる。
「遅れてくるし、女子をいつも眺めてる跡野くん以外怪しい奴なんていないわよ!」
 一人の女子部員が叫ぶ。
 どうやら跡野は本当に女子に人気が無いのだろうと改めて思う。
 このままでは犯人じゃ無くても犯人にされてしまうな。仕方ない。
「ちょっといいですか?」
「なに、てか君誰?」
「えと、探偵部の間宮です」
「探偵部?ああ、一年生が創ったていう部活ね。そういえばこの間空手部とボクシング部の揉め事解決したって噂になってたっけ。その探偵部が何か用?ってこの事件の事か」
 ああ、あの時の事広まったんだっけ・・
「へぇ、お前がボクシング部の佐竹を一瞬で黙らせた奴かよ。佐竹の奴『本物に出逢っちまった』とか言いながら真面目に練習してるらしいぜ」
 跡野が言う。君は今容疑者扱いなのになぜか余裕そうなんだよな。
「てかさ、お前に聞きたいことあんだけどいい?」
 跡野が真面目な顔をして俺に話しかけてきた。なるほど。こいつかなり顔が整ってやがる。
「なに?」
「お前、灰村さんの彼氏なの?」
 ここでもか・・もういっそ彼氏だって言った方が楽な気がするが、そんな事を言ったら灰村になんて言われるかな。
『は?キモ。死んでよ』とか言って来そうだ。
「違う。俺と灰村は中学が同じなだけで彼氏彼女の関係じゃない」
「本当に?」
「本当だ」
「マジ?」
「マジ」
 跡野の表情がみるみる内に明るくなっていくのがわかる。
「灰村さ~ん!てことは今はフリーって事だよねぇ。あの時の返事聞かせてくれるかな?」
 あの時の返事とは、まさかこいつ灰村に告ったのか?
「無理。キモい。あの時の返事って・・もうこれで五回目なんだけど」
 跡野・・撃沈。どんまい。
「ま、まあ兎に角、その覗かれた現場に連れて行ってもらえますか?」
 俺は跡野を放っといて、被害に遭った女子生徒に話し掛ける。
「うん・・」
 女子生徒は俺と灰村を連れて歩き出すと、跡野も一緒についてくる。
「ちょっと、跡野くん。なんで君も一緒に行っちゃうわけ」
「なんでって、女子更衣室に入れるんですよ。興味あるでしょ」
「もお~。それなら私もついていく」
「それなら、跡野の見張りとして俺も行くよ」
 被害女性と跡野、そして男バス、女バスの二年生で部長の二人がついてくる事になった。

 更衣室に向かう迄に今いる人達の事を把握しておくべきだろう。
 まず、被害者の女子生徒。
 俺と同じ学年でクラスは二組。容疑者扱いされている跡野と同じクラスだ。
 名前は【飯島 茜】(いいじま あかね)。
 二人はクラスでいる時もよく話す関係らしい。跡野は女子にモテないが別に嫌われているわけでは無いらしく、誰とでも話すクラスの中心人物の様だ。
 跡野の監視役として着いて来たのが二年生の【葉山 健介】(はやま けんすけ)先輩。三年生は既に引退していないらしくこの先輩が新バスケ部の部長になっている。見た目は強面だが面倒見の良い先輩らしい。
 そして、最後に女バスの二年生【米田 雪】(よねだ ゆき)先輩。こちらも男バス同様新バスケ部の部長となっている。いつもニコニコしている優しい先輩だが試合になると別人の様になるらしく優しさの欠片も無いそうだ。
 俺や灰村が気になるのか時折後ろを振り向いて、たまに目が合うとニコッと笑って来る可愛い先輩だ。

 そんなこんなで更衣室に到着した。
 灰村が中に入り人がいない事を確認した後、全員を中に入れた。
 中は更衣室なだけあって、ロッカーがたくさん並んでおり、部屋の奥にシャワー室もあり、誰か使用したのか扉が開いていた。
 ロッカーは各学年別に用意されていて、全生徒分用意されているし場所も決まっている。
 男子のロッカーも女子と同じ作りだが、俺は普段使用していない為初めて入る更衣室に少しばかり緊張してしまう。
 こういう時って、女子の下着とか落ちてたりする物なんだろうか。
 いかんいかんと気持ちを切り替えようと俺は飯島さんに話を振った。
「さて、じゃあ飯島さん。話を聞かせてくれる?」
 俺が飯島さんに尋ねると飯島さんは自分が使用しているロッカーまでに歩いていった。
「私、ここで着替えていたの・・」
 飯島さんのロッカーの場所は入り口から入ってすぐの所に合った。
「練習着に着替え終わってロッカーを閉じようとしたらなんか視線感じて、ドアの方振り返ったら、バタンって大きな音がして、私すぐにドアを開けて犯人見ようとしたの。けど背中しか見えなくて」
「所で飯島さん。跡野く・・犯人を見てすぐに追いかけなかったの?」
 今、跡野って言ったな。
 灰村の中では犯人は跡野になっているんだろうか。
「そ、それは。怖いじゃん・・もし犯人を追い詰めたとしても逆上されて襲われたらって思うと」
 正体がバレて追い詰められた犯人は被害者を殺害するなんて事件はよくある話だが、ここは学校。そんな事はしないと思う。他に考えられるとしたら飯島さんが他の誰かに言えないくらいのトラウマを与える事も考えられる。それが飯島さんが追いかけなかった理由だろう。
「ま、そうよね。そしてあなたは体育館で覗かれたとみんなに相談したって事よね」
「うん。それで友達が灰村さんに連絡したって」
 なるほど、だから灰村は事件の事を知っていたのか。
「ああ、もう本当最悪。遅れた時に限ってこんな目に合うんだから!」
「飯島さん、部活遅れて来たの?」
 俺は素朴な質問をしてみた。
「そう。今日委員会があって少し遅れたの」
 て事は普段あの時間帯はここには誰もいないか。
「跡野くんさ、君は本当に犯人じゃないの?今なら誰にも言わないし、問題にもしない」
 米田先輩は優しく跡野の伝える。
「いやいや、雪先輩。俺じゃ無いって!俺は女子を悲しませる様な真似は一切しない男ですよ!大体、茜ちゃんの下着、見なくても今日はどんな下着身につけてるかなんてわかりますよ」
 その発言が既に女子を悲しませてそうだけど。
「おい、快斗。今はふざけてる場合じゃねえだろ。お前のその余計な一言があるから疑われてるじゃねえか」
 葉山先輩は厳しい一言を跡野に浴びせる。俺もそう思う。
「なあ、灰村。お前は跡野が犯人だと思うか」
「君は?」
「思わない。あいつは変だけど。そう言った事はしなそうだ」
 ここまでの数分だが、跡野をみて素直に思った。
「私も違うと思う」
「それにさ。飯島さんの証言に跡野はまだヒットしてない」
「ヒット?」
 飯島さんはバスケ部の練習着を着た奴が走って逃げていくのを見たと言っていた。
 バスケ部の練習場着は男子も女子も同じで白のシャツに黒のパンツだ。そして背中には番号が書かれている。男バス部長の葉山先輩は51番。女バス米田先輩は11番となっている。
 そして跡野は現在制服を着ている。
 飯島さんが見た犯人は練習着を着ていたと言う話だ。
 その事を全員に話した。
「それって他に犯人がいるって事?」
 米田先輩が首を傾げながら俺を見てくる。
「そうかも知れないですね」
「跡野くんが制服に着替えて体育館に来たのかも知れないよ」
 確かにその可能性もある。だから俺は飯島さんに改めて質問した。
「飯島さん。練習着を見たんだよね?白と黒の」
「私の気のせいじゃなかったら・・背後姿しか見えなかったし」
「葉山先輩。バスケ部の練習着ってみんな番号振ってあるんですか?」
「ああ一応な。全員二桁で書かれ十の位がそれぞれポジション別で番号が書かれている。1番がG(ガード)2番がSG(シューティングガード)3番がSF(スモールフォワード)4番がPF(パワーフォワード)5番がC(センター)そして一の位の数字は数が小さい奴がレギュラーだ。俺は51番だからCでレギュラー。Cで一番上手いから51番ってわけだ」
 その事を踏まえもう一度飯島さんに聞く。
「飯島さん。背中の番号はなんだった?」
 飯島さんは頭上に?マークでも浮かんでいるように首を傾げながら思い出そうと必死になっている。そしてたどり着いた答えは。
「背中に番号なんてなかった・・」
 この答えにより男バスの中に犯人はいない事が決定された。
「ちなみに、跡野の番号って?」
「21番。三年生が引退したからこの秋からレギュラーになれるんだけどさ・・」
 歯切れの悪い言い方だな。なにか問題でもあるのかな。
「あ、先輩俺今日練習着忘れちゃったんで体操服でやりますね~」
 てへ、っと頭に手を置き舌を出す跡野。可愛くないぞ。
「じゃ、じゃあ誰が覗いたの」
 そう。問題はバスケ部が犯人じゃ無いことの証明じゃ無い。誰が覗いたのかだ。
「今日飯島さんが着替えた時間帯って普段は誰もいないんだよね」
「うん、いないと思う。部活が始まる時間はどこも同じはずだし」
「私も答えるよ。いないで間違いない。二年も三年も」
 となると犯人を見つけるのは俺の仕事で終わりにならないかもな。
「犯人は飯島さんを覗いたわけじゃない。最初からここにいた可能性がある」
「それってどう言う意味?」
 言葉で説明するより見せた方がいいなと
 思いシャワー室に向かって歩き出そうとしたが、俺の考えをいち早く察したのか灰村が、それを手に持っていた。
「間宮くん。君が探そうとしてたのってこれでしょ」
「さすが灰村。完璧だね」
 灰村の手に持っていたのは小型のカメラ。
 シャワー室の一箇所に着いていたらしい。
「犯人は覗き、盗撮目的でここに忍んでいた。そして運悪く飯島さんがやって来た。犯人は飯島さんに見つからないようゆっくりドアを開けたが出るところを見つかった」
「それだったら茜ちゃんが出ていくの待ってた方がよくね?」
「もちろんその方が安全に出れただろうけど、他の生徒が来る可能性も考えたし、なにより犯人には時間がなかった」
「で、誰なの犯人って」
「清掃業者」
 今日は清掃業者が来るとか磯川先生が言ってたし、もし清掃中に飯島さんが来たのなら声を掛けるだろう。それに看板も置くはずだ。だがそのどちらもしなかったって事は仕事中に抜け出し急いでカメラを仕掛け元の場所に戻らなければならない。ゆっくり飯島さんが出て行くのを待つわけにもいかないだろう。
「後は先生に報告して警察に任せよう」
 米田先輩はカメラを持ち先生に伝えると、すぐに警察がやって来て、清掃業者の男を一人緊急逮捕した。

 事件も解決したし俺達も帰ろうとした際に跡野がやってきた。
「いや~、お前すげぇな!かっこよかったぜ。お陰で助かったよ」
「いや~。それほどでも」
 あっはっはとお互い笑い合う、灰村の冷たい視線を感じるが無視しよう。
「そうだ、そうだ、連絡先交換しようぜ。確か間宮だったよな。下の名前は?」
「孝一だけど」
「孝一か、じゃ、今度から孝一って呼ばせてもらうな。俺の事は快斗って呼んでくれ。俺苗字で呼ばれんのあんま好きじゃねんだ」
「わかった。快斗」
 俺は快斗と連絡先を交換した。
「ところで~灰村さん。八月の最初の土曜日って暇?」
「暇じゃない。予定ある。てか予定なくても君と二人で祭りとか行きたく無いから」
 灰村の容赦無い口撃だ。
 それにしても灰村はその日予定があったのか、堀田さんからの誘いに灰村も誘うと思っていたんだけどな。
「なあ、快斗その日暇だったら、俺と祭りに行くか?」
「え。男と二人?パス。その日予定ある」
 男と二人だと思って明らかに嫌そうな顔するな。
「堀田さんと柳さんが一緒なんだが予定があるなら残念だ」
「予定なーい!!行く行く!寧々ちゃんと香澄ちゃんか絶対行くわ」
 切り替えが早いな・・
「まあその日が近くになったら連絡するよ」
「おーう!それじゃあな」
 そう言って快斗は体育館の方に走って行った。
「灰村も来るか?」
「聞いてなかった?私は予定がある。その日は由美さんの所に行くの」
 由美さんは灰村がお世話になっている人だ。俺も一度だけ会った事があったな。
「由美さんの所か。アイツはいないんだよな?」
「いないよ。確認済み」
「そうか・・」
「心配?」
「そりゃあ、まあ」
 灰村フフと笑い、『ありがと』と言った。
 その後俺達は学校を出て帰宅した。





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