今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう

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今。

ティオとエド

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「そういえば、確か明日帰ると言っていたな…」

窓の外を眺めながらウイスキーを飲む。
今日は月がきれいだ。
業務を終えると同時にさっさと帰ってきたところを見るとリアと夕食の約束をしていたのだろう。

先日リアに気持ちを伝えたつもりが、まさかの不発に終わってしまうとは思ってもいなかった。

あの後、兄上と義姉上に根掘り葉掘り聞かれたが、私としては何故気持ちが伝わらなかったのか不思議でならない…

「ティオ…あなたリアちゃんになんて言ったのよ。」

「この先も一緒に花を見ないか…と伝えました。」

私の中で考えて考えて考えた結果のプロポーズの言葉だったが、ダメだっただろうか…

「そ、それはリアちゃんには通じないわよ!!」

背中をバシバシ叩く義姉上…
王妃だと言うのに全く王妃らしくない粗雑さだ。こう言った所が、好かれる要因なんだろうが…。

「痛いです。義姉上。いい加減にしてください。」

「あら、ごめんなさい。」と言いながら話を続ける義姉上。

「そもそもね、リアちゃんは今まで婚約者はいたけれど、その婚約者とは全く恋愛してきていないのよ!恋愛初心者なの。」

確かに、婚約者が居たから大丈夫だと思っていたが、言われてみれば婚約者の顔も知らなかったような子だ。手すら繋いだことがないはずだ。

「そうだな。セルシィの言う通りだ。恐らくお前のこともエドの友人か、いいとこ兄のような存在…くらいの認定だろう。」

「あ、兄のようなもの…」
たしかに今までもあまりエドと対応が変わらないような気がしていたが…。


「そんな子に「この先も一緒に花を見ないか…?」って言ったところで裏の意味に気づくわけが無いわぁ!!」



兄上と義姉上がズタズタに心の中を踏み歩いてく。一通り笑ってスッキリしたのか、義姉上が真剣な顔で話し出す。

「いいこと?まずは兄から男に昇格するところからがんばりなさい。それがうまく行かなければ、結婚は夢のまた夢よ。」

「折角、可愛い妹ができそうなんだ。頑張りなさい。」

好きなことを話すだ話して去っていく2人。
今思い出しても腹が立つ。


「はぁ。まずは兄から男に昇格か…簡単なようで難しそうだな…。」


リアのことを考えていると、扉の外から声が聞こえる。
「ティオドール王弟殿下。エドベルト様がお見えになりました。」

先程家に帰ったはずだが、なにか忘れ物だろうか…。

「どうした、こんな時間に…忘れ物か?」

「夜遅くにすまないな。早めに伝えておいた方がいいと思ってな。」
エドがソファに座ったのを見てを私もエドの前に座る。

「実は…な…」
すごく深刻なはなしなのだろうだろうか。

「なんだ?改まって…」

「すごく言いにくいんだが…リアが勘違いしているんだ。」

勘違いとはなんのことだろうか。そもそもそんな勘違いするような事言っていない筈だが…


「勘違いするような事は言ってないと思うんだが」


「決してティオのせいでは無い。ただ育て方を間違えたようだ…」
そう言ってエドが話し始めた私が思っていた内容と全く違うものだった。

「何故だか、俺とティオがその…恋仲だと思っているようなんだ!」


「は?」


エドの顔を見る限り嘘では無いのだろう。
今日の夕食で、私のことをどう思っているか聞いてみたら、兄のように思っていると話したらしい。さらに私とエドがそういう関係だと思っていたそうだ。

「何度か、訂正したんだがな…全然信じてくれなくてな。ティオならリアに任せられると思っていたんだが…」
ウイスキーを飲みながらため息をつくエドをみていると相当困っているようだった。

「お前のことだ。その話をする為だけに来たんじゃないだろう?」

普段なら、1度家に帰ってまた出てくるようなやつじゃないことくらい分かっている。ましてや、今はリアが家にいるのだ。シスコンのエドがリアを置いてくるわけが無い。

「あぁ。明日リアが帰るんだ。だからその前にお前にはきちんとリアに気持ちを伝えてほしい。」

顔色ひとつ変えずにすごい事を言ってのけるエドをみて、私は思わず頭を抱えた。

「お、おま、なに言っているのか分かってるのか?」

「わかっている。でもそうでもしないとリアはずっと勘違いしたままになる。それだけは避けたいし、リアには幸せになって貰いたい。リアのことをティオに任せたいと思っている。」

頭を下げて頼むと一言言うエドをみて、私は分かったと返していた。


⟡.·*.··············································⟡.·*.

エドベルト視点。

リアと夕食を食べたあと、俺は急いで王宮に戻った。
このまま行くとリアは勘違いしたまま領地に戻ることになりそうだからだ。

1度領地に戻ると全然出てこようとしないリアを流石にこのままにしておく訳には行かない。

それに25歳と年はある程度いっていても、奥さんに先立たれた人や、結婚できていない人達などから縁談が持ち込まれる可能性だってあるのだ。リアが汽車や電話の事業に関わっていることを知らない貴族の方が少ない。商会を立ち上げていることを知っている人もいるはずだ。そんなぽっと出のやつに渡すくらいなら、ティオに幸せにしてあげて欲しいと思っている。


俺は王宮に戻り、ティオへ今の気持ちを伝えた。




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