今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう

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今。

婚約破棄後、国王様に呼び出されました。

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婚約破棄が成立してから数日後。私はお兄様と一緒に登城していた。

婚約破棄の後聞いた話だが、今回の立会人はオズワルド国王陛下が買って出てくれたそうだ。
お兄様に理由を聞いても「いつかわかる」としか答えてくれないのできっといつか分かることなのだろう。

王宮に登城するのは1年に1回の夜会の日のみだったからすごく久しぶりだ。
国全体の一大事業については電話で話すことがほとんどで予算のやり取りなどはすべてティオ様とナル様が行ってくれている。
おかげで領地をでなくて済むのでとても助かる。

「お兄様、今日の登城については何か話を聞いていたりするのですか?」

「いや。ただ陛下と王妃様がリアと話したいとだけ聞いている。何度も言っているが…今日の登城はティオに内緒だからな。」


やたらとティオ様に内緒だと言ってくるのは何か意味があるのだろうか。昨日から何回も聞いているから耳にタコだ。

「わかってます。そんな子供ではないんですから言いませんよ。」


王命で登城するときは大体謁見の間に通されることが多いが今回は違うようだ。
皆がお兄様に頭を下げているところを見るとお兄様がそれなりの地位についていることがわかる。


陛下の従者さんだろう人が、一つの扉の前で声をかける。
「本日、お二人はこちらに通すようにと仰せつかっております。陛下と王妃様がお待ちです。」

従者さんが扉を開けたその先を待っていたの色とりどりの花が咲き誇る庭園だった。

庭園を抜けていくと一つのガゼボがあり、そこで王妃と陛下が寛いでいる。

「お待たせして申し訳ございません。オズワルド陛下、王妃様。」お兄様が挨拶するので私もそれに続いて挨拶をする。

「畏まらなくていい。今日は2人に頼みがあって呼んだんだ。」

私たちに頼みというのはなんだろうか…。

「ティオドールを2人に頼みたいと思っている。」


「「え…?」」


「あぁ、そういう変な意味ではない。アイツは今まで王家の中で板挟みにされていたからな…なかなか子が出来ないことで貴族内の争いを防ぐために肩身の狭い思いをさせてきた…。」

早くに結婚はしたものの、そこからなかなか子供ができなかった2人はいつもティオ様に申し訳ないと思っていたそうだ。
ティオ様はあまり気にしていなくても意外に周りは気にしたりする。

「レイもやっと3歳になりました。」
3年前、待望の子供が生まれ国全体で生誕祭が行われた。

だからこそティオ様をそろそろ自由にしてやりたいというのが国王様と王妃様の願いだそうだ。


「それで、なぜ私達にその話を…?」

お兄様なら分かるけど、私が呼ばれた理由がわからない。

「あぁ、それはな…ティオ「あにうぇええ!!!」」

国王様が話し始めた瞬間、突如現れたティオドール様に話を遮られた。

「うるさいぞ。ティオ…。」
国王様はため息を吐く。

「兄上が私に内緒でリアと会っているからじゃないですか。」

お兄様も一緒だけど、そこはいいのだろうか…。

「まぁいい。お前も聞きなさい。」
ティオ様を軽くあしらって話し始める国王様は流石だと思ってしまったのはいうまでもない。


⟡.·*.··············································⟡.·*.

ティオドール視点。

「ティオ。さっきエドが登城していたのをみたよ。」

そう言って私に話しかけてきたのはナルシスだ。

「まぁ、アイツも今じゃ宰相だからな。兄上に呼ばれたんだろう。」
3年前、兄上に子供が生まれた頃、宰相の不正が発覚し、そのままエドが宰相へとなった。領地経営などは殆どリアがやっていたから問題はなかったようだが、宰相になった当初はいつも忙しそうだったのを覚えている。

その合間でリアの婚約破棄の証拠を集めるあたり最恐の兄だ。


先日の婚約破棄の一件以来、なかなかリアに会うことができないでいた。
会いたいとは思うものの、会って何を話していいかわからなかったのだ。
10年来の文通友達、仕事仲間として見てきただけに今更自分の気持ちを伝えて関係が壊れるを恐れている。

「いい加減、リアに伝えないと領地に帰っちゃうよ。」

「わかっている。」

ここまで自分が臆病者だとは気付かなかった。
リアのことを考えていると兄上の従者が現れた。


「ティオドール殿下!大変です!アメリア様が…」

アメリアという言葉に私は思考停止した。
一体アメリアに何があったというのだ…


「と、とにかく東の庭園に急いでください!!」


それだけ話して兄上の従者は去って行った。
まさか、エドと一緒にリアが登城しているなんて思わなかった。

私は急いで東の庭園に向かった。










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