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第三章 血路
三十三
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信勝は思い出していた。その昔、まだ守護代・清洲織田氏が弾正忠家と協調関係にあった頃、亡き父に手を引かれて来た幼き日を。ただ広いばかりの館城を持て余す清洲衆の間抜け面だけをぼんやりと記憶している。
ところが、いま、眼前に広がる清洲城はどうだろう。惣構の内側の町は人の往来まるで濁流の如き様相を呈し織田信勝の姿に気付く者とて一人も居らず、砦に入ってはそこかしこを駆け巡る土堀、水堀の夥しいことは迷路のようであった。
――これが、死に行く人間の城だろうか?――
そう思うが早いか、門が開かれ、中から使いの男が現れる。
「よくお越しくださいました。どうぞ、こちらへ」
池田恒興である。信長に最も古くから仕える子分筆頭だが、その軽薄なニヤケ面を今日という日にも張り付かせていた。他者に対面にするに当たり彼が用意できる表情は極めて少ないらしい。
「騒がしいでしょう。いやはや、見ての通りで、城内はてんてこ舞いです。誰も口に出しやしないが、もう、みんなきっと分かっているのでしょうな」
信勝と勝家の二人を先導しながら、恒興はぐんぐんと歩み出した。小さなからだに不釣り合いなその大きな歩幅に、信勝は付いて行くだけで息を切らした。信長が居住する北櫓は城の北端、大手門から向かうには自然と早歩きになるようだ。
「それほど良くないのか。兄上のご容態は」
「大枚叩いて京から指折りの医者を何人も呼びましたが、誰も首を縦には振りませんでした。そりゃそうだ、と思いましたがね。医者はおろか素人目にも分かるほど痩せ細ってしまっているのです。あんな織田信長は見たことがありませんよ」
「その所為で岩倉の戦況は難儀しているそうだが」
「アア、いやあ、そっちはそうでもありません。岩倉は虫の息だ、森殿なら放っておいてもいずれ巻き返されますからね。大変なのは全然清洲です。殿は口を開けば戦の話ばかりなさってね、オレが出陣する、と飛び起きては倒れての繰り返しです。アレはもう「うつけ」なんて愛嬌のある代物ではありませんな。ほとんど気が触れてしまったようなものだ。ですから今日、信勝さまにお越しいただけたのは我々にとっても幸いなことでして――」
「それはどういうことか」
「奇妙さまのお話は聞いておられますでしょう? 人間、心残りがあると安らかに逝けないというものですからね。信勝さまから直々に「奇妙丸のことは万事お任せあれ」とでもお言葉添えいただけたなら、殿の気負いも幾分か安らぐかもしれません。さすれば、きっと、我らの日々の苦労だってもう少しは減るというもの」
兄を憎んできた信勝だが、恒興の物言いは性質的に癪に触れるらしい。
「風の噂に聞いてはいたが、池田恒興、ずいぶん不快な男だな。池田家は兄上のおかげで出生したと思っていたが、忠義の心はないらしいな」
語気を強めて投げかけられた信勝の物言いにも、恒興は振り返ることすらなく、むしろ一層得意になって苦笑を漏らした。
「ヘヘヘ。忠義とは外面の品のことですな。私はそもそも侍に向いていない男なんです。ろくな教養もありません。根が下品なのはもう治らんでしょう。こういった下品が許されるのは信長という男の元だけでしょうから、先のことを考えると憂鬱ですな」
「口先だけは立つようだ。卑しい商人になればよかろう」
「アハハ。そいつは愉快なお話ですが、マア、私の話などどうでもよろしい。ここですな」
気付けば、信勝と勝家は清洲城の北の端へと導かれていた。あれほど騒がしかった町の喧騒はいつの間にかまったく聞こえない。辺りが薄暗く視界が効かないのは南西に作りかけの櫓が聳え立って影になっているかららしい。
「北櫓天守・次の間と申します。こちらでお待ちくださいませ」
「待つ? 私が兄上の寝所へ行くのではないのか?」
「ええ、それがですね、信勝さまが来てくださると殿にお伝えしたら、「きちんと迎える」などと言い出しましてね、何やら正装に着替えてこちらへお出でなさるようなのです。まあ、殿の性格からして、弱りきって寝ている自分の姿などお見せしたくないのでしょう。さあ、そんなわけですから中へ」
案内された部屋はしんと静まり返っている。ただ二つの戸が無造作に開け放たれていた。後は境界の曖昧な黒い柱が林立しているだけだ。その静寂の鋭いことに思わず足を止める信勝だが、突如、恒興が背後から素っ頓狂な声を上げた。
「ああ、いけないッ。腰のものをお預かりするのを忘れておりましたッ」
恒興は餌をねだる利口な猿のように両手をさっと差し出した。
「私が下げているのはこのような小さなものだけだ。預けるほどではないだろう」
「ウウン、けれども、せっかくの兄弟水入らずの日です。殿も気張って来られるでしょう。私としては、なるべく、そのようなものがチラつく場にはしたくないのですが、――」
「しかし、――」
信勝が渋って視線を逸らすと、恒興はポンと手を叩いて思いついたように語りかけた。
「わかりました。では、こういうのはいかがでしょう。私に渡してもらわなくとも構いません。信勝さまの太刀は、すぐ側に控える柴田殿にお預けいただければ良い。申しました通り、私としては殿に余計な気を遣わせたくないだけですから」
信勝は尚もしばらく腑に落ちない様子ではあったが、勝家を見つめ、
「すぐそこに侍っていろ。何かあれば呼ぶ」
そう念を押して太刀を勝家に手渡した。
恒興はそれを見届けると、一層に恭しく礼を言って足早にその場を後にした。
冬の日は短い。それまで櫓に隔てられていた隠されていた太陽がその身を赤く染めながら西へ落ちていく。決して広くない次の間はその隅々までが光に包み込まれた。あまりの眩さに信勝が思わず目を細めたとき、上座から人の足音が聞こえた。信勝は視界の端に褐色の長袴を捉えるとすぐさま平伏した。本当は一刻も早く顔を上げたかったことだろう、信長の窶れた頬や青白い顔色をしかと自らの目でしかと確認したくて仕方がなかったに違いない。だから、その男が次に簡素な挨拶を述べたとき、信勝は想像とのあまりの落差にしばらく放心を余儀なくされる。
「織田勘十郎信勝さま、お初にお目にかかります」
全身をびくりと縮こまらせながら信勝が顔を上げた瞬間、二つの戸が同時に閉じられた。辺りは再びの影を取り戻したが、窓から漏れる光は完全には遮断されてはおらず、眼前の男が信長でないと信勝が認識するには十分だった。
「誰だ、貴様はッ。イヤ、これは何だッ」
「拙者、河尻秀隆と申します」
秀隆はゆっくりと頭を下げて折り目正しく挨拶すると、さながら、法話を説くかのように一つずつ語り始めた。
「殿の見舞いにご参上いただき、誠に有難いことではありますが、殿はここへ参られません」
「どういうことだッ?」
「それらはすべて虚報にございます。あなたさまに置かれましてはこの北櫓・次の間にて、お腹を召していただくよう、殿よりご下知が降ってございます。ついては、この不肖・河尻青貝秀隆が責任をもって御身の介錯を務めさせていただきます。サアサ、ご覚悟を」
簡素な切腹刀を置くと、信勝の前へと音もなく差し出した。
「オイッ。勝家ッ、勝家は居るかッ、出合えッ」
秀隆の言には答えずひたすら外に向かって叫んだ。
けれども、勝家が飛び込んでくる様子は一向にない。
「あなたさまが再びご謀叛を企てていると殿に伝えたのは、他ならぬ柴田殿。それを聞いた殿は、床に伏せること数か月、遂にあなたをここへ呼び寄せたのです。ここまでお聞きいただけたならお分かりでしょう。あなたさまのお味方は、ここには一人足りともおりません。ご承知いただけたなら、サアサ、ご覚悟を」
信勝は自身の足元に丁重に置かれた切腹用の脇差を一瞥する。全身から刺すような汗を噴き出す。眩暈を生じる。気づけば閉じられた戸へと向かって遮二無二駆け出していたが、秀隆それを制止しようともしない。落ち着き払って、信勝が戸に爪をかけてエイコラ悪戦苦闘するのを見守っている。
「何故開かぬッ、オイ、誰か居ないのかッ――」
戸は外側から固く閉じられ、一向に開かない。すべてが用意周到に準備されていた。
「事のすべてが終わり、拙者が外の者に合図するまでその扉が開かれることはありません。サアサ、ご覚悟を」
信勝はようやく秀隆を睨めつけ、絞り出すように言葉を紡ぐ。
「これは何かの間違いだッ。私が腹を召さなければならぬ道理はないよ。む、謀叛と言ったか? 滅相もないことだ。兄上は何か誤解されている。そうだ、勝家から伝え聞いたと言ったな、だったら、勝家こそが私を陥れるために兄上に讒言を行ったのだッ。今から兄上に会わせてくれないか? 話せば誤解も解けるというものさ」
ところが、秀隆の解答は無情だった。
「信勝さま、勘違いをされては困ります。私はあなたさまの釈明を聞き届けにここへ参ったのではありません。私は腹を召されるあなたさまの介錯を務めるために参ったのです」
虚実を織り交ぜた信勝の物言いには何一つ答えないまま、ただ粛々と自らの役割だけを述べた。信勝はがちがちと歯を震わせた。ただ自分の首を落とすためだけにそこに居る男には、情も、知も、付け入る隙がない。信勝には次第に河尻秀隆という男が人間であるように感じられなくなっていった。死という現実が衣をまとって顕現しているとしか思えない。
「どうしてだ?」
「ハ――?」
「どうして私が死なねばならぬッ? そんな、そんなことは、おかしいじゃないかッ。私は、兄上に代わって弾正忠家を統べる者だッ。一体私のどこが信長に劣っているというのだ? あってはならぬことだ、あってはならぬことだぞッ」
それはもはや命乞いですらなくなった。要求を聞き入れられる希望はもうない。そうと知っていながらも、しかし、生への執着が断ち切れない。人の言葉を使ってはいたがそれは意味を成していない。魚や虫が捕食者に襲われ、すでに絶命を逃れ得ぬ状況からも、その手足をバタつかせて抗うかのように、そこにはただの熱量だけがあった。
信勝から理知はとうに失われていたが、秀隆にはそれを推し量ることはできなかった。そして、自らの主君を悪罵された苛立ちだけが彼をすこし饒舌にさせた。
「あなたさまが殿に勝る部分など、私の目から見れば、何一つとてありませんでした。筋目を軽んじ謀叛を起こしながらも、決戦に出るための勇気はなく、負けてはすべての責を配下に押し付けるに飽き足らず、降伏に際してすらご母堂の働きにあやかっておられましたな。殿より赦免された後も、はしかのごとき野心に突き動かされ国を乱さんとするは言語道断の所業にござる。あなたさまがお選びになられる道は、もはやただの二つのみと心得られませッ。織田信長の弟に恥じぬひと角のご最期を自ら遂げられるか、拙者のごとき名もなき侍の手にかかって死ぬか、それだけです」
信勝は齢二十二にして始めて他者から全てを否定される機を得たが、すでに遅きに失していた。反して、大人たちから除け者にされながらも自らの居場所を自らで作りその運命を切り開いてきた信長を主君とする秀隆にとって、目の前の男の不甲斐なさはほとんど理解の外だった。
「ウウッ、ウ、」
やがて信勝が泣き出してしまうと、秀隆は重い腰を上げた。
「失礼いたします」
直垂を諸肌脱ぎにさせてから、再び脇差を手に取って差し出した。
「ご覚悟を」
「イヤだ、死にたくない。も、もう、兄上の前には現れぬッ、名を変えて尾張の国を出ようと思うのだッ。だから、こんなことはやめてくれ、死にたくないッ、死にたくないのだッ私はッ」
「聞き分けが悪うございますぞッ」
秀隆が声を張ったその時である。信勝は受け取った脇差を抜刀すると、大股で一歩踏み出しながら、奇声を上げて秀隆に襲い掛かった。ところが、降り注ぐ夕日を受けてギラリと輝く刀身が我が身に迫り来るのを、秀隆はしかと見極めて、いとも簡単に素手でいなしてみせた。それだけで信勝は足をもつれさせて転倒してしまった。転んだときに自ら振りかぶった脇差で切ったか、脇から夥しい出血を生じている。
「痛い。痛い、勝家ェ、蔵人ォ、は、母上、だッ、誰でもいいから。助けて――」
痛みに悶えているのか、屈辱に嗚咽しているのか、はたまたその両方か、信勝は呻きながらひたすらに這いずり回った。しばらくはそれをただ眺めていた秀隆だったが、血を噴き出しながらのたうち回る信勝の姿を見て、自らの本分を思い出したのだろう、太刀を抜いた。
「ヤメロッ、く、来るなッ、オイ、ほんとうに、駄目なんだ、イヤだアッ――」
「御免」
秀隆は主君の弟の首にしかと太刀を押し付けて、そのか細い首を一太刀で落とした。
――
次の間の喧騒が聞こえるか聞こえぬかというところ、信長は一人待っていた。大空を鷹が優雅に飛んでいるのを眺めている。
いつの間にか背後には勝家が平伏していた。傍らには白木の首桶が置かれている。真新しい檜の香りと血の匂い、それらがが混じり合ったままそよ風に吹かれて、存在を信長に知らせた。
「終わったか。弟の最期はどうだった」
「抵抗されましたので、河尻殿によってその首を落とされました」
「そうか」
信長は首桶を開いて、弟の顔を確認した。
「それでは、某はこれにて」
「意外だ、――」
立ち去ろうとする勝家を信長は柄にもなく引き留めた。
「お前は、嘘を言うかと思ったのだよ。せめて最期は武士らしく腹を切った、とかね」
「そう言って、形だけを取り繕って、何になりましょうか」
「アア、そうだ。何もならんよ。だが、それを弟にしてきたのがキサマだ」
「わかっておりますッ」
勝家は窪んだ目を赤くして、今にも信長に飛び掛からんとする形相で睨みつけた。いや、睨みつけたかのように見えただけなのかもしれない。彼の内に沸き起こる熱情は、他人の目に触れるにはあまりにも激しすぎたから。
「すべて、わかっておりました。わかっていながら、某は気付かぬ振りをしておりました。信勝さまはあなたを超える器だと自分に言い聞かせておりましたッ。けれども、わかるとは何でしょうか? 知っていたからと言って、それが何ほどのことでしょう」
首桶を抱える勝家の腕は、その太さに不似合いなほど小刻みに震えていた。
「覚悟とはッ、何ほどのことでしょうッ? 某は今日、弾正忠家に仇成す逆賊を、敵を、討った! けれども――、けれども――。本当に、本当にこれで良かったのだと、誰がどのようにして分かりましょう。尾張統一、この上ない大義にござる。けれども、その道が、これほどまでに辛いものだと、一体、誰が教えてくれましょうか」
涙にも、言葉にも、勝家のすべてからだから流れ出ていくかのようだが、それは留まる気配がない。
「誰も教えてくれやしない。自分でひとりで知るだけだ。信勝はそれを怠った。だから、死んだ。だが、キサマは最後の最後でそうしなかったな。キサマは、キサマの意思で信勝を殺すことを選びとった。だったら、どうするのだ。キサマはこの先、オレの元で何をするのだッ」
「わかっておりますッ、わかっておりますッ、――わかっているのです」
柴田勝家はこれよりおよそ十年もの間、戦で信長に用いられた記録が途絶する。大岩のようなこの男は、自らの主君を密告によって葬った後、忽然と歴史から姿を消している。彼の心は千々に引き裂かれ、その快復に膨大な月日をかけたのかもしれない。それでも、後に信長から北陸方面軍の総司令官という大任を託されたのは、柴田勝家という男の覚悟とそれに裏打ちされた技量を信長が信じたからに相違ない。
覚悟とは、決して引き裂かれない心などを指し示す言葉ではない。引き裂かれてなお、また、時に鈍重とも言えるほどに、ゆっくりと進められる牛のような継続を言う。
信長は家督を継承後の六年を経て、実に多くの者たちの死を身近に見てきた。
父・信秀をはじめとして、傅役の平手、叔父・信光、義父・道三といった援助者らを失いながら、果ては自ら実弟を手にかけた。あらゆる喪失に際して信長の心がどのように揺さぶられたかは、分からない。しかしながら、重要なのは、それによって信長はついに自らを省みることがなかったということだ。敵の猛攻も、自らの内に沸き起こる感傷さえも、信長の歩みを止めるには足りなかった。それどころか、失ってなお欲望を強くした。
己と仲間だけを信じひたすらに血路を駆け抜ける信長は、そうして、知らず知らずのうちに戦国の中枢へ足を踏み入れることになる。
「雨の匂いがするな」
乱世が、風雲急を告げていた。
ところが、いま、眼前に広がる清洲城はどうだろう。惣構の内側の町は人の往来まるで濁流の如き様相を呈し織田信勝の姿に気付く者とて一人も居らず、砦に入ってはそこかしこを駆け巡る土堀、水堀の夥しいことは迷路のようであった。
――これが、死に行く人間の城だろうか?――
そう思うが早いか、門が開かれ、中から使いの男が現れる。
「よくお越しくださいました。どうぞ、こちらへ」
池田恒興である。信長に最も古くから仕える子分筆頭だが、その軽薄なニヤケ面を今日という日にも張り付かせていた。他者に対面にするに当たり彼が用意できる表情は極めて少ないらしい。
「騒がしいでしょう。いやはや、見ての通りで、城内はてんてこ舞いです。誰も口に出しやしないが、もう、みんなきっと分かっているのでしょうな」
信勝と勝家の二人を先導しながら、恒興はぐんぐんと歩み出した。小さなからだに不釣り合いなその大きな歩幅に、信勝は付いて行くだけで息を切らした。信長が居住する北櫓は城の北端、大手門から向かうには自然と早歩きになるようだ。
「それほど良くないのか。兄上のご容態は」
「大枚叩いて京から指折りの医者を何人も呼びましたが、誰も首を縦には振りませんでした。そりゃそうだ、と思いましたがね。医者はおろか素人目にも分かるほど痩せ細ってしまっているのです。あんな織田信長は見たことがありませんよ」
「その所為で岩倉の戦況は難儀しているそうだが」
「アア、いやあ、そっちはそうでもありません。岩倉は虫の息だ、森殿なら放っておいてもいずれ巻き返されますからね。大変なのは全然清洲です。殿は口を開けば戦の話ばかりなさってね、オレが出陣する、と飛び起きては倒れての繰り返しです。アレはもう「うつけ」なんて愛嬌のある代物ではありませんな。ほとんど気が触れてしまったようなものだ。ですから今日、信勝さまにお越しいただけたのは我々にとっても幸いなことでして――」
「それはどういうことか」
「奇妙さまのお話は聞いておられますでしょう? 人間、心残りがあると安らかに逝けないというものですからね。信勝さまから直々に「奇妙丸のことは万事お任せあれ」とでもお言葉添えいただけたなら、殿の気負いも幾分か安らぐかもしれません。さすれば、きっと、我らの日々の苦労だってもう少しは減るというもの」
兄を憎んできた信勝だが、恒興の物言いは性質的に癪に触れるらしい。
「風の噂に聞いてはいたが、池田恒興、ずいぶん不快な男だな。池田家は兄上のおかげで出生したと思っていたが、忠義の心はないらしいな」
語気を強めて投げかけられた信勝の物言いにも、恒興は振り返ることすらなく、むしろ一層得意になって苦笑を漏らした。
「ヘヘヘ。忠義とは外面の品のことですな。私はそもそも侍に向いていない男なんです。ろくな教養もありません。根が下品なのはもう治らんでしょう。こういった下品が許されるのは信長という男の元だけでしょうから、先のことを考えると憂鬱ですな」
「口先だけは立つようだ。卑しい商人になればよかろう」
「アハハ。そいつは愉快なお話ですが、マア、私の話などどうでもよろしい。ここですな」
気付けば、信勝と勝家は清洲城の北の端へと導かれていた。あれほど騒がしかった町の喧騒はいつの間にかまったく聞こえない。辺りが薄暗く視界が効かないのは南西に作りかけの櫓が聳え立って影になっているかららしい。
「北櫓天守・次の間と申します。こちらでお待ちくださいませ」
「待つ? 私が兄上の寝所へ行くのではないのか?」
「ええ、それがですね、信勝さまが来てくださると殿にお伝えしたら、「きちんと迎える」などと言い出しましてね、何やら正装に着替えてこちらへお出でなさるようなのです。まあ、殿の性格からして、弱りきって寝ている自分の姿などお見せしたくないのでしょう。さあ、そんなわけですから中へ」
案内された部屋はしんと静まり返っている。ただ二つの戸が無造作に開け放たれていた。後は境界の曖昧な黒い柱が林立しているだけだ。その静寂の鋭いことに思わず足を止める信勝だが、突如、恒興が背後から素っ頓狂な声を上げた。
「ああ、いけないッ。腰のものをお預かりするのを忘れておりましたッ」
恒興は餌をねだる利口な猿のように両手をさっと差し出した。
「私が下げているのはこのような小さなものだけだ。預けるほどではないだろう」
「ウウン、けれども、せっかくの兄弟水入らずの日です。殿も気張って来られるでしょう。私としては、なるべく、そのようなものがチラつく場にはしたくないのですが、――」
「しかし、――」
信勝が渋って視線を逸らすと、恒興はポンと手を叩いて思いついたように語りかけた。
「わかりました。では、こういうのはいかがでしょう。私に渡してもらわなくとも構いません。信勝さまの太刀は、すぐ側に控える柴田殿にお預けいただければ良い。申しました通り、私としては殿に余計な気を遣わせたくないだけですから」
信勝は尚もしばらく腑に落ちない様子ではあったが、勝家を見つめ、
「すぐそこに侍っていろ。何かあれば呼ぶ」
そう念を押して太刀を勝家に手渡した。
恒興はそれを見届けると、一層に恭しく礼を言って足早にその場を後にした。
冬の日は短い。それまで櫓に隔てられていた隠されていた太陽がその身を赤く染めながら西へ落ちていく。決して広くない次の間はその隅々までが光に包み込まれた。あまりの眩さに信勝が思わず目を細めたとき、上座から人の足音が聞こえた。信勝は視界の端に褐色の長袴を捉えるとすぐさま平伏した。本当は一刻も早く顔を上げたかったことだろう、信長の窶れた頬や青白い顔色をしかと自らの目でしかと確認したくて仕方がなかったに違いない。だから、その男が次に簡素な挨拶を述べたとき、信勝は想像とのあまりの落差にしばらく放心を余儀なくされる。
「織田勘十郎信勝さま、お初にお目にかかります」
全身をびくりと縮こまらせながら信勝が顔を上げた瞬間、二つの戸が同時に閉じられた。辺りは再びの影を取り戻したが、窓から漏れる光は完全には遮断されてはおらず、眼前の男が信長でないと信勝が認識するには十分だった。
「誰だ、貴様はッ。イヤ、これは何だッ」
「拙者、河尻秀隆と申します」
秀隆はゆっくりと頭を下げて折り目正しく挨拶すると、さながら、法話を説くかのように一つずつ語り始めた。
「殿の見舞いにご参上いただき、誠に有難いことではありますが、殿はここへ参られません」
「どういうことだッ?」
「それらはすべて虚報にございます。あなたさまに置かれましてはこの北櫓・次の間にて、お腹を召していただくよう、殿よりご下知が降ってございます。ついては、この不肖・河尻青貝秀隆が責任をもって御身の介錯を務めさせていただきます。サアサ、ご覚悟を」
簡素な切腹刀を置くと、信勝の前へと音もなく差し出した。
「オイッ。勝家ッ、勝家は居るかッ、出合えッ」
秀隆の言には答えずひたすら外に向かって叫んだ。
けれども、勝家が飛び込んでくる様子は一向にない。
「あなたさまが再びご謀叛を企てていると殿に伝えたのは、他ならぬ柴田殿。それを聞いた殿は、床に伏せること数か月、遂にあなたをここへ呼び寄せたのです。ここまでお聞きいただけたならお分かりでしょう。あなたさまのお味方は、ここには一人足りともおりません。ご承知いただけたなら、サアサ、ご覚悟を」
信勝は自身の足元に丁重に置かれた切腹用の脇差を一瞥する。全身から刺すような汗を噴き出す。眩暈を生じる。気づけば閉じられた戸へと向かって遮二無二駆け出していたが、秀隆それを制止しようともしない。落ち着き払って、信勝が戸に爪をかけてエイコラ悪戦苦闘するのを見守っている。
「何故開かぬッ、オイ、誰か居ないのかッ――」
戸は外側から固く閉じられ、一向に開かない。すべてが用意周到に準備されていた。
「事のすべてが終わり、拙者が外の者に合図するまでその扉が開かれることはありません。サアサ、ご覚悟を」
信勝はようやく秀隆を睨めつけ、絞り出すように言葉を紡ぐ。
「これは何かの間違いだッ。私が腹を召さなければならぬ道理はないよ。む、謀叛と言ったか? 滅相もないことだ。兄上は何か誤解されている。そうだ、勝家から伝え聞いたと言ったな、だったら、勝家こそが私を陥れるために兄上に讒言を行ったのだッ。今から兄上に会わせてくれないか? 話せば誤解も解けるというものさ」
ところが、秀隆の解答は無情だった。
「信勝さま、勘違いをされては困ります。私はあなたさまの釈明を聞き届けにここへ参ったのではありません。私は腹を召されるあなたさまの介錯を務めるために参ったのです」
虚実を織り交ぜた信勝の物言いには何一つ答えないまま、ただ粛々と自らの役割だけを述べた。信勝はがちがちと歯を震わせた。ただ自分の首を落とすためだけにそこに居る男には、情も、知も、付け入る隙がない。信勝には次第に河尻秀隆という男が人間であるように感じられなくなっていった。死という現実が衣をまとって顕現しているとしか思えない。
「どうしてだ?」
「ハ――?」
「どうして私が死なねばならぬッ? そんな、そんなことは、おかしいじゃないかッ。私は、兄上に代わって弾正忠家を統べる者だッ。一体私のどこが信長に劣っているというのだ? あってはならぬことだ、あってはならぬことだぞッ」
それはもはや命乞いですらなくなった。要求を聞き入れられる希望はもうない。そうと知っていながらも、しかし、生への執着が断ち切れない。人の言葉を使ってはいたがそれは意味を成していない。魚や虫が捕食者に襲われ、すでに絶命を逃れ得ぬ状況からも、その手足をバタつかせて抗うかのように、そこにはただの熱量だけがあった。
信勝から理知はとうに失われていたが、秀隆にはそれを推し量ることはできなかった。そして、自らの主君を悪罵された苛立ちだけが彼をすこし饒舌にさせた。
「あなたさまが殿に勝る部分など、私の目から見れば、何一つとてありませんでした。筋目を軽んじ謀叛を起こしながらも、決戦に出るための勇気はなく、負けてはすべての責を配下に押し付けるに飽き足らず、降伏に際してすらご母堂の働きにあやかっておられましたな。殿より赦免された後も、はしかのごとき野心に突き動かされ国を乱さんとするは言語道断の所業にござる。あなたさまがお選びになられる道は、もはやただの二つのみと心得られませッ。織田信長の弟に恥じぬひと角のご最期を自ら遂げられるか、拙者のごとき名もなき侍の手にかかって死ぬか、それだけです」
信勝は齢二十二にして始めて他者から全てを否定される機を得たが、すでに遅きに失していた。反して、大人たちから除け者にされながらも自らの居場所を自らで作りその運命を切り開いてきた信長を主君とする秀隆にとって、目の前の男の不甲斐なさはほとんど理解の外だった。
「ウウッ、ウ、」
やがて信勝が泣き出してしまうと、秀隆は重い腰を上げた。
「失礼いたします」
直垂を諸肌脱ぎにさせてから、再び脇差を手に取って差し出した。
「ご覚悟を」
「イヤだ、死にたくない。も、もう、兄上の前には現れぬッ、名を変えて尾張の国を出ようと思うのだッ。だから、こんなことはやめてくれ、死にたくないッ、死にたくないのだッ私はッ」
「聞き分けが悪うございますぞッ」
秀隆が声を張ったその時である。信勝は受け取った脇差を抜刀すると、大股で一歩踏み出しながら、奇声を上げて秀隆に襲い掛かった。ところが、降り注ぐ夕日を受けてギラリと輝く刀身が我が身に迫り来るのを、秀隆はしかと見極めて、いとも簡単に素手でいなしてみせた。それだけで信勝は足をもつれさせて転倒してしまった。転んだときに自ら振りかぶった脇差で切ったか、脇から夥しい出血を生じている。
「痛い。痛い、勝家ェ、蔵人ォ、は、母上、だッ、誰でもいいから。助けて――」
痛みに悶えているのか、屈辱に嗚咽しているのか、はたまたその両方か、信勝は呻きながらひたすらに這いずり回った。しばらくはそれをただ眺めていた秀隆だったが、血を噴き出しながらのたうち回る信勝の姿を見て、自らの本分を思い出したのだろう、太刀を抜いた。
「ヤメロッ、く、来るなッ、オイ、ほんとうに、駄目なんだ、イヤだアッ――」
「御免」
秀隆は主君の弟の首にしかと太刀を押し付けて、そのか細い首を一太刀で落とした。
――
次の間の喧騒が聞こえるか聞こえぬかというところ、信長は一人待っていた。大空を鷹が優雅に飛んでいるのを眺めている。
いつの間にか背後には勝家が平伏していた。傍らには白木の首桶が置かれている。真新しい檜の香りと血の匂い、それらがが混じり合ったままそよ風に吹かれて、存在を信長に知らせた。
「終わったか。弟の最期はどうだった」
「抵抗されましたので、河尻殿によってその首を落とされました」
「そうか」
信長は首桶を開いて、弟の顔を確認した。
「それでは、某はこれにて」
「意外だ、――」
立ち去ろうとする勝家を信長は柄にもなく引き留めた。
「お前は、嘘を言うかと思ったのだよ。せめて最期は武士らしく腹を切った、とかね」
「そう言って、形だけを取り繕って、何になりましょうか」
「アア、そうだ。何もならんよ。だが、それを弟にしてきたのがキサマだ」
「わかっておりますッ」
勝家は窪んだ目を赤くして、今にも信長に飛び掛からんとする形相で睨みつけた。いや、睨みつけたかのように見えただけなのかもしれない。彼の内に沸き起こる熱情は、他人の目に触れるにはあまりにも激しすぎたから。
「すべて、わかっておりました。わかっていながら、某は気付かぬ振りをしておりました。信勝さまはあなたを超える器だと自分に言い聞かせておりましたッ。けれども、わかるとは何でしょうか? 知っていたからと言って、それが何ほどのことでしょう」
首桶を抱える勝家の腕は、その太さに不似合いなほど小刻みに震えていた。
「覚悟とはッ、何ほどのことでしょうッ? 某は今日、弾正忠家に仇成す逆賊を、敵を、討った! けれども――、けれども――。本当に、本当にこれで良かったのだと、誰がどのようにして分かりましょう。尾張統一、この上ない大義にござる。けれども、その道が、これほどまでに辛いものだと、一体、誰が教えてくれましょうか」
涙にも、言葉にも、勝家のすべてからだから流れ出ていくかのようだが、それは留まる気配がない。
「誰も教えてくれやしない。自分でひとりで知るだけだ。信勝はそれを怠った。だから、死んだ。だが、キサマは最後の最後でそうしなかったな。キサマは、キサマの意思で信勝を殺すことを選びとった。だったら、どうするのだ。キサマはこの先、オレの元で何をするのだッ」
「わかっておりますッ、わかっておりますッ、――わかっているのです」
柴田勝家はこれよりおよそ十年もの間、戦で信長に用いられた記録が途絶する。大岩のようなこの男は、自らの主君を密告によって葬った後、忽然と歴史から姿を消している。彼の心は千々に引き裂かれ、その快復に膨大な月日をかけたのかもしれない。それでも、後に信長から北陸方面軍の総司令官という大任を託されたのは、柴田勝家という男の覚悟とそれに裏打ちされた技量を信長が信じたからに相違ない。
覚悟とは、決して引き裂かれない心などを指し示す言葉ではない。引き裂かれてなお、また、時に鈍重とも言えるほどに、ゆっくりと進められる牛のような継続を言う。
信長は家督を継承後の六年を経て、実に多くの者たちの死を身近に見てきた。
父・信秀をはじめとして、傅役の平手、叔父・信光、義父・道三といった援助者らを失いながら、果ては自ら実弟を手にかけた。あらゆる喪失に際して信長の心がどのように揺さぶられたかは、分からない。しかしながら、重要なのは、それによって信長はついに自らを省みることがなかったということだ。敵の猛攻も、自らの内に沸き起こる感傷さえも、信長の歩みを止めるには足りなかった。それどころか、失ってなお欲望を強くした。
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