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(64)事実と安心

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僕は、あの後眠ってしまっていたようで、起きた時には合宿の宿にいた。

「太陽…大丈夫…?」
太晟が僕に、そう声をかける。

「大丈夫…」

「とにかく安心したぞ。」
遠藤先生が部屋の少し離れた場所で安堵した表情で言う。


僕の隣にはまだ蘭が寝ていて、遠藤先生が口を開いた。


「まさか…蘭までいたとはな。」
少し俯きながら、遠藤先生は話した。


「蘭はな…元々要よりも足が速かったんだ。でも、ある大会から身体のどこかを怪我していたようでな、要には抜かされ、その差も少しずつ開いていった。」
寝ている蘭の方を見ながら遠藤先生は言った。


そういうことだったのか…初めて僕が蘭と出会った時、走ってくる足音で一瞬太晟と間違えるほど、蘭は足が速かった。

いや、本音を言えば、太晟の以上の雰囲気を感じ取り、見なくても太晟ではないことに気づいていた。


それから、武道場での蘭の動き、さっき蘭が最後に見せた動きを考えれば、相当運動神経が良いことは感じられる。 


「蘭は、要が1位になった最後の大会ではどうだったんですか?」
僕が遠藤先生に訴えるように言う。


「2位だよ。蘭なりにもすごく頑張った結果だ。」
少し、遠藤先生は表情を明るくして話した。


「そうなんですか…………
     それは…楽しみですね。」  

僕は、下を向きながら、目を見開いて、無意識にそう口にしていた。


「太陽…お前…」
その僕の発言と雰囲気に、その場にいる太晟、遠藤先生は、驚きと、恐怖で、一瞬震える。


僕はハッと我に返り、太晟と遠藤先生にお礼をした。


「夕食までまだ寝ておけ、明日もまだ合宿は続いてるからな。」


遠藤先生の言葉に甘えて、僕はもう一度身体を倒した。


そういえば…僕が起きた時、遠藤先生の目はとても赤かった。
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