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「オッドリア伯爵。今日より辺境伯に陞爵する」

国王の声に合わせ

レナウド叔父様、ライナー兄様など男性陣は片膝を床に着けました。
女性陣は、手を胸にあてて深く頭を下げました。

「陛下。ありがとうございます。陞爵にあたり身を粉にして国の繁栄に務めます」

レナウド叔父の宣誓に「わー」と謁見の間が盛り上がりました。


オッドリア一家が下がって、今度は、私達一家、お祖父様夫妻、お父様夫妻、ファリカと私が国王の前に、ゆっくりと歩いて行きました。


「先代王兄バルデマー殿下に大公爵の爵位を」
「ちょっとお待ちください。陛下」
国王の宣言をとめたのは、ヒムラー侯爵であった。
「ヒムラー侯爵。いきなり余の発言をとめるとは不敬だぞ」

「ははー」
ヒムラー侯爵は頭を低くして、反意は無いと態度で示しました。
しばらくして落としていた頭を上げ、陛下の目を見ました。

「不敬なのは重々承知しています。
しかし、爵位をすでにご子息に世襲されているバルデマー殿下を大公爵に陞爵するのか、私達にはその意味がわかりかねます」

「ほう。侯爵は、バルデマー殿下の大公爵に陞爵する意味がわからぬと言うことだな」
陛下はニヤリと口角を上げました。

「大きな商会を持つ侯爵は、余より実感しているのではないか?」

「いいえ、何のことだがわかりません」

「いいか、よく聞け。ヒムラー侯爵、デュリング伯爵、トーマス男爵。
先日、ある貴族の娘が王都学園の入試後に誘拐される事件があった。
其方達は知っていたか?」

デュリング伯爵、トーマス男爵はいきなり名前を呼ばれた為なのでしょうか。
とても落ち着きがなくなっています。
ヒムラー侯爵は、頭から大量の汗を流しているのがここから見てもわかります。

「さあ?何のことでしょうか陛下」
ヒムラー侯爵の声は震えています。

「そうか、其方達は知らぬと言うのだな」
陛下は3人を順番にじぃーっと睨みました。

「ヒムラー侯爵よ、其方は大きな商会を運営しているので、知っていると思っていたのだがな。
知らないようだから教えてやるが、その誘拐された娘と言うのは、
バルデマー殿下の孫のエルーシアちゃんだ!」

辺り一面ざわつきました。

(あら、陛下はここで私の事をばらすのね。一言欲しかったわ。
でもここでも私の事をちゃんづけで大丈夫なのかしら?)
などと考えていますと

「エルーシアちゃんは、今一番勢いのある商会と言われている、ヒーナ商会の会頭だ」

またまた 辺りがざわつきました。

「ヒムラー侯爵。其方の情報網はそんなものなのか?
今まで本人と公爵の意向があり、ヒーナ商会の会頭の情報を秘密にしていたが、大商会を持つ其方が知らないとはな。
そんな事だから、大きく売上げを落としたのではないか?」

ヒムラー侯爵は、口を固く閉じた。

(まあ、ヒムラー侯爵の顔は紅くなったり青くなったり、雨が降ったり(汗をかいたり)して大変ね)
私は、家族を見ました。お祖父様とお父様をはじめヒムラー侯爵を強く睨んでいます。
そしてファリカを見ると、私と目が合うと、なぜか私に向けてピースをしています。


次回へ続く。
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