4本になったバトン、代わりに僕が約束へ繋げる。

（58）託した道着

「太陽先輩、合宿サボっちゃっていいんですか？笑」
蘭が僕を馬鹿にするように言う。

「仕方ないだろ、実際、合宿前日にあんな電話きた時点で想定していた。」
僕は冷静に事実を述べる。

「顧問の先生は知ってるんですか？」

「昨日の夜に伝えたよ。」
罪悪感を覚えながらも僕は答えた。

「すみません、先輩を巻き込む事になって…」
急に真剣な顔で蘭が言う。

「いいや、僕との文化祭のせいだろう笑」
僕は半笑いで言った。

「でも、蘭が初めて僕の前に現れた時、と言うか助けてくれた時、団に対して戦う運命って言ってたのはどう言う意味だ？」
僕も真剣になって問いた。

「俺と団は空手でのライバル的関係なんですよ。」
さらっと蘭が言う。

「そうだったのか、勝敗はどんな感じなんだ？」

「五分五分ですね。それくらい団は厄介な相手です笑」
蘭は笑顔で自信を持って答えた。

「それは厄介だな…それに、そろそろ競技場に着く。」
僕はそう言いながらバックの中から道着を2枚取り出した。

「太陽先輩、なんで２つなんですか？」
蘭が不思議な顔して問う。

「１つはここに置いておく…」
僕は真剣な顔で言った。

「なんのためにですか？」
先ほどよりも不思議な顔して問う。

「なんとなくだ…」
僕はそう言いながら、合宿当日の朝に柔道を習っていた先生から渡された道着1枚を着て、もう1枚をバスの中の椅子に置いた。

そして競技場に到着し、バスのドアを開け、競技場内に蘭と入った。