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第三章 血路
三十一
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「斎藤からの返書はまだ来ぬかッ。チンタラしおって。いつ出陣するというのだ」
爪を噛みながら同じところをグルグルと歩き回ってはひれ伏した蔵人に向かって声を荒げた。蔵人はただ「もうしばらくお待ちください」と返答することしか出来ないでいる。
一年ほど前まではそれなりに連絡が可能だった美濃とも、近頃はめっきりと音信が途絶えていた。時折中元のように寄越される密書には「恥ずかしながら国内に手を焼いております。しばらく機をお待ちください」などと空文があるのみだ。領国の統治に忙殺されるのはどこの大名でも同じことだが、何も今に始まったことではない。要するに、高政にとって信勝の利用価値がひどく落ちてしまったというだけのことだ。
「いまは信長の下に付いている者たちも本位ではないはず、いつか必ず痺れを切らすだろう。その時、中心となるのはこの私だッ」
信勝が焦るのも無理はなかった。岩倉城が陥落すれば、いよいよ信長の元に尾張統一が成され得ることが国内外に知らしめられる。
かつて尾張の下群を支配した守護代家・清洲織田氏(織田大和守家)、上群を支配した守護代家・岩倉織田氏(織田伊勢守家)、この二つが共に信長によって打ち倒されたとあっては、もう国内に信長を阻むものは現れ得ない。
「信長などに、この尾張を牛耳らせてたまるものかッ!――」
そのうえ、この両守護代家の打倒には、信長や信勝たちにとってはもう一つの大きな意味を有していた。元は清洲織田氏の分家にすぎなかった弾正忠家が、守護代を凌いで尾張に君臨したとき、信長は誰の目から見ても、父・信秀が誇った権勢を超越するのである。
「仕方がないッ。もはや斎藤をなどはアテにしていられるか。件の策を、――」
「もう、おやめください」
言葉を遮って柱の影から勝家が立ち現れる。非礼を詫びるかのようにすぐさま額を付けてひれ伏してみせた。信勝は口を挟まれた苛立ちにわずか眉間に皺を寄せたが、すぐにわざとらしい朗らかな表情を作り上げ、
「よく来たな、勝家」
と快活に声をかけた。
「信長めが岩倉城を落とす前に、攻勢をかけるしか我らに道はない。下社城の兵らをよくまとめておけよ。私の下知でいつでも出陣できるようにな」
「それは良い。柴田殿にとっては稲生原での汚名を返上する好機になりましょう。励むとよろしい」
淀みなく紡がれる二人の言葉はすべてが空疎で、勝家の耳を滑っていくばかりだった。
「おやめください。我ら三人、皆、御前さまの嘆願で長らえただけのお命。粗末にはできませぬ」
「これはこれは。どうやら柴田殿は勝つ気がないようですよ。信長さまはまだ多くの敵を抱えておられる。とりわけ隣国には猛者が粒ぞろいだ。これらと結び、さらに、――」
「斎藤も、今川も、そのような余力はない。もし、あったなら、こちらが誘うまでもなく攻めに来ておるわ」
一喝。勝家は即座に言い返した。蔵人は小さな溜息一をつ吐き、勝家に視線を合わせないまま、助けを求めるように信勝の方を仰ぎ見た。
「勝家よ。お前は本当にあの大うつけがこのまま何事もなく国を治められると思っているのか」
「信勝さまのお力添えさえあれば」
方便だ。この期に及び、勝家は、兄弟二人が手を取り合って弾正忠家の隆盛を支える未来を諦めるわけにはいかなかった。だから、信長の政権下における信勝の役割があるかのように言ったのだ。おそらくは、信長の視界にはすでに信勝など映っては居ないのだろう、と半ば知りながらも。
「悪い冗談だな」
けれども、その譲歩した方便すら、信勝には当然の如く受け入れられない。
「私に信長の下に付けと言っているように聞こえるが」
「はい」
「ハハハ」
勝家の実直な物言いに信勝は乾いた笑いを漏らす。
「変わったな、お前は。いつからだ? 清洲に務めた時か? 兄上さまに何か言われたのかな」
「何も」
「信長に降るなど、その素振りだけでも大変な恥辱だったはずじゃないか。だのに、何故、そういう答えになるのか、私には分からないな」
「負けたから、です」
信勝は勝家の二の句をすこしの間だけ待っていたが、それきり勝家の口は動かなかった。
「負けるとは、死ぬことだ。死ぬまでは、負けではない。父の元で槍を振るってきたお前が、そのことを承知せぬはずはなかろう。それがたった一度の戦に後れをとっただけで心を折られたか。随分とヤワになったものだ、柴田勝家。私の戦は、まだ始まってすらいないぞ」
「いいえ。すべて終わったのです、もう。どうやっても、勝てませぬ」
勝家はこれ以上ないほどに簡潔に述べた。
末森城も、下社城も、その動静は信長に厳しく管理されていた。好き勝手に兵を増やすような真似もできない。だからこそ、挙兵は諸外国と結ぶ必要に迫られていたがそれすら希望ではない。むしろ、そのための密書が信長に露見する方が先だろう、と勝家は考えていた。
「どうやっても、だと? それはお前が決めることではない。この私が戦場に立ってもいないのに、どうして負けなのだ? 申してみよ」
頬を震えさせながら信勝はあえて訊ねた。
「信勝さまの名代として戦った某が、負けたからです」
「そうだ。負けたのはお前で、私ではない。私は負けていない」
「名代とは、そういうものです。某が負けて、それでオワリです」
瞬間、蔵人が「信勝さま」と声をかけるが早いか、信勝は傍らに転がる酒瓶の一つを手にとって投げつけた。空瓶は勝家の額に命中し、粉々に砕けると、板縁の床を滑りながら四方に散って広がった。
「お前は、私こそが弾正忠家の当主になるべきだと言ったではないかッ。アレは偽りかッ」
「いいえ。しかし、――」
勝家の額から血がひたひたと流れる。稲生原で負った古傷が開いたのだ。しかし、痛みも激昂する信勝の態度をも意に介さぬように、勝家は身じろぎ一つしないまま尚も信勝をまっすぐに見つめていた。
「しかし、――アナタを信じた某と、某を信じたアナタが、二人、あの日、共に織田信長に負けたのでござる」
乱世とは暴力の時代だ。それは、下克上だろうが、家督の簒奪だろうが、すこしの大義と軍事力があったなら如何様にも人や物を支配できることを意味する。しかし、裏を返せば、戦に負ければそれまでだ。「自分はまだ実力を発揮していない」と喚いてみたとしても、誰も聞いてくれやしない。家督継承の後、自らの身一つを戦乱のただ中に放り投げて、そして、多くの戦に勝ってきた信長はすでに否応なく尾張の支配者である。
「篠木三郷を再び襲うぞ。下社の兵を結集させよ」
勝家はうんともすんとも言わず、黙している。
「私がやれと言ったら、やらぬかッ」
「――できませぬ」
勝家の脳裏に浮かぶのは、稲生原で、また、籠城を続けるこの末森城で命を散らした配下の兵たちの顔だった。彼らは勝家が槍を手にとって駆け出すと死の恐怖をも省みずに後に続き、そして、期せずして勝家よりも先に討死を遂げた。その死様は軽くない。ゴミのように人の命を弄ぶ乱世にありながらも、勝家は彼らの尊厳というものを感じている。
『あのひたむきな武士たちの運命が、このように軽薄に決定されて良いはずがない』
けれども、勝家はもう何も言わず、ただ、信勝を見つめ返すだけだった。それだけで良かったし、それだけしか出来ることはなかった。勝家の両の眼には、怒りとも悲しみともつかない、夜の澄んだ湖のような深い黒々とした深淵が覗いている。その姿に信勝は思わず圧される。ただそこに居るだけの、大きな動物に対峙しているかのように。
信勝はこの無垢な獣に触れる勇気を、もはや持ち合わせていなかった。
「もう良いッ。柴田勝家、お前を本日以て謹慎に処す。下社城の兵たちは蔵人率いさせよう」
先刻やってきたばかりの勝家だけが、ただ一人取り残されてしまった。
瓶の割れる物音がしたはずだが、女中も、下男も、来る様子がない。もう、信勝の部屋へ来る者は誰も居ないようだった。
勝家は水干の袖を破って包帯代わりに頭に巻くと、割れ散らばった瓶の破片を拾い集めた。
「このままでは、足を切られようて」
西日が差して破片がまぶしいほどに反射して勝家の目を貫いた。それまで勝家を覆っていた何かが崩れ落ちたかのように、ボロボロと大粒の涙が零れる。涙は血とまじりあって床に落ちた。
百舌鳥のギイという金切声が響いた気がした。
「わかっております。いま、この権六勝家がお救いいたします」
消え入るような声で、しかし確信を持って呟やかれたそれは、ほとんど狂人の譫言のようである。
愛馬をいつもより念入りに撫でつけてから末森城を後にする。しかし、その足は、下社城へ向いていない。
永禄元年(一五五八年)の夏の暮れのこと、柴田勝家は清洲城に織田信長を訪れた。
爪を噛みながら同じところをグルグルと歩き回ってはひれ伏した蔵人に向かって声を荒げた。蔵人はただ「もうしばらくお待ちください」と返答することしか出来ないでいる。
一年ほど前まではそれなりに連絡が可能だった美濃とも、近頃はめっきりと音信が途絶えていた。時折中元のように寄越される密書には「恥ずかしながら国内に手を焼いております。しばらく機をお待ちください」などと空文があるのみだ。領国の統治に忙殺されるのはどこの大名でも同じことだが、何も今に始まったことではない。要するに、高政にとって信勝の利用価値がひどく落ちてしまったというだけのことだ。
「いまは信長の下に付いている者たちも本位ではないはず、いつか必ず痺れを切らすだろう。その時、中心となるのはこの私だッ」
信勝が焦るのも無理はなかった。岩倉城が陥落すれば、いよいよ信長の元に尾張統一が成され得ることが国内外に知らしめられる。
かつて尾張の下群を支配した守護代家・清洲織田氏(織田大和守家)、上群を支配した守護代家・岩倉織田氏(織田伊勢守家)、この二つが共に信長によって打ち倒されたとあっては、もう国内に信長を阻むものは現れ得ない。
「信長などに、この尾張を牛耳らせてたまるものかッ!――」
そのうえ、この両守護代家の打倒には、信長や信勝たちにとってはもう一つの大きな意味を有していた。元は清洲織田氏の分家にすぎなかった弾正忠家が、守護代を凌いで尾張に君臨したとき、信長は誰の目から見ても、父・信秀が誇った権勢を超越するのである。
「仕方がないッ。もはや斎藤をなどはアテにしていられるか。件の策を、――」
「もう、おやめください」
言葉を遮って柱の影から勝家が立ち現れる。非礼を詫びるかのようにすぐさま額を付けてひれ伏してみせた。信勝は口を挟まれた苛立ちにわずか眉間に皺を寄せたが、すぐにわざとらしい朗らかな表情を作り上げ、
「よく来たな、勝家」
と快活に声をかけた。
「信長めが岩倉城を落とす前に、攻勢をかけるしか我らに道はない。下社城の兵らをよくまとめておけよ。私の下知でいつでも出陣できるようにな」
「それは良い。柴田殿にとっては稲生原での汚名を返上する好機になりましょう。励むとよろしい」
淀みなく紡がれる二人の言葉はすべてが空疎で、勝家の耳を滑っていくばかりだった。
「おやめください。我ら三人、皆、御前さまの嘆願で長らえただけのお命。粗末にはできませぬ」
「これはこれは。どうやら柴田殿は勝つ気がないようですよ。信長さまはまだ多くの敵を抱えておられる。とりわけ隣国には猛者が粒ぞろいだ。これらと結び、さらに、――」
「斎藤も、今川も、そのような余力はない。もし、あったなら、こちらが誘うまでもなく攻めに来ておるわ」
一喝。勝家は即座に言い返した。蔵人は小さな溜息一をつ吐き、勝家に視線を合わせないまま、助けを求めるように信勝の方を仰ぎ見た。
「勝家よ。お前は本当にあの大うつけがこのまま何事もなく国を治められると思っているのか」
「信勝さまのお力添えさえあれば」
方便だ。この期に及び、勝家は、兄弟二人が手を取り合って弾正忠家の隆盛を支える未来を諦めるわけにはいかなかった。だから、信長の政権下における信勝の役割があるかのように言ったのだ。おそらくは、信長の視界にはすでに信勝など映っては居ないのだろう、と半ば知りながらも。
「悪い冗談だな」
けれども、その譲歩した方便すら、信勝には当然の如く受け入れられない。
「私に信長の下に付けと言っているように聞こえるが」
「はい」
「ハハハ」
勝家の実直な物言いに信勝は乾いた笑いを漏らす。
「変わったな、お前は。いつからだ? 清洲に務めた時か? 兄上さまに何か言われたのかな」
「何も」
「信長に降るなど、その素振りだけでも大変な恥辱だったはずじゃないか。だのに、何故、そういう答えになるのか、私には分からないな」
「負けたから、です」
信勝は勝家の二の句をすこしの間だけ待っていたが、それきり勝家の口は動かなかった。
「負けるとは、死ぬことだ。死ぬまでは、負けではない。父の元で槍を振るってきたお前が、そのことを承知せぬはずはなかろう。それがたった一度の戦に後れをとっただけで心を折られたか。随分とヤワになったものだ、柴田勝家。私の戦は、まだ始まってすらいないぞ」
「いいえ。すべて終わったのです、もう。どうやっても、勝てませぬ」
勝家はこれ以上ないほどに簡潔に述べた。
末森城も、下社城も、その動静は信長に厳しく管理されていた。好き勝手に兵を増やすような真似もできない。だからこそ、挙兵は諸外国と結ぶ必要に迫られていたがそれすら希望ではない。むしろ、そのための密書が信長に露見する方が先だろう、と勝家は考えていた。
「どうやっても、だと? それはお前が決めることではない。この私が戦場に立ってもいないのに、どうして負けなのだ? 申してみよ」
頬を震えさせながら信勝はあえて訊ねた。
「信勝さまの名代として戦った某が、負けたからです」
「そうだ。負けたのはお前で、私ではない。私は負けていない」
「名代とは、そういうものです。某が負けて、それでオワリです」
瞬間、蔵人が「信勝さま」と声をかけるが早いか、信勝は傍らに転がる酒瓶の一つを手にとって投げつけた。空瓶は勝家の額に命中し、粉々に砕けると、板縁の床を滑りながら四方に散って広がった。
「お前は、私こそが弾正忠家の当主になるべきだと言ったではないかッ。アレは偽りかッ」
「いいえ。しかし、――」
勝家の額から血がひたひたと流れる。稲生原で負った古傷が開いたのだ。しかし、痛みも激昂する信勝の態度をも意に介さぬように、勝家は身じろぎ一つしないまま尚も信勝をまっすぐに見つめていた。
「しかし、――アナタを信じた某と、某を信じたアナタが、二人、あの日、共に織田信長に負けたのでござる」
乱世とは暴力の時代だ。それは、下克上だろうが、家督の簒奪だろうが、すこしの大義と軍事力があったなら如何様にも人や物を支配できることを意味する。しかし、裏を返せば、戦に負ければそれまでだ。「自分はまだ実力を発揮していない」と喚いてみたとしても、誰も聞いてくれやしない。家督継承の後、自らの身一つを戦乱のただ中に放り投げて、そして、多くの戦に勝ってきた信長はすでに否応なく尾張の支配者である。
「篠木三郷を再び襲うぞ。下社の兵を結集させよ」
勝家はうんともすんとも言わず、黙している。
「私がやれと言ったら、やらぬかッ」
「――できませぬ」
勝家の脳裏に浮かぶのは、稲生原で、また、籠城を続けるこの末森城で命を散らした配下の兵たちの顔だった。彼らは勝家が槍を手にとって駆け出すと死の恐怖をも省みずに後に続き、そして、期せずして勝家よりも先に討死を遂げた。その死様は軽くない。ゴミのように人の命を弄ぶ乱世にありながらも、勝家は彼らの尊厳というものを感じている。
『あのひたむきな武士たちの運命が、このように軽薄に決定されて良いはずがない』
けれども、勝家はもう何も言わず、ただ、信勝を見つめ返すだけだった。それだけで良かったし、それだけしか出来ることはなかった。勝家の両の眼には、怒りとも悲しみともつかない、夜の澄んだ湖のような深い黒々とした深淵が覗いている。その姿に信勝は思わず圧される。ただそこに居るだけの、大きな動物に対峙しているかのように。
信勝はこの無垢な獣に触れる勇気を、もはや持ち合わせていなかった。
「もう良いッ。柴田勝家、お前を本日以て謹慎に処す。下社城の兵たちは蔵人率いさせよう」
先刻やってきたばかりの勝家だけが、ただ一人取り残されてしまった。
瓶の割れる物音がしたはずだが、女中も、下男も、来る様子がない。もう、信勝の部屋へ来る者は誰も居ないようだった。
勝家は水干の袖を破って包帯代わりに頭に巻くと、割れ散らばった瓶の破片を拾い集めた。
「このままでは、足を切られようて」
西日が差して破片がまぶしいほどに反射して勝家の目を貫いた。それまで勝家を覆っていた何かが崩れ落ちたかのように、ボロボロと大粒の涙が零れる。涙は血とまじりあって床に落ちた。
百舌鳥のギイという金切声が響いた気がした。
「わかっております。いま、この権六勝家がお救いいたします」
消え入るような声で、しかし確信を持って呟やかれたそれは、ほとんど狂人の譫言のようである。
愛馬をいつもより念入りに撫でつけてから末森城を後にする。しかし、その足は、下社城へ向いていない。
永禄元年(一五五八年)の夏の暮れのこと、柴田勝家は清洲城に織田信長を訪れた。
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