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「エルーシアちゃんの誘拐を企てたのは、其方達ではないのだな?」

「はい。そのような物騒なことなど私の派閥の人間が実行するなど考えられません」

陛下の問いにヒムラー侯爵はそのように答えました。
しかし、汗で服まで汗染みが見えます。

「もう一度聞く、其方達では、ないのだな?」

「はい。私達ではございません」
ヒムラー侯爵は、陛下を向いていますが、瞳が不自然に上下左右に動いています。
そして誰が聞いてもわかるくらいに声が震えています。

「でも、良かったな。エルーシアちゃんの妹のファリカちゃんが、族を取り押さえて。
エルーシアちゃんだったら、皆殺しだったかもしれなかったからな」

(えええ!私はそんなに凶暴ではありませんわ。)

ガタ バタバタ
この会話を聞いていた者達の数名が倒れました。
(あらあら 気絶したのね。私には 関係ないね! ですけれども)

「マルグレーテ第一王妃と一緒に魔物狩りを行ってものすごい魔法を使っていそうだからな。
マルグレーテが、パーティーを組んで虐殺の姫と呼ばれていたのをヒムラー侯爵は知っているよな?
そのマルグレーテが言うのだ、ものすごくえげつない攻撃魔法なのだろう」

「陛下、結婚前に私はそのように呼ばれていたのですか?」
この場ではお淑やかにしていた、マルグレーテ王妃が真っ赤です。

(あとで夫婦けんかしなければいいのですけれども)

「余の口からは言えないが、一緒にパーティーを組んでいたレナウド辺境伯を見たらわかるだろう?」

確かに叔父様はかくかくと頭を動かしています。

「ふん」
マルグレーテ王妃様は、かつての友、レナウド叔父様をじっと睨んだあと、そっぽを向きました。
どうやら、その通り名は本当だったのでしょう。

この場で初めてレナウド叔父様を見たのですが、モヤモヤとする気持ちはあるのですが、意識が遠くなることは無いようです。

「エルーシアちゃん。何か話したいことはあるか?」

(え?どうしてこの場で私に話を振るのかしら?面倒くさいから大人達でやってよ)

私は、満面の笑みを顔に貼り付け、一歩前に出ました。
この場が再びざわつきはじめました。
「可愛い」 「緑のドレス素敵」 「ペンダントがキラキラ輝いて形も可愛い」
「え?こんな可愛い子があの商会の会頭」
などなど色々な声が聞こえます。

私は陛下から皆様の方を向いて
完璧なカーテシーをしました。
あのざわついていたこの場がシーンとなりました。

「ベルティンブルグ公爵家が長女、そして、ヒーナ商会の会頭を務めております。エルーシアと申します。お見知りおきください」

私の完璧な挨拶に陛下が
「ってエルーシアちゃん、ただの挨拶かい!」
と突っ込み、ベルティンブルグ一家全員が肩とお腹をヒクヒクと動かしています。
そんなに陛下の突っ込みがおもしろかったのでしょうか?
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