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婚約破棄に向けて

やっぱりドロシーもドロシーだった。 ディーダ視点

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お嬢様の授業が終わるのを待っている間、私は待合室で待っている。この待合室は貴族院に通うご令嬢、ご子息たちのメイドや従者たちが待つところだ。待っている間は皆好きなことやっていい。
ちなみに待合室といってもさすが貴族院だ。調理場なども完備されている。

ここで待っているメイドや従者は毎回同じでほとんどが顔見知りだ。おかげで情報収集もしやすい。

「ディーダ、おはよう!」
声をかけてくるのはミーナのメイド、アリスだ。
「おはようございます。アリス。」
他にも色々な人と挨拶を交わす。今日はお嬢様から頼まれていた噂の出所を探す必要があったので、噂について話している人がいないから耳を傾けながらできる仕事を片付けていく。

待合室にきて1時間くらいした頃だろうか。噂話が聞こえてきた。
「あの方も災難よね。」
「本当よ!お嬢様もなんとかできないか話してるくらいだもの。」
「っていうか、やっぱりあの噂は自作自演よね。」
メイドが5人くらい集まって話していたので、私は声をかけることにした。

「急に話しかけて申し訳ございません。先程パトリシアお嬢様の話をされていたかと思うのですが、皆さんが話されていたお話について教えていただきたいのです。」頭を下げると、快く席を開けてくれた。

話を聞いていくと出るわ出るわ噂話。
「ちなみにその噂話って本当のことなんでしょうか?パトリシアお嬢様は全く身に覚えがないと言っているので今証拠を集めているんです。」

すると、後ろから「噂話は全部自作自演だよ。」と声が聞こえてきた。
まさかのドロシーのメイド、マーサの登場である。

「いいんですか?そのようなお話をしてしまって。」

「いいのいいの!そもそもメイドといっても、最近お付きになっただけでさ。今までのメイドはドロシー様のお眼鏡に敵わなくてすぐ解雇されているのよ。確か早くて3日持たなかったって聞いたよ。」

マーサは色々話してくれた。始めはトーマスを狙っていたわけではないらしいということだった。
ただドロシーがお茶会やパーティーに行っても他の男の人は見向いてもくれなかったそうだ。ドレスや装飾も全てピンクで、髪もピンクだから余計に近寄りがたかったのかもしれない。ドロシーはワーグナー家の3女で末っ子ということ、体が弱いということもあって、甘やかされて育っていた。
ただ、始めは甘やかしてくれていた人たちも走り回れるようになると甘やかさなくなった。わがまま言っても聞いてくれる人もいなくなっていったそうだ。
そして、ドロシーは小さい頃読んだ本の中に出てくる悲劇のヒロインになれば見向いてくれるかもと思ったらしい。まぁ簡単に言って仕舞えば夢女の完成である。

そして手始めにトーマスに近づいてみたら思うようにトーマスは引っかかってくれたそうだ。

そこからはやりたい放題。メイドはわがままを聞いてくれなければすぐやめさせる。トーマスにはパトリシアお嬢様のことを悪く伝える。噂話が嘘か本当かなんて、どうでも良くトーマスだけが信じてくれればそれでいいし、全てがうまくいくと思っているらしい。

「なるほど。マーサさん貴重なお話ありがとうございます。因みにドロシー様のご両親はこのことを?」

「知ってるけど、あの両親も両親でドロシー様を甘やかしてるからね。そしてお金にがめついからハマー侯爵家と懇意になれれば他の貴族とお近づきになれるくらいしか思ってないよ。」
言っておくがあくまでも、トーマスは三男で後継でもないのだ。次男は長男のスペアみたいな存在でもあるため外に出されることはないが…。トーマス自身は婿になるか騎士になるか、誰かの側近になるか、平民になるかしなくてはならないのだ。
そのことにこの両親、夢女が気づいているのか私は疑問に思った。
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