氷の貴公子は隣国の仮面令嬢に恋をする。

ゆずこしょう

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婚約破棄

キャロット劇場 リディアーヌ視点

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「確か、会議に参加する国は6ヶ国だったかしら。」

この周辺には小国から大国まで約15ヶ国が存在する。その中で平和協定を結んでいるのは6ヶ国だ。

隣国ルノアール国が1番の大国だろう。
ここセリエール国はこの6ヶ国の中では1番小さい国だ。
そんなセリエール国が和平協定の6ヶ国に入れたのは先代が頑張ったからというのもあるし、他の国の中継地点がセリエール国だったからが大きい。

セリエール国は少しずつだが全ての国と隣接している為、取り込んでしまった方が楽だと考えたのだろう。

言ってしまえば5ヶ国のおかげで生かされている…そんな国である。


それから私は5ヶ国について調べ、宗教的に出しては行けないものなどがないか。逆になくてはならないものは無いか…全て纏めて準備してきた。

そして夜会…。

こちらについては各国の代表だけでなく家族なども参加することになるだろう。


何も食べず、ダンスだけ踊る夜会もひとつかと思ったが、立食形式にして、軽食などを摘めるような夜会を考えた。立食で各自好きな物を食べれるようにすることが1番軋轢を産まないのではないかと考えたのも一つだ。


「あとは楽団の手配と…料理などの材料の手配…そして招待状ね…」


ひとり黙々と準備をしていれば、和平協定会議の日はすぐそこまで迫っていた…。


「ふぅ…何とか準備が間に合いそうでよかったわ。」


予算がない状態からのスタートだったので、何とかなってほっとする。国から出すのが当たり前の予算を国王陛下はビタ一文出す気もなく…

結局お父様に連絡して出してもらうことになった…


これで何度目だろうか。夜会の予算を出してくれないのは…

国王陛下に言えば

「お前が考えたのだ。全てはお前の責任。お前が出すのが当たり前だろう…」

と言われる。

これにはお父様も怒っていた。
 

元々この婚約はお父様も乗り気ではなかったと聞いている。何回か国王様に直談判してくれたようだけど、なかなか取り次いでくれなかったようだ。

それどころか

「婚約破棄をすればお前らは爵位剥奪で国外追放だ!」

と言われたそうだ。


別に処刑される訳じゃないなら良いだろうと思ったけれど、私たちに領民を置いて逃げるなんて選択肢はなかった…。


そして和平協定会議当日…


エピナール王太子殿下があるご令嬢を連れて夜会に現れた。


いやぁ、これはチャンスだと思ったわ…。
もしかしたら婚約破棄に持ち込めるのではないかと…

だってご令嬢を連れてきては毎回毎回飽きないのかと言うほど嫌がらせにくるんだもの。しかも私が王太子殿下と婚約しているからと言う理由だけで周りの女たちまで助長してグチグチ言ってくるし…


他国の人たちがいる中でもこの人達なら同じことを仕出かすことは容易に想像が着いた。


上手く向こうから婚約破棄を願い出てくれれば、「俺はそんなこと言っていない!」なんてことにはならないだろう。


無事に夜会が始まった事にほっとしながら、1人壁際で今後の動きをどうしようか考えていると、いつも通り雌兎のキャロットが私の前に現れた。

私との距離は5メートル弱という所だろうか…ドレスの裾でも踏んだのか分からないが急に転ぶ。
と言うかドレスの裾を踏むって…仮にも伯爵令嬢がそれでいいのだろうか。

そして勢いよく持っていたグラスを自分のドレスにぶち撒けた。



「リディアーヌ様!酷いですぅ…グスッ…なんでこんなことするんですかぁぁぁ!!」


えっ?私?そもそもこの距離で私が何をするのだろうか。足を引っ掛けるにしても相当な距離がある。しかもグラスの中身…転んだ時って大体外側に中身が飛び散るものだろう。

むしろ自分にかけるって相当器用ですね。

私が無言でいるのが面白くなかったのかさらに大きな声で泣き出す雌兎キャロット。

昔から何度聞いてきたか分からないけど、本当にうるさい鳴き声だ。

「折角買って貰った私の大事なドレスなのにぃぃぃぃ…グスッグスッ…うわあああああん」


キャロットが泣いていると続々と人が集まってくる。今年は和平協定会議を自国で行っているということもあり、自国の貴族が多く参加している。

キャロットはチラリと目を動かし人が集まってきたのを確認すると周りから見えないようにニヤリと笑った。


そう。キャロット劇場の開幕である。


---「またあの子なの?本当に何度目かしら…いつもあの子ばかり虐めて…」


---「顔も変わらず何考えているか全然分からないのよね。本当不気味だわ。だから仮面令嬢なんて呼ばれるのよ…クスクス」


---「ほら…そろそろ来るわよ。王子様が…婚約者なのに見向きもされないなんて滑稽ね…クスクス」

周りにいる令嬢達が私の事を悪く言い出すと、タイミングを見計らったようにエピナール王太子殿下が現れた。


そして私があたかもドレスにジュースをかけたと言い始めるキャロット。

距離的に無理なのは一目瞭然だろうにそれを信じるエピナール王太子殿下。

さらに私が普段からキャロットを虐めているという
…。


ここまでがいつもの嫌がらせだが…今日も同じだろうか。


本当に代り映えのない物語だ…もう少しシナリオをきちんと考えて欲しい。

と思っていた矢先、まさかエピナール王太子殿下から自滅してくれるとは思ってもいなかった。
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