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みんなへの話が終わり、レーア叔母様、リーサお姉様、お母様はお父様の執務室から出て行きました。

「エルーシアちゃん。私だけにする話がまだあるのだろう?」

お父様は私をのぞき込むようにいいました。

「ふふふ。お気づきでしたか?王族にも、同じ派閥で寄子のオッドリア家の2人にも話せない内容です。私の思惑を他家に聞かせる必要もありませんので」

「エルーシアちゃんは、本当に12歳なのか?」

お父様はおどけて私にそう問いかけてきました。

(わたしは、大人を信用しきれないのです。今は私にいい顔を見せる叔母様は、結局は私を見捨てたわけですから・・・)
そんなブラックな気分の私に
「例え、私たちの家が寄親で、あの2人の家が寄子だとしても、ここにずっといる2人は、我が領地の情報をレナウドが他の貴族に流している諜報員かも知れません」

「いや、いやそんなことはないだろう?純粋にベルティンブルグの領地の運営の仕方を勉強しに来ているのだろう? いや、もしかしたら、エルーシアちゃんの治癒魔法か回復魔法をかけてもらって体調を良くしようと思っているかもしれないが」

そう話す父に対して私は
「先程出て行くときにレーアは私に満面の笑みを浮かべて私を見ていました。
あの顔を見たときに、私はあの家族に利用されているかも知れないと感じたのです」

「なるほど・・・。例えアルーシャの双子の妹である、レーアの家族でも心から信用していてはいけないと言うことかな?」

「はい。そして王家に対しても同じ考えです」

「なぜ?」

「マルグレーテ様の態度がおかしいからです。臣下の小娘におばさんとか、ばばあとか呼ばれても笑顔でかえしてくる・・・ きっと腹に何かあると考えています。 まあ。私に近づき探りを入れているだけかも知れません。が」

「が?」

「ベルティンブルグ公爵家が謀反を起こし、独立することはないか。情報を掴みに来たのではないかと・・・」

「なるほど。そんなにベルティンブルグ公爵家は危険・・・ だな?
もしかしたら、オッドリア伯爵家は、王家の諜報員なのかも知れないな」


「ちょっと私たちは、お金を稼ぎすぎたのかも知れません。
今はフーマ王国の各貴族から注目の的ですから。
でも、今日、マルグレーテ様も、レーアもリーサも何もなく領地に入ってきています。今のところこの3人には私たちに悪意はないのでしょう。
そして来年私は、王都の学院に入学します。
生活の基盤が、ベルティンブルグと王都フーツになります。
フーツならば、ここと違い色々な思惑の人間がいるので、
直接私に手を出そうとする輩が出てくるでしょう」

「その通りだな」

「でも、その対策も考えています」

私は、父にその対策を耳打ちしました。

「そ・そんな事までできるのか?」

私はお父様を見上げて首肯しました。


「お父様それで話を変えますが、先程、叔母様に提案した内容なのですが、道路などのインフラにかかるお金は、ヒーナ商会から貸すのではなく、ベルティンブルグ公爵家から貸出ししてください。それは、契約時にもしこのお金を返すことが出来なければ、魚市場と漁業ギルドの利権を貰うことにしてください。
そして、港の建設ですが、これは」
と私が言いかけたところで

「今後大きな利益を生むからその権利の一部を我が家に入るように交渉するのだな」

「はい。港の利用料を払わなくてもいい。とか、我が領地とオッドリア領の間に運んだ物にお互いに関税をかけない。そしてこちらから役員を数人送るのなど。そして港の実態をこちらが把握するために、海賊を取り締まるために、この領地で育てた魔法使いを派遣して諜報もしてもらうとか」

「まあどちらにしてもオッドリアの税収では、お金を借りて建築しなければならないからな」

「寄親が寄子にお金を貸すことは自然なことですから。
でもこの事業に国を関わらせたくないのです。国はお金を全く出さないくせに利権だけ持っていこうとするはずですから。ですからこの話を聞かせないように、嫌がるマルグレーテ様を無理矢理、王都に返したのですから・・・」

「どちらにしても、この話にレナウドはのってくるだろうな。
彼奴は、港が栄え、魚が多く捕れて豊かだった昔のオッドリア領を知っているのだからな」

「どちらにしても、お父様の次の代を引き継ぐ、ファリカが苦労しないで、領地運営できるようにすることと、王家にも負けない権力を持てるようにしなければいけませんね」

「え?」

とお父様が言いました。

「え。ってお父さんどうなされましたか?」

「エルーシアちゃんはベルティンブルグ公爵家を継がないの?」

(やばい。ポロッと本音が・・・)

「え?私が12歳になっても婚約者がいないのは、私に公爵の爵位を継がせる気がないからと思っていました」

「あ! エルーシアちゃんごめん。縁談の話はきているけど・・・
エルーシアちゃんには、まだ早いって全部断っているのだよ。王族からも王子のどちらでも良いので、婿としてでも良いので婚約して欲しいと・・・
それも断っている最中だよ・・・」

「え?」
「え?」
私とお父様は顔をお互いに見つめ

「マルグレーテ様は、我が家を諜報しようとしていたのではなく、我が家と仲良くなって息子のどちらかと私を縁づけようと来たのが真実なのでは・・・」

(そして、レーア様は、本当の娘が博識で、私を捨ててしまったけど、オッドリアの領地の繁栄をも考えてくれているとても良い娘って思って満面の笑みをしていただけかも・・・)

私は、自分の部屋に戻り、お父様に私の黒い部分を見せてしまったので、もがき苦しんだのでした。

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