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第三章 血路
十六
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道三討死と時を同じくして、信長は、尾張と美濃を分かつ木曽川本流を越えた大浦に砦を築かせていた。
「良い場所を選びましたな。砦は今日にも普請が整いましょう」
建造されたばかりの櫓から眼下を見下ろす信長の元に可成がやってきて報告した。
近辺は彼の生まれ故郷だった。その地に詳しい者を重用するのが信長の常套手段だった。
「よくやった。ここで戦えば、そう簡単には死なん。舅殿にはすでに昨日人を遣わせたよ」
見晴るかす遠望の空に、霞みがかった稲葉山が見えている。
ぼうっと見つめていると、何だか前にも同じ戦をしたことがあるような、そんな気持ちが生じた。
「気の抜けたお顔に見えますな」
「分かるか。どうにも現実のような気がしないのさ」
可成は沈黙で以て相槌とする。
「家督を継ぐより、ずっと前のことだ、オレは美濃の斎藤道三をこの手で殺すだろうと考えていた。加納口で父を負かした男をオレがさらに負かしてやるのだ、と意気込んでいた。だが、オレはいつも見る夢のなかで、斎藤道三にコテンパンにやられるのだ」
「ホウ。それは、どのように」
「アハハ。笑うといい。奴が采配を振るうだけでオレの軍兵はバタバタ倒れ、川が荒れ、舟が潰されるのさ」
「誠にそのような術があれば、乱世を渡るに苦労もしませんな」
「そうしてオレは逃げるのだ。そこに口うるさい老臣が居てな、コイツが決まって殿を買って出やがる。現実では、もうずいぶん前に切腹して死んだ男だがね」
夢のこと、死んだ家臣のこと、そんなことを思い出すなど縁起が悪いにもほどがある。そう感じながらも、信長は滑り始めた口を止めることができなかった。
「斎藤利政――美濃で悪評を集めているだけのこの男が、昔から、どうにも他人事のような気がしなかった。一度も会ったことのなかったのに、ね。
ところが、どういうわけだか、やがてその悪党の娘がオレに嫁ぎにきた。調子を狂わされたよ。織田の方から持ち掛けた話だと聞いたが、オレは納得しなかったよ。まるで、オレの思惑がすべて見透かされ、揶揄かわれているかのように思った。
そして、その男を救うべく、いま、オレは命賭けで美濃の地に立っている。奇妙な話だろう。浮世というのはほとほと信用ならんものだぜ」
「では、幽世へ参られますか。この地で戦に興じれば、三途の川も選び易い」
信長の口数が多いのをやや危ぶみ、可成はその感傷に水を差した。
「生憎、鉄砲やら何やらにつぎ込んで一銭もない。とてもこれだけの人数の船賃というのは、足りないナ」
「それでは、勝つより他にありませんな」
「アア、そうだ。まったく、そうだよ」
砦の櫓から信長は仲間たちの姿を認めた。夜通し砦の建設に駆り出され、いまは横たわってわずか眠っている。
――死ぬ覚悟で来た者を、死なせるわけにはいかない――
信長は戦気を取り戻す。
生まれてこの方、年上の人間にはほとんど好かれることがなかった信長にとって、森可成という男は得難い家臣だった。一か八かの決戦に臨む不安のなかにあって、自らを襲った感傷を逃がすために、それは、ほんのわずかな間ではあったが、信長は可成に甘えたのだ。
しかし、「現実」というものは、若者の感傷を破り捨てるためだけに存在していると言っても過言ではない。
「伝令、斎藤道三殿、長良川にて開戦に及んだとのことッ」
信長はすぐさま馬に跳び乗った。戦略に当てはない。ただ、行くということのほかに成すべきことが見当たらなかった。
明瞭な蹄の音だけが辺りに鳴り響いた。眠っていた長秀たちが飛び起きる。彼らも、また、すでに信長の後に追いすがることしかできなかった。かつて信長の無謀を幾度となく諫めてきた仲間たちさえ、今は、織田信長というただ一人の男の意志に繋がって動く、自我を越えた熱情の塊と化していた。
――何故? 斎藤道三ともあろう男が、いったい何故、無謀な野戦などに打って出た?――
風が強くなってきている。正面より吹きつけて信長の額を叩く。脳裏に旋風が起きる。理解できない道三の行動がぐるぐると巻き上がっている。
――猪子を通じ、大浦に砦を築いている旨は知らせていた。ここで戦えば、殺されはしない。そんなことが分からない斎藤道三ではないだろう!――
『舅殿の危機にはこの信長が馳せ参じましょう』
聖徳寺で放った自分の言葉を、信長はよく覚えていた。そして、道三もそれを覚えてくれているはずだ、とそう思っていた。あの会見は信長にとって快いものだった。「百戦錬磨の猛者と心が通じ合った」と信長に大いなる自信をもたらしたのである。
――会いさえすれば、顔を合わせさえすれば、古今東西の何処にも例を見ぬような戦線の創造ができるだろう。そのための人馬も、物資も、携えてきた。自分と道三が手を組んだなら、敵がどれだけ多勢であろうとも遅れをとることはないはずだ――
他人事のような気がしなかった、と信長は言ったが、その実、彼は道三を知らなかった。いや、道三ですら自らの最期の行動を説明できずにその生涯を閉じたのだ。
とどのつまりは、人間とは決まった行動などし得ないもの。そんな当たり前のことが、信長にも、道三にも、わかっていなかった。それだけのことだった。
「川だ、舟は間に合わぬッ、浅瀬を渡るぞ、遅れるな!」
林道を抜けると及川という河川へ出る。長良川へはいま少し距離があるが、しかし、そこで信長は、対岸に縦隊で布陣する軍勢をその目に捉えた。
「とまれ」
この世に二つとない二頭立浪の紋を敵軍の旗指物に探すが、見当たらない。高政の軍勢に相違なかった。
父・道三を討ち獲って首実験を終えた高政は、すぐさま兵を大浦方面へ向かわせた。はじめに二〇〇〇ほどの部隊を先行させ、自身が率いる一万余の本隊は、あえて疎らに散らしながらその大軍であることを知られぬように、ゆっくりと進むよう差配した。
「何故、すぐさま全軍を向かわせないのですか」
守就の素朴な問いかけに高政は粛々と答える。
「織田信長の兵は多く見積もっても二〇〇〇と聞いたよ。そこへ一万を越える大軍で押し寄せてみなさい。道三との戦はすでに決着したと知れるだろう。こうなれば、彼は一散に逃げ帰ってしまうかもしれない。まずは小勢で気を引くのだ。『道三との決戦に邪魔が入らぬよう、高政はこちらへ別動隊を寄越した』と、こう信長に思わせたいのよ」
守就は感嘆の息を漏らした。
――まったく人間というのは、たった一つの合戦を契機に、こうも変われるものだろうか――
それほどまでに道三という存在が、高政をきつく縛り付けていたということを身を以て知る。
高政の作戦は見事に嵌る。信長は道三がすでに討ち獲られたことを知らない。目の前の小勢を打ち倒しさえすれば、道三の待つ長良川へ辿り着くことができると信じて、遮二無二突っ込んできたのである。
かくして及川にて高政軍と信長軍の戦闘は始まったが、信長軍の勢いは高政の想定を超えて凄まじい。先鋒の可成が敵勢に斬り込んでこれを掻き乱すと、その勢いに乗じて信長自身も旗本と共に押し寄せた。高政軍はたとえ大勝したとはいえども道三軍との戦いを終えたばかりでの連戦で、疲労の色がやや拭えない。
あっという間に先遣隊を敗走に追い込んだが、そこに高政の本軍一万余が駆け付けた。信長にとっての絶対を引き連れて。
「何と。先遣隊はもたなかったか。織田軍がこれほどまでに強いとはね」
高政は驚いた風に目を見開きはしたものの、明らかに余裕であった。ビクビクと怯えるようなありし日の卑小な態度は陰もない。その巨躯に見合うだけの威厳を備えて、そして、何より父親譲りの卓抜した戦略眼が今まさに開花している。
「かかれ、織田信長を逃がすな。その首を父の墓前に供えてやろう」
迫りくる大軍を目の当たりにしたとき、信長はいよいよ事態を正面から悟らざるを得なかった。
繰り広げられる足軽合戦のさなか、さらに、信長の陣中に全身を血やら泥やらに汚した猪子が駆け込んで来る。
「道三殿は、道三殿は何処か」
「斎藤道三、討死の由にございます。敵は一万余の大軍にござる。信長殿とて勝てませぬ。退かれませ、どうか、退かれませッ」
猪子は跪き、涙をこぼしながらも、証拠だとでも言うかのように、信長に一つの采配を差し出した。血と硝煙の匂いがしみ込んだそれは、道三のものに相違なかった。信長はそれをひったくるように取り上げ、壊れんばかりに握りしめた。
道三はすでに死んだ。救うべき舅はもう居ない。生きているかもしれない、と思わせる材料の一つも見当たらなかった。長良川で道三を踏みつぶした高政軍が、次は信長に狙いを定めてやってくる。その動きには一遍の矛盾もない。斎藤道三の死を疑う自由すら、何処にもなかった。
道三は信長にとって死ぬはずのない男だった。侍としての信長の人生は、道三を中心に回天を始めたのだから。敵意にせよ、期待にせよ、信長の思想の中心にはいつもその男が居たのである。
上の空。眼前にその道三を凌駕して尚も膨張を続ける新たな怪物が迫っているのだが、信長の意識まだ冴えない。
すでに眩暈を生じていた信長に追い打ちを駆けるかの如く、第二の伝令がもたらされる。ただし、それは背後、つまりは尾張から駆け付けた者による報告だった。
「申し上げます、尾張にて岩倉衆が蜂起し、清洲城へ迫っております」
かつて清洲織田氏と共に双璧をなして守護代の地位にあった岩倉織田氏の当主・織田信安は、日増しにその勢力を強大にする信長を追い落とす機会を虎視眈々と狙っていた。
時を同じくして、それは高政の陣へも伝えられる。
「良い流れですな。これなら放って置いても、尾張で反信長の兵を挙げる者は増えていきましょう」
「ウン、けれども、それでも信長の首はいま獲っておきたいね」
高政はすでに道三との決戦に及ぶ以前から尾張の諸将へ調略の手を伸ばしていたのである。
始まってみれば、の戦いは徹頭徹尾が高政の必勝であった。
道三も救えない。尾張でも敵が蜂起している。
退き戦とは、退く先があって初めて成り立つ。死地を脱し、安住の国元へ帰ることを撤退という。しかし、今やその清洲でさえどうなっているのだか、これも分からない。
――これでは退いても、無駄ではないか。それなら、いっそ、――
同時多発的に引き起こされる様々な不慮が人の判断をいとも簡単に狂わせる。とりわけ、信長には高政軍の先遣隊を蹴散らした勢いが、死兵となって戦う覚悟の兵隊があるが故に、尚のことだった。
「退け、一度体制を立て直す」
信長軍は高政軍の突撃をいなしながら川岸へ退く。
――体制を立て直す、というのは逃げるのではないということだ。まだ、戦うつもりかい、信長さまよ。あなたが一緒に戦ってくれるのなら、ここで一緒に死んでやろうと思わぬでもない。思わぬでもないが、――
ただ一人、可成だけがこの死地の最も先陣に立ちながらも、冷静に思案を巡らせていた。
体制を整えた信長軍は川岸に改めて布陣し、高政軍と川を挟んで向かい合う。皆、最期の突撃のために腰をかがめて槍を構え、力をためている。
そして、信長は一呼吸を置き、握りしめていた道三の采配を掲ぐ。
「全軍、突――」
そのとき、ふしぎなことが起きる。
ごうと突風が吹いて信長の手から采配を吹き飛ばした。それはカラカラと剽軽な高い音を奏でながら河原を転がり、川の流れに取り込まれてあっという間に見えなくなった。信長は腕だけを振り上げたまま、その場に固まって動かなくなった。皆が固唾を飲んで信長の命令を待っていた。
死の恐怖がからだを包んだそのとき、信長が想起したのは、意外にも実父・信秀の敗戦の姿であった。加納口からほとんど行き倒れるかのように逃げ帰ってきた父の醜態を信長はよく覚えている。少年信長はそれゆえに打倒・斎藤道三を心に誓ったからだ。
しかし、思えば、父は道三に負けても戦では死ななかった。道三は父をはじめ多くの者らに戦で勝ちながらも、長良川ではついにその首を晒した。この違いは何だろう。
『いくら死にかけたとしても、ほんとうに死ななければ、負けぬ』
――誰だ?――
『次は俺が勝つ。次がある限り、勝負し続ける限りは獲り返せぬ負けはない。次を見ることだけが、負けぬ方策なのだ、うつけが』
年季の入った博打打ちの声であった。
生きることは難しく、死ぬことは易しい。どのように生きるかとは、いかに死なぬべきかという道であった。死なぬために、あらゆる手を尽くす。そこにしか生はない。
信長は風流とされるいくらかの社交をほとんど嫌ったが、ある今際の際に父が口ずさんだ小唄に、一つだけ気に入ったものがあったことを思い出した。
『死のうは一定、しのび草には何をしよぞ、一定かたりおこすよの』
「さあ。どうなさる」
可成の問いを受けて、信長は束の間の白昼夢から覚醒した。
――語り起こしてもらうには、まだ、オレの人生は到底足りないだろうナ――
ほどけかけた萌黄の髪紐をもう一度ぎゅっと結び直す。
「斎藤道三が死んだ以上、ここに留まる理由はないッ! すぐに尾張へ戻り、岩倉衆を迎え討つ。キサマら、大浦までは全力でこのオレを逃がせ。その後は全てこの信長が引き受ける」
「承知」
低声一言、颯爽と可成が再び敵勢に向かって馬を駆けた。すると、大将を殺しては恥だ、と足軽たちまでもがまるで粋なことを叫びながら続けざまに突っ込んでいく。
可成は騎馬したまま川へ乗り入れると、足を鐙にかけて立ち上がり、やってくる敵兵を高所より自慢の十文字槍で次々に薙ぎ払った。
「我こそは森三左衛門可成である。斎藤道三より織田信長へ譲られた尾濃随一の槍兵なり。道三と信長を討つに際して我の首を獲らずば、些か精彩を欠くものと心得よッ」
可成は敵の大軍にぶつかりながらも、尚も煽り散らした。膝を切られようとも、腹を斬られようとも、馬を足にして繰り出される彼の槍術にはいささかの衰えも見られなかった。
「尾濃随一を森殿にだけ語らせるなッ、続けッ」
可成を救うべく、利家たちが駆け付けて奮戦する。
多勢に無勢は変わりなく、信長が撤退するまでに多くの者が討死を遂げた。だが、これを悲しむのは、帰ってからだと既に決めた。決めているなら、信長はもうそのことは考えない。
日が傾き始めるころ、満身創痍で大浦砦まで撤退した信長軍は、鉄砲隊を砦に配し、追いすがる敵勢に高所より撃ちつけた。
「何だ、あの鉄砲の数はッ? 力攻めはするな、後続の軍勢を待って厳重に包囲せよ」
しかし、砦からの反撃はその一撃だけで全部であった。信長は敵の足が止まるのに呼吸を合わせて砦を捨てると、命からがら逃げ帰った可成をはじめとする負傷兵や、小荷駄を先に舟に乗せ、砦の陰に隠すようにして夕暮れの木曽川を渡らせた。
「馬鹿が。逃げているぞ、川を渡らせるなッ」
騎馬隊を率いて駆け付けた守就がいち早く勘付いて川へ駆け寄ったが、そこまでを信長は読んでいる。
「いつかの礼だ、安藤殿」
中州の繁みの中から再びの鉄砲の斉射である。騎馬兵たちは川へ入ろうとするものから、順々に、正確に頭を撃ち抜かれて馬から転げ落ちた。守就のみ間一髪、それを避けて九死に一生を得たものの、しかし、馬を撃ち抜かれて落馬した。敵の大将が出てきているという事実を餌に、群がる敵を一人ずつ冷静に撃ち抜くその戦術は、明朝の、長良川の戦いで道三が行った奇襲にまるで一致していた。
「もう一人の息子か。なるほどね、父上の仰った意味が今になってようやく分かるとはな」
追いついた高政は、自らも鉄砲隊を指揮して信長を狙い撃つが当たらない。逆に信長の射撃によって高政の鉄砲隊は一人ずつ撃ち抜かれていく有様で、このまま撃ち合いに分がないことはすぐに分かった。
「父上が死んだと知ってヤケバチになってくれればと思ったが、義弟は意外に冷静だ。これ以上は無駄だな」
高政軍は川を離れ行く信長を見届け、日の暮れる前に稲葉山城へ兵を退いた。
――聖徳寺で父上は、あいつと何を話したのだろう?――
高政は新たに得た自分の力に大いに満足しつつも、義絶したはずの父に対する想いを今さらに噛みしめ、そして、すこしだけ信長を羨ましく思った。
「良い場所を選びましたな。砦は今日にも普請が整いましょう」
建造されたばかりの櫓から眼下を見下ろす信長の元に可成がやってきて報告した。
近辺は彼の生まれ故郷だった。その地に詳しい者を重用するのが信長の常套手段だった。
「よくやった。ここで戦えば、そう簡単には死なん。舅殿にはすでに昨日人を遣わせたよ」
見晴るかす遠望の空に、霞みがかった稲葉山が見えている。
ぼうっと見つめていると、何だか前にも同じ戦をしたことがあるような、そんな気持ちが生じた。
「気の抜けたお顔に見えますな」
「分かるか。どうにも現実のような気がしないのさ」
可成は沈黙で以て相槌とする。
「家督を継ぐより、ずっと前のことだ、オレは美濃の斎藤道三をこの手で殺すだろうと考えていた。加納口で父を負かした男をオレがさらに負かしてやるのだ、と意気込んでいた。だが、オレはいつも見る夢のなかで、斎藤道三にコテンパンにやられるのだ」
「ホウ。それは、どのように」
「アハハ。笑うといい。奴が采配を振るうだけでオレの軍兵はバタバタ倒れ、川が荒れ、舟が潰されるのさ」
「誠にそのような術があれば、乱世を渡るに苦労もしませんな」
「そうしてオレは逃げるのだ。そこに口うるさい老臣が居てな、コイツが決まって殿を買って出やがる。現実では、もうずいぶん前に切腹して死んだ男だがね」
夢のこと、死んだ家臣のこと、そんなことを思い出すなど縁起が悪いにもほどがある。そう感じながらも、信長は滑り始めた口を止めることができなかった。
「斎藤利政――美濃で悪評を集めているだけのこの男が、昔から、どうにも他人事のような気がしなかった。一度も会ったことのなかったのに、ね。
ところが、どういうわけだか、やがてその悪党の娘がオレに嫁ぎにきた。調子を狂わされたよ。織田の方から持ち掛けた話だと聞いたが、オレは納得しなかったよ。まるで、オレの思惑がすべて見透かされ、揶揄かわれているかのように思った。
そして、その男を救うべく、いま、オレは命賭けで美濃の地に立っている。奇妙な話だろう。浮世というのはほとほと信用ならんものだぜ」
「では、幽世へ参られますか。この地で戦に興じれば、三途の川も選び易い」
信長の口数が多いのをやや危ぶみ、可成はその感傷に水を差した。
「生憎、鉄砲やら何やらにつぎ込んで一銭もない。とてもこれだけの人数の船賃というのは、足りないナ」
「それでは、勝つより他にありませんな」
「アア、そうだ。まったく、そうだよ」
砦の櫓から信長は仲間たちの姿を認めた。夜通し砦の建設に駆り出され、いまは横たわってわずか眠っている。
――死ぬ覚悟で来た者を、死なせるわけにはいかない――
信長は戦気を取り戻す。
生まれてこの方、年上の人間にはほとんど好かれることがなかった信長にとって、森可成という男は得難い家臣だった。一か八かの決戦に臨む不安のなかにあって、自らを襲った感傷を逃がすために、それは、ほんのわずかな間ではあったが、信長は可成に甘えたのだ。
しかし、「現実」というものは、若者の感傷を破り捨てるためだけに存在していると言っても過言ではない。
「伝令、斎藤道三殿、長良川にて開戦に及んだとのことッ」
信長はすぐさま馬に跳び乗った。戦略に当てはない。ただ、行くということのほかに成すべきことが見当たらなかった。
明瞭な蹄の音だけが辺りに鳴り響いた。眠っていた長秀たちが飛び起きる。彼らも、また、すでに信長の後に追いすがることしかできなかった。かつて信長の無謀を幾度となく諫めてきた仲間たちさえ、今は、織田信長というただ一人の男の意志に繋がって動く、自我を越えた熱情の塊と化していた。
――何故? 斎藤道三ともあろう男が、いったい何故、無謀な野戦などに打って出た?――
風が強くなってきている。正面より吹きつけて信長の額を叩く。脳裏に旋風が起きる。理解できない道三の行動がぐるぐると巻き上がっている。
――猪子を通じ、大浦に砦を築いている旨は知らせていた。ここで戦えば、殺されはしない。そんなことが分からない斎藤道三ではないだろう!――
『舅殿の危機にはこの信長が馳せ参じましょう』
聖徳寺で放った自分の言葉を、信長はよく覚えていた。そして、道三もそれを覚えてくれているはずだ、とそう思っていた。あの会見は信長にとって快いものだった。「百戦錬磨の猛者と心が通じ合った」と信長に大いなる自信をもたらしたのである。
――会いさえすれば、顔を合わせさえすれば、古今東西の何処にも例を見ぬような戦線の創造ができるだろう。そのための人馬も、物資も、携えてきた。自分と道三が手を組んだなら、敵がどれだけ多勢であろうとも遅れをとることはないはずだ――
他人事のような気がしなかった、と信長は言ったが、その実、彼は道三を知らなかった。いや、道三ですら自らの最期の行動を説明できずにその生涯を閉じたのだ。
とどのつまりは、人間とは決まった行動などし得ないもの。そんな当たり前のことが、信長にも、道三にも、わかっていなかった。それだけのことだった。
「川だ、舟は間に合わぬッ、浅瀬を渡るぞ、遅れるな!」
林道を抜けると及川という河川へ出る。長良川へはいま少し距離があるが、しかし、そこで信長は、対岸に縦隊で布陣する軍勢をその目に捉えた。
「とまれ」
この世に二つとない二頭立浪の紋を敵軍の旗指物に探すが、見当たらない。高政の軍勢に相違なかった。
父・道三を討ち獲って首実験を終えた高政は、すぐさま兵を大浦方面へ向かわせた。はじめに二〇〇〇ほどの部隊を先行させ、自身が率いる一万余の本隊は、あえて疎らに散らしながらその大軍であることを知られぬように、ゆっくりと進むよう差配した。
「何故、すぐさま全軍を向かわせないのですか」
守就の素朴な問いかけに高政は粛々と答える。
「織田信長の兵は多く見積もっても二〇〇〇と聞いたよ。そこへ一万を越える大軍で押し寄せてみなさい。道三との戦はすでに決着したと知れるだろう。こうなれば、彼は一散に逃げ帰ってしまうかもしれない。まずは小勢で気を引くのだ。『道三との決戦に邪魔が入らぬよう、高政はこちらへ別動隊を寄越した』と、こう信長に思わせたいのよ」
守就は感嘆の息を漏らした。
――まったく人間というのは、たった一つの合戦を契機に、こうも変われるものだろうか――
それほどまでに道三という存在が、高政をきつく縛り付けていたということを身を以て知る。
高政の作戦は見事に嵌る。信長は道三がすでに討ち獲られたことを知らない。目の前の小勢を打ち倒しさえすれば、道三の待つ長良川へ辿り着くことができると信じて、遮二無二突っ込んできたのである。
かくして及川にて高政軍と信長軍の戦闘は始まったが、信長軍の勢いは高政の想定を超えて凄まじい。先鋒の可成が敵勢に斬り込んでこれを掻き乱すと、その勢いに乗じて信長自身も旗本と共に押し寄せた。高政軍はたとえ大勝したとはいえども道三軍との戦いを終えたばかりでの連戦で、疲労の色がやや拭えない。
あっという間に先遣隊を敗走に追い込んだが、そこに高政の本軍一万余が駆け付けた。信長にとっての絶対を引き連れて。
「何と。先遣隊はもたなかったか。織田軍がこれほどまでに強いとはね」
高政は驚いた風に目を見開きはしたものの、明らかに余裕であった。ビクビクと怯えるようなありし日の卑小な態度は陰もない。その巨躯に見合うだけの威厳を備えて、そして、何より父親譲りの卓抜した戦略眼が今まさに開花している。
「かかれ、織田信長を逃がすな。その首を父の墓前に供えてやろう」
迫りくる大軍を目の当たりにしたとき、信長はいよいよ事態を正面から悟らざるを得なかった。
繰り広げられる足軽合戦のさなか、さらに、信長の陣中に全身を血やら泥やらに汚した猪子が駆け込んで来る。
「道三殿は、道三殿は何処か」
「斎藤道三、討死の由にございます。敵は一万余の大軍にござる。信長殿とて勝てませぬ。退かれませ、どうか、退かれませッ」
猪子は跪き、涙をこぼしながらも、証拠だとでも言うかのように、信長に一つの采配を差し出した。血と硝煙の匂いがしみ込んだそれは、道三のものに相違なかった。信長はそれをひったくるように取り上げ、壊れんばかりに握りしめた。
道三はすでに死んだ。救うべき舅はもう居ない。生きているかもしれない、と思わせる材料の一つも見当たらなかった。長良川で道三を踏みつぶした高政軍が、次は信長に狙いを定めてやってくる。その動きには一遍の矛盾もない。斎藤道三の死を疑う自由すら、何処にもなかった。
道三は信長にとって死ぬはずのない男だった。侍としての信長の人生は、道三を中心に回天を始めたのだから。敵意にせよ、期待にせよ、信長の思想の中心にはいつもその男が居たのである。
上の空。眼前にその道三を凌駕して尚も膨張を続ける新たな怪物が迫っているのだが、信長の意識まだ冴えない。
すでに眩暈を生じていた信長に追い打ちを駆けるかの如く、第二の伝令がもたらされる。ただし、それは背後、つまりは尾張から駆け付けた者による報告だった。
「申し上げます、尾張にて岩倉衆が蜂起し、清洲城へ迫っております」
かつて清洲織田氏と共に双璧をなして守護代の地位にあった岩倉織田氏の当主・織田信安は、日増しにその勢力を強大にする信長を追い落とす機会を虎視眈々と狙っていた。
時を同じくして、それは高政の陣へも伝えられる。
「良い流れですな。これなら放って置いても、尾張で反信長の兵を挙げる者は増えていきましょう」
「ウン、けれども、それでも信長の首はいま獲っておきたいね」
高政はすでに道三との決戦に及ぶ以前から尾張の諸将へ調略の手を伸ばしていたのである。
始まってみれば、の戦いは徹頭徹尾が高政の必勝であった。
道三も救えない。尾張でも敵が蜂起している。
退き戦とは、退く先があって初めて成り立つ。死地を脱し、安住の国元へ帰ることを撤退という。しかし、今やその清洲でさえどうなっているのだか、これも分からない。
――これでは退いても、無駄ではないか。それなら、いっそ、――
同時多発的に引き起こされる様々な不慮が人の判断をいとも簡単に狂わせる。とりわけ、信長には高政軍の先遣隊を蹴散らした勢いが、死兵となって戦う覚悟の兵隊があるが故に、尚のことだった。
「退け、一度体制を立て直す」
信長軍は高政軍の突撃をいなしながら川岸へ退く。
――体制を立て直す、というのは逃げるのではないということだ。まだ、戦うつもりかい、信長さまよ。あなたが一緒に戦ってくれるのなら、ここで一緒に死んでやろうと思わぬでもない。思わぬでもないが、――
ただ一人、可成だけがこの死地の最も先陣に立ちながらも、冷静に思案を巡らせていた。
体制を整えた信長軍は川岸に改めて布陣し、高政軍と川を挟んで向かい合う。皆、最期の突撃のために腰をかがめて槍を構え、力をためている。
そして、信長は一呼吸を置き、握りしめていた道三の采配を掲ぐ。
「全軍、突――」
そのとき、ふしぎなことが起きる。
ごうと突風が吹いて信長の手から采配を吹き飛ばした。それはカラカラと剽軽な高い音を奏でながら河原を転がり、川の流れに取り込まれてあっという間に見えなくなった。信長は腕だけを振り上げたまま、その場に固まって動かなくなった。皆が固唾を飲んで信長の命令を待っていた。
死の恐怖がからだを包んだそのとき、信長が想起したのは、意外にも実父・信秀の敗戦の姿であった。加納口からほとんど行き倒れるかのように逃げ帰ってきた父の醜態を信長はよく覚えている。少年信長はそれゆえに打倒・斎藤道三を心に誓ったからだ。
しかし、思えば、父は道三に負けても戦では死ななかった。道三は父をはじめ多くの者らに戦で勝ちながらも、長良川ではついにその首を晒した。この違いは何だろう。
『いくら死にかけたとしても、ほんとうに死ななければ、負けぬ』
――誰だ?――
『次は俺が勝つ。次がある限り、勝負し続ける限りは獲り返せぬ負けはない。次を見ることだけが、負けぬ方策なのだ、うつけが』
年季の入った博打打ちの声であった。
生きることは難しく、死ぬことは易しい。どのように生きるかとは、いかに死なぬべきかという道であった。死なぬために、あらゆる手を尽くす。そこにしか生はない。
信長は風流とされるいくらかの社交をほとんど嫌ったが、ある今際の際に父が口ずさんだ小唄に、一つだけ気に入ったものがあったことを思い出した。
『死のうは一定、しのび草には何をしよぞ、一定かたりおこすよの』
「さあ。どうなさる」
可成の問いを受けて、信長は束の間の白昼夢から覚醒した。
――語り起こしてもらうには、まだ、オレの人生は到底足りないだろうナ――
ほどけかけた萌黄の髪紐をもう一度ぎゅっと結び直す。
「斎藤道三が死んだ以上、ここに留まる理由はないッ! すぐに尾張へ戻り、岩倉衆を迎え討つ。キサマら、大浦までは全力でこのオレを逃がせ。その後は全てこの信長が引き受ける」
「承知」
低声一言、颯爽と可成が再び敵勢に向かって馬を駆けた。すると、大将を殺しては恥だ、と足軽たちまでもがまるで粋なことを叫びながら続けざまに突っ込んでいく。
可成は騎馬したまま川へ乗り入れると、足を鐙にかけて立ち上がり、やってくる敵兵を高所より自慢の十文字槍で次々に薙ぎ払った。
「我こそは森三左衛門可成である。斎藤道三より織田信長へ譲られた尾濃随一の槍兵なり。道三と信長を討つに際して我の首を獲らずば、些か精彩を欠くものと心得よッ」
可成は敵の大軍にぶつかりながらも、尚も煽り散らした。膝を切られようとも、腹を斬られようとも、馬を足にして繰り出される彼の槍術にはいささかの衰えも見られなかった。
「尾濃随一を森殿にだけ語らせるなッ、続けッ」
可成を救うべく、利家たちが駆け付けて奮戦する。
多勢に無勢は変わりなく、信長が撤退するまでに多くの者が討死を遂げた。だが、これを悲しむのは、帰ってからだと既に決めた。決めているなら、信長はもうそのことは考えない。
日が傾き始めるころ、満身創痍で大浦砦まで撤退した信長軍は、鉄砲隊を砦に配し、追いすがる敵勢に高所より撃ちつけた。
「何だ、あの鉄砲の数はッ? 力攻めはするな、後続の軍勢を待って厳重に包囲せよ」
しかし、砦からの反撃はその一撃だけで全部であった。信長は敵の足が止まるのに呼吸を合わせて砦を捨てると、命からがら逃げ帰った可成をはじめとする負傷兵や、小荷駄を先に舟に乗せ、砦の陰に隠すようにして夕暮れの木曽川を渡らせた。
「馬鹿が。逃げているぞ、川を渡らせるなッ」
騎馬隊を率いて駆け付けた守就がいち早く勘付いて川へ駆け寄ったが、そこまでを信長は読んでいる。
「いつかの礼だ、安藤殿」
中州の繁みの中から再びの鉄砲の斉射である。騎馬兵たちは川へ入ろうとするものから、順々に、正確に頭を撃ち抜かれて馬から転げ落ちた。守就のみ間一髪、それを避けて九死に一生を得たものの、しかし、馬を撃ち抜かれて落馬した。敵の大将が出てきているという事実を餌に、群がる敵を一人ずつ冷静に撃ち抜くその戦術は、明朝の、長良川の戦いで道三が行った奇襲にまるで一致していた。
「もう一人の息子か。なるほどね、父上の仰った意味が今になってようやく分かるとはな」
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「父上が死んだと知ってヤケバチになってくれればと思ったが、義弟は意外に冷静だ。これ以上は無駄だな」
高政軍は川を離れ行く信長を見届け、日の暮れる前に稲葉山城へ兵を退いた。
――聖徳寺で父上は、あいつと何を話したのだろう?――
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