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今。
いま〜10年後〜
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「ベルタ、ラルダ、セデス。明日急遽お兄様に呼ばれて王都に行くことになったわ。ベルタとラルダは準備をお願い。セデスは少し話があるの。執務室にきてちょうだい。」
この10年の間に、ベルタも年を取って少し大変そうだったので娘のラルダがベルタの仕事を引き継ぐようになっていた。
セデスも勿論年をとっていないわけではないが…お兄様と同じ年なのでまだまだ現役だ。
執務室につくと、早速本題に入る。
「セデス。私が王都に行っている間なんだけれど、商会のこと、領地のことと後もう一つ頼まれて欲しいのよ。忙しいところに仕事を増やしてしまってごめんなさい。」
10年前に夜会に出て以降、リアルディア商会の売り上げはぐんぐんと伸びていた。
1番伸びているのは東の国の絹織物を使ったドレスやワンピース、化粧品などのスキンケア商品や、お茶会などに使うお菓子類などの商品が売れている。さらに最近ではお酒にも手を出し始めているところだ。
リアルディア商会にしても、領地経営にしても、今は商業に詳しい人や税に詳しい人を雇って事務業務をお願いしており、その責任者をセデスにお願いしているのだ。
「承知いたしました。事務員を雇ったおかげで私の負担は減っておりますので問題ございません。それで、もう一つの頼み事というのはなんでしょうか?」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるわ。これはお兄様からなんだけれど…」
今日訪ねてきた人が恐らくまた訪ねてくるだろうということ。訪ねてきたら王都の家まで訪ねてくるように話して欲しいこともしどこかに逃げそうなら捕まえてでも連れてこいと言っていたことを伝えた。
「承知いたしました。それで、お嬢様はその方のこと知っていらっしゃるんですか?」
「それが全く記憶がないのよ。夜会にも何度か参加しているけど会ったことがないと思うし…一体誰なのかしら…」
セデスは少しため息をつきながら、「仕方がないですね…。」と言うので私は「すみません」としか返せなかった。
そこまで顔を覚えるのが苦手というわけではないけどどうしても周りに強烈な顔のいい人がいると中々覚えられなくなってしまったりするのだ。単なる言い訳だけれど…
「あと、明日朝出発の汽車のチケット取れそうだったらとって欲しいんだけど、どうかしら?」
「承知いたしました。明日朝発のチケットですね。確認してみます。」
セデスが執務室から出て行ったので私は大きく深呼吸をしながら椅子に腰をかけた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
エドベルト視点。
リアから電話が来た後、俺は急いで各所に手紙を書いた。
「やっと、この時が来たか…セレス。悪いが急ぎでこの手紙を届けて欲しい。」
初めの5年は夜会などに参加していたニコラウスもこの5年全く音沙汰がない状態になっていた。
ニコラウスの両親にも何度か連絡を取っていたが、実家にも帰ってきていなかったようで全く居場所がつかめなかった。
その度に、ニコラウスの両親は謝罪の言葉を口にし、婚約を白紙にしてもらって構わないと伝えられたが、生憎白紙にする気にはなれなかった。白紙にするということはニコラウスの非道を無かったことにするということだからだ。
向こうの両親も結構年をとってきていて、できれば当主を交代したいと言っていたが、それも長男であるニコラウスがいないためにできないと言っていた。
ただ、このまま帰ってこないようであればニコラウスの弟に任せようという話も出てはいるようだ。ただ、戻ってきた時にかわいそうだということを思っているようで踏ん切りがつかないらしい。
これだけ聞くと本当に甘い両親だと感じてしまう。
今年で10年。もう諦めるしかないかと思っていた時、やっとニコラウスが現れたのだ。しかも王都ではなく、領地に来たというのだからタチが悪い。
「そもそも10年…いや、婚約当初から合わせると15年か…会ってもいなかったやつのことを覚えているわけがないだろう。」
リアだってもう25だ。15年前少女だった子は少女の雰囲気はなくなり立派大人の女性になっている。
見た目だけでもそれだけ変わるのだ。考え方だって変わるだろう。
ナルだって5年前に幼馴染の女の子と結婚をした。
「汽車などを開通させてからティオとリアも頻繁に連絡を取っているようだし、出来れば2人にうまく行ってもらいたいものだな。」
5年前くらいから急激にこの国は変わり始めている。その前から少しずつ変わってきてはいたが、大きく変わったのは汽車が開通したことだろう。
汽車を作りたいとリアから相談されたとき、始めてリアとティオが頻繁に連絡を取っていると知って吃驚したのを今でも覚えている。
雪の日に作るようになった野菜も、始めは失敗ばかりだったが今は生産が安定してきており、領地全体が安定してきた。勿論リアルディア商会はずっと好調だ。
明日になったらリアもこちらに着くし、その後にはニコラウスもこちらにくるだろう。セデスが逃すことはしないはずだ。
あれから10年。いまからニコラウスに会うのが楽しみでならない。
俺はいつの間にか口元が少し上がっていたことに気づかなかった。
この10年の間に、ベルタも年を取って少し大変そうだったので娘のラルダがベルタの仕事を引き継ぐようになっていた。
セデスも勿論年をとっていないわけではないが…お兄様と同じ年なのでまだまだ現役だ。
執務室につくと、早速本題に入る。
「セデス。私が王都に行っている間なんだけれど、商会のこと、領地のことと後もう一つ頼まれて欲しいのよ。忙しいところに仕事を増やしてしまってごめんなさい。」
10年前に夜会に出て以降、リアルディア商会の売り上げはぐんぐんと伸びていた。
1番伸びているのは東の国の絹織物を使ったドレスやワンピース、化粧品などのスキンケア商品や、お茶会などに使うお菓子類などの商品が売れている。さらに最近ではお酒にも手を出し始めているところだ。
リアルディア商会にしても、領地経営にしても、今は商業に詳しい人や税に詳しい人を雇って事務業務をお願いしており、その責任者をセデスにお願いしているのだ。
「承知いたしました。事務員を雇ったおかげで私の負担は減っておりますので問題ございません。それで、もう一つの頼み事というのはなんでしょうか?」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるわ。これはお兄様からなんだけれど…」
今日訪ねてきた人が恐らくまた訪ねてくるだろうということ。訪ねてきたら王都の家まで訪ねてくるように話して欲しいこともしどこかに逃げそうなら捕まえてでも連れてこいと言っていたことを伝えた。
「承知いたしました。それで、お嬢様はその方のこと知っていらっしゃるんですか?」
「それが全く記憶がないのよ。夜会にも何度か参加しているけど会ったことがないと思うし…一体誰なのかしら…」
セデスは少しため息をつきながら、「仕方がないですね…。」と言うので私は「すみません」としか返せなかった。
そこまで顔を覚えるのが苦手というわけではないけどどうしても周りに強烈な顔のいい人がいると中々覚えられなくなってしまったりするのだ。単なる言い訳だけれど…
「あと、明日朝出発の汽車のチケット取れそうだったらとって欲しいんだけど、どうかしら?」
「承知いたしました。明日朝発のチケットですね。確認してみます。」
セデスが執務室から出て行ったので私は大きく深呼吸をしながら椅子に腰をかけた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
エドベルト視点。
リアから電話が来た後、俺は急いで各所に手紙を書いた。
「やっと、この時が来たか…セレス。悪いが急ぎでこの手紙を届けて欲しい。」
初めの5年は夜会などに参加していたニコラウスもこの5年全く音沙汰がない状態になっていた。
ニコラウスの両親にも何度か連絡を取っていたが、実家にも帰ってきていなかったようで全く居場所がつかめなかった。
その度に、ニコラウスの両親は謝罪の言葉を口にし、婚約を白紙にしてもらって構わないと伝えられたが、生憎白紙にする気にはなれなかった。白紙にするということはニコラウスの非道を無かったことにするということだからだ。
向こうの両親も結構年をとってきていて、できれば当主を交代したいと言っていたが、それも長男であるニコラウスがいないためにできないと言っていた。
ただ、このまま帰ってこないようであればニコラウスの弟に任せようという話も出てはいるようだ。ただ、戻ってきた時にかわいそうだということを思っているようで踏ん切りがつかないらしい。
これだけ聞くと本当に甘い両親だと感じてしまう。
今年で10年。もう諦めるしかないかと思っていた時、やっとニコラウスが現れたのだ。しかも王都ではなく、領地に来たというのだからタチが悪い。
「そもそも10年…いや、婚約当初から合わせると15年か…会ってもいなかったやつのことを覚えているわけがないだろう。」
リアだってもう25だ。15年前少女だった子は少女の雰囲気はなくなり立派大人の女性になっている。
見た目だけでもそれだけ変わるのだ。考え方だって変わるだろう。
ナルだって5年前に幼馴染の女の子と結婚をした。
「汽車などを開通させてからティオとリアも頻繁に連絡を取っているようだし、出来れば2人にうまく行ってもらいたいものだな。」
5年前くらいから急激にこの国は変わり始めている。その前から少しずつ変わってきてはいたが、大きく変わったのは汽車が開通したことだろう。
汽車を作りたいとリアから相談されたとき、始めてリアとティオが頻繁に連絡を取っていると知って吃驚したのを今でも覚えている。
雪の日に作るようになった野菜も、始めは失敗ばかりだったが今は生産が安定してきており、領地全体が安定してきた。勿論リアルディア商会はずっと好調だ。
明日になったらリアもこちらに着くし、その後にはニコラウスもこちらにくるだろう。セデスが逃すことはしないはずだ。
あれから10年。いまからニコラウスに会うのが楽しみでならない。
俺はいつの間にか口元が少し上がっていたことに気づかなかった。
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