え？私、悪役令嬢だったんですか？まったく知りませんでした。

婚約破棄に向けて

トーマスはやっぱりトーマスだった。

ドロシーが勝手に転んでドタバタ劇場があった後、私は教室に戻りいつも通り授業を受けていた。

ドロシーとは誰なのか見に行っただけなのにあんなことになるとは思ってなかった。

ミーナが「何もなかった？大丈夫？」と声をかけてきたので、「大丈夫よ。」と答える。
なんだか勝手に転んでいたけど、みんなの前であれだけ抱きしめあっていたらあの2人の関係は周知の事実になっただろう。

「今思えばもしかして私は悪者にされそうだったのかしら。」小さく呟くとマーティン様に聞こえていたようで笑っている。
それにしてもなんで何時も隣の席に座るのかよくわからない。

「何かあったの？」小さい声で声をかけてきたので、さっきあったことをかいつまんで話した。
「それで悪者かぁ。まぁ、あり得そうだよねぇ。っていうかやっとドロシーがわかったんだね。このままわからないままかと思ったよ。」ペンをクルクル回しながら笑っている。

「あ、話変わるけど、この間は図書館で人に合わなかった？」
この間図書館であった人を思い出してみる。
「ああ、数日前に前の席に座ってきた人いましたよ。顔までは覚えてないんですが、一瞬目があったんで一言だけ会話しました。」本に没頭していたから本当に覚えていない。
早く続きが読みたいと思っているとあっという間に放課後になった。

一応今日の目標であるドロシーに会えたのと、抱きしめあっているという証拠（証人）も取れたので目標達成ということで図書館へ向かう。
昨日の続きが読めると思うとすごく楽しみだ。浮き足だって歩いていると、前からトーマスが現れた。
トーマスは私をみるなりすごい勢いで歩いてくる。何かしらと思っていると、「本当にお前は極悪令嬢だったんだな！」と言ってきた。え？なんか前よりパワーアップしているきがする。

「極悪令嬢って私何かしました？」

「昼休みお前がドロシーを転ばせたんだろ。ドロシーから俺といるのをやめろと言われたと聞いたぞ！あと、ドロシーを突き飛ばしたと聞いた。俺の事が好きだからってやっていいことと悪いことの区別もつかないのか？」

私が突き飛ばしたことになってる！？

「え？やっていいことと悪いことの区別ですか？その言葉そっくりそのままお返しいたします。」
そう言って通り過ぎようとしたら勢いよく肩を掴まれた。しかも結構痛い。
そもそも私何もしてないんだけど、やっぱりトーマスは周りが見えていないらしい。ここにいるのは私だけじゃない。廊下なのだ。そんだけ大きな声出していたらみんなが見るのに、恥ずかしくないのかしら。
周りを見渡すといつも隣に座っているマーティン様がこちらを見ていた。できれば助けて欲しい。私はマーティン様に目を向けてニコリと微笑む。
副音声でこいつをどうにかしろと圧を込めて。

マーティン様が仕方ないなーという顔でこちらに寄ってこようとした時、1人の人が現れた。