27 / 29
今。
ティオとエド
しおりを挟む
「そういえば、確か明日帰ると言っていたな…」
窓の外を眺めながらウイスキーを飲む。
今日は月がきれいだ。
業務を終えると同時にさっさと帰ってきたところを見るとリアと夕食の約束をしていたのだろう。
先日リアに気持ちを伝えたつもりが、まさかの不発に終わってしまうとは思ってもいなかった。
あの後、兄上と義姉上に根掘り葉掘り聞かれたが、私としては何故気持ちが伝わらなかったのか不思議でならない…
「ティオ…あなたリアちゃんになんて言ったのよ。」
「この先も一緒に花を見ないか…と伝えました。」
私の中で考えて考えて考えた結果のプロポーズの言葉だったが、ダメだっただろうか…
「そ、それはリアちゃんには通じないわよ!!」
背中をバシバシ叩く義姉上…
王妃だと言うのに全く王妃らしくない粗雑さだ。こう言った所が、好かれる要因なんだろうが…。
「痛いです。義姉上。いい加減にしてください。」
「あら、ごめんなさい。」と言いながら話を続ける義姉上。
「そもそもね、リアちゃんは今まで婚約者はいたけれど、その婚約者とは全く恋愛してきていないのよ!恋愛初心者なの。」
確かに、婚約者が居たから大丈夫だと思っていたが、言われてみれば婚約者の顔も知らなかったような子だ。手すら繋いだことがないはずだ。
「そうだな。セルシィの言う通りだ。恐らくお前のこともエドの友人か、いいとこ兄のような存在…くらいの認定だろう。」
「あ、兄のようなもの…」
たしかに今までもあまりエドと対応が変わらないような気がしていたが…。
「そんな子に「この先も一緒に花を見ないか…?」って言ったところで裏の意味に気づくわけが無いわぁ!!」
兄上と義姉上がズタズタに心の中を踏み歩いてく。一通り笑ってスッキリしたのか、義姉上が真剣な顔で話し出す。
「いいこと?まずは兄から男に昇格するところからがんばりなさい。それがうまく行かなければ、結婚は夢のまた夢よ。」
「折角、可愛い妹ができそうなんだ。頑張りなさい。」
好きなことを話すだ話して去っていく2人。
今思い出しても腹が立つ。
「はぁ。まずは兄から男に昇格か…簡単なようで難しそうだな…。」
リアのことを考えていると、扉の外から声が聞こえる。
「ティオドール王弟殿下。エドベルト様がお見えになりました。」
先程家に帰ったはずだが、なにか忘れ物だろうか…。
「どうした、こんな時間に…忘れ物か?」
「夜遅くにすまないな。早めに伝えておいた方がいいと思ってな。」
エドがソファに座ったのを見てを私もエドの前に座る。
「実は…な…」
すごく深刻なはなしなのだろうだろうか。
「なんだ?改まって…」
「すごく言いにくいんだが…リアが勘違いしているんだ。」
勘違いとはなんのことだろうか。そもそもそんな勘違いするような事言っていない筈だが…
「勘違いするような事は言ってないと思うんだが」
「決してティオのせいでは無い。ただ育て方を間違えたようだ…」
そう言ってエドが話し始めた私が思っていた内容と全く違うものだった。
「何故だか、俺とティオがその…恋仲だと思っているようなんだ!」
「は?」
エドの顔を見る限り嘘では無いのだろう。
今日の夕食で、私のことをどう思っているか聞いてみたら、兄のように思っていると話したらしい。さらに私とエドがそういう関係だと思っていたそうだ。
「何度か、訂正したんだがな…全然信じてくれなくてな。ティオならリアに任せられると思っていたんだが…」
ウイスキーを飲みながらため息をつくエドをみていると相当困っているようだった。
「お前のことだ。その話をする為だけに来たんじゃないだろう?」
普段なら、1度家に帰ってまた出てくるようなやつじゃないことくらい分かっている。ましてや、今はリアが家にいるのだ。シスコンのエドがリアを置いてくるわけが無い。
「あぁ。明日リアが帰るんだ。だからその前にお前にはきちんとリアに気持ちを伝えてほしい。」
顔色ひとつ変えずにすごい事を言ってのけるエドをみて、私は思わず頭を抱えた。
「お、おま、なに言っているのか分かってるのか?」
「わかっている。でもそうでもしないとリアはずっと勘違いしたままになる。それだけは避けたいし、リアには幸せになって貰いたい。リアのことをティオに任せたいと思っている。」
頭を下げて頼むと一言言うエドをみて、私は分かったと返していた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
エドベルト視点。
リアと夕食を食べたあと、俺は急いで王宮に戻った。
このまま行くとリアは勘違いしたまま領地に戻ることになりそうだからだ。
1度領地に戻ると全然出てこようとしないリアを流石にこのままにしておく訳には行かない。
それに25歳と年はある程度いっていても、奥さんに先立たれた人や、結婚できていない人達などから縁談が持ち込まれる可能性だってあるのだ。リアが汽車や電話の事業に関わっていることを知らない貴族の方が少ない。商会を立ち上げていることを知っている人もいるはずだ。そんなぽっと出のやつに渡すくらいなら、ティオに幸せにしてあげて欲しいと思っている。
俺は王宮に戻り、ティオへ今の気持ちを伝えた。
窓の外を眺めながらウイスキーを飲む。
今日は月がきれいだ。
業務を終えると同時にさっさと帰ってきたところを見るとリアと夕食の約束をしていたのだろう。
先日リアに気持ちを伝えたつもりが、まさかの不発に終わってしまうとは思ってもいなかった。
あの後、兄上と義姉上に根掘り葉掘り聞かれたが、私としては何故気持ちが伝わらなかったのか不思議でならない…
「ティオ…あなたリアちゃんになんて言ったのよ。」
「この先も一緒に花を見ないか…と伝えました。」
私の中で考えて考えて考えた結果のプロポーズの言葉だったが、ダメだっただろうか…
「そ、それはリアちゃんには通じないわよ!!」
背中をバシバシ叩く義姉上…
王妃だと言うのに全く王妃らしくない粗雑さだ。こう言った所が、好かれる要因なんだろうが…。
「痛いです。義姉上。いい加減にしてください。」
「あら、ごめんなさい。」と言いながら話を続ける義姉上。
「そもそもね、リアちゃんは今まで婚約者はいたけれど、その婚約者とは全く恋愛してきていないのよ!恋愛初心者なの。」
確かに、婚約者が居たから大丈夫だと思っていたが、言われてみれば婚約者の顔も知らなかったような子だ。手すら繋いだことがないはずだ。
「そうだな。セルシィの言う通りだ。恐らくお前のこともエドの友人か、いいとこ兄のような存在…くらいの認定だろう。」
「あ、兄のようなもの…」
たしかに今までもあまりエドと対応が変わらないような気がしていたが…。
「そんな子に「この先も一緒に花を見ないか…?」って言ったところで裏の意味に気づくわけが無いわぁ!!」
兄上と義姉上がズタズタに心の中を踏み歩いてく。一通り笑ってスッキリしたのか、義姉上が真剣な顔で話し出す。
「いいこと?まずは兄から男に昇格するところからがんばりなさい。それがうまく行かなければ、結婚は夢のまた夢よ。」
「折角、可愛い妹ができそうなんだ。頑張りなさい。」
好きなことを話すだ話して去っていく2人。
今思い出しても腹が立つ。
「はぁ。まずは兄から男に昇格か…簡単なようで難しそうだな…。」
リアのことを考えていると、扉の外から声が聞こえる。
「ティオドール王弟殿下。エドベルト様がお見えになりました。」
先程家に帰ったはずだが、なにか忘れ物だろうか…。
「どうした、こんな時間に…忘れ物か?」
「夜遅くにすまないな。早めに伝えておいた方がいいと思ってな。」
エドがソファに座ったのを見てを私もエドの前に座る。
「実は…な…」
すごく深刻なはなしなのだろうだろうか。
「なんだ?改まって…」
「すごく言いにくいんだが…リアが勘違いしているんだ。」
勘違いとはなんのことだろうか。そもそもそんな勘違いするような事言っていない筈だが…
「勘違いするような事は言ってないと思うんだが」
「決してティオのせいでは無い。ただ育て方を間違えたようだ…」
そう言ってエドが話し始めた私が思っていた内容と全く違うものだった。
「何故だか、俺とティオがその…恋仲だと思っているようなんだ!」
「は?」
エドの顔を見る限り嘘では無いのだろう。
今日の夕食で、私のことをどう思っているか聞いてみたら、兄のように思っていると話したらしい。さらに私とエドがそういう関係だと思っていたそうだ。
「何度か、訂正したんだがな…全然信じてくれなくてな。ティオならリアに任せられると思っていたんだが…」
ウイスキーを飲みながらため息をつくエドをみていると相当困っているようだった。
「お前のことだ。その話をする為だけに来たんじゃないだろう?」
普段なら、1度家に帰ってまた出てくるようなやつじゃないことくらい分かっている。ましてや、今はリアが家にいるのだ。シスコンのエドがリアを置いてくるわけが無い。
「あぁ。明日リアが帰るんだ。だからその前にお前にはきちんとリアに気持ちを伝えてほしい。」
顔色ひとつ変えずにすごい事を言ってのけるエドをみて、私は思わず頭を抱えた。
「お、おま、なに言っているのか分かってるのか?」
「わかっている。でもそうでもしないとリアはずっと勘違いしたままになる。それだけは避けたいし、リアには幸せになって貰いたい。リアのことをティオに任せたいと思っている。」
頭を下げて頼むと一言言うエドをみて、私は分かったと返していた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
エドベルト視点。
リアと夕食を食べたあと、俺は急いで王宮に戻った。
このまま行くとリアは勘違いしたまま領地に戻ることになりそうだからだ。
1度領地に戻ると全然出てこようとしないリアを流石にこのままにしておく訳には行かない。
それに25歳と年はある程度いっていても、奥さんに先立たれた人や、結婚できていない人達などから縁談が持ち込まれる可能性だってあるのだ。リアが汽車や電話の事業に関わっていることを知らない貴族の方が少ない。商会を立ち上げていることを知っている人もいるはずだ。そんなぽっと出のやつに渡すくらいなら、ティオに幸せにしてあげて欲しいと思っている。
俺は王宮に戻り、ティオへ今の気持ちを伝えた。
1,050
お気に入りに追加
2,115
あなたにおすすめの小説


家が没落した時私を見放した幼馴染が今更すり寄ってきた
今川幸乃
恋愛
名門貴族ターナー公爵家のベティには、アレクという幼馴染がいた。
二人は互いに「将来結婚したい」と言うほどの仲良しだったが、ある時ターナー家は陰謀により潰されてしまう。
ベティはアレクに助けを求めたが「罪人とは仲良く出来ない」とあしらわれてしまった。
その後大貴族スコット家の養女になったベティはようやく幸せな暮らしを手に入れた。
が、彼女の前に再びアレクが現れる。
どうやらアレクには困りごとがあるらしかったが…

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?
なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」
顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される
大きな傷跡は残るだろう
キズモノのとなった私はもう要らないようだ
そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ
そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった
このキズの謎を知ったとき
アルベルト王子は永遠に後悔する事となる
永遠の後悔と
永遠の愛が生まれた日の物語

悪いのは全て妹なのに、婚約者は私を捨てるようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢シンディの妹デーリカは、様々な人に迷惑をかけていた。
デーリカはシンディが迷惑をかけていると言い出して、婚約者のオリドスはデーリカの発言を信じてしまう。
オリドスはシンディとの婚約を破棄して、デーリカと婚約したいようだ。
婚約破棄を言い渡されたシンディは、家を捨てようとしていた。

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから
毛蟹葵葉
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。
ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。
彼女は別れろ。と、一方的に迫り。
最後には暴言を吐いた。
「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」
洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。
「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」
彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。
ちゃんと、別れ話をしようと。
ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

皆さん、覚悟してくださいね?
柚木ゆず
恋愛
わたしをイジメて、泣く姿を愉しんでいた皆さんへ。
さきほど偶然前世の記憶が蘇り、何もできずに怯えているわたしは居なくなったんですよ。
……覚悟してね? これから『あたし』がたっぷり、お礼をさせてもらうから。
※体調不良の影響でお返事ができないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じております。

【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。
まりぃべる
恋愛
私は公爵令嬢。
この国の高位貴族であるのだから身分に相応しい振る舞いをしないとね。
ちゃんと立場を理解できていない人には、私が教えて差し上げませんと。
え?口うるさい?婚約破棄!?
そうですか…では私は修道院に行って皆様から離れますからどうぞお幸せに。
☆
あくまでもまりぃべるの世界観です。王道のお話がお好みの方は、合わないかと思われますので、そこのところ理解いただき読んでいただけると幸いです。
☆★
全21話です。
出来上がってますので随時更新していきます。
途中、区切れず長い話もあってすみません。
読んで下さるとうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる