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「マチルダ。スピードを落として高度を下げて。貴女スピードをあげるのに気をとられて私たちが乗っているの忘れているでしょう?」

バッサ バッサ 

マチルダは翼をバタつかせスピードを落としました。

この、羽を持つトカゲ(マチルダ)が乱暴に飛ぶようになったのは、
飛んでいる途中で、マルグレーテのおばさんが

「マッチー!もっとスピード出して!そしてもっと高く飛ぶの!」
などと言ったため、マチルダは、ものすごいスピードを出してしかも高く飛んだので、寒いし、風強いし、「やほーーーーぃ!」とかはしゃぐ 三十路ぐらいのおばさんがうるさいのです。

「マル。いい歳なのにうるさい。静かにして」

私は、はしゃぐマルグレーテを見て、彼女を王妃として敬う事はもう出来ないでしょう。そのくらい、このおばさんはうるさかったのです。
おばさんを叱りつけてしばらくすると、ベルンの上空まで来ました。


「エルちゃん。ベルンに着きましたね?」
おばさんは私の横でそう尋ねてきました。

「ええ。そうですわね。
マチルダ。お屋敷の裏庭に降ろして」

私は本来の姿のマチルダの背中を軽くさすりながら、ちょっと大きな声を出しました。

「わかったのだ」

マチルダ返事をすると、 すぅーと着陸しました。
そして私たちを降ろすとすぐに人化しました。

「「「お嬢様・マチルダ様お帰りなさいませ!!」」」
「「「エルーシア・マチルダお帰り」」」

先ずは使用人達が私の帰りを迎えてくれて、その後に、お母様とレーア叔母様とリーサお姉様が出迎えてくれました。
が! 
そう、もう1人、フーマ王国、国王の第一王妃のマルグレーテ(マルちゃん)が私とマチルダの横に並んでいるのです。

「「「「「!!!! ????」」」」

出迎えてくれた、皆様は驚きと何故王妃様がいるのかと疑問を抱いてるようです。
だって、みんな口を大きく開けてアホ面をしています。

「「マルグレーテ! なぜ貴女が、エルーシアとマチルダ様と一緒にいるの?」」

お母様と、叔母様は王妃様を呼び捨てで聞きました。
(そういう私は、「マル」とか「おばさん」とか言って呼んでいますけどなにか?)

「あら、アルーシャ。レーア。お久しぶりね?
相変わらず、2人ともそっくりね。
でも2人ともものすごく元気になったわね?
顔色がとても良いし、目がキラキラしていますわ」

王妃様がそう言うと、

「「ええ!最近はとても調子が良いわ」」
と2人が答えた後、お母様が
「そんな挨拶はどうでも良いのよ。どうして公爵領に貴女がいらしたのかしら?」
お母様は首を斜めに傾け、王妃様に聞きました。
(お母様、ちょっと可愛いけど、その歳であざとい表情は勘弁して・・・)

「旦那が、侍女にちょっかいを出して、ただいま 絶賛夫婦喧嘩中! 
なのよ。
そこにエルちゃんが来たから、旦那を懲らしめるためにちょっと付いてきたの」
王妃様はそう言って、頬をぷいっと膨らませています。

それを聞いて叔母様は
「マルグレーテは相変わらずね。でも今は第一王妃なんですから、お転婆はいい加減にしないと・・・ しかも臣下の者達にそんな姿を見せてはいけませんわ」

「まあ。相変わらずレーアは真面目ね。大丈夫よ。貴女達にしかこんな姿見せませんわ。貴女達は私の同級生で親友でしょ?」

「はあ・・・ でもマルグレーテ、ここには使用人もいますし、エルーシアやリーサもいるのよ? 娘達に示しがつかないし、使用人達も今の言葉を聞いて、国の行き先を不安に思いますわ」

今度はお母様が、王妃様に説教をしました。

「国王、王妃といえども人間ですから・・・ それに公爵家に使える者達は口外しないわよ。そこは躾がしっかりなされているのを知っていますわ」

「じゃあ。娘達に対しては、どうなの?」
叔母様が顔をしかめて言いました。

「ふふふ。エルちゃんは大丈夫。私の事を、マルちゃんとか、マルとか、ばばあとか呼ぶくらい仲良くなったのよ。もちろん古竜様のマッチーともね」

王妃様がそう言ったあと

「そうなのだ!マルちゃんとは、友達なのだ!
当然、マルちゃんとエルーシアも友達なのだ!」
とマチルダが言いましたが、お母様が

「まあ。それはそれは。良かったわね。
でも、エルーシアちゃんマルグレーテは、こんな残念でウザくて、お転婆のご婦人ですけど、一応この国の第一王妃なのよ?それに向かって「くそばばあ」は、言い過ぎよ!」

「あら?アルーシャ!わたしは、エルちゃんから「死ね!くそばばあ!!」って呼ばれていないわよ」

「「「うふふ おほほほ」」」

王妃様と、叔母様とお母様が何故か声を出して笑っています。
使用人達はどうして良いのか混乱して皆下を向いて固まっています。
って言うか、何なんでしょうこの雰囲気・・・
これが同窓会の雰囲気なのかしら・・・
(仕方ない話を進めましょうか)
私はそう考えていたのですが、思わず

「お母様達が同級生の頃から、こんなに仲がよろしかったのでしょうか?」

私は、ぽろっと出たその一言に後悔しました。

だってこの後ピーチク、バーチクと延々と、昔話を聞かされたのです。

途中で使用人達に王妃様に動きやすい服装に着替えて貰うから、服を用意してなど指示を出し、このおばさん達の井戸端会議から離脱させたのでした。
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