4 / 23
婚約破棄
キャロット劇場 リディアーヌ視点
しおりを挟む
「確か、会議に参加する国は6ヶ国だったかしら。」
この周辺には小国から大国まで約15ヶ国が存在する。その中で平和協定を結んでいるのは6ヶ国だ。
隣国ルノアール国が1番の大国だろう。
ここセリエール国はこの6ヶ国の中では1番小さい国だ。
そんなセリエール国が和平協定の6ヶ国に入れたのは先代が頑張ったからというのもあるし、他の国の中継地点がセリエール国だったからが大きい。
セリエール国は少しずつだが全ての国と隣接している為、取り込んでしまった方が楽だと考えたのだろう。
言ってしまえば5ヶ国のおかげで生かされている…そんな国である。
それから私は5ヶ国について調べ、宗教的に出しては行けないものなどがないか。逆になくてはならないものは無いか…全て纏めて準備してきた。
そして夜会…。
こちらについては各国の代表だけでなく家族なども参加することになるだろう。
何も食べず、ダンスだけ踊る夜会もひとつかと思ったが、立食形式にして、軽食などを摘めるような夜会を考えた。立食で各自好きな物を食べれるようにすることが1番軋轢を産まないのではないかと考えたのも一つだ。
「あとは楽団の手配と…料理などの材料の手配…そして招待状ね…」
ひとり黙々と準備をしていれば、和平協定会議の日はすぐそこまで迫っていた…。
「ふぅ…何とか準備が間に合いそうでよかったわ。」
予算がない状態からのスタートだったので、何とかなってほっとする。国から出すのが当たり前の予算を国王陛下はビタ一文出す気もなく…
結局お父様に連絡して出してもらうことになった…
これで何度目だろうか。夜会の予算を出してくれないのは…
国王陛下に言えば
「お前が考えたのだ。全てはお前の責任。お前が出すのが当たり前だろう…」
と言われる。
これにはお父様も怒っていた。
元々この婚約はお父様も乗り気ではなかったと聞いている。何回か国王様に直談判してくれたようだけど、なかなか取り次いでくれなかったようだ。
それどころか
「婚約破棄をすればお前らは爵位剥奪で国外追放だ!」
と言われたそうだ。
別に処刑される訳じゃないなら良いだろうと思ったけれど、私たちに領民を置いて逃げるなんて選択肢はなかった…。
そして和平協定会議当日…
エピナール王太子殿下があるご令嬢を連れて夜会に現れた。
いやぁ、これはチャンスだと思ったわ…。
もしかしたら婚約破棄に持ち込めるのではないかと…
だってご令嬢を連れてきては毎回毎回飽きないのかと言うほど嫌がらせにくるんだもの。しかも私が王太子殿下と婚約しているからと言う理由だけで周りの女たちまで助長してグチグチ言ってくるし…
他国の人たちがいる中でもこの人達なら同じことを仕出かすことは容易に想像が着いた。
上手く向こうから婚約破棄を願い出てくれれば、「俺はそんなこと言っていない!」なんてことにはならないだろう。
無事に夜会が始まった事にほっとしながら、1人壁際で今後の動きをどうしようか考えていると、いつも通り雌兎のキャロットが私の前に現れた。
私との距離は5メートル弱という所だろうか…ドレスの裾でも踏んだのか分からないが急に転ぶ。
と言うかドレスの裾を踏むって…仮にも伯爵令嬢がそれでいいのだろうか。
そして勢いよく持っていたグラスを自分のドレスにぶち撒けた。
「リディアーヌ様!酷いですぅ…グスッ…なんでこんなことするんですかぁぁぁ!!」
えっ?私?そもそもこの距離で私が何をするのだろうか。足を引っ掛けるにしても相当な距離がある。しかもグラスの中身…転んだ時って大体外側に中身が飛び散るものだろう。
むしろ自分にかけるって相当器用ですね。
私が無言でいるのが面白くなかったのかさらに大きな声で泣き出す雌兎キャロット。
昔から何度聞いてきたか分からないけど、本当にうるさい鳴き声だ。
「折角買って貰った私の大事なドレスなのにぃぃぃぃ…グスッグスッ…うわあああああん」
キャロットが泣いていると続々と人が集まってくる。今年は和平協定会議を自国で行っているということもあり、自国の貴族が多く参加している。
キャロットはチラリと目を動かし人が集まってきたのを確認すると周りから見えないようにニヤリと笑った。
そう。キャロット劇場の開幕である。
---「またあの子なの?本当に何度目かしら…いつもあの子ばかり虐めて…」
---「顔も変わらず何考えているか全然分からないのよね。本当不気味だわ。だから仮面令嬢なんて呼ばれるのよ…クスクス」
---「ほら…そろそろ来るわよ。王子様が…婚約者なのに見向きもされないなんて滑稽ね…クスクス」
周りにいる令嬢達が私の事を悪く言い出すと、タイミングを見計らったようにエピナール王太子殿下が現れた。
そして私があたかもドレスにジュースをかけたと言い始めるキャロット。
距離的に無理なのは一目瞭然だろうにそれを信じるエピナール王太子殿下。
さらに私が普段からキャロットを虐めているという
…。
ここまでがいつもの嫌がらせだが…今日も同じだろうか。
本当に代り映えのない物語だ…もう少しシナリオをきちんと考えて欲しい。
と思っていた矢先、まさかエピナール王太子殿下から自滅してくれるとは思ってもいなかった。
この周辺には小国から大国まで約15ヶ国が存在する。その中で平和協定を結んでいるのは6ヶ国だ。
隣国ルノアール国が1番の大国だろう。
ここセリエール国はこの6ヶ国の中では1番小さい国だ。
そんなセリエール国が和平協定の6ヶ国に入れたのは先代が頑張ったからというのもあるし、他の国の中継地点がセリエール国だったからが大きい。
セリエール国は少しずつだが全ての国と隣接している為、取り込んでしまった方が楽だと考えたのだろう。
言ってしまえば5ヶ国のおかげで生かされている…そんな国である。
それから私は5ヶ国について調べ、宗教的に出しては行けないものなどがないか。逆になくてはならないものは無いか…全て纏めて準備してきた。
そして夜会…。
こちらについては各国の代表だけでなく家族なども参加することになるだろう。
何も食べず、ダンスだけ踊る夜会もひとつかと思ったが、立食形式にして、軽食などを摘めるような夜会を考えた。立食で各自好きな物を食べれるようにすることが1番軋轢を産まないのではないかと考えたのも一つだ。
「あとは楽団の手配と…料理などの材料の手配…そして招待状ね…」
ひとり黙々と準備をしていれば、和平協定会議の日はすぐそこまで迫っていた…。
「ふぅ…何とか準備が間に合いそうでよかったわ。」
予算がない状態からのスタートだったので、何とかなってほっとする。国から出すのが当たり前の予算を国王陛下はビタ一文出す気もなく…
結局お父様に連絡して出してもらうことになった…
これで何度目だろうか。夜会の予算を出してくれないのは…
国王陛下に言えば
「お前が考えたのだ。全てはお前の責任。お前が出すのが当たり前だろう…」
と言われる。
これにはお父様も怒っていた。
元々この婚約はお父様も乗り気ではなかったと聞いている。何回か国王様に直談判してくれたようだけど、なかなか取り次いでくれなかったようだ。
それどころか
「婚約破棄をすればお前らは爵位剥奪で国外追放だ!」
と言われたそうだ。
別に処刑される訳じゃないなら良いだろうと思ったけれど、私たちに領民を置いて逃げるなんて選択肢はなかった…。
そして和平協定会議当日…
エピナール王太子殿下があるご令嬢を連れて夜会に現れた。
いやぁ、これはチャンスだと思ったわ…。
もしかしたら婚約破棄に持ち込めるのではないかと…
だってご令嬢を連れてきては毎回毎回飽きないのかと言うほど嫌がらせにくるんだもの。しかも私が王太子殿下と婚約しているからと言う理由だけで周りの女たちまで助長してグチグチ言ってくるし…
他国の人たちがいる中でもこの人達なら同じことを仕出かすことは容易に想像が着いた。
上手く向こうから婚約破棄を願い出てくれれば、「俺はそんなこと言っていない!」なんてことにはならないだろう。
無事に夜会が始まった事にほっとしながら、1人壁際で今後の動きをどうしようか考えていると、いつも通り雌兎のキャロットが私の前に現れた。
私との距離は5メートル弱という所だろうか…ドレスの裾でも踏んだのか分からないが急に転ぶ。
と言うかドレスの裾を踏むって…仮にも伯爵令嬢がそれでいいのだろうか。
そして勢いよく持っていたグラスを自分のドレスにぶち撒けた。
「リディアーヌ様!酷いですぅ…グスッ…なんでこんなことするんですかぁぁぁ!!」
えっ?私?そもそもこの距離で私が何をするのだろうか。足を引っ掛けるにしても相当な距離がある。しかもグラスの中身…転んだ時って大体外側に中身が飛び散るものだろう。
むしろ自分にかけるって相当器用ですね。
私が無言でいるのが面白くなかったのかさらに大きな声で泣き出す雌兎キャロット。
昔から何度聞いてきたか分からないけど、本当にうるさい鳴き声だ。
「折角買って貰った私の大事なドレスなのにぃぃぃぃ…グスッグスッ…うわあああああん」
キャロットが泣いていると続々と人が集まってくる。今年は和平協定会議を自国で行っているということもあり、自国の貴族が多く参加している。
キャロットはチラリと目を動かし人が集まってきたのを確認すると周りから見えないようにニヤリと笑った。
そう。キャロット劇場の開幕である。
---「またあの子なの?本当に何度目かしら…いつもあの子ばかり虐めて…」
---「顔も変わらず何考えているか全然分からないのよね。本当不気味だわ。だから仮面令嬢なんて呼ばれるのよ…クスクス」
---「ほら…そろそろ来るわよ。王子様が…婚約者なのに見向きもされないなんて滑稽ね…クスクス」
周りにいる令嬢達が私の事を悪く言い出すと、タイミングを見計らったようにエピナール王太子殿下が現れた。
そして私があたかもドレスにジュースをかけたと言い始めるキャロット。
距離的に無理なのは一目瞭然だろうにそれを信じるエピナール王太子殿下。
さらに私が普段からキャロットを虐めているという
…。
ここまでがいつもの嫌がらせだが…今日も同じだろうか。
本当に代り映えのない物語だ…もう少しシナリオをきちんと考えて欲しい。
と思っていた矢先、まさかエピナール王太子殿下から自滅してくれるとは思ってもいなかった。
139
あなたにおすすめの小説
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
冴えない子爵令嬢の私にドレスですか⁉︎〜男爵様がつくってくれるドレスで隠されていた魅力が引きだされる
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のラーナ・プレスコットは地味で冴えない見た目をしているため、華やかな見た目をした
義妹から見下され、両親からも残念な娘だと傷つく言葉を言われる毎日。
そんなある日、義妹にうつけと評判の男爵との見合い話が舞い込む。
奇行も目立つとうわさのうつけ男爵なんかに嫁ぎたくない義妹のとっさの思いつきで押し付けられたラーナはうつけ男爵のイメージに恐怖を抱きながらうつけ男爵のところへ。
そんなうつけ男爵テオル・グランドールはラーナと対面するといきなり彼女のボディサイズを調べはじめて服まで脱がそうとする。
うわさに違わぬうつけぷりにラーナは赤面する。
しかしテオルはラーナのために得意の服飾づくりでドレスをつくろうとしていただけだった。
テオルは義妹との格差で卑屈になっているラーナにメイクを施して秘められていた彼女の魅力を引きだす。
ラーナもテオルがつくる服で着飾るうちに周りが目を惹くほどの華やかな女性へと変化してゆく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる