今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう

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今。

馬車の中で。

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お兄様と夕食を一緒に食べた翌日。
私は荷物をまとめて駅に向かおうとしていた。
駅まではお兄様が送ってくださるようだ。

ドレスは向こうにも置いてあるし、荷物は最低限のものだけ持って帰る。
今日は白のワンピースで袖部分はレース生地になっているロングワンピースだ。

「ラルダ。忘れ物はないかしら。」

「はい、大丈夫かと思います。」

再度部屋を見渡し、忘れ物がないのを確認してから部屋を出た。

「リア、おはよう。」

「お兄様、おはようございます。」

お兄様に挨拶をして早速馬車に移動する。
王都の駅は少し王都の端の方にある。ここから馬車で1時間くらいだろうか。家からだと正反対に位置するので少し距離があるのだ。


お兄様が馬車の扉を開けてくれたのでお兄様の手を取って1段ずつ階段を登った。

馬車の中に入ると、「ガチャガチャ」という音と同時に扉がしまった。

「お、お兄様!?扉がしまってしまったのですが……」

「あぁ、何故か外からもあかないようだ。とりあえず時間も時間だから、先に向かってくれ。俺はあとから追いかけるから。」

なにか挟まっているのだろうか…全く開かないのでここは諦めて駅に向かうことに同意した。
「分かりました。扉が開きそうにありませんので…お兄様もお気をつけください。」

「ありがとう。」
お兄様が馬車から遠ざかっていく音が聞こえると同時に馬車が少しづつ動きだした。

「リア。まっていたよ。さぁゆっくり話をしよう。」

「へっ!?」

馬車に乗ってしばらくすると聞いたことのある声が馬車の中から聞こえる。

「ティ…ォ…様ですか?」

「あぁ。そうだ。」
ティオ様がまさか乗っているとは全然気づかなかった…
何か話さないといけないことがあっただろうか。事業の話は先日話しているし、商会も今のところ上手く行っている。

「もしかして、お兄様のことでしょうか?でしたら本人と直接話した方がいいかと…」
態々私を介して話す必要は無いと思うのだけど。それとも本人に言いにくいことなのだろうか…

「エドに話がある訳じゃない。話があるのはリアにだ。」

少し暗い馬車の中で、ティオ様の瞳がこちらを見すえている。

「急に改まって、何かございましたか?」


「リア…私はリアのことが好きなんだ。」

すき…?
好きというのはお兄様の妹だからだろうか?


「ありがとうございます!私もティオ様の事好きですよ?」

ティオ様のことはお兄様のように思っているし、10年来の付き合いだ。嫌いだったら交流したりしないだろう。

自分の気持ちを素直に伝えると、大きく息を吸い込んでから話し出した。

「リアは勘違いしている。私は、リアのことが女性として好きなんだ…」

「へ?」

女性として好き…
でもティオ様はお兄様のことを好きなのでは…
少し頭が混乱してきた。


「ティオ様はお兄様のことを好きだったのでは…?」

「まぁ、友人としては好きだけどね。15年以上の付き合いだし、親友だと思っているよ。でもそれ以上の気持ちはないかな。」

と、いうことは10年前から私はずっと勘違いしていたということだ…
てっきり2人は恋仲なのかと思っていた。

「どうせエドか話していないだろうから話すと、エドは今この国の宰相だからね。同じ王宮にいてもずっと一緒にいる訳では無い。」

お兄様が宰相…?なんだか、知らない情報が沢山出てくる。
とりあえず分かったのはお兄様が鬼い様を活かすために宰相をしているということはなんとなく想像が着く。

「鬼い様に宰相はピッタリですね。」
違うことを考えていると、話が戻された。

「鬼い様か。エドが聞いたらショックを受けそうだな。それで先程の話に戻るけどね…」
上手く話をそらせたと思っていたけど、そらせていなかったらしく、ティオ様はそのまま話を続けた。

「ティオ様の話はわかりました。お気持ちは嬉しいです。ただ…」
婚約破棄したばかりで、恋愛をした事がない私にはすぐに返事を伝えることができないこと。今まで兄のように思ってきたので急なことで混乱していることを正直に伝えた。

「ではこうしないか?これから1年間、試しに私と付き合って欲しい。勿論、途中で無理となればその時は言ってくれて構わない。お互いこの歳で恋愛初心者だ…。まずは恋愛を知るところから初めよう。そして1年後、答えを聞かせてくれないだろうか。」

私にいい条件ばかりだけれどいいのだろうか…。

「リアは重く考えなくていいよ。私もリアとデートしたりできるのは嬉しいんだ。だから気軽に考えて。」

私は少し考えてからティオ様に「よろしくお願いします」と伝えた。



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