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「お父さん、要するに、王族に利益を搾取されないようにするためにこのような作戦をとるのです。
列車事業は、きっと私達でしか出来ないはずなので、これが成功した後、必ず王様は、王都まで列車を引いて欲しいと依頼を出すでしょうが、たっぷりとお金をふんだくります」

悪い顔をしている私にお父様は

「エルーシアちゃん。わかっているとは思うけど、私達は王家に仕えているのだよ?」お父様は私を窘めましたが、

「お父様、王家は私達の領地に援助などしたことありますか?いいえ、他の方の治める領地に対しても!無いですよね、税ばかりとり、そのお金は軍に流れることが多く、しかも有事があれば各領主に領地軍を出せと。それに国防だけでなく、国力をあげ、国民が豊かに暮らせるようにするのが国を治めるモノの努めと思いますが、その点は、ベルティンブルグ公爵家にたよっているではないですか?
今は、このように仲良くして私達を取り込もうとしている王族ですが、私達が貧窮したとき、果たして助けてくれるのでしょうか?
その点が確信出来ないため私は、王家を信用してないのです」
「エルーシアちゃん?」
お父様は少し困った顔を浮かべながら愛想笑いをしています。
「申し訳ございません。本音がここで出てしまいました。貴族の令嬢として恥じるべきですね・・・ でも王家に搾取されるのが一番しゃくにさわるのです」

「閣下。エルーシアお嬢様、今の本音だだ漏れの所は、僕には、聞こえませんでした」レオンは私の失言を聞かなかったことにしてくれました。そして 「ところで、商業都市なのですが、ベルティンブルグ公爵家直営の会社の運営だと盛り上がりが欠けると思いますが何か考えありますか?」

「そうね。領民達もお店を出せるように資金が必要ね・・・
銀行? 銀行!! 銀行を作りましょう?」

「「銀行!!」」

ああっと納得顔のレオンと
銀行?と頭を傾けるお父様

「簡単に言いますと、高利貸しの機能にお金を集めることを入れた組織です。
お金を集めて、集めたお金を、個人や貴族、商人などに貸して、そこから手数料を足して貸したお金を返して貰うの。その手数料の一部を出資してくれた人に支払うの。
銀行は、お金を集めることと、その集めたお金を貸す所を決めるの。そこに貸してちゃんとお金を返してもらえるか調べたりしながらね。その審査が通ればお金を貸すの。
担保があれば、返せなくなったらそれをお金の代わりに回収するの」

「お金はどうやって集めるのだい?」

「各ギルドは、お金を預かっていますよね。それを銀行に権限を委譲して貰うの。
そしてお金の出し入れはこの銀行が全て牛耳るの。各ギルドなら預けるだけだけど、銀行に預けるとわずかだけど、お金が増えるのです。
ギルドの会員は銀行に報酬を預けると思います」
わたしは、ふふっと笑い
「身分証明書(ギルドカード)に入っているお金は、ギルドカードを紛失して亡くなった場合は、例え、親や子供でもそれを受け取ることが出来ません。
しかし、銀行に預けると、本人が亡くなった事を証明出来れば、遺族にお金を渡すことが出来るのです。
冒険者ギルドを利用する冒険者は、常に死と隣会わせなので、これを聞くだけでも預ける人が多くいると思います。
商業ギルドですと、今までのお金のやり取りは、本人が直接お金を渡すか、ギルド内でギルドカードどうしを合わせてお金を移動するやり方が主流だと学びましたが、約束手形を発行すれば、お互いが顔を合わせなくてもお金の受け渡しが出来るようになります。
あと、列車が完成した場合、お金の支払いや受け取りも楽になります。
遠くにいても、銀行を介してお金をやりとりすれば良いのですから、当然手数料をいただきますけど、
ここまでは、主に個人のメリットでしたが、団体やギルドの一番大きなメリットは、お金を管理していたひと、窓口の人件費がなくなるようにいたします。
銀行業務をする人間をギルドに派遣するのです。
それだけでも各ギルドにとってメリットになると思います。
まあ、どちらにしても最初の資金は私の商会から出そうとおもっていますけど・・・ 」

「なるほどな。領地内のお金の動きがわかるのはありがたいな。
今までならば、各ギルドを回ってお金の動きを把握しなければならなかったが、銀行を使えば、お金の動きがすぐに解るようになるな」
お父様は、ふっと笑い
「これをはじめたら、すぐに王国も銀行を作ろうとするだろう。
お金の動きがわかれば、事前に不正を防いだり、盗賊などの動きもわかるようになる。そして貴族の動きもわかるようになる」
お父様は瞼を閉じでうんうんと頭を動かしています。

「閣下。お金の管理と運搬はどのようにしますか?」
レオンは右手を挙げてお父様に聞きました。

「お金を預かったときは、使用者を決めたアイテムバックにいれることにする。
お金の引き出しもそこからだな。ある程度まとまったお金ならば、銀行に直接取りに来て貰うか、後日取りに来て貰う。
まあ、各ギルドも金額が多いときは後日取りに来て貰っているので大丈夫だろう」

「それと警備の問題は如何なさいますか?」
続けてレオンは右手を挙げて聞きました。

「各ギルドにいるときは、そのギルドの護衛に任せるようにしよう。銀行からギルドに護衛をつけて移動だな。帰りもギルドから護衛をつけて移動だな」

「閣下。銀行で働く方は、独身だと寮を作って住んで貰った方が良さそうですね」

「そうだな。既婚者も家持ちでなければ、住むところを固めた方が安心だな」

「「そうですね」」
レオンと私は首肯しました。

「銀行は、ベルティンブルグ内だけでなく、オドヘートやレナウドなどの寄子たちにもやって貰った方がよいな」

お父様が自分の領地だけではなく、寄子の貴族の領地にも銀行を作ると決めたとき ドアが3回ノックされました。

「お館様、お嬢様。面会室でご隠居様ご夫婦がお待ちです!」

「親父とお袋が?」
お父様は驚きの顔を隠せず、動揺する顔をみせました。

「おとうさん。面会室に参りましょう。レオンもついてきて」
私達は急いで応接室に行くのでした。

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