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帰路
オデール領改め、アルデール国。リディアーヌ視点。
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オデール領の領民たちは他国の人より長命で老いるペースもゆっくりだったりする。
50年以上は長く生きているだろうか…
そのせいか、成人したあたりからあまり見た目が変わらない…。
他国の人たちとは見た目も少し違い、雪のような白銀の髪色に耳の先端が長く尖っているという特徴があり、最近では言われなくなったものの、以前は耳長族と呼ばれていた。
そしてもう一つ…
今では領民以外の人で知っているの人は本当に極一部だが、特殊能力を使うことが出来る。
特殊能力はそれぞれ同じものが使える訳では無いし、威力も様々だ。
ちょっと物を浮かせたり、ちょっと傷を癒すことが出来たり…水や火を使えたり…。
そう言った意味でも私たちは一族は昔から色々な人達から狙われてきた…
昔は何人もの人達が攫われて戦闘奴隷にされたり、愛玩奴隷にされていたと聞く。
私達自身を悪用されないようにする為にも私たちは守るすべが必要だった。だからこそ先代たちは考え、セリエール国に属したのだろう。
それを守りきれなかったのは本当に申し訳なく思う。
「お父様。私たちはもうセリエール国から独立するのです。オデール領ではなく…アルデール国として、また1からはじめませんか。」
わたしはお父様に手を差し出しながら、笑顔を向ける。
久しぶりに笑ったけど、綺麗に笑えているだろうか…。
「あ、あぁ…そうだな!今日、この日を持って、オデール領は…アルデール国に改名し、セリエール国から独立する!!」
国王が変わってから10年余り、お父様は必死になって国のために働いてきた。
もちろん私もだけど…
国が出してくれない資金を集めるのは相当大変だっただろう…いくらこの地が他の地よりも資材が豊富でも出来ることと出来ないことがある。
お父様の言葉に邸中の人達がドッと歓声が起きた。
お母様やお兄様も泣いている。
実際、アルデール国の人達は皆、感情表現が豊かだ。笑ったり泣いたり怒ったり…
そして優しい…以前から迫害されてきたというのもあるかもしれないが、皆が皆を思いあっている。
他国の人でも困っている人がいれば助けになるし、自分が大変な状況でも、相手のことを思いやれる人達ばかり。もう少し自分のことを大切にして欲しいところではあるけれど…。
「お父様、お兄様。私達はこれからこの国の国民を自分たちの手で守っていかねばなりません。それにいくら書状を持っていると言っても、あのクズ国王がこのままという訳はないと思うのです…なので対策を練りましょう。」
「そうだな。」
「そうしよう。」
それから私達はこの国の今後に向けて、この国を他の国に周知してもらうために動き出した。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
エピナール王太子視点。
「エピナールよ!!お前はなんてことをしてくれたんだ!!!」
夜会の後、父上に呼び出されて行ってみると、部屋に入った瞬間怒鳴られた。別に俺は間違ったことをしたつもりは無いのだが…何がいけなかったんだろうか。
「なぜ、そんなに怒っていらっしゃるのですか?サッパリ分からないんですが。」
「リディアーヌの事だ。大勢の前で、しかも他国の重鎮たちのいる前で…お前は婚約破棄すると言ったらしいな!!」
確かに面前で言った方が効果があると思ったし、今まで俺の愛しいキャロットをずっと虐めてきてのだ。あのくらいの罰を与えても問題がないと思うのだが。
いや、むしろ褒めて欲しいくらいである。
「そもそもリディアーヌがいけないのです!俺がキャロットを好きだからとヤキモチを妬いてキャロットを虐める…。妃になろうと言うやつの所業では無い。だから罰を与えてやったんです!!」
「お、お、お前と言うやつは…何を言っているのか分かっているのか…?」
分かっているも何も俺は天罰を下しただけ。
そもそも前から父上にだって幾度となく婚約破棄をしたいことを伝えてきた。
しかしなかなか首を縦に振ってくれることは無かった。
だからこそ今回、公衆の面前でキャロットを虐めたことを好機だと思ったのだ。
「えぇ、勿論です。」
俺が返事をすると父上はため息をついてから、手をヒラヒラとさせて「もう下がって良い」と言ったので俺はキャロットのところに向かった。
これからはあのグチグチうるさいリディアーヌが婚約者ではなく、心から愛してやまないキャロットが婚約者になると思うと胸が躍るというもの…。
婚約者になれば今までのようにコソコソ会う必要も無くなって堂々と出かけることも出来るのだ。
「これからもずっとキャロットと一緒に居れるなんて幸せだ。今まで我慢させてしまった分、色々とわがままを聞いてやらないとな。」
部屋に戻ると、綺麗に着飾ったキャロットが俺を迎えてくれた。
「エピナール!!会いたかったわぁ…それでお父様の用事は終わったの…?私たちのこと何か言っていた?」
きっとキャロットも心配していたのだろう。
不安そうな目をするキャロットの頭を人撫でし、
「大丈夫だよ。俺達のことは認めてくれた。今日は色々あって疲れただろう?ゆっくり休もう。」
そう言って俺たちは夢の中に落ちていった…
50年以上は長く生きているだろうか…
そのせいか、成人したあたりからあまり見た目が変わらない…。
他国の人たちとは見た目も少し違い、雪のような白銀の髪色に耳の先端が長く尖っているという特徴があり、最近では言われなくなったものの、以前は耳長族と呼ばれていた。
そしてもう一つ…
今では領民以外の人で知っているの人は本当に極一部だが、特殊能力を使うことが出来る。
特殊能力はそれぞれ同じものが使える訳では無いし、威力も様々だ。
ちょっと物を浮かせたり、ちょっと傷を癒すことが出来たり…水や火を使えたり…。
そう言った意味でも私たちは一族は昔から色々な人達から狙われてきた…
昔は何人もの人達が攫われて戦闘奴隷にされたり、愛玩奴隷にされていたと聞く。
私達自身を悪用されないようにする為にも私たちは守るすべが必要だった。だからこそ先代たちは考え、セリエール国に属したのだろう。
それを守りきれなかったのは本当に申し訳なく思う。
「お父様。私たちはもうセリエール国から独立するのです。オデール領ではなく…アルデール国として、また1からはじめませんか。」
わたしはお父様に手を差し出しながら、笑顔を向ける。
久しぶりに笑ったけど、綺麗に笑えているだろうか…。
「あ、あぁ…そうだな!今日、この日を持って、オデール領は…アルデール国に改名し、セリエール国から独立する!!」
国王が変わってから10年余り、お父様は必死になって国のために働いてきた。
もちろん私もだけど…
国が出してくれない資金を集めるのは相当大変だっただろう…いくらこの地が他の地よりも資材が豊富でも出来ることと出来ないことがある。
お父様の言葉に邸中の人達がドッと歓声が起きた。
お母様やお兄様も泣いている。
実際、アルデール国の人達は皆、感情表現が豊かだ。笑ったり泣いたり怒ったり…
そして優しい…以前から迫害されてきたというのもあるかもしれないが、皆が皆を思いあっている。
他国の人でも困っている人がいれば助けになるし、自分が大変な状況でも、相手のことを思いやれる人達ばかり。もう少し自分のことを大切にして欲しいところではあるけれど…。
「お父様、お兄様。私達はこれからこの国の国民を自分たちの手で守っていかねばなりません。それにいくら書状を持っていると言っても、あのクズ国王がこのままという訳はないと思うのです…なので対策を練りましょう。」
「そうだな。」
「そうしよう。」
それから私達はこの国の今後に向けて、この国を他の国に周知してもらうために動き出した。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
エピナール王太子視点。
「エピナールよ!!お前はなんてことをしてくれたんだ!!!」
夜会の後、父上に呼び出されて行ってみると、部屋に入った瞬間怒鳴られた。別に俺は間違ったことをしたつもりは無いのだが…何がいけなかったんだろうか。
「なぜ、そんなに怒っていらっしゃるのですか?サッパリ分からないんですが。」
「リディアーヌの事だ。大勢の前で、しかも他国の重鎮たちのいる前で…お前は婚約破棄すると言ったらしいな!!」
確かに面前で言った方が効果があると思ったし、今まで俺の愛しいキャロットをずっと虐めてきてのだ。あのくらいの罰を与えても問題がないと思うのだが。
いや、むしろ褒めて欲しいくらいである。
「そもそもリディアーヌがいけないのです!俺がキャロットを好きだからとヤキモチを妬いてキャロットを虐める…。妃になろうと言うやつの所業では無い。だから罰を与えてやったんです!!」
「お、お、お前と言うやつは…何を言っているのか分かっているのか…?」
分かっているも何も俺は天罰を下しただけ。
そもそも前から父上にだって幾度となく婚約破棄をしたいことを伝えてきた。
しかしなかなか首を縦に振ってくれることは無かった。
だからこそ今回、公衆の面前でキャロットを虐めたことを好機だと思ったのだ。
「えぇ、勿論です。」
俺が返事をすると父上はため息をついてから、手をヒラヒラとさせて「もう下がって良い」と言ったので俺はキャロットのところに向かった。
これからはあのグチグチうるさいリディアーヌが婚約者ではなく、心から愛してやまないキャロットが婚約者になると思うと胸が躍るというもの…。
婚約者になれば今までのようにコソコソ会う必要も無くなって堂々と出かけることも出来るのだ。
「これからもずっとキャロットと一緒に居れるなんて幸せだ。今まで我慢させてしまった分、色々とわがままを聞いてやらないとな。」
部屋に戻ると、綺麗に着飾ったキャロットが俺を迎えてくれた。
「エピナール!!会いたかったわぁ…それでお父様の用事は終わったの…?私たちのこと何か言っていた?」
きっとキャロットも心配していたのだろう。
不安そうな目をするキャロットの頭を人撫でし、
「大丈夫だよ。俺達のことは認めてくれた。今日は色々あって疲れただろう?ゆっくり休もう。」
そう言って俺たちは夢の中に落ちていった…
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